参議院 厚生労働委員会 第10号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 雇用保険法の法案に入る前に、雇用に関連をいたしまして、最初に障害者雇用について御質問を申し上げたいと思います。
 厳しい景気・雇用動向の中で更に大変な状況は、障害者の皆様の雇用でございます。仕事が減って最初に解雇をされる実態もあるわけでございます。先日、障害者の雇用率を大きく下回る企業名も公表をされました。障害のある方が一人一人の希望に応じた就職を実現をして、働く障害者を支えていくには社会全体の支援が必要となるわけでございます。
 そこでまず、現在の障害者雇用の実情について御報告をいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 最新の数字を集計したのが昨年の六月一日時点でございますけれども、障害者の雇用状況は、全体の障害者雇用率の平均が一・六三%と五年連続で過去最高を更新しており、着実に進展していると思います。
 しかし、法定雇用率を達成している企業の割合は半数を下回っているということで、これはもう企業の名前を公表を前提とした、かなり厳しい雇用率達成の指導をしております。それにもかかわらず改善が見られなかった企業については、先般、七社の実名を公表をいたしたところでありまして、今後とも厳しい指導とともに、その支援策と併せてこの就業率を上げていきたいと考えております。
○山本博司君 今お話ございましたように、毎年前進はされておりますけど、まだまだ半数近い企業が達成をしていないという状況でございますし、また、障害者別に見ますと、知的障害の方とか精神障害者の方々の雇用というのはまだまだ厳しいのが実態でございますので、是非とも雇用の促進のための政策をお願いを申し上げたいと思います。
 そして、私も四国とか中国地域を障害者の就労の現場の方々回る中でも、一度企業に就職してもやはり長続きしないで福祉就労とか、職に就けない方々も多いということも伺っている次第でございます。こうした就労後の定着のアフターフォローといいますか職場定着の支援というのも大変大事であるわけでございますし、また、障害者の就職活動の就業面の支援とか生活面の支援、そうしたことも大事でございます。その中核が地域の拠点でございます障害者就業・生活支援センター、いわゆる中ポツセンターであるわけでございますけれども、この役割というのは大変私は大きいと思います。
 ちょうど二年前も香川県のオリーブという生活支援センター、中ポツセンターに訪問さしていただきまして、就業の支援を二人で、また生活の支援面を一人でということでもう大変御苦労されていらっしゃいまして、特に生活面、もうお一人お一人の家庭に行きながらそういう生活の実態ということを見ながら対応されているということで、大変負担が大きいということを実感したわけでございまして、ちょうど二〇〇八年のこの委員会でも、こうした中ポツセンターの拠点数の拡大と支援員の増強ということを質問をさせていただいた次第でございます。
 その際に、平成二十三年度までにすべての障害者福祉圏域、三百六十か所と言われておりますけれども、この中ポツセンターの設置する方針で十分努力すると、このような答弁もございました。その意味で、この障害者就業・生活支援センターの拡充状況について御報告をいただきたいと思います。
○大臣政務官(山井和則君) 山本委員にお答えを申し上げます。
 障害者就業・生活支援センターは、身近な地域において就業面と生活面の両方の支援を一体的に行っておりまして、非常に重要な役割を担い、大きな実績も上げております。
 そんな中で、平成二十一年度までに設置されておりましたのが二百四十七センターですが、さらに来年度は三十五センターを設置して、合計二百八十二センターを設置、運営する予定であります。さらに、職員の方も必要でありますので、サービスの向上を図る観点から、実情に応じた就業支援担当職員の増員配置を行うとともに、非常勤の生活支援担当職員を一名ずつ、つまり全国で二百八十二名新たに配置することとしております。
○山本博司君 今回、そういう形で非常勤の生活支援の方が増強されたということは大変喜ばしいことでございますけれども、この福祉圏域三百六十か所というのはまだまだ現状厳しいわけでございまして、やっぱり地域にそうした拠点があるということは就労支援という面では大変大事でございますので、是非ともその推進をお願いを申し上げたいと思います。
 同じくそのときに、障害者雇用の質問をした際に、ジョブコーチに関しましてもお聞きをいたしました。
 障害者の職場適応を容易にするためにきめ細かな対応を行うのがこのジョブコーチでございまして、大変重要な役割でございます。この障害者就労の専門家、ジョブコーチの人数拡充ということもそのときに訴えさせていただきましたけれども、平成二十三年度までに五千名目標を到達しますという、この目標に関しまして、現状の状況を御報告いただきたいと思います。
○大臣政務官(山井和則君) 山本委員にお答えを申し上げます。
 ジョブコーチについては、民間機関が実施する養成研修により養成しているところでありますが、これらの養成研修の就労者は平成二十年度末までに二千五百七十六人となっており、これに加えて平成二十一年度に約六百人を養成する見込みとなっております。目標の五千人に向かって努力したいと思います。
○山本博司君 このジョブコーチの役割、大変大事でございますので、障害者の方々の支援という意味で就労の支援大事でございますので、お願いをしたいと思います。
 そして、私も先週の日曜日に香川県の知的障害者の授産施設の竜雲あけぼの学園というところを訪問させていただきまして、施設長の方とお話を聞いたわけでございます。
 そこでは、授産施設で約三十名の方々が花の栽培と、それからうどんの製めんから、讃岐でございますので、うどんのめん作りから始まりまして販売をするという、竜雲うどんというのをそこで販売をされたわけでございまして、工賃を上げていくということで、なかなか地元の企業に就職してもうどんのめん作りを生かした形の職場がないということで、今就労のA型でやられているわけでございます。
 実際、この竜雲うどんの工賃がなかなか低かったということで、前政権の補正予算の基盤整備事業を使いまして大きくうどん屋を改装されて、そして経営コンサルタント、これもその事業の一つの中でのコンサルタントを投入をされて、約もう一年間ぐらい、一回三時間ぐらい、SWOT分析、強み弱みとかという企業のそういう戦略と同じような形のものを入れながら、どうすればうどんが売れて皆さんに愛されるお店になっていくのかということを取り組んだそうでございます。
 そして、昨年の四月に改装されてスタートして、一年間で約売上げが二倍になって、工賃も約三倍の六万五千円ぐらい収入が入るようになったということで、私もお店に行きましたけれども、十二名いたうち十一名が知的障害の方々でございまして、非常にはつらつとしたあいさつの中で好感を持たれたわけでございますけれども、こうした工賃を増やしていくという倍増計画、前政権では五か年間の倍増計画ということを打ち出されておりました。現政権でもそれを引き継がれるのかどうか。多分引き継がれると思っておりますけれども、その五か年倍増計画の支援事業に関しまして、特に経営コンサルタント事業ということでの拡充をもっとすべきであるというふうに私は思っているわけでございますけれども、今回でもやはり大変この経営コンサルタントの方が入って意識改革ができたということをおっしゃっていらっしゃいますので、この点についての取組に関しましてお伺いしたいと思います。
○大臣政務官(山井和則君) 山本委員にお答え申し上げます。
 障害者の方々の経済的な自立に対しまして、この工賃を引き上げるということは一番重要だと思っております。このことに関しまして、平成二十年度の平均的な工賃は一万二千五百八十七円、平成十九年度は一万二千六百円でしたので、残念ながら全国平均では〇・一%の減額と、これはまあ景気情勢も影響したんだと思いますが、〇・一%の減額となってしまいました。
 しかし、その中で、工賃倍増計画支援事業により経営コンサルタント、山本委員が御指摘されておりました経営コンサルタントを受け入れて取組を改善した事業所だけを見ると、平成二十年度の平均工賃月額は一万四千四百三十八円で、平成十九年度の一万三千六百六十四円から五・七%の増額となっております。
 その一つの要因は、複数の事業所が共同して仕事の分配、品質管理等を一括して行う体制の整備など、事業所間で共同した取組を行っていたからであるというふうに認識をしております。
 平成二十二年度予算においては、新たに複数の事業所が共同して受注や品質管理を行う事業に対して補助を行うことといたしました。また、事業仕分においてこの工賃倍増計画もかかったわけですが、やはり必要性があるということで、引き続きこの事業も続けていくことにしております。
○山本博司君 やはりまだまだ、就労のB型とか、そういう経営コンサルタントを入れていくという土壌が、まだまだ認識が少ないということもございますので、こういう啓蒙も含めた形での事業の促進をお願いをしたいわけでございます。
 そして、同じくやはりこうした成功されている事例を見ますと、この障害者自立基盤整備事業の基金をうまく活用してやられているところはたくさんございます。東京でも、私、パン工房のケースを見ても、やはりそのパンの機材をこうした基金を使って活用しながらやっていらっしゃる例も多いわけでございまして、ただ、この基金が平成二十四年三月までという形の期間でございます。やはり多くの方々の声は、こうした基金を更に継続できるような形で活用していただきたいという声でございます。
 このことに関しましてどのような御見解なのか、お聞きしたいと思います。
○大臣政務官(山井和則君) 山本委員にお答え申し上げます。
 現在、障害者自立支援対策臨時特例交付金の財源を各都道府県に設けておりまして、これを活用して地域移行の推進や就労支援の強化を行っているところでありますが、備品の購入や増築、就労継続支援等の実施に対しまして一か所当たり約二千万円の補助を行っているところでありまして、平成二十一年から二十三年度の予算は七百六十二億円、平成二十二年度と二十三年度の執行可能額は五百五十二億円でありまして、特にサービス提供事業者が平成二十三年度までに自立支援法に基づく新体系に移行することを支援するという意味で平成二十三年度までの期限として設置をされております。
 新体系への移行に必要な支援を着実に行いたいと思っておりますので、それ以降のことに関しましては就労状況や工賃の引上げ状況等を勘案しながら今後も検討してまいりたいと思います。
○山本博司君 是非とも継続ができるようにお願いをしたいと思います。どちらにしても障害者の雇用、就労というのは大変厳しい状況でございますので、引き続いて支援をお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、本論の法案に関しまして質問を申し上げたいと思います。
 まず、雇用情勢に関してお聞きを申し上げたいと思います。
 我が国の雇用失業情勢、リーマン・ショック以降の景気低迷によりまして大変厳しい状況に直面しておりまして、特に派遣労働の方の非正規労働者に対するセーフティーネットの強化というのは喫緊の課題であるということを認識しているわけでございます。
 そこで、まず、現下の雇用失業情勢につきましてどのようになっているのか、失業率、有効求人倍率、最新のデータにつきまして御報告をいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今朝八時半に最新の数字を公表させていただきましたけれども、有効求人倍率は〇・四七倍ということで、〇・〇一ポイントだけ上昇いたしました。これは今年の二月の数字でございます。完全失業率は四・九%ということで、これは全く同じパーセントでありました。
 我々としては、持ち直しの動きが見られるものの依然として厳しい状況にあると、こういうふうに判断をいたしております。
○山本博司君 今の状況でございまして、大変厳しい状況が続いていると思います。そうした中で派遣労働者などの雇い止めが社会的な問題となっているわけでございます。最近の非正規労働者の雇用状況、このことに関しましても御報告をいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 非正規労働者の雇用状況でございますけれども、総務省の労働力調査によると、これ、最新の数字は平成二十一年十月から十二月期でございますけれども、非正規雇用者数は一千七百六十万人であります。
○山本博司君 こうした状況の、今一千七百六十万人ということでございますけれども、万が一失業となった場合でもセーフティーネットが張られるという意味では、この雇用保険制度の重要性、大変更に増していると思うわけでございます。
 この非正規労働者に対するセーフティーネットの拡大につきましては、前政権のときの平成二十一年三月の改正時に要領改正で、短時間労働者、一年以上の雇用見込みから六か月以上と緩和をしたわけでございます。この改正からおよそ一年が経過をするわけでございまして、この適用範囲の拡大によってどのような効果があったのか、この実績に関してお示しをいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) この推計、実績推定、実績把握というのは大変難しいわけでございまして、現実の雇用保険被保険者数が何人増加したかというのは把握できないわけでございますけれども、推計です、拡大を行わなかった場合に平成二十一年度以降の被保険者数がどのように推移するか推計したところ、実際の被保険者数の方が推計値よりも約七十から百十万人多くなっておりましたので、これは二十一年改正の六か月以上の雇用見込みに緩和をした効果として七十から百十万人の方が新たに雇用保険に入れるようになったというふうに推計をしております。
○山本博司君 そういう効果があったということでございますけれども、今回の改正に関しましては非正規労働者に対する適用範囲の拡大が行われております。雇用保険の適用基準である現行の週所定労働時間が二十時間以上であって六か月以上雇用見込みを三十一日以上雇用見込みに緩和することになっているわけでございます。
 これで新たに二百五十五万人の方々が雇用保険の対象になる見込みでございますけれども、このように、三か月という形の期間じゃなくて三十一日以上に日数を緩和をした理由に関しましてお聞きしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 一つの考え方は、継ぎ目なく雇用保険に入っていただく必要があるんではないかということでございまして、三十日以下については、これは御存じのように日雇の保険というのがまた別にございますので、そういう意味では、三十一日から六か月というところがある意味では懸案事項というか空白にこれまでなるということになりますので、それを埋めるという考え方で今回法案をお願いをしているところであります。
○山本博司君 この適用基準につきましては、これまでは業務取扱要領と、こういう規定をしていたわけでございますけれども、今回の改正では雇用保険法に規定をすることとなっております。
 こうした法律事項にする意義は一体何なのか、この法律事項にすることでどのような効果があると考えているのか、お伺いをしたいと思います。
○副大臣(細川律夫君) 雇用保険の適用を受けるかどうか、これは働いている人たちにとっては大変重要なもの、言わば国民の権利義務のような、そういう重要なものでございます。
 かつてこの委員会でも、こういうものは法律にきちっと定めた方がいいんではないかと、こういうような意見などもいただいておりました。そういうことから、今回、三十一日以上の雇用見込み、あるいは週所定労働時間二十時間以上というようなものを法律で定めるということにしたわけでございます。
○山本博司君 今回の改正では、短時間労働者への適用拡大を図るために、これまでと比較をしまして財政の悪化が懸念をされているわけでございます。この改正によりまして雇用保険財政に対してどのような影響があると考えているのか。平成二十一年度第二次補正予算では、雇用保険制度の安定的運営の確保といたしまして、求職者給付及び雇用継続給付の国庫負担として三千五百億円の一般財源を投入したところでございます。今後の見通しにつきましてどのように考えているのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 先ほどおっしゃっていただきましたように、今御審議いただいている法律が成立すれば、推計数字でございますが、新たに二百五十五万人が雇用保険の被保険者になることができると。財政影響としては、二十二年度で、収入は増えますので三百六十億円の増加、その一方で支出面の予想といたしましては九百三十六億円ということで、倍以上支出の方が多いということになります。
 そういう意味と、この本体部分、雇用保険の勘定のところでございますけれども、これについても危機管理の側面も含め万全な積立金の規模を確保をするということで今回のような規模にさせていただいておりますので、よほどのことがない限りこの積立金で御安心をいただけるんではないかというふうに考えております。
○山本博司君 それでは、別の面でございますけれども、民主党、社民党の昨年の衆議院選のときのマニフェストの中には、それぞれ、雇用保険のすべての労働者への適用、また非正規労働者への適用拡大、こういった文言がうたわれておりましたけれども、その後の民主党、社民党、国民新党の連立三党合意の中におきまして、雇用保険のすべての労働者への適用が盛り込まれたわけでございます。
 しかし、今回の改正案を見ますと、二十時間未満また三十一日未満は雇用保険の対象にならないと取れますけれども、こうしたすべての労働者との整合性は一体どのようになっているのか、また、対象とならない労働者への対応はこの雇用保険上どのようになるのか、御見解をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) この趣旨につきましては、労働者の方々でももう生計を維持するというようなすべての労働者への適用というようなことで考えているところでございまして、その意味で、週に二十時間、週休二日であるとすると一日四時間以上ということになろうと思いますけれども、そういう一つの目安、これは今までの考え方を踏襲しているものでございますけれども、これも法律に盛り込まさせていただいているということであります。
 そして、それ以外の施策でございますけれども、雇用保険で支えるだけではなくて、これからお願いをしようと思っております派遣法の改正なども含めて、トータルの政策として不安定雇用が一定程度安定するような、そういう措置をしていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 午前中、また午後でも議論がございましたマルチジョブホルダーに関しましてお聞きしたいと思います。
 生計を維持するためでも、昨今の厳しい雇用状況によりまして短時間労働を強いられている場合も考えられるわけでございます。さらに、働き方も多様化をしておりますから、一事業所当たりの週の所定労働時間が二十時間未満であっても、二事業所以上で働いているいわゆるマルチジョブホルダーと呼ばれる働き方が増えているのが現実でございます。
 こうした働き方への適用漏れを防ぐために、二事業所以上の労働時間を通算して認定をするなど、今後、より一層の適用範囲の拡大が求められていると考えますけれども、こうした考え方に関しましてどのように検討するお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 本当に今インターネットなどを見ますと、もう一つの仕事をどうでしょうということで、夕方からあるいは夜間の仕事が数多く紹介をされているところでございまして、やはり二つ目の仕事を持たないと生活が成り立たないという方が多くおられるということで、これへの対応というのも大きな課題だと考えております。
 これについて、今おっしゃられたような二つの事業所、今現在は主たる事業所に着目してそこについての雇用保険の関係で制度が成り立つというような扱いにさせていただいておりますけれども、様々な今おっしゃられたような問題もございますので、我々としては労使の代表がおります会議体の中で検討課題として議論をしていきたいと考えております。
○山本博司君 是非とも検討をお願いを申し上げたいと思います。
 また、今回の改正では、三十一日以上の雇用見込みということで雇用保険に入って保険料を払っても、例えば三か月で離職しなくてはならなくなった場合は、離職の日一年前に六か月以上の被保険者期間がないと支給されないということになるわけでございまして、これは午前中の論議でも、掛け捨てになる場合もあると考えるわけでございます。
 本来のセーフティーネットの役割を果たしていないのではないかということで、こうした負担と給付のバランスを考えますと、短時間労働者であっても求職者給付が受けられるようにすべきであると思いますけれども、見解をお示しをいただきたいと思います。
○副大臣(細川律夫君) 今の御質問の受給資格要件につきましては、大変難しい問題でもございます。この要件を緩和をするということになりますと、給付と負担のバランスが崩れて給付が多くなるというようなこともございますし、それから安易な離職の繰り返し、こういうことも防止もしなければいけないというようなことでもございます。
 そして、委員が御指摘になりました短期間で辞められるともらえないんではないかと、こういうようなことにつきましては、勤めた短期間のこれを通算できると、こういうようなことで、短期間で辞められる方でもこの制度でセーフティーネットは張られるということになろうかと思います。
 いずれにいたしましても、雇用保険を負担をされております労使の皆さん方の御意見もお聞きをいたさなければなりませんので、そういう意味では、労働政策審議会におきまして審議をいただきまして、従来どおりということで結論をいただいたところでございます。
○山本博司君 次に、雇用保険二事業に関しましてお聞きをしたいと思います。
 雇用調整助成金、企業が経済状況の悪化などで事業規模の縮小をしなくてはならないときに、一時休業などで従業員を解雇しない企業に対しまして休業手当や賃金の一部を国が助成する制度でありまして、雇用維持に大きな役割を果たしていると思うわけでございます。
 この雇用調整助成金の現在の活用状況、御報告をいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) この対象労働者数は、直近の数字、本年の二月でございますけれども、百六十一万人ということであります。利用事業者数は約八万事業所ということでございまして、徐々に減っているということであります。
○山本博司君 今回の改正で、雇用調整助成金の要件緩和に併せまして、雇用保険二事業の安定的な運営を確保するために失業給付に係る積立金を使用することができる暫定措置を講じているわけでございます。
 雇用保険二事業の財源といいますのは現在一〇〇%雇用主負担でございまして、失業等給付の積立金は労使折半の保険料と国庫負担が使われておりますけれども、雇用調整助成金は雇用者側に支払われるために財源構成が異なり、事業間で借入れを行うことはそれぞれの制度の趣旨に合わないのではないかという指摘もあるわけでございます。さらに、借入れを行うのではなくて、雇用保険二事業の雇用保険料率を引き上げることで対応するか、また前回の雇用保険法改正の際に行われました三千五百億円の一般財源を直接二事業に投入すべきであるという意見もございます。
 今回、失業等給付の積立金を借り入れまして雇用保険二事業の財政基盤を強化する、このことになった理由に関しまして御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) この借入れの件でありますけれども、一つの同じ特別会計の中の勘定間での貸し借りでございますが、これについてはそれぞれの政策が非常にその関連性が強いということでございまして、雇用調整助成金で失業者の方が社外に出ずに社内にとどまっている効果がある、景気が良くなればそこでまた働いていただくということでありますけれども、そういう意味では、雇用調整助成金がなければ失業者の方が会社の外に出てそして雇用保険の受給が始まるというようなことでございまして、非常に雇用調整助成金、それがあるなしによって失業給付が大きく影響が出てくるという強い密接な関係にあるということが一点。つまり、雇用調整助成金があれば給付が減るということが期待できるということで、そういう貸し借りがなされております。
 そして、今の御指摘で、雇用二事業の保険料率を例えばもっと上げたらどうかという御示唆かもしれませんけれども、それについては、やはり昨今の景気状況でこれ以上の値上げというのはなかなか難しいんではないかという判断もございました。
 あるいは、この国庫負担を雇用二事業に直入すればよかったんではないかというお話もございましたけれども、これについては、今までそういうことがやられていない理由はと考えると、この二事業というのは事業主負担だけで財源構成がなされ、そして、ある意味では事業主に資する、そういうお金の使い方がこれまでされてきたと、こういうような一定の考え方があったというふうに考えておりますので、今回はこういう借入れというような措置をとらせていただきたいということであります。
○山本博司君 さらに、今回の改正案での返済の方法についてでございますけれども、雇用保険二事業の収支に剰余がある場合には借入額に達するまで失業等給付の積立金に組み入れて返済すると、このようになってございます。しかし、現在のような経済状況が続きますと、雇用維持への対策、これを継続をしなくてはいけませんので、雇用調整助成金の活用が引き続き行われますと、結果として返済の見通しが立たない場合が起きる可能性もございます。
 こうした借入れの返済の見通しということに関しまして、大臣はどのようにお考えになっているんでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) 例えば、非常に巨額なお金が必要となります雇用調整助成金でありますけれども、二十一年度は第二次補正の後六千六百二億円掛かります。平成二十二年度予算では七千二百五十七億円でございますけれども、経済の状況が一定程度回復すれば次の年度からこの金額は下がる可能性もあるというふうに考えておりますが、これまで二十年度から二十一、二十二年度共に見込みも含めて全部赤字ということでございまして、まあ平成十九年度は二事業で一千九百七十二億円の単年度黒字を達成したということもございます。
 いずれにしましても、雇用政策を組み合わせ、そして新成長戦略についても取り組み、そして来月からはいよいよ新しい年度の予算が執行されるというようなことと相まって何とか雇用のパイを広げていきたいと、その中で黒字化を早めに目指して、その中から返済のめどを付けていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 この返済の見通しですけれども、この三年間、平成二十六年、二〇一四年までシミュレーションの試算があるというふうにも聞いているわけですけれども、最悪のパターンとそれから一番早い返済のパターンという形では、どういうふうな形になっているんでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) これについて、なかなか返済のシミュレーションというのは難しいわけでございまして、今現在、返済のシミュレーションというのはしておりません。
 先ほど質問があったシミュレーションというのは、これは本体部分の失業給付の積立金のパターンをA、B、Cに分けたシミュレーションというのは一定のものをさせていただいて公表をいたしましたけれども、この二事業については黒字化の中で返済をするということでございまして、その詳細な予測というのはなかなか立てにくいというのが現状であります。
○山本博司君 そういう面も含めた対応というのを今後御検討をお願いを申し上げたいと思います。
 続きまして、弾力条項の発動の件に関しましてお聞きを申し上げたいと思います。
 平成二十二年度の雇用保険事業の保険料率というのは、弾力変更の規定を適用しないで、これまでの千分の三・〇から千分の三・五の原則どおりと、こうしているわけでございますけれども、この雇用保険料につきましては、平成二十一年度の一年間に限りまして、労使双方の保険料負担を軽減する景気対策の一環として保険料率を千分の八まで引き下げてきたわけでございますけれども、今回、保険料率が引き上げることになるため事業主の負担というのが増えるわけでございます。保険料の納付率、これも低下をするのではないかと思うわけでございまして、景気に大きく影響するのではないかという指摘もございます。
 こうした影響に関しましてどのように考えておられるのか、見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今のお尋ねでございますけれども、これは雇用保険料の引上げによって、二十一年度と比較すると保険料というのが一定の部分が増えるということでございます。これについては、いろいろな弾力条項等もあり、本来増える部分を抑える措置というのもあるわけでございます。
 ただ、大変これ雇用情勢が厳しいということで、保険料負担も厳しい一方で、先ほど来お話し申し上げておりますように、失業給付も一定のボリュームが必要となる、そして雇用二事業の支出も大変多くなるというようなことで我々としてはお願いを申し上げているところでございますので、今後とも速やかに雇用情勢が回復するようにあらゆる政策を実行をしていきたいと考えております。
○山本博司君 この後、若年者雇用に関しまして質問を申し上げたいと思います。ちょっと遡及適用の質問は飛ばさせていただきます。
 一月の委員会質疑でも新卒者の支援ということで大臣にお聞きを申し上げましたけれども、いよいよ卒業式が終えて、この四月から新しいスタートを切ろうというときを迎えるわけでございます。しかし、今春の卒業予定の大学生のうち五人に一人が就職先を確保できない事態となっておりまして、就職氷河期ともいえる状況が続いているわけでございます。こうした状況の背景ということを考えますと、安定志向から大企業への入社を希望する学生と人材不足の中小企業との雇用のミスマッチが要因となっているという指摘も一つはございます。公明党は、この中小企業と学生のミスマッチの解消に対しまして、中小企業就活応援ナビ、この創設、また中小企業の情報提供を積極的に行うように主張しているわけでございます。
 こうした雇用のミスマッチの解消、このことが求められているわけでございますけれども、厚生労働省として現在この解消に関しましてどのように取り組んでいるのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) まずは、厚生労働省としては、例年になく、各労働局が主催となってマッチング、中小企業の方も含め、求職者、新卒の方とのマッチングというのを今月までで全国で約百七十回ほど開催をいたしました。かなり実行したわけで、私もお邪魔をしてお話を申し上げたところでございますが、そういう措置とともに、実際に今年はなかなか景気が厳しいから採用を控えようと思っている企業に体験的に雇用をしていただく、そしてその雇用については助成金を企業にお支払いをしていくというような、新しく新卒者体験雇用事業というのも始める予定にしております。これによって、そういう方々が企業の中で体験雇用するときに、ああ、こういう方であれば雇って企業の力になるんではないかと経営者に思っていただけるような、そういうある意味では体験型のマッチングということも重要ではないかというふうに考えております。
 そして、ハローワークに高卒・大卒就職ジョブサポーターという方を千人近く、これは九百二十八人倍増、前回よりも倍増で配備をするというようなことにしておりまして、その方というのは、新卒者の方だけのために学校に行って、そして職場に行って、企業に行って開拓をしていく、そしてマッチングをしていくと、こういう方々も配備をしておりますので、あるいは新卒者で就職がない方は、これは厳しい話ですが、職業訓練を受けていただいて一定の要件で生活費を月十万円お支払いすると、こういう措置も始めさせていただこうというふうに考えております。
○山本博司君 この大学生を含めた、これから、就職できなかった方の対応を含めまして、しっかりお願いを申し上げたい次第でございます。
 前回の質疑でも、学校を新しく卒業してすぐに職業訓練を受講できる体制ができたというお話がございましたけれども、雇用に結び付ける一つの形として意義があると考えるわけでございます。新卒者はこれまでほとんどハローワークを利用したことがないと思うわけでございまして、こうした周知の工夫をすべきでございます。
 この四月からもこの職業訓練始まるわけでございますけれども、新規学卒者向けの職業訓練の内容と、一定の要件で支給される訓練・生活支援給付金の対象につきまして、どのようになっているのか、御報告をいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今新卒者の方で、例えば大卒の方五人に一人がまだ就職先が見付かっていない、就職氷河期よりも数字的には厳しい数字が出ているということであります。
 そういう方が四月になっても卒業した後就職がないという場合、これは厳しい話でありますけれども、緊急人材育成支援事業という中で、新卒者の方もそこで職業訓練を受けられるということにさせていただいておりまして、その中には、今就職要請が多いIT関係の講座、あるいはいまだに人手不足である介護などの講座、こういう講座を民間の専門学校などにお願いをして、委託をして実施をしてもらう。そして卒業、その職業訓練を終えた後は、その専門学校など委託先の人的コネ、コネというかコネクションでそういう企業に就職の紹介をしてもらったり、あらゆる形で就職、就業率を上げていこうと、こういう取組をしているところであります。
○山本博司君 是非とも、今大事な時期でございますので、早い段階での対策、これをお願いをしたいわけでございます。
 続きまして、平成二十年四月からスタートいたしましたジョブ・カード制度に関しましてお聞きをしたいと思います。
 このジョブ・カード制度、職務経歴とか学習歴とか取得資格等の履歴に加えまして、職業能力に関する情報について記載されたファイルを活用することで、求職者の就職支援とともに、人材確保や育成に取り組む企業においてもメリットがございます。労働市場のインフラ整備にも大変重要な役割を担っていると考えるわけでございまして、この制度は新卒者のキャリア形成にも大いに役に立つ可能性が期待されております。更なる普及が求められているわけでございますけれども、この制度の利用状況に関しまして御報告をいただきたいと思います。
○副大臣(細川律夫君) これまでの実績についてまず申し上げますと、平成二十年四月から本年二月末までのジョブ・カード取得者数、これは二十万四千人でございます。職業訓練受講者が約七万九千人というふうになっております。
 そしてまた、就職率について申し上げますと、訓練終了後三か月後の就職率は、企業を中心に行います雇用型訓練で八八・六%、また専門学校等を中心に行う委託型訓練では七〇・四%と、こういう高い就職率、高い効果を発揮しているところでございます。
○山本博司君 是非ともこのジョブ・カード、普及が更に推進できるような形でお願いを申し上げる次第でございます。
 最後に、大臣にお聞きを申し上げたいと思います。
 中長期の視点からという観点でいいますと、こうした若者の厳しい雇用情勢の改善、そのためには、雇用の受皿、この成長戦略、これは欠かすことができないと思います。そのために、環境とか医療とか福祉とか農業とかいった、こういう成長の可能性の高い分野の育成が重要でございます。高齢化が一段と進む今後のことを考えますと、医療、介護に対する需要が増すことは間違いございませんし、実際の医療、福祉の有効求人倍率は高止まりをしておりまして、売手市場が続いております。こうした厚生労働分野におきまして、大臣のリーダーシップで積極的にこの成長戦略を提示をすべきと考えます。
 雇用の受皿拡大に関しましての最後に大臣の決意をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今厚生労働省内に医療・介護・子育て未来への投資プロジェクトチームというのをつくりまして、若手の職員も参加をして、もうかなり多く有識者の方などを呼んで、そこで政策を練っているところであります。
 今おっしゃられたように、医療、介護の分野、必ずしもお医者さん、看護師さんなどの専門性が高くなくても、例えば医療クラークのように、日本のお医者さんは何しろ患者さんのお話を聞くと同時にかなりいろいろな事務作業を御自身でされておられるというのが非常に大きな問題となっておりますので、そういう事務作業をサポートするような秘書的な役割をする医療クラークの方々を多く養成する必要もある、あるいは、介護の現場でホームヘルパーの方あるいは施設の職員の方々というのも不足をしておりますので、そこで働きながら資格の勉強をしていただいて資格を取るというような形で、まだまだ雇用の必要性はあるというふうに考えておりますので、そういう分野の雇用拡大というのは、これはもういろいろな先生の研究で、公共事業に比べても同じ金額を投入したときの雇用波及係数、人が、人数がどれだけ必要かというのはやはり介護が一番でありまして、人手産業でございますので、そういう分野についても、我々、成長戦略具体化が、六月に具体的に提言を政府全体でするというふうになっておりますので、ここできちっと介護、医療への投資というのは未来への投資でもあるんだということを示して、雇用のパイの拡大にも努めていきたいと思います。
○山本博司君 是非ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。