参議院 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会 第4号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 この委員会で初めて質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 福田政権が発足してから二か月以上が経過して、この間北朝鮮に関する外交についても高村外務大臣を始めとして大変努力をされていることと思います。大変御苦労さまでございます。また、我が国の最重要課題である拉致問題の解決に向けて、町村官房長官におかれては、官房長官という重責にありながら、拉致問題担当大臣としての重要な職務を務められております。心から敬意を表する次第でございます。
 まず初めに、拉致問題を含めた北朝鮮に対する基本的な政府の方針についてお伺いをしたいと思います。
 現在、政府は拉致問題、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、日朝国交正常化を進めていくこととしています。私も、その方向性には賛成であり、引き続き政府には御努力をお願いをしたいと思います。その上でお伺いをしたいのは、解決への手段についてであります。
 福田政権では、当初、対話と圧力のうち、どちらかといえば対話を重視しているように見えます。確かに対話が唯一の問題解決の道筋ではありますが、私たちはひとつ北朝鮮という国に対して圧力なしに何事も動かすことができないというのも理解をしております。福田政権ではこの対話と圧力のバランスをどのように考え、拉致問題の解決につなげようとしているのか、基本的な姿勢について高村大臣にお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 我が国は、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現して、不幸な過去を清算して国交正常化を図るべく、引き続き最大限の努力を行っていく考えであります。
 その対話と圧力でありますが、これは双方が必要であると、双方が必要であると。それらの間のバランスを考えることが重要と考えております。
 また、対話にしても、圧力にしても、関係国、広く国際社会の理解と協力を得ることによって、効果的、実務的なものとなることがある点にも留意する必要があると、こういうふうに考えております。
 日朝関係については、十月の六者会合成果文書においても、日朝双方が平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決することを基礎として早期に国交を正常化するため、誠実に努力すること。また、そのために、日朝双方が精力的な協議を通じて具体的行動を実施していくことが約束されたわけであります。今後とも、六者会合などの場を通じて、関係国とも緊密に連携協力しながら、日朝協議に真剣に取り組み、北朝鮮側に対し、拉致問題を含む諸懸案の解決に向けた具体的な行動を求めていく考えでございます。
○山本博司君 ありがとうございました。
 対話と圧力のバランスを取り、対北朝鮮政策を柔軟に推し進めていくことが大変重要でございますので、外交的な御努力をお願いをしたいと思います。
 そこで、拉致問題の解決の目指すところを伺いたいと思います。もちろんすべての拉致被害者の方々の一刻も早い帰国、真相の究明、拉致実行犯の引渡し、これは絶対条件でありますが、例えば、政府が認定している十二件十七名以外の拉致されている可能性の高い人たちについてはどうなるのでしょうか。ここまで行けば解決したと言える目標到達点について、町村官房長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(町村信孝君) 拉致問題の解決、今委員が言われたようなすべての被害者の帰国、真相の究明、あるいは被疑者の引渡し等を指すわけでございます。その際、いわゆる特定失踪者の方々、これはどこまでが本当に拉致されているのかいないのか、必ずしも定かではない方々もいらっしゃるわけでございますけれども、いずれにしても、私どもには最終的には分からない部分もあるんです。彼らにしか分からないところがあります。
 したがいまして、これまでもいわゆる特定失踪者を含む拉致の可能性を排除できない方々についてもかねてから情報の提供を求めているというのは、そういう考え方に立っております。したがいまして、この十七名という方にとどまらず、すべての拉致被害者の帰国を求めるということが基本姿勢であり、それが解決であるというふうに考えているわけでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 何をもって拉致問題の解決、進展ととらえるかは大変重要な問題であると思います。今後の六か国協議の中でもこの点は明確さを求められることになると思います。官房長官も、また先ほど外務大臣も言われましたけれども、拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はない、この方針を政府一体となってしっかり貫いて、今後とも御協力をいただきたいと思います。
 次に、最近の首脳会談についてお伺いをしたいと思います。
 先月十六日、訪米した福田総理とブッシュ大統領が会談をし、テロ支援国家指定解除の問題を取り上げました。そこで、ブッシュ大統領が拉致問題を決して忘れることはないと記者会見で表明したことは、北朝鮮がもくろんでいた年内のテロ支援国家指定解除に一種のプレッシャーを与えることができ、これは一つの成果であると言えます。しかし、今後まだこの指定解除の可能性が強く残っていることについては、政府は引き続き米国にあらゆる方面から解除を行わないように訴え掛けていただきたいと思います。
 この日米首脳会談の様子と今後のアメリカへの働き掛けについて、外務大臣にお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 十一月十六日の日米首脳会談におきまして、北朝鮮問題については、六者会合を通じて北朝鮮の核兵器、核計画の完全な放棄を実現すべく日米が引き続き緊密に連携して努力していくことで一致をいたしました。
 また、テロ支援国家指定解除の問題について、福田総理はブッシュ大統領との間でしっかりと話合いをいたしました。福田総理からは、我が国が北朝鮮に対して拉致問題での進展を求めており、特に被害者の帰国を重視していること等、具体的に説明をいたしました。これに対しブッシュ大統領からは、拉致問題の日本における重要性は理解している、日本政府と日本国民の間には米国が拉致問題を置き去りにして北朝鮮との関係を進めるのではないかとの心配があると理解しているが拉致問題を決して忘れることはない、北朝鮮は完全かつ正確な申告を含め非核化措置をきちんと実施しなければならない、日朝関係の改善も核問題と並行して進めていく必要がある等の発言があり、日米間で緊密に連携していくことで一致をいたしました。
 非核化の話が進み、米朝関係が進む、そことバランスよく日朝関係を進めていくことが必要であると。日朝関係について、私たちの立場から見れば最大課題は拉致問題である、この問題についてアメリカとこれからも緊密に協力をしていきたいと、こういうふうに考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 テロ支援国家指定解除に関して、解除を行わないように求める活動が我が国で様々な形で行われております。一昨日の決議も行った衆議院の委員会もそうでございますし、本日行われている当委員会もその一環で、我が国の姿勢を示す場となっております。
 やはり現時点でアメリカによる北朝鮮のテロ支援国家の指定が解除される、北朝鮮への措置が緩和されるというのは時期尚早ではないか、非核化の問題とともに拉致問題の進展が重要である、そのように思うわけであります。
 そこで、お聞きいたしますけれども、立法府を始めとした、解除を行わないように求める活動についてどのような認識でいらっしゃるのか、官房長官にお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(町村信孝君) こうした国会でのいろいろな決議あるいは御質疑、こうしたものが的確に米政府にも伝わり、やはりそうしたことというのは私は大変重要だろうと思います。
 例えがいいかどうか分かりませんけれども、アメリカの議会でどういう決議がされたか、やっぱり私どもも相当それについては注意を払ったり、気になったりすることも率直に言えばあります。同じようなことが、日本の議会でのいろいろな活動というものは、例えば先般も拉致議連の方々が米国を訪問されて議会関係者であるとかあるいは政府の関係者と会われた。やっぱりそういう、もちろん政府はやるわけですが、同時に、そうした立法府の皆さん方の活動あるいは民間の方々の活動、家族の方が行かれ、ブッシュ大統領も大変深い感銘を受けたと。いろいろな活動というものが相まって日本側の総意というものが正確にパートナーであるアメリカに認識をしてもらう、そしてそのことがまた北朝鮮側にもきっちりと伝わるということ、私はそうした様々な活動の総和というものがこの拉致問題の解決にとっては必要なそれぞれの活動なんだと、かように認識をいたしております。
○山本博司君 ありがとうございます。政府におかれましては、この立法府の決議、十分に対応していただきたいと思います。
 次に、福田総理におかれては、訪米の後、すぐにシンガポールに向かい、東アジア首脳会談に臨まれました。外務大臣におかれましては、東アジア首脳会議関連行事等にも出席をされ、日中韓外相三者委員会や日韓外相会談などの場で北朝鮮問題についても協議されたと聞いております。北朝鮮問題、特に拉致問題を解決していく上で、我が国と中国、韓国が連携を強化していく、また北東アジア地域の各国が協力をしていくというのは非常に重要なことであると思います。
 まず、中国とは拉致問題の解決に向けてどのような会談をされたのか、外務大臣に最近の海外における取組、成果をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 先般のASEAN関連首脳会議の機会に行われた日中韓首脳会議では、福田総理から、六者会合における非核化プロセスの進展を評価し、北朝鮮の核放棄を実現することの重要性を指摘するとともに、我が国として拉致問題の解決と不幸な過去の清算の双方を実現すべく努力する考えである旨述べました。それに対して、中韓両国からは拉致問題の解決に対する理解と協力が表明されたわけであります。
 また、私自身、先般の日中外相会談で、拉致問題と不幸な過去の清算の双方を解決し、日朝関係の進展を図ることの重要性を述べ、中国側の理解と協力を求めたわけであります。これに対して中国の楊外交部長からは、日朝双方がともに関心を持つ問題の解決を含め、双方が対話を通じ関係改善をすることへの強い支持が表明されました。
 韓国のあれも申し上げますか。
○山本博司君 それでは韓国の話も引き続いて、済みません。
○国務大臣(高村正彦君) 日韓外相会談において、日中外相会談と同様のことを私から申し上げました。韓国の宋外交通商部長官からは、拉致問題の日本国民にとっての重要性は理解している、韓国を含む六者会合関係国は拉致問題が円満に解決できるよう北朝鮮に対して働き掛けを行っている、また北朝鮮に対しては、六者会合を各分野で同時に進展する必要がある旨繰り返し指摘しているという発言がありました。
 我が国としては、六者会合の共同声明を全体としてバランスよく実施することが重要であると考えており、朝鮮半島の非核化と拉致問題を含む日朝関係の双方をともに前進させるように、中国、韓国を含む関係国と緊密に連携協力しながら最大限努力を行っていく所存でございます。
○山本博司君 この中国、韓国との連携というのは今後の六か国協議を始めとする様々な場面で重要となると思いますので、今後も引き続き連携を強化していただきたいと思います。
 また、先月から韓国では大統領選がスタートをして、今月十九日の投開票までには候補者の激しい論戦が展開をされております。中でも有力候補の最大野党ハンナラ党の李明博氏は他の候補より一歩リードしており、十年ぶりに韓国の保守政権が誕生する可能性が強くなってきております。もし李明博氏が大統領になれば、これまでの韓国の北朝鮮政策は見直されることになるのではないかということが言われております。
 これまで韓国はいわゆる太陽政策と呼ばれる、どちらかといえば北朝鮮に融和的な対応をしており、日米と共同歩調を取りにくい場合がありました。しかし、もし韓国がこれまでの北朝鮮政策を見直して日中韓の連携が深まるのであれば、より効果的で強い意思を北朝鮮に伝えることができると思います。他国の大統領選の結果次第で、仮定の話で恐縮ではございますけれども、新たな日韓関係の構築に向けてそういう今後の流れを踏まえた積極的な連携をお願いをしたいと思います。
 最後に、拉致被害者の現況についてお聞きを申し上げたいと思います。
 拉致被害者五人の方が帰国をされてから、もう既に五年が経過をいたしました。この間、帰国をした拉致被害者の御家族が帰国するなどの動きがありましたけれども、それ以降、結果としては全く進展が見られておりません。これは、もちろん北朝鮮の強硬な態度を理由とするものですが、政府におかれましても引き続き粘り強い交渉を続けていただきたいと思います。
 拉致被害者の御家族は長年の間言葉には表せない御苦労をされてきております。先日、横田めぐみさんのお父さんの滋さんが家族会の代表を辞任をされました。御家族は大変お疲れのことと思われます。今後とも、政府は拉致被害者を取り戻すことに全力を挙げるとともに、御家族のケアにも対応していただきたいと思います。
 そこで、現在、政府が行っている拉致被害者家族への支援状況を確認をしたいと思います。また、可能な範囲で結構ですので、帰国された御家族の現況が分かればお聞きを申し上げたいと思います。
○政府参考人(河内隆君) 帰国された方々に対します政府の支援状況についての御質問にお答えをいたします。
 北朝鮮当局によって拉致された方々の自立を促進し、拉致によって失われた生活基盤の再建に資するよう、平成十五年一月一日に施行された支援法、正確には北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律でございますが、この支援法と、これに先だって取りまとめられた政府の総合的支援策という二つの支援枠組みの下で、関係省庁、地方自治体とも密接に連携協力しながら、拉致被害者の方々及び御家族に対する具体的支援の実施に鋭意取り組んでいるところでございます。
 具体的には、当面の生活支援のため、帰国被害者らに対して拉致被害者等給付金を毎月支給しているほか、帰国被害者等自立・社会適応促進事業を実施しているところでございます。この帰国被害者等自立・社会適応促進事業は、帰国被害者等の居住する地方公共団体に委託して実施しているものでございますが、その内容といたしましては、帰国被害者御本人はもとより、日本での生活経験のない子供らの早期の自立、社会適応を図るために、生活習慣指導や日本語研修、パソコン研修を実施したり、あるいはまた、積極的に社会参加いただくために、地域のお祭りへの参加やボランティア活動等地域の交流事業、さらには、企業実習や寺社等の伝統文化体験、様々な施設見学といった社会体験研修も組み込んでいるところでございます。
 今後とも、地元自治体とも密接な連携を図りつつ、また、帰国された被害者及び御家族の御要望、御意見も伺いながら、支援法の目的が一日も早く達成するよう適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
○山本博司君 最後でございますけれども、当初世論も大きな関心を持ってこの拉致問題を考えてきましたけれども、五年も経過すると次第に事の重大さを忘れてしまうようなことにもなりかねません。拉致という未曾有の国家的犯罪行為であり、重大な人権侵害である点は決して忘れ去ってはいけないと思います。こうした状況の下では、政府はきちんとした広報を行い、拉致問題について国民に情報を伝え、その重大さを認識してもらうことが大変重要でございます。
 来週は北朝鮮人権法に基づく北朝鮮人権侵害問題啓発週間となっており、様々な行事、ディスカッション等が行われると聞いております。既に準備を進めているところであると思いますけれども、政府はどのような事業を実施しようとしているのでしょうか。また、拉致問題全体に対する広報活動についてお知らせいただきたいと思います。官房長官にお願いいたします。
○国務大臣(町村信孝君) 委員御指摘のように、国民世論のバックアップとまた深い理解というものがこの拉致問題の解決にとっては不可欠の前提であろうかと、こう思っております。
 そういう意味から、世論の啓発というものを一層強化していかなければいけないと、こう考えておりまして、そのためにいろいろな小冊子を作ったりDVDを作ったり、テレビのスポットを全国放映いたしましたり、あるいは羽田とか成田の空港の搭乗ロビーでのテレビスポットの放映、横浜にあります北朝鮮工作船展示館での拉致問題のパネル展示など、いろいろな機会に国民各層への拉致問題の啓発に努めてきたところでございます。
 特に委員御指摘の、来週は北朝鮮人権侵害問題啓発週間でございまして、拉致問題をテーマとする国際シンポジウムの実施及びそのテレビ放映でありますとか、あるいは映像や音楽の力もかりまして、幅広い国民各界各層の方々に拉致問題を身近な問題として考えていただくための拉致問題を考えるみんなの集いというようなものも開催を計画をしているところでございます。
 引き続き、今後ともこうした啓発活動を通じ、幅広い国民の理解と、国民と政府一体になった取組を進めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 以上で質問を終わります。
 ありがとうございました。