朝8時30分から厚生労働部会が開催され、提出法案の党内議論を行なう。
10時から15時過ぎまで厚生労働委員会が開催され、「脳脊髄液減少症・軽度外傷性脳損傷」を中心に40分間、長妻大臣に質問。
制度の狭間で苦しみ悩まれている方々の立場から病気の診断基準・労災などの補償・保険適用の道筋について訴える。
両方の患者会や家族の皆様も傍聴に来られ、真剣に長妻大臣の答弁を聞かれていたのが印象的であった。
患者の皆様の声・要望を国会質問という形で取り上げていただき、本当にありがたい。との喜びの声をいただく。軽度外傷性脳損傷は今日がスタート。脳脊髄液減少症もガイドラインから2012年保険適用まで、まだこれからやるべき課題も多い。
今までの福祉の枠から取り残されているこうした「新しい福祉」に分野について、公明党は、粘り強く解決へ頑張ってまいりたい。
以下質問内容。
Ⅰ.軽度外傷性脳損傷について
1.これまでの政府の対応、認識について伺いたい。
公明党の山本博司でございます。本日は、事故などによって、ある日突然誰にでも起こりうる二つの病気についてお聞きしたいと思います。
はじめに、軽度外傷性脳損傷についてお聞きします。
この軽度外傷性脳損傷は、脳で情報伝達を担う神経線維(軸索)が、交通事故、転倒、スポーツなどで頭部に衝撃を受けて損傷し発症する病気であります。
症状は多様にあり、高次脳機能障害を起こすと、記憶力、理解力、注意・集中力などが低下する。手足の動きや感覚が鈍くなる。また視野が狭くなる。においや味が分からなくなる。耳も聞こえにくくなる。排尿や排便にも支障をきたす。重症では車椅子、寝たきりの生活となる場合もあります。これらの症状は、事故後すぐに現れないことがあり、注意深い経過観察が必要ですが、医師から”むち打ち”や”首のねんざ”などと誤って診断され、適切な治療が受けられず、悩んでいる多くの患者がいらっしゃいます。大部分は、3カ月から1年で回復しますが、1割前後は1年経っても症状が長引き、一生涯、後遺症に苦しむこともあります。外見からではなかなかわからないため、「気のせいではないか」「仮病ではないか」と偏見にさらされている厳しい現状があります。
細川副大臣には、先日、患者の方たちにお会いをいただいて、要望を受けていただいたとのことですが、一刻も早い対策が求められていると思います。
そこで、まず、この軽度外傷性脳損傷について、これまでの政府の対応、どのような認識をお持ちか、確認したいと思います。さらに、労災保険の中で、こうした神経系統の機能に関する障害等級認定基準はどのように扱われているのかお聞きしたいと思います。
2.厚生労働科学研究事業の対象にすべきではないか。
やはり、診断基準を確立することが課題であると思います。医学界においても、軸索損傷に関する論文が出され始めており、本格的な研究体制の整備が急務であると思います。
一説では、国内患者数は推定数十万に上がると推計されています。早期に全国調査を行うとともに、実態の把握や原因の解明、治療のガイドラインを確立するための研究を推進すべきと考えます。厚生労働省では、厚生労働科学研究費の補助金事業がありますが、こうした事業に積極的に取り上げて推進していくべきと考えますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
3.WHOの勧告をどのように受け止めているのか。
さらに、この外傷性脳損傷は「静かなる流行病」として世界的に関心を持たれております。世界保健機関(WHO)は2007年、外傷性脳損傷に関する勧告文を発信しており、その中で「外傷性脳損傷という静かな、そして無視されている流行病に対して、全世界で闘いを組織しよう」と呼び掛けています。WHOによれば、外傷性脳損傷(軽度のほか中等度、重度も含む)は世界で毎年1000万人が罹り、10万人当たりの発生頻度が150~300人ということです。また、WHOは、外傷性脳損傷が2020年には世界第3位の疾患になると予測しています。
また、アメリカの疾病対策センター(CDC)が発表した2003年の外傷性脳損傷に関する連邦議会報告書によれば、米国では毎年150万人が外傷性脳損傷に罹り、5万人が死亡、8万から9万人が後遺障がい者となり、その累計数は米国人口の2%に当たる530万人に達するといわれています。米国では外傷性脳損傷は公衆衛生学上の重要課題として認識され、1996年のクリントン政権時に外傷性脳損傷法が制定されました。
最近では、アフガニスタンやイラクの戦地から帰還した米兵の中に、爆風の衝撃などで軽度外傷性脳損傷患者が多発しているため、オバマ大統領は軽度外傷性脳損傷を軍医療上の重要課題と認めて対策強化策を打ち出しています。
こうした海外での状況を踏まえ、わが国でも対策を強化すべきと考えますが、WHOのこの2007年の勧告を政府としてどのように受け止めているのか、見解を伺いたいと思います。
4.労働喪失の補償という観点から労災基準の等級の見直しが必要ではないか。
日本の医療現場では、CT、MRIなどの画像診断が重視されています。ところが、軽度外傷性脳損傷では軸索と共に近くを走る血管が損傷されて出血が起こらないと、通常のMRIでは脳病変が画像に出ません。出血巣も時間が経つと吸収されてしまします。よって、軽度外傷性脳損傷の軸索損傷が必ず画像に出るとは限らず、現在、軽度外傷性脳損傷の多くの患者が軸索損傷に由来する数々の臨床症状を認めながら、画像診断で「異常なし」とされています。そのために、自賠責や労災で脳の症状と事故との因果関係が認定されず、就労が困難な場合であっても、正当な賠償や補償を受けられずに困窮しているケースが頻発しており、放置できない問題であると思います。
こうした画像診断に出ない患者に対しても、総合的な診断によって障害等級を決定すべきであり、労務困難な場合には、労働喪失の補償という観点から労災保険の障害等級認定基準の等級の適切な見直しが必要であると考えますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
5.画像診断技術などの技術開発の促進支援が必要ではないか。
先ほども申し上げたように、軽度外傷性脳損傷では、CTやMRIの画像に脳病変が出ない場合があります。軸索損傷を抽出する最先端画像診断技術である、「拡散テンソル・トラクトグラフィー」などの研究も進んでいますが、臨床応用は今後の課題であります。
「マンモグラフィ」は乳がんの早期発見に大きな効果を発揮しており、こうした画像診断技術の開発は、わが国が「技術立国」として今後飛躍するには重要な一分野と考えます。政府としても、技術開発の促進支援を積極的に進めるべきと考えますが、見解を伺いたいと思います。
Ⅱ.脳脊髄液減少症について
1.検査の保険適用を徹底する事務連絡の概要を説明いただきたい。
次に、脳脊髄液減少症についてお聞きします。脳脊髄液減少症は、交通事故や転倒、スポーツ外傷など体への強い衝撃が原因で、脳脊髄液(髄液)が漏れて髄液が減るため、大脳や小脳が下がって神経や血管が引っ張られ、頭痛やめまい、耳鳴り、吐き気、倦怠などの症状が出る疾患であります。自立神経失調症やうつ病など他の疾患と誤診されたり、単なる怠慢と扱われ理解されない事例もあり、患者皆さんにとっては、一日も早い診断・治療法の確立が求められております。そうした中、髄液漏れが起きている部分に患者自身の血液を注入し、漏れを防ぐ「ブラッドパッチ療法」で、むち打ちの症状が改善したという報告が相次ぎ、関心を集めています。
この脳脊髄液減少症について、4月12日に長妻大臣は、患者団体の方とお会いし、「ブラッドパッチ療法」の次期診療報酬改定での保険適用に前向きな姿勢を示したとのことであります。また、厚生労働省は4月13日、脳脊髄液減少症の疑いがある患者の検査について、保険診療の対象とするよう周知徹底する通知を、全国の自治体に出しました。そこで、まず、この事務連絡の概要についてご説明いただきたい。
2.研究事業の今後の見通しはどのようになっているのか。
これまで、地域によってばらつきがあるという現状がありましたので「当たり前のことが当たり前になっただけ」との指摘もあります。検査の保険適用について周知徹底されるようお願いしたいと思います。
この脳脊髄液減少症については、2007年度より厚生労働省の厚生労働科学研究事業の一つとして「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班」が設置され、髄液漏れと症状との因果関係を明らかにし、診断基準の作成や治療法の確立、さらに誰が見ても納得できる診療指針であるガイドラインの作成を目的に研究事業が進められてきました。
ところが、残念ながら当初予定の3年間の研究期間内では、科学的な根拠にもとづく診断基準を作るために必要な数の症例を得るには至りませんでした。そこで、症例100例を目指して今年度も研究を継続して行うこととなり、100例が集まった時点でガイドラインを作成すると理解していますが、今後の研究事業の見通しについてどのようになっているのかご説明いただきたいと思います。
3.ブラッドパッチ療法を保険適用にすべきではないか。
今年度に脳脊髄液減少症の診断基準の作成、来年度に「ブラッドパッチ療法」の診療ガイドライン、さらに2012年度に保険適用という当初描いていたスケジュールとなれば、大臣が示された次期診療報酬の改定に間に合うと思いますので、ぜひとも強力に推進していただきたいと思います。
公明党は、患者団体からの要請を受け、2002年から脳脊髄液減少症の問題に取り組んできました。当時、公明党以外どの政党も取りあわなかった問題でした。2004年3月には、遠山清彦参院議員(現在衆院議員)が、参院厚生労働委員会で研究推進などを要請し、古屋範子衆院議員もブラッドパッチ療法の研究と保険適用を求める質問主意書を提出しました。2004年12月には浜四津敏子代表代行らが、「脳脊髄液減少症患者支援の会」の代表とともに当時の西博義厚労副大臣に、10万人を超える署名簿を添えて、治療法確立やブラッドパッチ療法への保険適用などを要請しました。2006年3月には渡辺孝男参院議員の質問が契機となって、翌2007年から研究班が設置されました。
さらに、都道府県議会などの地方議会でも患者団体と連携し、行政にも積極的に働き掛け、2007年には全都道府県において、「脳脊髄液減少症の治療推進を求める意見書」が採択されました。また、現在は42府県の公式ホームページで脳脊髄液減少症の治療可能病院が公開されるなど対策が進んでいます。
このように、わが党は8年前からこの課題に取り組んでまいりましたが、こうした課題は、本来ならば超党派で取り組むべきと考えます。
いよいよブラッドパッチ療法の保険適用に向けて具体的な段階になってきたと思います。着実に前へ進むように大臣のご尽力をお願いしたいと思いますが、この点について認識を伺いたいと思います。