衆院は24日、本会議を開き、安倍晋三首相の施政方針演説などに対する各党代表質問を行いました。
公明党の井上義久幹事長は、自公政権の下、近年、日本は生産年齢人口が減る一方で経済成長を実現していると指摘。女性や高齢者の活躍など日本の持つ潜在力を引き出すことで「活力ある日本の未来を切り開くことができる」と強調。さらに、成長と分配の好循環を確実なものとし、地方創生や社会保障の安定と充実などの課題に果敢に挑戦することで社会の隅々にまで「希望がゆきわたる」社会の実現を訴えました。=質問と政府答弁の要旨はこちら
経済再生・成長戦略
井上幹事長は、経済成長のけん引力となる技術革新(イノベーション)を少子高齢化や人口減少など日本が直面する課題の解決に生かすという「課題解決型」のイノベーション創出に「重点的に取り組むべき」と提案。高齢ドライバーの事故を防ぐ自動ブレーキの普及などを例に挙げ、設備投資の後押しや新技術を担う人材の育成などを訴えました。
また、地域経済の底上げによる地方創生の実現に向け、地域資源を生かした商品・サービス開発や販路拡大の後押しなどを主張。農業については、収入保険創設や中山間地域の所得向上支援、都市農業の振興を求めたほか、「肥料や農薬など資材価格の引き下げ、流通の合理化などの改革を着実に推進すべき」と述べました。
働き方改革
井上幹事長は働き方改革の一層の加速を訴え、中でも長時間労働の是正については「罰則付きの、時間外労働の上限規制を定める法改正を」と提唱した。安倍首相は「早期に法案を提出する」と答えました。また井上幹事長は、退社から次の出社まで一定時間を空ける「勤務間インターバル」の導入に向けた法規制を検討するよう求めました。
非正規雇用の処遇改善では「就職氷河期世代(35〜44歳)などに多いとされる不本意な非正規労働者の正社員化を促す必要がある」として、キャリアアップ支援を主張。
さらに、政府が昨年末、賃金など正社員との不合理な待遇差の解消に向けたガイドライン案を発表したことを踏まえ、ガイドライン案の実効性確保などを進めて同一労働同一賃金を実現するよう迫った。安倍首相は関連法案の早期国会提出をめざす考えを示しました。
社会保障
医療保険制度改革に関して井上幹事長は、70歳以上の高額療養費見直しなどが予定されていることから「一人一人の生活実態に即したきめ細かな配慮を」と指摘。安倍首相は、低所得者の医療費自己負担の上限額を据え置いたことなどを説明。このほか井上幹事長は、低年金者に対する年最大6万円の福祉的給付の早期実施を提案しました。
がん対策では、患者の生存率が上がり、治療と就労の両立が新たな課題になっていることに言及。昨年12月に改正されたがん対策基本法にも、患者の就労支援やがん教育の推進などが盛り込まれたとして、今夏に策定される次期がん対策推進基本計画に法改正の趣旨を反映するよう求めました。
教育支援
井上幹事長は、公明党が奨学金の拡充などに力を入れてきたことに触れ「今後も子どもたちの可能性を開く教育支援を拡充していくべきだ」と強調。安倍首相は、公明党の提言を受けて2017年度は無利子奨学金を拡充し、返済不要の給付型奨学金を創設するとして「今後も必要な財源を確保し、教育費負担の軽減に取り組む」と応じました。
復興、防災・減災
井上幹事長は、東日本大震災の被災者が「人間の復興」を成し遂げるまで寄り添い続けるとし、復興加速に向けた決意を改めて強調。
また昨年は、熊本地震や台風豪雨などの自然災害が相次ぎ、今後も首都直下地震や気候変動による豪雨被害などが懸念されるとし、「自然災害の脅威から国民生活を守る防災・減災対策の強化は喫緊の課題だ」と訴えました。
石井啓一国土交通相(公明党)は、巨大地震や水害などに対し、ハード・ソフト対策を総動員する必要性に触れ、「災害から国民の命と暮らしを守るため、総力を挙げて取り組む」と答えました。
日ロ関係
井上幹事長は昨年の日ロ首脳会談を踏まえ、共同経済活動の具体化とともに、北方領土の元島民の高齢化に配慮した希望につながる取り組みの実施を求めた。安倍首相は「平和条約締結に向け着実に前進していく決意だ」と応じました。