参議院 厚生労働委員会 第12号
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日は、年金問題と介護問題、そして障害者福祉予算について質問をしたいと思います。
まず初めに、基礎年金番号に統合されていない約五千万件の年金記録への対応についてお伺いをいたします。
政府は、年金記録の名寄せを進めていますけれども、今月十一日に、社会保険庁が約五千万件のうち八百五十万人分に当たる一千百万件がほぼ判明する一方で、照合が困難な記録が一千九百七十五万件あるとの調査結果を発表しました。このうち、社会保険庁職員が紙の原簿からコンピューターに氏名や生年月日を転記する際に入力ミスなどをした結果、該当者の特定が極めて難しいとされる案件は九百四十五万件に上るとのことでございます。
これは極めて遺憾なことであり、改めてこれまでの年金記録の管理がいかにずさんであったのか示すものであります。まじめに年金を納めた国民を裏切ることになり、政府、厚生労働省、社会保険庁の責任は重大です。素直に国民の皆様におわびをしなければならないと思います。
その上で、今一番重要なのは、年金記録をしっかり統合し、年金がきちんと受給されるようにすることです。そのために万全の体制を整えなければなりません。そして、国民に分かりやすく丁寧に説明しなくてはなりません。本日は、そうした趣旨から質問をしていきたいと思います。
まず、ねんきん特別便について伺います。
今月十七日から、公的年金加入者、受給者に過去の加入歴を知らせるねんきん特別便の発送が開始されました。このねんきん特別便は年内に四十八万人に発送するとのことですが、できるだけ早い対応をお願いいたします。
この特別便を受け取った人は、自身で記録を確認し、回答することになっていますが、内容を確認する領収書などの資料がなかったり、記憶もあいまいな場合もあると思います。そうした場合は年金加入記録照会票にどのように記載すればよいのでしょうか。この照会票を基にした社会保険事務所での手続について御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(石井博史君) お答え申し上げます。
ねんきん特別便でお知らせいたしました年金加入記録に訂正がある場合、訂正事項を年金加入記録照会票というものに御記入の上、回答していただくという手順になるわけでございますけれども、お話にございましたように、記憶があいまいであるといったような場合でございます、問題はですね。
かつて勤務していた、例えば会社の名称あるいはその勤務期間、そうしたものについてはっきりしないと、そういうことで正確に記入することができないというような状況、間々あろうかと思いますけれども、例えば会社の名称について申し上げれば、それは通称名でもよろしゅうございますし、それから完璧な形で、通称名であれ、思い起こしていただかなくても結構でございます。そのうちの一部であれ、思い出せるところまで思い出していただいて、何しろ書いていただくと。
それから、会社の所在地について申し上げれば、市区町村名、その辺りまで思い出していただければというふうに思いますし、それから会社に入社あるいは退社したというような時期でございますけれども、これも何月というような形であればいいわけでございますけれども、なかなかそれもはっきりしないということであれば、例えば季節、いつごろだったかというような形で、分かる範囲で何しろ御記入していただければ、私どもその情報に基づいてできるだけ、持っておりますノウハウというものを駆使いたしましてお手伝いをさせていただきながら、中身の要するに詰めを確定をさせていただこうと、こういうようなことでございまして、何しろそういう形で結構でございますので、御回答をちょうだいしたいということでございます。
今申し上げたような趣旨のことは、ねんきん特別便に同封しておりますリーフレットにも簡単でございますけれども書いてございます。それから、電話とか御来訪での相談の窓口におきましても、その旨御案内をさせていただくことにしてございますので、どうか特別便をお受けいただいた方については、そのような形であれ、何らかの形で御記載をということでお願いを申していくつもりでございます。
○山本博司君 ありがとうございました。
例えば、数十年も前のことについて記録を証明するというのは相当困難なことだと思います。その意味で、社会保険庁の窓口で照会票を受け取って記録の調査をする際、本当に丁寧な対応をお願いを申し上げたいと思います。
次に、このねんきん特別便の第一便を発送しておよそ一週間が経過をしました。具体的にこの特別便に対する反応はどのようなものがあるのでしょうか。また、ねんきん特別専用ダイヤルにはどのような問い合わせが主に来ているのでしょうか。その点、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(石井博史君) お答え申し上げます。
ねんきん特別便、十二月の十七日に約三十万件を送付したところでございます。それで、特別便を受け取った方々からの問い合わせでございますけれども、現時点で把握しているところを申し上げますと、一つは、全国の社会保険事務所の窓口での御相談の件数でございますけれども、三連休がございましたのでその直前の時点ということになりますが、十二月の十九日時点で二千四百八十七件の御相談にあずかっております。それから、同じ十七日に開設しておりますねんきん特別便専用ダイヤルの方でございますけれども、こちらは十七日から二十二日までの累計の数字でございますけれども、約三万件のお電話をちょうだいしておりまして、このうちオペレーターが実際に応答した割合は約九〇%というような数字になっているわけでございます。
○山本博司君 ありがとうございました。
今後、特別便を受け取った人の問い合わせ、これも今後殺到する可能性がございます。そのためにも、電話相談とか社会保険事務所の窓口体制、これは拡充をしなくてはならないと思います。また、社会保険労務士の方々との連携とか協力も十分お願いをして、体制の拡充をお願いを申し上げたいと思います。
また、電話相談や社会保険事務所の窓口での相談だけではなくて、企業との連携によって記録を確認することも重要でございます。ねんきん特別便が発送されることで今後も更に多くの企業に協力を依頼すべきと思いますけれども、企業との連携による相談体制の充実についてどのようにお考えになっておるか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(石井博史君) お答え申し上げます。
企業における相談体制の充実、これが中心のお話になろうかと思いますけれども、本年七月以降、私ども社会保険庁から各経済団体の方に年金記録確認につきまして多くの企業に協力をお願いしてきたところでございます。
今般のねんきん特別便の送付、これに伴いましても同様の要請をさせていただいております。中身的には、各厚生年金保険の被保険者などの方からのお問い合わせへの対応、これが経済団体を通じて各企業においてそれなりに受け止めるという形でその体制ができれば、私どもももちろんサポートするわけですけれども、非常に効果的なのではないかというふうに思っております。
そのために、その各企業におきましては適切な相談体制を構築していただけるように、一つは企業の担当者向けの事務処理マニュアルといったものを作成しお配りするということ、それからもう一つは、社会保険事務所におきまして各企業の社会保険委員といった立場の方々、その他担当の方々向けの説明会を実施させていただくというようなことを進めるということで取組をやっているところでございます。
○山本博司君 次に、領収書などの保険料を納めた証拠がない場合の年金給付を判断する総務省の年金記録確認第三者委員会が発足してから五か月が経過をします。増え続ける審査申立てに対しまして大変御苦労されているようでありますけれども、現在までの審査状況について御報告をいただきたい、また地方の第三者委員会での審査状況につきましても併せて御報告をお願い申し上げます。
○政府参考人(関有一君) 年金記録確認第三者委員会への申立てにつきましては、社会保険事務所等で受け付けた件数は約三万二千件でございます。そこから第三者委員会へ送付された件数は約一万九千件となっております。
これらのうち、現在までに七百四十六件につきまして年金記録の訂正の必要があるとのあっせんを決定いたしました。また、三百七十八件につきましては年金記録の訂正が不要であるとの決定をしたところであります。
いずれにしましても、膨大な申立て件数に対しまして審議の公正性を確保しながら、更なる審議の促進を図っていくことが大変重要であるというふうに思っております。
現在、中央委員会におきましては、先例となりますあっせん事案を積み上げたり、また地方委員会との意見交換を通じまして、中央、地方委員会通じて審議の促進に努めているところでありますけれども、この第三者委員会開始直後の本件七月のあっせん件数でございますけれども、これ二十三件でございましたけれども、八月には五十一件、九月には百二十八件、十月には二百五十五件、十一月には四百十二件と徐々に処理のペースが上がってきております。しかしながら、更に審議体制の大幅な拡充を図ることが不可欠であるというふうに考えております。
このために、審議委員会の委員につきまして、年金記録確認第三者委員会令、これは政令でございますけれども、これを十月に改正をいたしまして、地方委員会の委員の数の上限を、十人以内となっておりましたが、これを二十人以内と改めました。これによりまして、十月当初の三百八人から現在四百七十八人まで委員数を増加させたところでございます。
それから、事務局体制でございますけれども、十月に約四百人だった職員を速やかに倍増するということで調整を進めているところでございますが、現在約七百人の体制となっております。更なる増員に努めてまいりたいと思っております。
地方委員会の審議の件数、処理の件数でばらつきがございますけれども、これらの体制強化によりましてすべての地方委員会におきまして一層の審議の促進を図ってまいりたいと、このように考えておるところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
今、地方によっての大きなばらつきがあるということを聞いておりますけれども、これから、該当者の特定が極めて難しいとされる九百四十五万件が新たに判明いたしましたが、近いうちに多くこういった第三者委員会でも来るんではないかと思います。設備や人員の抜本的な対策を更に強化をしていただきたいと思います。今こそ、こういった国を挙げての問題解決に取り組み、国民の信頼を取り戻せるよう与党の一員として全力を尽くす決意です。
この年金記録問題に対する舛添大臣の決意をお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 委員御承知のように、この五千万件の記録のコンピューター上の突き合わせをやりまして、先週の月曜日、十七日からこのねんきん特別便を記録が結び付く可能性のある方々に順次お送りをしていく、そしてこれを来年三月までにお送りしたいと思います。そして、この皆様方からの電話や御相談にきちんと対応できるように、電話回線の数を増やす、それから窓口体制を整備するということを行っていきたいと思います。
また、来年四月以降は、この三月までの送付の対象とならなった方々に対して順次ねんきん特別便をお送りすると。これ、十月までにお送りします。そして加えて、住所不明の方々、それから御回答のない方々、これ、今朝方も御質問ありましたように、きちんとフォローアップをして、基本的に一億人すべての方の年金記録の確認をしたいと、そのために準備を進めているところであります。
この年金記録の御本人による確認、そして、これは特別便送付を受けてですけれども、年金記録問題の対応においてこれは中核を成すものでありますので、どうか国民の皆様方にも御協力を賜りたいというふうに思いますし、また広報活動もきちんとやっていきたいと思います。
さらに、名寄せと並行して調査を行ってきました結果、名寄せのみでは持ち主の特定に至らない、そして今後解明を進めることが必要な記録の存在も明らかになってまいっております。これらの記録については、ねんきん特別便の取組と並行しまして、具体的な内容ごとに仕分をしまして、そして、その内容に応じて調査、照会等の対策を講じつつ、そのことによって記録の統合を図ってまいります。
これらは、来年四月以降も引き続き全力を挙げて粘り強く取り組んでまいりたいと思いますし、以上のような取組を実施しまして年金記録問題の解決に全力を挙げる決意でございます。
○山本博司君 ありがとうございました。今後とも強い大臣のリーダーシップをお願いを申し上げたいと思います。
次に、介護問題についてお伺いをいたします。
今、介護の現場では、賃金を始めとした待遇の低さから、人材が定着せず離職に歯止めが掛からない状態が続いていると言われております。訪問介護の事業者やホームヘルパーの方々からもお話を伺いましたけれども、介護報酬が低い、仕事の割に賃金が低過ぎる、体力的にきつく健康面の不安があるなど、いずれも大変厳しい状況にあることを指摘されております。
そこで、厚生労働省にお伺いいたします。
ワーキングチームを立ち上げ、実態把握に努めていると聞きましたが、介護事業者や介護労働者を取り巻く状況についてどのようにお考えか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) お答えを申し上げます。
御指摘のように、介護を取り巻く状況でございますけれども、離職率が高い、あるいは人材確保が難しい等の指摘がなされているところでございます。
お話ございましたように、社会保障審議会にワーキングチームを私ども設置をいたしまして、十二月の十日に今後の検討課題ということで報告が行われたところでございます。
その報告の中でございますけれども、介護事業の経営あるいは介護労働者の処遇に影響を与えると考えられる要因としては、介護サービス事業者間の競争の問題、あるいは事業のマネジメントの問題、あるいは介護労働者市場あるいは他の労働市場の状況の問題等々様々でございまして、介護報酬のみならず、各要因について十分な分析を行って幅広い視点から施策を講じていかなければならないというふうに指摘を受けたところでございます。
現在、私どもといたしましては、賃金など介護労働者の実態あるいは介護事業者の経営実態について調査を行っておりまして、来年の三月以降結果がまとめられるということになっております。
それらの結果を詳細に把握、精査した上で、介護報酬については、今後、社会保障審議会の介護給付費分科会において御議論いただきまして、また介護報酬改定以外の問題等につきましては、可能なものから順次実施、検討したいというふうに考えております。
○山本博司君 パートなどの非正規職員の割合というのが非常に高くて単純には比較できないと思いますけれども、離職率が二割というのは他の産業と比べると高い水準にあり、やはり早急に改善をしなくてはならないと思います。社会保障審議会での積極的な検討をお願いいたします。
次に、介護事業者からは書類作成などの事務手続の煩雑さを指摘する声が大変多く上がっております。例えば、ホームヘルパーの方が一日に三人を担当すると報告書を三回書かなくてはならない。一回に約二十分ぐらい掛かるので、三回で一時間。内容はかなり同じようなことを書くので、もう少し効率的にできないかという声がたくさんございました。
書類作成の負担を軽減して他のサービスに時間を回せるようにすべきと思いますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) ワーキングチームの報告におきましても、今御指摘ございました書類作成とかあるいは事務に対する負担が軽減されるようなことを考えるべきではないかという指摘をいただいております。
この点は私ども正にそう考えておりまして、書類の作成あるいは事務手続の簡素化に努めてまいりたいと思っておりますが、業務負担を軽減し、また利用者に対する直接的な介護サービスを提供する時間が増えるだろうし、また、書類作成時間を縮減すれば、それだけ人件費の削減あるいは適切な人員配置が可能になるだろうと考えておりますので、そういう意味では事業所の経営効率化にも資するだろうというふうに思っております。
したがいまして、この点につきましては、事業者のヒアリング等も実施いたしまして、今後、事業所の経営あるいは事業従事者の実態等について十分に把握、精査した上で、事務負担の軽減について可能なものから順次検討、実施に努めていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 是非、負担の軽減に取り組んでいただきたいと思います。
時間がありませんので、最後に一つだけ、障害者自立支援法に関しましてお聞きをしたいと思います。
障害者自立支援法の抜本的な見直しを行うために、私も与党のPTのメンバーとして報告書をまとめました。それを受けて今回、平成二十年度の予算案の中に緊急措置が入り、特別対策の基金の活用も含めて満年度ベースで総額三百十億円措置されております。これによって、低所得者世帯を中心とした利用者負担の軽減や障害者福祉サービスの円滑な提供が可能となる事業者の経営基盤の強化が実施されることになりました。また、障害者の働く場に対する発注促進税制も創設することになりまして、こうした姿勢を大いに評価しております。
先日、この予算についても障害者団体の方たちからも喜びの声をお聞きしたところです。ただ、まだまだこの課題が多いのも先ほど午前中の谷議員が指摘した現状でございます。今後も実効性のある施策の充実に取り組んでいただきたいと願っております。
そこで、最後に、舛添大臣に対しまして、この障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた決意をお伺いを申し上げたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 山本委員含めまして、与党プロジェクトチームでこの十二月七日に報告書をお取りまとめいただきました。それを踏まえまして、今御指摘いただいたように、予算の中に、予算案において利用者負担の見直しや事業者の経営基盤強化、こういうことを緊急措置を講ずるということで措置をいたしているところでございます。
今後は、この緊急措置の着実な実施を図りますとともに、この委員がおまとめになった報告書の中で九つの基本的な課題ということを指摘されておりますんで、そういう方向性を踏まえながら、抜本的見直しに向けて制度全体にわたる検討を進めてまいりたいと思います。
○山本博司君 ありがとうございました。
以上で質問を終わります。