参議院 厚生労働委員会 第12号
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日は、地域の介護現場を回る中でお伺いをした介護保険に関する課題について何点かお聞きをしたいと思います。
まず、地域包括支援センターの運営についてお聞きをしたいと思います。
平成十八年四月より、介護保険法の改正に伴いまして、市町村は地域包括支援センターを設置し、本年四月からは本格的な運営が開始されております。原則として保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の三職種が配置され、医療、保健、福祉の総合的な相談に応じられるために大きな役割が期待をされております。しかし、業務量の多さとか人員の不足などで、介護予防のケアプランの作成に追われて予防プランセンターと呼ばれたり、高齢者虐待の早期発見などの権利擁護の業務が手薄になっているという、こういう指摘もございます。また、公平性、中立性が求められているにもかかわらず、地域によっては、在宅介護支援センターを始めとする関係の諸機関との情報連携がうまくいかず、不公平な運営が行われている場合もあると、このようにも言われております。地域の実情に応じたきめ細かい対応を行うためにも、これらの課題は早急に改善されるべきと考えます。
そこで、地域包括支援センターの運営状況とともに、こうした課題に対する取組についてお答えいただきたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) 十七年の改正で地域包括支援センターを設置するということが決まったわけでございますが、昨年の四月の末の時点で大体三千八百三十一か所ということで、ほとんどの市町村に既に設置されております。今年の四月一日からはすべての市町村に設置をされ、まさに本格的な運営がスタートするというところでございます。
今御指摘ございました地域包括支援センターにつきましては、高齢者の生活を支える総合的な機関あるいは相談機関として期待される役割を果たさなければいけないわけでございますが、在宅介護支援センターあるいは民生委員、ボランティア団体など地域における様々な社会資源を有効に活用して、幅広いネットワークを構築、連携していく必要があるというふうに認識をいたしております。
そういう機能をちゃんと果たしていただくために、市町村の担当職員との意見交換会でございますとか、ネットワークの構築あるいは社会資源の連携につきまして先進事例の取組事例を紹介するなど、数回にわたりましていろんな試みを実施いたしております。私どもとしては、都道府県、指定都市、中核市、市町村の担当者の会議などを頻繁に開催をすることによりまして、地域包括支援センターが地域の社会資源と十分に連携をし、その役割を果たせるように今後とも取り組んでまいりたいと思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。
地域包括支援センター、立ち上がったばかりでございますけれども、まだまだ改善の余地があると思いますので、身近な高齢者の相談窓口としての役割を果たせるような体制整備の促進に是非とも取り組んでいただきたいと思います。
次に、介護施設を回る中で多くの施設から要望を受けておりますのが、たんの吸引についてでございます。たんの吸引はいわゆる医療行為であり、医師や看護師が行うとされており、介護施設においての介護職員が行うことは認められておりませんけれども、介護の現場では、夜間を始めとしてニーズが高まっております。目の前で息が詰まって苦しんでいる方がいれば、何とかしてあげたいと思うのが素朴な感覚だと思います。
そこで、まずたんの吸引についての現状ではどのような人たちが認められているのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) たんの吸引につきましては、その医学的専門性を考慮すれば、医師又は看護職員が行うことが原則であると考えております。
一方、在宅における療養患者や障害者に対して介護職員等が行う場合や特別支援学校の生徒等に対して教員が行う場合について、家族の負担軽減や生徒等の教育を受ける権利の実現を図るため、療養環境の適切な管理といった一定の条件の下で、たんの吸引を行うことをやむを得ない措置として容認しているところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
在宅では規制が少しずつ緩和されてきておりますけれども、特別養護老人ホームなどの介護施設では、介護職員には認められていないのが現状でございます。しかし、緊急時以外、夜間帯に看護職員を日常的に配置することは極めて困難であります。そこで、制限付きでたんの吸引を介護職員にも求めていくことはできないのでしょうか。
例えば、介護職員への研修を義務付け、当該入居者の家族、身元保証人の同意書の取得を義務付けた上で、夜間帯の看護職員が不在のときに限って認めていただければ、現実に即した形での対応ができると思います。この点についての厚生労働省の御見解を伺いたいと思います。
〔委員長退席、理事谷博之君着席〕
○政府参考人(外口崇君) 介護の現場において介護職員と医療関係職種との間で適切な役割分担と連携を進め、良質な介護サービスを提供することが重要と認識しております。
介護職員と医療関係職種との適切な役割分担と連携の在り方については、御指摘の点も踏まえながら、安心と希望の医療確保ビジョンの会議等を通じて検討を進めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
現在の制度から見ると、なかなか難しい点が幾つかあると思いますけれども、介護の現場の声としては是非とも前向きに検討していただきたいと思います。
次に、訪問介護事業のサービス提供責任者の役割についてお聞きをしたいと思います。
サービス提供責任者の業務内容は、利用者の確保のための営業から訪問介護計画、ヘルパー予定表の作成、さらにヘルパーの研修や労務管理など多岐にわたっており、大変重要な役割を担っております。
ところが、先日の参考人質疑でも指摘がされましたように、このサービス提供責任者が急なヘルパーの休みのときに代わりをするなど、ヘルパー不足の穴埋めに追われており、本来行うべき業務が行えない現状があるということでもあります。また、賃金などの処遇面でも厳しい状況があるため、仕事に対する意欲が低下してしまうということでもありました。こうした事態を打開するには、サービス提供責任者の業務に対して介護報酬上で何らかの規定をすべきではないかと思います。
まず、サービス提供者の業務の重要性をどのように考えているのか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) お答えを申し上げます。
訪問介護サービスにつきましては、利用者の方々の状態の変化あるいはサービスに対する希望を十分に把握をして、適切なサービスを提供するということが大事であると認識いたしております。
今お話しございましたサービス提供責任者についてでございますが、当委員会でもいろいろ御議論ございましたように、私どもとしても、サービス提供責任者というのは、訪問介護サービスの提供に当たって、訪問介護計画の作成、あるいは訪問介護の利用の見込みに伴います調整、あるいは利用者の状態の変化、あるいはサービスに関する意向の定期的な把握などの業務もございますし、また、いわゆるヘルパーさんに対しましては、具体的な援助目標とか援助内容の指示、研修、技術指導、業務管理などの業務といった事業所のオペレーションの中でのサービス提供のかなめとして重要な役割を果たしているというふうに私ども認識いたしております。
○山本博司君 ありがとうございます。
私もこのサービス提供責任者の方何人ともお会いをしてお話をしました。もう仕事の途中、何本もヘルパーの方から電話があり、また利用者の方からの様々な問い合わせもありました。ほとんど事務作業はもう夜、残業、遅くなってからされているという状況でもございます。こうしたサービス提供責任者の方たちが本来の業務に集中できるように、事務作業とかヘルパーの代行業務に割く時間の短縮など、この環境整備が求められていると思います。
前回の審議におきましても、大臣から、審議会を経て介護報酬に反映させるとの御答弁がありましたが、サービス提供責任者の業務の重要性を介護報酬にどのように反映させるお考えか、改めて大臣に御見解をお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) サービス提供責任者というのは、まさに訪問介護事業所にとってもかなめの役割で大変大切だと思います。こういう方々をめぐる労働環境、待遇、こういうものについてそれなりの評価をすべきだというふうに思っておりますんで、来年四月の改定の時期には適切な対応をしてまいりたいと思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。是非とも、このサービス提供者の方たちが意欲を持って良質のサービスができるような更なるバックアップをしていただきたいと、強く要望をしたいと思います。
〔理事谷博之君退席、委員長着席〕
次に、都市部における介護人材の確保策についてお聞きをしたいと思います。
午前中も津田委員からの御指摘もございました。首都圏を始めとする都市部、大変介護分野の報酬が他の業種に比べると低くなっているために介護人材離れが進んでおります。また、物価や人件費が他の地域と比較すると非常に高いという状況にもかかわらず、介護報酬の上で地域係数が格差を反映していないために都市部では介護職員不足が顕著になっております。都内のある特別養護老人ホームでは、施設は完成し入居者も決まったけれども、職員が集まらなかったために開設を延期しているという例もありました。
こうした物価や人件費が高い都市部の状況を考慮して、来年の介護報酬の改定には報酬の地域差を見直すべきと思いますけれども、御見解をお聞きをしたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) お答えを申し上げます。
この点につきましては、午前中の質疑の中でも地域差の問題、議論がございました。現在の仕組みでございますけれども、平成十二年の介護保険制度の創設時に、いわゆる国家公務員の調整手当の率を乗じたものをベースにして勘案いたしまして地域区分の単価が設定されているということでございます。
ただ、平成十七年度に国家公務員の調整手当の見直しも行われますし、また平成二十二年度から、支給割合、支給区分が調整手当とは異なります地域手当が本格的に導入されるということでもございますので、今御指摘のように、給与水準の地域差をどういうふうに反映するかということにつきましては、現在、地域ごとの事業所の経営状況等を今調査を把握しておりますので、社会保障審議会の介護給付費分科会で十分に問題提起をし、必要な御議論をいただいて、適切な介護報酬を設定していく中で検討していきたいと思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。都市部においての介護人材確保、これができますように積極的な取組をお願いを申し上げたいと思います。
次に、介護サービス情報の公表制度についてお伺いをしたいと思います。
この制度は、利用者にとって一番適切な介護サービスの選択を支援するために平成十八年四月に創設をされました。ところが、余り利用されていない、使い勝手が悪いとの御意見をどこに行ってもお聞きをいたします。これは前回の審議でも大河原議員が指摘されまして、また渡辺委員もお話がありましたけれども、私も、地元の愛媛県のこの公表制度で情報を検索しようと思いましてセンターのサイトを開きました。ところが、工事中ということで検索ができませんでした。それで、いつからこれが止まっているかと確認をしましたら、四月の十五日から今日に至るまで全く検索ができない状況でございます。
ちょうどこの介護サービス情報の広報の宣伝等には、インターネットでいつでも手軽に情報を入手できると、至るところにこのいつでもということが書かれてありますけれども、一か月間もまるで見れないという、これは果たしてどう思われましょうか。民間では、私もITの業界におりましたけれども、考えられない状況でございます。それだけ使われてない、苦情も来ない、これは中身そのものを含めて大きな問題ではないかと、私もそれですごく感じました。
本来、こういった、先ほども大臣からお話ございましたけれども、大変大事な制度、サービスでもございます。その意味で、もっともっとこうした多くの方々に利用できるような中身の改善も含めて推進をすべきではないかとすごく実感をしております。
また、先ほどもございましたけれども、お金の件でございます。情報公表手数料とか年間約六万円前後掛かる、これに関しましても細かい情報提供をしても活用されていない、無駄ではないかと、こういう指摘もございます。さらに、制度の周知が不十分ではないか、こういった御意見もありました。
そこで、この介護サービス情報の公表制度の利便性を向上させるためにどのような対策を検討しているのか、またこの制度を広く知っていただくための周知策をどのように考えているのか、お答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) これは当委員会でもいろんな議論がございましたし、それから、先ほど渡辺委員に対して大臣もお答え申し上げましたように、この介護情報サービスの公表制度というのをどういうふうに実を上げるかということは大変重要な課題であると思っております。
これは、利用する人にとってはサービスの選択に資する情報を提供する、あるいは事業者に対してはその運営情報、サービスに関する情報が利用者に対しまして公平、公正に提供される場を設けるということで、サービスの質の向上を図るということであろうかと思っております。
御指摘のように、本制度が必ずしもまだ十分に活用されてないという点があるということにつきましては、私ども、国、都道府県を通じまして、利用者、事業者等に対して政府広報あるいはいろんな都道府県等の広報紙、説明会の開催、あるいはケアマネジャーや地域包括支援センター、市町村など関係機関への普及啓発の機会をとらえて、いろんな機会を通じて制度の普及啓発に努めているところでございますが、なかなかまだ必ずしも、今御指摘いただいたように、十分な周知がなされてない面もございます。
したがいまして、今後、先ほど大臣も御答弁いたしましたように、平成二十一年度までに、利用者の介護サービス選択に役立つものであるのか、また、この制度が本当に使いやすいシステムになっているかどうかにつきまして十分に調査、検証し、必要な見直しを行っていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 是非お願いを申し上げたいと思います。私も改善の進捗状況、随時把握させていただきたいと思っております。
最後に、新しい人材の確保についてお聞きを申し上げたいと思います。
前回の質疑でも私は潜在的介護福祉士の復帰促進についてお聞きを申し上げました。介護福祉士の資格を取得している人たちがもう一度介護の職場に戻ってこられるような支援を拡充すべきと考えます。その上で、更に介護保険制度を持続可能なものとするためには、やはり新しい人材を絶えず確保、育成することが重要であると思います。
ところが、介護福祉士を養成する四年制大学や短期大学では養成課程入学者の定員割れが相次いでいるのが現実であります。こうした事態は大変残念なことであり、新しく介護職を希望する人たちが増え、意欲を持って働ける介護事業となるように、海外での事例も参考にしながら育成機関への支援も検討していただきたいと思います。
最後に、こうした介護人材の確保に向けた舛添大臣の御決意をお聞きをして質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 私も介護の問題にずっと携わってきておりました。十年以上前でしょうか、本当にあの若者が目を輝かしてこういう分野へたくさん進出してきている。ところが、現状を見てみますと、景気が回復してほかにもっと処遇のいい、そして労働環境のいいところがあるとそちらにどうしても流れていってしまう、そういう状況があると思いますから、とにかく待遇、処遇、労働環境、キャリアアップ、こういうものを良くするというのがまず第一だと思います。
その上で、そういうこととともに、社会的にやはり大きな役割を果たしている、そういう社会から評価を受けているんだということもまたきちんと確認する必要があると思いますんで、近々、介護の日の設定に向けて動き始めますんで、何とか一年以内にその介護の日を設定して、そこでそういうことについてのPRもし、また夏の期間にでも集中的にキャンペーンをやってこの仕事の重要性ということを広く訴え、そして希望を持って若者がこの分野に入れるように全力を挙げてまいりたいと思っております。
○山本博司君 ありがとうございました。
是非ともよろしくお願いをしたいと思います。
以上で質問を終わります。