参議院 予算委員会 第10号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 まず初めに、南海トラフの巨大地震対策に関しまして、今日は質問をさせていただきたいと思います。
 パネルを御覧いただきたいと思います。(資料提示)
 南海トラフは、西日本の太平洋側にある海溝で、静岡県の駿河湾から、紀伊半島沖、四国沖、宮崎県の日向灘沖まで延びております。東海、東南海、南海という極めて広い領域となっております。ここを震源とする巨大地震が発生しますと、東日本大震災以上の大規模の被害が起きるとも言われているわけでございます。
 今、内閣府では検討会議を設けまして、昨年の八月、また本年の三月に被害想定の報告を行っておりますけれども、まず、その概要を説明いただきたいと思います。
○国務大臣(古屋圭司君) お答えさせていただきます。
 南海トラフ巨大地震でお示しした想定は、全国的に見て被害の程度が中程度から最大のケースというものを想定したものであります。昨年八月にも公表していますけれども、死者、行方不明が三十二万人、建物被害が最大で二百三十八万棟というような想定結果を出したところですけれども、今年の三月十八日に発表した第二次報告では、ライフライン、交通施設等がどの程度被災をして復旧にどれぐらい掛かるかの見込みを時間の経過に併せて想定した、言わば被害の様相をそれぞれ作成をいたしております。
 定量化が可能な一部の項目については定量的な被害も発表いたしました。施設等の被害は、いずれも最大値ですけれども、例えば、停電が二千七百十万軒、断水人口が最大で三千四百四十万人、避難者最大で九百五十万人、あと、経済被害は、資産等への被害が最大で百七十兆円、こういった数字出しました。
 この数字聞きますと非常に厳しいものではありますけれども、いずれも千年に一度とか、それ以上に頻度が少ない最悪の事態をも想定したものでありまして、なぜこういう数字を公表したかと。それは、やはり巨大地震が発生した際に起こり得る現象というものを冷静に正しく恐れてもらう、そして国民にありのままを知っていただくということが必要だと考えたからでありまして、そのことによって減災・防災意識を全ての対象地域の方々に持っていただく、そしてその対策を国を挙げて、地方とも連携をして実施していくことが何よりも大切です。これによって致命傷を負わない、そして被害を最小限に食い止める、また速やかな復旧、こういったものにつながっていくというふうに思います。
○山本博司君 今大臣からお話ありましたように、最大のそういう被害の想定であるということでございますけれども、よりこれは防災・減災をしっかりやっていけば大きく被害が少なくなるということも試算をされていらっしゃいます。その部分を御報告いただきたいと思います。
○国務大臣(古屋圭司君) 委員御指摘のとおり、今回の被害想定では、厳しい数字だけではなくて、防災・減災効果の試算も併せて出しております。例えば津波避難について、全員が地震発生後に避難することや津波避難ビル活用の避難の迅速化によって、死者・行方不明数が最大九割減少することができます。また、建物の耐震化を一〇〇%にすることとか火災対策を推進することによって、資産等の被害額は半減することができます。
 このように、防災・減災対策を講じれば被害の量は確実にこれは減らすことができます。その対策の徹底が更なる被害の減少につながっていくというふうに思います。
○山本博司君 今大臣からお話ありましたように、パネルを御覧いただきたいと思います。
 今、話がございましたように、避難が迅速に行っていけば最大九割まで減少することができるという、そういう御指摘でございました。また、耐震化を進めていけば、資産、これは百六十九兆五千億円、この資産の被害が半減をすることができる、八十兆四千億まで半減をすることができると、こういう形でございます。様々な対策を講じていけば救える命があるということでございまして、国は国民の生命を守ることに最優先に政策を決定すべきだと考えるわけでございます。
 この中で一番大事なことは、やはり津波への対策をいかにするかということでございます。
 一例を御紹介しますと、高知県の黒潮町、これは津波が最大三十四・四メートルという地域でございます。人口の約九割、一万五百人の方々が浸水地域に住んでいらっしゃるという形になるわけです。当初、この三十四・四メートルというお話を聞いたときには、もう逃げても無駄ではないかと、そういう諦めの、そういう気持ちもたくさんあったということでございます。それを何とか変えないといけないということで、大西町長以下黒潮町の方々は、何としても犠牲者をゼロにするんだと、こういう思いで、今必死の思いで取り組んでいらっしゃるわけでございます。
 具体的には、津波避難カルテと、こういう形で、町自体を十世帯から十五世帯ぐらいの班を、二百八十三の班をつくって、そしてワークショップという形で対話集会で、この十五世帯ぐらいの方々の中に高齢者はいないのかどうか、障害者がいないのかどうか、要援護者の方たちの支援をどうしていったらいいのか、そして避難路の障害はないのかどうか、様々な形でそういう取組を真剣にされていらっしゃるわけでございます。
 その意味では、こうした取組が各地で行われるように積極的に国がバックアップしていくと、そのことが大変大事でございます。その意味で、津波対策に対して、大臣、どのように取り組むのでしょうか。
○国務大臣(古屋圭司君) 今委員御指摘の黒潮町の大西町長さん、私のところにも頻繁にお越しいただきます。若い有能な町長さんですよね。
 やはり、住民の皆さんにしっかりそういう危機意識を持って対応していこうと、すばらしいことだと思います。そういう意識改革、ソフトの面での対策というのが相当被害者を減らしていく。ゼロという大変理想的な数字を掲げている、私は敬意を表したいと思います。
 その上で、津波対策の基本的な考え方、これは、まず揺れたら避難、素早く逃げる、これが一番重要な対策なんですね。そのために、津波による人的被害を軽減するためには、まず一人一人が主体的に避難活動というのが基本。その上で、海岸や保全施設等のハード対策だけではなく、確実な情報伝達のソフト対策等々、全て素早い避難の確保を後押しするための対策として位置付けていくべきでありまして、したがって、住民避難を軸に、例えば情報伝達体制、避難場所、避難施設、避難路等を整備するということはもちろんですけれども、住民一人一人が主体的に迅速に避難するための防災教育、これは学校でも必要でしょうね。それから、避難訓練を含めた総合的な推進をしていくことが大切だと思う。
 それから、今委員の御指摘のありました、いわゆる要介護あるいは要支援者ですね、こういった方々に対する避難、非常に重要でございますので、避難時の行動要支援者名簿の作成について、新たに定める災対基本法の改正でしっかり記させていただきまして、災害時要援護者の避難支援ガイドラインを見直して、より実態に即した形で取り組んでいく、そして適切な避難支援ができるように取り組んでいきたい、このこともしっかり各地域に指示をし、あるいは督励をしていきたいというふうに思っております。
○山本博司君 今大臣ありましたように、特に弱い方々、災害弱者と言われる要援護者の方々の支援を含めてしっかり取り組んでいただきたいと思います。
 この災害時の対策の中で更に大事なのは、広域的な避難路の整備ということも不可欠でございます。
 三月二十七日に、私は地元の首長の方々と共々に、地域高規格道路でございます大洲・八幡浜自動車道に関しまして、この夜昼道路の新規事業化ということに関して太田大臣のところに要請に伺った次第でございます。
 この夜昼道路といいますのは、四国の西の玄関口でございます八幡浜港から四国横断自動車道へのアクセス道でもございます。また、そこは伊方原発を抱えておりますから、地域の重要な避難路にもなるわけでございます。そして、そこにあります現行の、夜昼トンネルとございますけれども、昨年、天井板の落下事故におきまして、笹子トンネルと同じつり天井の方式ということで、やはり地域の方々も何とか代替の道路をと、このことを強く要望されているわけでございますけれども、国交大臣にお聞きします。こうした防災のための地域高規格道路の新規事業、また夜昼道路についてどのように取り組むつもりなのか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(太田昭宏君) 道路に対しての概念を私は変えていかなくてはならないというふうに思っています。富を生み出し生活の利便性を確保するということがかなり主眼になって、ミッシングリンクというようなことが言われてきておりますが、それはそれで極めて重要です。
 しかし、東日本大震災以来、代替する道路があるかないか、リダンダンシーというふうに言うんですけれども、それが確保されているかどうかということが非常に大事で、今までは、私は、大都市周辺の道路は、道路は一つ一つ戦略的に考えていかなくちゃいけないということで、大都市周辺は経済戦略道路という意識で持っていかなくてはいけない。そして、地方のところは、防災ということも意識して、そして病院にも駆け付けられるという、そういう意味では生活インフラ道路という意識を持って戦略を持たなくてはならない。そこに東日本大震災から、リダンダンシー、もう一本そこに選択肢ができるということが非常に大事だという観点が生まれたというふうに思っています。
 今お尋ねの四国のところを考えますと、非常に津波というのが愛媛県に至るまで大変巨大なもので、南海トラフ地震で心配をされる。三十数メーターというようなことがあって、もう茫然とするというような状況にもある。しかし、海岸にしか今道路がなかなかない。ですから、四国全体としては、要望のあるように、八の字型のネットワークというものをつくるということは私は極めて重要であり、またその中でも大洲・八幡浜自動車道、こうした非常に、一本しかなく、リダンダンシーということを確保するという観点からも極めて、防災・減災、リダンダンシー、命を守る公共事業、道路という観点から、それを踏まえて私は取り組んでいきたいというふうに思っています。
○山本博司君 是非とも命の道路の視点の形でお願いをしたいと思います。
 次に、災害時の対策として、もう一つ、情報技術、ITを活用した防災・減災対策、大変重要だと思います。
 今月十三日に淡路島で起きました地震におきましても、Jアラートで地震情報を受信しながら防災行政無線が流されなかったり、また防災情報メールに不具合が発生するということもございました。これは東日本大震災の際にも通信の機能不全ということがございまして、避難誘導とか安否確認がうまくいかないという事例もあったわけでございます。
 こうした状況を改善をしていく、災害に強い情報通信技術を開発ということが求められているんではないかと思います。公明党は、IT技術活用の検討PTを立ち上げまして、総務大臣あてに防災・減災の要望も出させていただいているところでございます。
 総務大臣にお聞きをしますけれども、この点に関してはいかがでしょうか。
○国務大臣(新藤義孝君) まず、公明党のPTにおいて事務局長を務められる委員の御活躍には敬意を表したいと思います。
 そして、今御指摘の災害に強い情報通信ネットワーク、これをいかに構築するかはこれは我が国のもう最重要優先課題ではないかと、このように思います。そして、それは国土の強靱化にもつながっていくというふうに思うのであります。
 御指摘のように、前回の東日本大震災のときは、携帯電話、これ通常の五十倍の通信が殺到して不通になってしまいました。それから、そもそも電話局が津波で破壊される、若しくは電源が喪失されて動かなくなる、結果的にはそういう機能不全がたくさんあったわけであります。
 したがって、まず目の前のできることとして、大災害時に通信障害、通信が殺到してもそれを振り分けたり、いろいろと工夫をしてつながりやすくする、そういう技術、これはもう既に補正予算を使ってやっております。
 あわせて、そもそももっと根本的な、ICTを使ったイノベーションを起こして、もっと国の安全とそして国民を守る仕組みがつくれないか、今我々はそういう研究をしております。例えば、衛星の通信を使ってメールのやり取りを双方向で確定する。これは地上で何があろうとも維持できる、そういう通信網ができます。それから、平常時には、利便性を高めるための情報通信ネットワーク、例えばそれを使って患者の情報、医療情報だとか、そういったものを共有できるようにすると。これは非常時においては避難先に、どこに行ってでも適切な治療が受けられる、そういうネットワークをすることも可能であります。
 いろいろな意味で、私どもは、これまでの教訓、またたくさんの犠牲になられた、そういう方々のためにも新しい形の防災システムというものを組み上げていきたいと、総務省としてはその基盤をつくってまいりたいと、このように考えております。
○山本博司君 是非ともこのICTの利活用を含めてお願いを申し上げたいと思います。
 現在、南海トラフ巨大地震対策に総合的に対応するために、今自民党と公明党で南海トラフ巨大地震対策の特措法という形で準備をしているわけでございます。この法案は、地震で特に被害が大きくなると予想されている地域、これを緊急対策区域、こういうふうに指定をしまして、集中的に防災・減災の対策を行うことが柱となっております。
 具体的には、補助率のかさ上げ、今なかなか地方の財政では厳しい二分の一の状態というのをもっとかさ上げしていこうということであるとか、また今の制度では避難路とか集団移転というのが制度的には支援がなかなか難しいのも現状でございます。こうした地域防災拠点の整備等も実施計画を都道府県が取りまとめる、こういうこともこの中に入っているわけでございます。
 先ほどからずっと防災・減災、地震のことのお話がありました。やはり政府は危機感を持ってこの巨大地震に備えるべきであると思います。その意味で、積極的に南海トラフ地震対策、取り組んでいただきたいんですけれども、総理に見解をお伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 南海トラフ巨大地震については、委員の御指摘のように、津波による多大な人的被害が想定される中で、津波から人命を守ることが最大の課題であると認識をしております。
 この巨大地震への対策を促進する観点から、与党において特別措置法の検討がなされていることは大変有意義なことだと思います。早期にその具体化が図られることを期待をいたしております。
 政府としても、与党と連携して、南海トラフ巨大地震による被害をできるだけ軽減できるように対策を強力に推進していく考えでございます。
○山本博司君 次に、成長戦略ということでお聞きを申し上げたいと思います。
 新しい政権になりまして、経済の再生に向けた大胆な金融緩和そして機動的な財政政策が効果を発揮しまして、株価も急上昇しております。また、円安も加速をしております。しかし、まだまだ、先ほどから今日の議論でもありますように、庶民の懐は冷え込んだままでございますし、地方は厳しいのが実態でございます。特に、これから実体経済の本格的な回復、まさしく正念場が続いているんではないかなと思います。いよいよ、民間の需要、投資を喚起する成長戦略、三本の矢をこの六月に策定されると、このように聞いておりますけれども、やはり日本の持続的な経済成長を支えるためには大変大事な点でございます。
 先ほど成長戦略ということでお話がありましたけれども、その中で観光の位置付けということをどう考えていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。私は、観光振興というのは雇用の拡大にもつながりますし、地域の活性化ということでも大きく貢献をする、このように思っているわけですけれども、総理の見解を伺いたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 観光振興は、成長戦略において将来あるべき社会像として設置する戦略目標の一つである、世界を魅了する地域資源で稼ぐシステムの構築の一環であります。まさに、このあるべき社会像として、地域地域、日本中、優れた景観あるいは歴史的な文化財がある地域がたくさん日本に点在するわけでございますから、その中で、小泉政権の下で始まったビジット・ジャパン・キャンペーンが本年で十周年を迎えるわけでございまして、この節目において、史上初めて訪日外国人旅行者数一千万人の大台を超えることを目標に全力を挙げていくことが重要でございます。
 今までなかなか伸びなかった一因の一つとしては行き過ぎた円高があるわけでございまして、これが是正されている中において、昨年の同月比、既に中国を除けば三三%、外国からの日本への観光客が増えているわけでございますが、ただ、黙っていてもどんどん増えていくわけではないわけでございまして、地域のすばらしさを生かしていくという努力が当然必要でございます。
 成長戦略によって力強い日本経済を立て直して、魅力にあふれる観光立国に向けて、今後、アクションプログラムを観光立国推進閣僚会議で策定して政府一丸となって取り組んでいく考えでございます。
○山本博司君 是非ともお願いをしたいわけでございます。
 先ほど一千万人というお話ございましたけれども、現状八百三十万人ぐらいというのが二〇一二年でございます。世界で三十番目ぐらい、海外の外国人の方の順番としては三十番目ぐらい、アジアの中でも八番目とか九番目ということで、やはり韓国とか中国と比べても厳しいのが実態でございます。そういう意味で、やはり省内の枠を超えながらしっかりとした取組をしていただきたい、このことをお願いを申し上げたいと思います。
 その意味で、私の地元は瀬戸内海でございます、瀬戸内海、大変、国立公園の第一号の指定を受けましてから来年で八十年を迎えるわけでございます。この瀬戸内海七百の島々、多島美の魅力であるとか歴史的な文化、伝統、芸術、すばらしい魅力のある地域でございます。この地域を具体的にどうしていくかということで、昨日、瀬戸内を共有する七つの県の知事が集まりまして、瀬戸内ブランド推進連合、こういう形を発足をいたしました。これは、今まで各県ごとに個別の取組に終わりがちだったこういう観光政策を広域的に取り組んでいこうという、まさしく先駆的な地域発の部分だと思います。
 公明党は、二年前に党の中に瀬戸内海フォーラムというPTを立ち上げまして、七県の国会議員、地方議員が瀬戸内海の魅力を、観光、食、防災、様々な形で二年間取り組んだ経緯がございますけれども、こういう地方の活性化に向けた広域的な連携、このことに対して政府はどのように対応しているのか、観光政策の太田大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(太田昭宏君) 具体的なお話をいただきました。また、山本先生は国会議員の中でも一番離島をずっと小まめに回ったということを聞いております。しまなみ海道の無料化を始めとして、いろんなことにも御提言をいただいているところでございますが、私は、総理から発言がありましたが、日本、何とか今年は一千万のインバウンドをということに全力を挙げなくちゃいけないと思っていまして、総理から先ほどありましたが、これまで中国を除くと三三%ぐらい上がっているということですから、何とかクリアできるまで頑張りたいと思いますが、これが二千万の人が日本に訪れるということになると、私は景色が変わると思うんです。そこのところに向けて成長戦略の中での戦略的なことを打ち出すということをやらなくてはいけないなということを自覚をしているところです。
 そのためには、地域で、今御指摘ありました瀬戸内ブランド地域戦略ですか、そうしたことで話し合っていただく。外国の方が来ていただくと、ルートで回るものですから、一か所に行くわけじゃありません。こことこことここを見て回るというようなルートが選定されて、魅力があるかどうかということが極めて重要だというふうに思っているところでございます。そういう意味で、地域活性化への連携、観光連携ということが地域にとって物すごく大事なことであるというふうに思っております。
 海外の旅行会社による広域ルートを組み込んだ旅行商品の造成、あるいはまた海外メディアへの働きかけ、こうしたことをしっかりやりながら積極的に支援をしたいというふうに考えております。
○山本博司君 やはり地域の連携ということに関しましたら、香川県と岡山県で瀬戸内国際芸術祭というのが一昨日終わりました。約二十六万人の方々、見込みの二倍の方がいらっしゃっておりまして、夏も、また秋もやるわけでございますけれども、こういう連携という形の支援、しっかりお願いをしたいと思う次第でございます。
 実際、今観光の予算が百億円ということで、韓国が七百億円ですから七分の一という状況もございますので、これは、総理、是非とも観光ということを日本の大きな成長戦略の位置付けとしてお願いをしたいわけでございます。
 そういう中で一点、個別の問題で、鳥取県の境港に行ってまいりました。そこで大型クルーズ船の寄港が始まったということで、外国人の方もたくさんいらっしゃる形でございます。一度に二千名近い方がどっと来るわけでございますから、出入国の、この入国の審査手続、大変手間取っているということもございます。こういう様々なところで、この一千万以上の方を迎えるための手続、どんどん変えていかないといけないと思います。
 これは法務大臣に、この出国入国手続の迅速化また円滑化、この点いかがでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今お話がございましたように、法務省入国管理としてもインバウンドを重視していかなければいけないと思っております。
 今、境港の例をお挙げになりましたが、境港にとどまらず、例えば福岡で博多であるとか、あるいは私の選挙区でございますが舞鶴であるとか、港を抱えたいろんな地域から迅速化を図ってくれという御要請がございます。
 そこで、今入管でやっておりますことをちょっと申し上げますと、迅速、円滑な上陸審査を図るために、もちろん港だけではなく空港も、空海港における入国審査官の増員、それから応援派遣の実施等の体制整備、それから問題があり審査に時間が掛かりそうな方もいらっしゃるわけですので、そういう方は別室で審査することによって、特に問題がないと思われる方は迅速に通していくと。そういう効率化など、めり張りの利いた審査の実施、それから審査場の案内者や通訳人の配置、そういったことにも工夫を今しているところでございます。
 特にクルーズ船に対する上陸審査については、全国からの審査要員の応援派遣、さっきおっしゃいましたように、十一万トンぐらいですと二千人から二千五百人、十五万トンになると一挙に五千人の方が入ってくるということになりますと、その応援体制も組まなければいけない。
 それから、昨年六月から寄港地上陸許可という簡易な許可方式を始めました。それは、今までは顔写真と指紋と両方照合するということでしたけれども、指紋だけの照合ということで簡易迅速に、個別識別情報の取得を最小限とするというようなことを今いろいろ工夫しているところでございます。
 いずれにせよ、インバウンドをもっと増やすと、法務省もそういう意識に立って入国審査の簡易迅速化に更に努めてまいりたいと思っております。
○山本博司君 是非、観光立国を目指して、省内の枠を取っ払ってやっていただきたいと思う次第でございます。
 こうした観光施策を始めとする様々な施策が具体化をしていけば本格的な景気回復が早期に達成できるようになると思いますけれども、その際に大事なことは賃金の引上げということだと思います。
 先ほど荒木議員からの質問等もありましたけれども、先週の四月十八日には国交大臣は建設団体の職人の方々の賃金の引上げということを要請されました。また、甘利担当大臣も日本商工会議所に対しまして中小企業への賃上げを求めるということもされたということで、率先してそういう行動を取られておるということは大いに評価するものでございます。
 この度、公明党としましても、労働政策に関する提言をまとめまして、昨日、田村厚労大臣のところに行かさせていただきました。この中で最低賃金の引上げということについても申入れをいたしました。賃金の底上げを図る趣旨からも、最低賃金の引上げについては積極的にやる必要があるのではないかと、このように思う次第でございます。
 総理は、第一次安倍政権のときにもこのことに関しましてしっかり取り組んでいただいたという認識をしております。総理、この最低賃金に対する見解をお聞きをしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 最低賃金を引き上げていく環境整備のためにも、成長戦略によって企業の収益力を向上させていく必要があります。それが雇用の拡大や賃金の上昇をもたらすような好循環を生み出していく、そういう好循環を生み出していきたいと考えておりまして、こうした取組と併せて、最低賃金については、中小企業の支援を工夫をしながら、労使と丁寧に調整をしながらその引上げに向けて努力をしていく考えでございます。
 例として挙げていただきました第一次安倍政権においては、何とか中小零細・小規模事業者の成長力の底上げを図ろうということを実行してまいりました。それと併せて最低賃金の引上げに努力したところでございますが、平成十四年がゼロで、十五年、十六年が一円で、十七年が三円で、十八年が五円であったわけでございますが、安倍内閣のその方針によって、その年は十四円、二桁になりまして、その後、十八年、十九年、二十年、二十一年と二桁が続いているわけでございますが、しっかりと中小零細企業が付いてくることができるような環境をつくりながら、支援をしながら最低賃金の引上げに向けて努力をしていきたいというふうに思います。
○山本博司君 是非お願いをしたいと思います。
 この最低賃金の引上げを行うということに関しましては、これはやはり、労働者、使用者などの関係者の理解を得られるように努力することが大事でございます。特に、この最低賃金の引上げをした場合に影響が受けやすいのが中小零細企業の方々でございますから、その配慮ということが大変重要でございます。
 具体的には、政府全体として、こういう経営とか労務全般にわたる中小零細企業への支援、これを充実、拡充させていくということが大変大事だと思います。この点、甘利担当大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(甘利明君) 最賃を引き上げる、過去の歴史を見てみますと、それこそ本当に二円、三円引き上げるのにもう大変な努力を強いられるわけです。これは、中小零細企業、賃金体系で見ますと、そこのラインにほぼ沿って集中している企業が多いんでございます。
 そこで、そういう環境を整備していくために、いろいろと政府としても取り組んでいきたいというふうに考えております。下請代金がきちんと支払われる、あるいは消費税がきちんと転嫁できる、あらゆる環境を整えて、景気の恩典が中小零細までしっかり及ぶように目配り、気配りしていきたいというふうに思っております。
○山本博司君 やはり経済成長の恩典というのが地方経済、地方とか中小企業に来る、なかなかそれが遅いわけですから、それを早く取り組んでいくということがすごく大事だと思います。
 その意味で、今後の成長戦略、また骨太の方針の中にこういう点をしっかり盛り込んでいただきたいと思いますけれども、最後に、総理に見解をお聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 経済が本格的に成長していく上においては、まさに地方の中小・小規模事業者がこの新たな景気の暖かい波を感じることができるようにならなければならないわけでございまして、その意味において中小・小規模事業者の成長力を引き上げていく、それがやはり成長戦略においては重要な政策の一つであるということは間違いないわけでございますので、取り組んでいきたいと思います。
○山本博司君 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。