新春恒例の「あいサポートとっとりフォーラム22」が鳥取県米子市で開催。(9日)
・新春のおはなし「おなじくなくて、いいんだよ」湯浅正太氏(一般社団法人 Yukuri-te(ゆくりて)代表理事 小児科専門医 てんかん専門医)
絵本「みんなとおなじく できないよ 障がいのあるおとうととボクのはなし」
湯浅氏は小児科医、てんかん、障害分野の専門医として活躍すると同時に障がいのある兄弟姉妹の支援をされています。
湯浅氏の障がいの弟を通じて、小児科医になったいきさつ等、心の思いを涙を堪えながら、素直に話されました。(下記内容)
『病気/障害を持つ子供(「同胞」と呼ぶ)の家族であるきょうだい児の特有の悩みとは、一般的に
①自分も、同胞と同じような病気/障害を持つ(持っている)のではないかという不安、
②皆と同じような行動ができない同胞への恥ずかしさ、
③同胞が病気/障害を持ったのは、自分が原因ではないか、という間違った罪悪感、
④両親共いなくなったら、同胞と自分だけで暮らしていけるのかという将来に対する不安、
⑤同胞のせいで、自分が思うような生活ができないことへの憤り・恨み、
⑥同胞を支えるためには、自分がしっかりしなければいけない、というプレッシャーなどです。
湯浅氏は、特に③④に苦しめられました。弟と私は同じ小学校に通っていたので、悩みながらもできる限り弟を助けようと、弟のクラスに行って彼がいじめられていないか見張りに行ったこともありました。“自分がもっと弟のことを理解できれば、弟を助けられるかもしれない”といった思いが強くなり、小児科医になったそうです。
子供にとって最も身近な「親」は、「障害のある子供」も「きょうだい児」も、等しく大事に育てたいのです。ただ、そうは言っても障害のある子供に接する時間が多くなってしまう傾向があります。きょうだい児が放っておかれてしまう現実を、後ろめたく感じる親は少なくない。
そうした中できょうだい児は、次第に心の不調を訴えるようになります。具体的には、イライラして突然怒ったり、勉強に集中できず成績が悪化したりします。さらに「お前はどうしてきちんと行動できないのか」などと叱責を受けると、自己肯定感も低下していく。家族はこうした経験を経てようやく「きょうだい児」としての支援が必要だったと気付き、後悔することも多い。
しかし「きょうだい児」への理解が乏しい親が“悪い”という訳ではありません。親は必死に頑張っています。ですから、「きょうだい児」の支援について、親だけに責任を押し付けるべきではありません。
重要なのは社会が「障害を持つ子供」と「きょうだい児」に関する理解を深め、その知識を家庭(親)に提供したり、家庭(親)に心の余裕が生まれる支援を行うことだと考えています。』
終了後、湯浅氏と懇談。主催者のNPO法人あかり広場の渡部恵子理事長と記念の写真も。
きょうだい児支援は、ヤングケアラーなども含まれます。今後しっかりと支援に繋げてまいります。
【湯浅正太(ゆあさ・しょうた)氏プロフィール】
小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)
1981年生まれ。高知大学医学部を卒業後、自治医科大学附属病院、亀田総合病院、国立精神・神経医療研究センター病院勤務を経て、現在、亀田総合病院小児科部長。自身の経験から「障がいをもつ子どもたちや、その家族が生きやすい世の中を」という思いをもち、病気やハンディキャップをもつ子どもの兄弟姉妹(きょうだい児)の支援に取り組んでいる。