参議院 厚生労働委員会 第1号
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
今日は一般質問ということで、長妻大臣中心に質問をさせていただきたいと思います。
最初に、原爆被爆者対策ということで、今日は被爆六十五周年、厚生労働大臣になられて初めて今日行かれたということでございますけれども、私もこの広島に毎年のように行かさせていただいておりまして、先日も、原爆の養護ホームに毎年慰問をさせていただいている次第でございまして、この原爆症の認定問題に関しましては、当委員会でも何度も質問をさせていただきました。被爆者の方々の平均年齢はもう七十六歳を超えられております。もう残された時間はないというのが実態でございます。
〔委員長退席、理事津田弥太郎君着席〕
この認定問題に関しましては、昨年の八月に確認を実現をする、この一年間、行政的な措置とられていないというのが多くの方々の声でございます。その一つは、この原爆症の認定の申請の待機待ちの方々、今約六千六百件ぐらいあると言われております。毎月三百件程度申請が増えているということで、数年待ちという方、今年、私、一月にお会いした方ももう来年度というふうにお聞きをしているわけでございますけれども、そうした状況の中で、大量の却下処分、これも一月から六月までに三千百十八件、約前年の十七倍の方々が却下をされておられます。これも、この中には認定をされてもしかるべき、そういう申請も多く含まれていると言われておりまして、この今の集団訴訟でも、新基準で認定外とされながら原爆症と認められた方々は原告五十九人に上っております。
認定の基準では、七疾病のがんや白血病であれば積極的に認定をすると、こうなっているわけですけれども、心筋梗塞などの四疾病は放射線起因性が認められるなどの限定条件が付いているためにこの大量の却下、保留ということになるケースがほとんどでございます。今新たな裁判が起きているのも、こういう状況にあるということで、新たな基準の改定が必要であると思うわけでございます。
大臣も、この一月十四日の定期協議でも法改正が必要である認識を示されましたし、今日も、総理も、また大臣もこの法改正の検討を前向きに進めるという記者会見もされたということでございますけれども、被団協の方々等とも会見をなされて、この法改正、いつごろまでに具体的に進めていくのか、この被爆者救済も含めて、今日行かれた大臣の感想も含めて御見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今年も暑い朝でございまして、八時十五分にみんなで黙祷をささげて、今こちらに参ったわけであります。
私も、史上初という国連事務総長の出席、そしてアメリカ大使、フランス、そしてイギリスということで、核を持っているその三つの国も初参加ということで、六十五年目ということで、非常に核廃絶に向けて世の中、世界の動きというのは一歩進んできているのではないかということを肌身で感じて、これからそれを確実な流れにしなきゃいけないということを感じた次第であります。
そして、その後、被爆者の方の代表の方と私と総理とお話をお一人お一人からお聞きして、そして我々もそれに対する回答を申し上げたということでありますが、その中で、今おっしゃっていただいたこの原爆症認定制度について御要望もありました。
今年一月に第一回目の被爆者との定期協議ということを厚生労働省に被爆者の代表の方お集まりいただいて、私もじっくりお話をお伺いしました。そのときにもその制度について私も話を申し上げましたけれども、今日回答申し上げましたのは、今年の十月までに、法律改正による原爆症認定制度の見直しについて、どういう形が適切なのかということを、十月までにまず委員会、有識者の会議を設置をして、その会議体で今後一定の時間を掛けて議論をして成案を得ていきたいと、こういうふうに考えております。
○山本博司君 これはもう大変大事な前政権からの問題でもございますし、これは是非とも、もう時間がないという現状もございますけれども、進めていただきたいと、このことをお願いをする次第でございます。
そして、もう一つ、毎年広島県・市から要望を出されている課題について質問をしたいと思います。
これは、広島原爆の黒い雨に遭いながらまだ重い健康被害に苦しみ続けている被災者が被爆者援護を受けられないでいる、こういう問題でございます。これは昨日のNHKでも特集が組まれていましたけれども、この黒い雨降雨地域全域を健康診断特例区域指定をしてほしい、このように毎年のように広島県・市が陳情をされている内容でございます。
三月の予算委員会で大臣は、こうした広島県、広島市の新たな大規模調査の結果が出て、中身を分析をして、厚生労働省としても見解を出したいと、このようにそのときに答弁をされております。五月にその大規模の研究報告、調査結果が出されまして、その中でも、三万人の聞き取り調査の中から千五百人の回答、前回の基礎となったデータは百七十人ですから、大きなこの超える調査、この中でも黒い雨の降雨の広がりの地域、これも明らかになっておりますし、科学的な気象のシミュレーションであるとか土壌調査とか、またキノコ雲の実態が約二倍ではないかという様々な科学的な検証なども含めてそうしたことが出されております。
大臣、今後のこうした黒い雨の降雨地域の拡大も含めてどういう御見解を示されているのか、お示しをいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今おっしゃっていただいたような黒い雨に関する指定地域について、広島市を中心にかなり長期間、しかも大規模な調査をされたということで、その結果が出たというふうに聞いているところでありまして、厚生労働省としてもその結果をきちっとやっぱり検証していこうというふうに考えておりまして、これも、先ほど申し上げた会議とはこれは別でありますが、年内、秋ぐらいまでに新たな会議体を設置をして、その調査の結果についての検証をしていって、必要な措置があればその必要な措置を考えていくということで、まずはその大規模調査の検証を国としてもして、その調査に対する国の見解も明らかにしていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 この黒い雨の被害に遭われた方々を含めて、やはりもう年齢的にも七十六歳以上を超えていらっしゃるわけでございますので、こうした会議体も含めてスピードを持って対応していただきたいと、このことを今日、八・六の被爆六十五周年ということで質問をさせていただいた次第でございます。
続きまして、社会保障予算ということでちょっと質問をさせていただきたいと思います。
今回の予算委員会等でも、菅総理、就任以来のスローガンということで、強い経済、強い財政、強い社会保障、このようなことをスローガンに挙げていらっしゃるわけでございます。成長戦略の観点からも強い社会保障を目指すと、このようにしているわけですけれども、余り意味がよく私も分かりません。
この強い社会保障という総理が言われたこの意味、大臣はどのように認識をされておられるんでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) これまでの社会保障に対する考え方を菅内閣、菅総理は変えるという宣言をしていると私はとらえているわけでありますけれども、つまり、これまでは社会保障というのは経済成長のお荷物になっている、経済成長の足を引っ張るものだという考え方も一部ありましたけれども、そういう考え方は取らないと。これからは社会保障を、基本的なものを整備することで経済成長のむしろ基盤をつくっていくんだと、そういう社会保障をやっていこうということであります。
私自身は、保護型社会保障から参加型社会保障、ポジティブウエルフェアということを言っているんですけれども、つまり、生活保護でも、これまでは生活保護の皆様方に支給を、給付をしてそれで生活をしていただくということが中心でありましたけれども、就労支援員という方で本当にマンツーマンで生活保護の方の悩み、相談に乗って、何とか働ける方は働いていただくように結び付けていく、そういう方々を今度倍増をいたしまして就職に結び付いている方も非常に多いということでありまして、就職あるいは地域社会に参加を促して機会の平等を後押ししていくという社会保障の考え方が経済成長にも資する。
あるいは、社会保障はコストと考えられがちでありましたけれども、今や乗数効果でいうと公共事業の乗数効果がどんどん下がってきておりまして、今、総波及効果としては公共事業を社会保障がもう抜いておりますし、雇用波及係数、例えば百万円出せば何人の方、百億円出せば何人の方を雇う産業かということについても、最も雇用波及係数が高いのは今介護でありまして、公共事業よりも医療も上回っておりますし、社会保障を整備することで、今、日本は将来の不安を抱えておられる方が多くて過剰貯蓄というのもございます。その過剰貯蓄についても、安心というのを一定程度確保すると貯蓄が出てきて消費にも結び付いていくということで、それも経済を活性化すると、こういうような循環をつくっていく。
ただ、その背景には強い財政というのもこれは非常に重要で、持続可能性という観点から重要である、社会保障は強い経済をつくっていく一つの基盤づくりでもあると、こういうような考え方で我々は政策を今後進めていくということであります。
○山本博司君 大臣、ありがとうございます。
そうした中、社会保障の来年度予算の概算要求、これが閣議決定をされました。そういう中で、この強い社会保障、これをどのように反映されているのか、これまだ具体的によく分かりません。確かにこの社会保障費、毎年、今回も自然増一兆三千億円、これを確保しないといけないということがございますけれども、それではそれ以外の社会保障はどのように行っていかれるのか。また、各省一律に一割カットと、こういうふうに言われておりますけれども、これも役所任せでありまして、本来の政治主導、この予算編成ができるかどうかということは甚だ疑問であるわけでございます。
この社会保障予算、これから厚生労働省においても何を削減するのか様々な形で議論があると思いますけれども、この社会保障予算の拡充に向けた大臣の決意、このことの見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 概算要求のガイドラインというのが閣議決定をされまして、八月末が概算要求、今月末でありますが、締切りということで、今鋭意検討をして概算要求をどういうふうに立案していくのかということで議論をしております。
大変その一方で財政が厳しいということで、一割削減ということもございますが、特別枠というのもありますし、マニフェストの一定の枠というのもありますので、非常に財政の厳しい中、国民の皆さんに期待にこたえられるような予算を作っていこうということで今考えているところであります。
その中で、やはり菅総理も申し上げておりますけれども、雇用に結び付くということ、その社会保障は重要であるということで、医療福祉分野で、これは二〇〇二年から今年の六月まで見ますと百六十七万人医療福祉分野で雇用が増えているということで、百万人以上の雇用の落ち込みが建設業でありましたが、その数だけでいうとそれを上回るということになっておりますので、この分野、雇用政策、そして介護、医療について必要最小限のものというのは要求をしなければならないというふうにも考えておりますし、あるいは貧困対策ということで、家がなければ、自分の住むところが心配であれば職を探すどころではないという方も大変多くいらっしゃいますので、住宅手当等の住居対策もこれも継続をしなければならないというふうにも考えておりますし、子ども手当の上乗せ分についての検討というのも始めると同時に、現金給付のみならず、保育所においても今年から五万人ずつ定員を増やしていくというような五か年計画がスタートしました。今年度の予算は確保いたしましたけれども、来年度においてもそれを着実に進めるための予算を付けなければならないというようなことで、社会保障の一定の整備で雇用も拡大をして経済にも資していくと、こういう観点から取り組んでいきたいと思います。
そして、もう一つ忘れてはならないのは無駄を削減するということで、今年の四月一日に省内事業仕分け室という組織をつくりまして、強力に今省内をその組織が指導をして、一年中、省内で外部から厳しい指摘をいただく有識者を呼んで無駄を削っていく作業をするということで今取り組んでおりますし、無駄をなくす方が人事評価が高くなるという人事評価基準の改定も昨年十月から始めておりますので、それも併せて削減努力をした上で、国民の皆さんに期待にこたえられるような予算を作り上げていきたいと考えています。
○山本博司君 やはりこの社会保障、様々言われたところに関して予算がやっぱり必要になってくると。この概算要求の中でも、そうした中でも、この弱い立場の障害者の方々に対する予算、これも大変大事であると思うわけです。
逆に、そういった予算が一割カットという中で非常に削られていくんではないかという心配がございます。特に、障害者の方がやはり地域に根付いていくためにこの地域生活支援事業というのは大変大事な事業でございまして、相談支援とかコミュニケーション支援とか移動支援とか、こういったことは大変大事でございますけれども、これは市町村がやっている、基金が約四百四十億でございますけれども、大変これはもう非常に現状では足らない、格差あり過ぎるというような現状がございます。
こういう問題も含めて、障害者予算は自立支援給付が九千億円で、この裁量的経費が逆に削られてしまうという、一割カットになってしまいますと、なかなか自立支援給付は切ることができませんから、逆にこういったところにしわ寄せが来るのではないかと思うわけですけれども、是非ともこういったところに対しては予算は拡充をしていただきたい、このことに関していかがでしょうか。
○大臣政務官(山井和則君) 山本委員にお答えを申し上げます。
今御質問いただきましたように、今回、閣議決定をされました概算要求の組替えの基準、非常に厳しいものになっております。その中でも、山本委員、今までから本当に障害者福祉のことは熱心に国会で取り組んでくださっておりまして、敬意を表する所存でございます。
今回御指摘いただきました地域生活支援事業に関しましては、御指摘のとおり、日常生活の支援、社会参加の支援、コミュニケーションサービス、そして移動支援ということで、非常に重要なサービスでありまして、一割カットという厳しい縛りの中でありますが、このようなサービスが削られることがあってはならないという山本委員の御指摘というのは、本当に私も非常に共感を覚えております。
ただ、このことに関しましては、現在、概算要求基準に従いまして今厚生労働省内で議論をしているところでありまして、現場の声を踏まえながら検討してまいりたいと思います。
○理事(津田弥太郎君) 山本君、時間が来ております。
○山本博司君 是非とも、この予算の強化、よろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。