参議院 厚生労働委員会 第13号
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。本日の予防接種法案につきまして、質問を申し上げたいと思います。
法案に入る前に一つ、感染症の中でも、古来、人類にとって最も恐るべき狂犬病につきまして、まずお聞きを申し上げたいと思います。
狂犬病は、効果的な治療方法もなく、発症するとほぼ一〇〇%死亡する感染症でございます。すべての哺乳類が感染をし、人が感染をした場合には興奮や麻痺などの神経症状を起こし、また呼吸器障害を起こして、大変悲惨な死に方だとも言われております。
国内では狂犬病患者は一九五七年を最後に確認をされておりませんけれども、日本は今この狂犬病をめぐりまして大変危機的な状況にあると言われております。日本のように患者が発生していない国はまれでございまして、世界では毎年五万五千人が狂犬病で死亡しております。
そこで、狂犬病とはどういう病気なのか、そして海外での狂犬病の現状につきまして改めてお伺いを申し上げたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) まず、狂犬病とはどういう病気なのかということから入りたいと思いますが、原因は狂犬病ウイルスでございます。これ、意外と潜伏期が長くて、一か月から三か月。そして、初期症状というのはいわゆる余りはっきりしない症状、発熱とか食欲不振とかいうことを経て、その後、神経症状が出る時期がございます。非常に強い不安感であるとか、あるいは水を怖がるとか、あるいは風を怖がるとか、そういった症状が出た後に全身のけいれんとか、あるいは昏睡とか麻痺とかいう形になって、発症した場合はほとんど一〇〇%亡くなってしまうと、そういう疾患でございまして、今委員から一九五七年という話がございました。国内発生については昭和三十一年、動物では三十二年、これが最後でございますけれども、御案内のように、平成十八年にフィリピンで犬にかまれて、その後適切な治療を受けないまま帰国した方がお二人亡くなっております。
ということで、海外の状況ですが、WHOの報告によりますと、年間約五万五千人が発病している、インドでは約一万九千人、中国では約二千百人など、アジアでは多数の患者さんが確認されております。狂犬病の発生がない国は、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドということでございます。
この問題は、当然、グローバル化の中で海外へ行かれる方も非常に多いわけでございます。警戒すべき感染症の一つであることは間違いないことでございますので、その侵入防止対策、国内での蔓延防止対策というものをしっかりしていかなければいけないという認識でございます。
○山本博司君 どうもありがとうございます。
今、足立政務官からお話がありましたように、二〇〇六年にフィリピンに滞在をしている間に犬にかまれてウイルス感染をした日本人二人が帰国後に狂犬病を発症して亡くなっているわけでございます。
今日は外務省の政務官の方も来ていただいておりますけれども、本年の三月十二日に渡航者への安全対策の情報の発信をされておりますけれども、こうした海外へ渡航される方々、安全対策の情報発信の概要につきまして、どのような形で体制を取られているのか、このことを御報告いただきたいと思います。
○大臣政務官(西村智奈美君) お答えいたします。
先ほど足立政務官からも答弁ありましたとおり、狂犬病は一部の国を除いて全世界に分布している病気でございますので、外務省としては、厚生労働省とも連携して、海外に渡航する予定の邦人及び在留邦人に対して、世界における狂犬病の発生状況、ワクチン接種等予防方法や、海外で万一動物にかまれてしまった場合の対策等について情報提供を行っております。こういったことを通じて、海外に渡航、滞在する際の注意喚起を行っております。
先ほど委員が御指摘くださった三月十二日の海外安全情報ですけれども、これは海外安全ホームページ、外務省のホームページからアクセスできますけれども、そこに掲載をしておりますし、また在外公館のホームページでも注意喚起を行い、かつ在留邦人向けメールマガジン、これ今六十九公館において行っておりますけれども、こういったことを通じて、常時、情報提供と注意喚起を行っているところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
今それぞれお二人からのお話がございましたように、大変海外ではこうした狂犬病の発生というのは蔓延をしておるという状況でございます。お隣の中国でも、ペットブームを背景にしまして、毎年二千人から三千人の方々の死亡者が確認されておりまして、感染症の中では結核に次ぐ第二位の死因として大きな社会問題となっているわけでございます。
〔委員長退席、理事森ゆうこ君着席〕
なぜ日本が危機的状況なのかということでは、これは一度海外からこうした感染動物の侵入を許してしまいますと、なかなか流行を阻止できないという問題がございます。これだけ世界経済が一体化をしまして人の往来が激しい中で、いつこうした感染動物が侵入してもおかしくない環境が現状ございます。そういう認識で今日、農水省の方も来ておりますので、農水省の方にお伺いをしたいわけでございます。
この感染動物の海外からの侵入阻止対策、狂犬病対策のこの対策の一つでございますけれども、犬に加えまして猫、アライグマ、スカンク、キツネ、これは狂犬病の検疫対象動物に追加をされておりますけれども、依然としてまだ一部の動物に限られていると。例えば、ネズミとかリスとかウサギは対象外であるわけでございます。また、外国人船舶の中で飼われている犬、これも検疫を通らないで国内に入り込む、こうした危険性も絶えず指摘をされているわけでございまして、今、農水省の皆様を含め大変こうした侵入阻止対策、全力で取り組まれていると思いますけれども、この検疫に関しまして、こうした指摘に関してどう対応されるのか、検疫状況と併せてお示しをいただきたいと思います。
○大臣政務官(佐々木隆博君) 我が国の侵入阻止対策についてお答えをさせていただきます。
狂犬病が発生している国から犬、猫を輸入する場合には、動物検疫所において、一つには、個体識別のためのマイクロチップが装置されているか、二つ目には、狂犬病予防注射が適切に接種されているか、三つ目には、農林水産大臣が認定した施設で十分な免疫があることを確定されているか、以上のことの要件をすべて満たした輸出国政府機関の衛生証明書等を確認して、輸入を認めているところでございます。
また、船舶等により不法に我が国に持ち込まれた犬を発見した場合、緊急的な措置、いわゆる船から逃げ出すなどのことがあるわけでありますが、そうした場合には都道府県等による捕獲、抑留を実施をしているところでございます。
なお、今委員から御指摘がございました犬、猫のほか、狂犬病を広げる可能性のあるアライグマ、キツネ、スカンクについては、狂犬病が発生している国から輸入する場合には動物検疫所に百八十日間係留しているところでございます。また、リス、ネズミなど狂犬病予防法の検疫措置の対象外の動物については、感染症法に基づいて、厚生労働省が輸入届出を義務付けているところでございます。
以上でございます。
○山本博司君 今お話ありましたような形での体制を取られているところでございますけれども、この狂犬病対策、今侵入の阻止対策と併せまして、発生を予防する対策も大変大事でございます。一九五〇年制定の狂犬病予防法では、飼い主に対しましては犬の市町村への登録と年一回の予防接種が義務付けられているわけでございます。しかし、日本獣医師会のまとめによりますと、平成二十年における国内の犬の飼育頭数が約千三百十万頭、これはペットフード協会の推計でございますけれども、それに対しまして登録率、予防接種も大変低いと言われている実態がございます。それで、まずこうした犬の登録と予防接種の現状に関しまして、お伺いを申し上げたいと思います。
あわせまして、この発生予防対策、この四月から、四月、五月、六月、狂犬病の予防注射月間でもございます。やはり、こうした国民全体が危機感を共有をしていくこの啓発活動、大変大事でございますので、大臣にこうした見解も併せてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 危機管理の観点から大変重要な御指摘だというふうに思います。今おっしゃられたように、日本国内で犬がどれだけ飼育されているかというのは、なかなかこれ政府の統計では分からない部分もありますが、今おっしゃられた社団法人ペットフード協会の推計値では約一千三百十万頭ということになっておりまして、しかし犬を登録をするということについては約六百八十万頭、そして狂犬病の予防注射を打っていただいている頭数でいうと五百十万頭ということで、登録者を分母とすると七五%が接種率ということになりますが、登録していない犬もたくさんいるんじゃないかというようなことでございまして、やはり注射の接種率の向上というのが一つの課題になると思います。
そこで、政府としては、やはりまず広報、啓蒙活動を強化する必要があるというふうに考えておりまして、具体的な対応としては、広報の強化ということでポスターではございますが、これは登録をきちっとしていただく、あるいは予防注射を打っていただくということで地方自治体や獣医師会、ペット関係団体、三万枚を、平成二十二年度ポスターをお配りをして、同時に啓蒙活動をきちっとしていこうというようなことを考えております。
あるいは、ポスターのみならず、都道府県の予防担当者、狂犬病を担当する予防担当者に、研修会を実施をして狂犬病に関する最新の情報をそこで共有をしていくなどなど、取組をしてまいりたいと思います。
○山本博司君 この辺の認識なんですけれども、なぜ今回こうした狂犬病の問題を取り上げたかといいますと、やはり今、犬の登録数、また犬の日本の飼育数、そして予防注射数、この実態がやはり、今大臣は平成二十年六百八十万頭で五百十万頭で七五%ということを言われましたけれども、現実一千三百十万頭いるという想定であれば、登録率は五二%、そして予防接種率は三九%という形で四割を切るわけでございます。
現実的に、平成十四年には九百五十二万頭、犬が日本にいると言われておりましたから、一気に四百万頭ぐらい増えているという現状があるわけでございまして、登録数、また予防接種した犬の数はそんなに増えていないわけでございまして、やはりこうした予防接種を受けていない、また登録していないそういう犬がたくさんいるというのが実態であるわけでございます。
世界保健機構、WHOの指針によりますと、感染動物の侵入後に国内の流行を抑えるためには世界七〇%以上のワクチン接種率を維持する必要があると、こういう宣言があるわけですけれども、今、日本はそういう意味でいうと三九%。七五%という数字の認識がまず違うのではないかということはあるわけでございまして、こういう、今民間の団体しかこの数を把握していないということですけれども、政府として日本全体の犬の数を集計をするとかということは検討はされることはあるんでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) この狂犬病でございますけれども、まず、これは先ほど来、これワクチンの議論も出ておりますけれども、狂犬病については感染後のワクチン接種によって発症を防止をすることができるという最終的な予防策もあるわけでありますが、もちろんその前の対策というのも今おっしゃったように重要であります。
これについては、罰則規定、犬の登録の申請を行わなかった方や、犬に狂犬病予防注射を受けさせなかった方というのはこれ罰則規定もあるわけでありますので、その前段の数字について非常に今あいまいであるということもございますので、この数字の把握方法等についてどういうことができるのか、早速、役所に指示をして実態把握に努めてまいりたいと思います。
○山本博司君 是非とも、これ前進する形でお願いを申し上げたいと思います。
国内での犬のかみつき事故、報告されただけでも毎年六千件前後あるわけでございまして、こうした予防接種率の低さ、万一の場合には社会的なパニックにもなるということもございますので、実態調査を含めた形でこの登録の促進、また予防接種の接種率のアップ、これを取組をしていただきたいと思います。
これはやはり様々な工夫が市町村、地方自治体でされているわけでございますけれども、例えば板橋区の例で、二〇〇九年の十月に五万頭の犬がおりますけれども、犬の登録は一万七千百四十五頭、登録率は三四・三%でございます。予防接種は一万千六十頭で、接種率は二二・一%。大変厳しい実態ということで、板橋の方々、公明党の区議なんかも中心になりまして、どうすれば登録をすることができるかと、こういうことで行政の板橋区に働きかけをしながら、犬の登録促進のための犬の住民票と、こういったものを無料で発行をして、犬の名前とか生年月日とか写真とか予防接種の履歴とか、こういう形で工夫しながら犬の登録を推進していこう、予防接種率を上げようということで、年間五百件ぐらいの登録が増えるんではないかと、こういうことがスタートをしているわけでございまして、それ以外にも様々、地方自治体で工夫をされながらやっている現状がございます。
そういう意味で、是非とも、今日初めてこういうことを取り上げさせていただきましたけれども、一度狂犬病が発生をしますとパニックになっていくということもございますので、そういう体制も含めて、今日は外務省、また農水省の方も来ていただいておりますので、しっかり対応をお願いしたいと思います。
政務官の方はこの後、結構でございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
○理事(森ゆうこ君) どうぞ御退席ください。
○山本博司君 じゃ、大臣、一言、もしそのことに関して、各地方自治体でそういう工夫をされているということがあるということを、いかがでしょうか、感想も含めて。
○国務大臣(長妻昭君) こういう狂犬病というものを媒介する可能性があるという犬等について、その全容というのがなかなか罰則規定もあるにもかかわらず把握をし切れていないということは、やはりこれいろいろな角度から研究をする必要があると思います。
あるいは、自治体に、今御紹介いただきましたけれども、自治体でもいい取組をされておられる自治体については、全国的にもその情報を共有するべく、厚生労働省がほかの自治体にもそういう情報を共有する、そういうような努力もしていきたいというふうに思います。
○山本博司君 ありがとうございます。是非ともよろしくお願い申し上げます。
〔理事森ゆうこ君退席、理事小林正夫君着席〕
それでは、法案の質問に入りたいと思います。
これまで新型インフルエンザA、H1N1ワクチン接種事業といいますのは法的な位置付けが不明確との理由で新たな臨時接種の類型を創設をする今回の改正案が出されておるわけでございますけれども、この改正案でも当面の緊急措置であって恒久的な対応とはなっておりません。やはり、今日論議がございますけれども、今後の予防接種行政をどのようにしていくのか、こうした大きなビジョンを示すべきと考えるわけでございます。
そこで、具体的な改正案の内容、これまでの新型インフルエンザ対策、新たな予防接種行政の展望につきましてお聞きを申し上げたいと思います。
まず、今回の法案につきまして、厚生労働省の説明の資料では、今回の新型インフルエンザ及び今後これと同等の新たな病原性の高くない新型インフルエンザが発生した場合の予防接種対応について規定をしているわけですけれども、このこれと同等という意味について伺いたいと思います。
今回の新型インフルエンザは病原性が高くない疾病であったために鎮静化をしているわけですけれども、今後、どのような新型インフルエンザが発生するかどうかは予測が不可能でございます。そこで、この同等というのは病原性が高くないということだけで判断するのか、それとも一定程度の被害状況なども勘案した上で判断をするものなのか、この判断基準についてお答えをいただきたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 先ほど南野議員に対しまして答弁した内容でございますが、まず国内発生とそれから海外からの二つを分けて考える必要があると思います。
今回の新型インフルエンザにつきましても、メキシコに端を発してフェーズ4宣言が四月二十八日、それをもって大臣が新型インフルエンザを宣言し、対策本部をつくったわけです。ということは、海外の情報、そしてWHOでの感染力やあるいは病原性の強さというものに対してはある一定の情報があったということです。それを十分参考にする必要があるというのが一つ。
今回は、国内で発生した場合は、まさに発生状況は今定点報告をやっておりますが、その中で新型と思われるものがどの程度増えてくるか等が分かってくるわけでございます。
今回の新型インフルエンザ、H1N1は感染力は高いけれども病原性はそれほど強くない。これは重症化率あるいは死亡率がそれほど高くないということになったわけで、まさにこの程度と同じ程度のものということがまず、病原性そして感染力についてはそれが基準であろうとまずは思います。そして、そのインフルエンザによって入院する方や重症化する方が多発して医療機関などに大きな負荷が掛かることを予防するために緊急に必要があるという判断もまた今回の新たな臨時接種というものの判断の基準になるわけでございます。
まずは正確な情報を集めて、その感染の状態、そして病原の強さを国内においてはしっかり把握するということが大事だと、そのように思います。
○山本博司君 ありがとうございます。
さらに、今回の改正案では、接種の努力義務や行政による勧奨などの法律上の公的な関与の程度を季節性インフルエンザの二類定期接種より引き上げると、このようにしているわけでございますけれども、現行の臨時接種と比較しますと、対象者に接種を受ける努力義務を課さないとしている点におきましては公的な関与は弱まっているわけでございます。
そこでまず、この努力義務、そして勧奨、この意味している具体的な内容、定義に関しまして御説明をいただきたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 正確を期すためにちょっと読み上げさせていただきます。
勧奨とは、ある一定の行為を良いこととして勧め、奨励することでございます。そして、努力義務というのは、個々人に課せられる接種を受けるよう努める義務ということです。
まずは以上で。
○山本博司君 今回、ワクチン接種につきましては、一方でこの努力義務を課して公的な関与を高めるべきではないかという意見もあるわけでございます。今回の措置ではこれまでよりも公的な関与の程度が弱くなるような類型をつくることになるわけでございまして、結果として予防接種を受ける人が減少をする可能性も指摘をされております。こうした点をどのように考えておられるのか、御見解をお聞きしたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 例えば、例といたしまして、オバマ大統領が新型インフルエンザが発生したときにストロングリーリコメンディドと、そういうふうに表現されました。これはまさに勧奨、強い勧奨だと思いますが、努力義務は課しておりませんし、全人口分をアメリカはワクチンを用意したわけではないと、そのように認識しております。
そこで、例えば定期の一類、麻疹を例に取りますと、一期、これは一歳から二歳の間ですけれども、やはり九割以上は接種される。これは努力義務があるわけでございます。今の季節性のインフルエンザ、これは任意でございますけれども、一部定期二類ですから、六十五歳以上は定期二類ですけれども、これは勧奨していないわけです。これで大体の接種率が任意の方で三割。しかし、今回の新型インフルエンザは、先ほど数値を私、申し上げましたように、感染した人を除くと約一億人の中で二千万人と、二割と、これはやはり私は今回の新型インフルエンザの感染力、毒性を考えると、私は勧奨すべきというか、もう少し奨励すべきものだというふうにとらえております。
なので、今回は新たな臨時接種として、努力義務は課さないけれども勧奨するというカテゴリーが、先ほど大臣の答弁からありましたように、必要だという判断でございます。
○山本博司君 それから、この法改正の議論を行う中で、厚生科学審議会感染症分科会の予防接種部会が二月十九日に提言を発表されているわけですけれども、この提言の終わりには、立法措置については予防接種法の改正をもって、今回の改正をもって行うべきという意見が多数であったということでございますけれども、また一方、特別措置法の改正により対応をすべきという意見もあったと記されております。一部意見についてこうした言及があるわけでございますけれども、こうした経緯が提言に記されているというのは、やはりこうした予防接種の在り方とかワクチン行政の在り方に様々な議論があったんではないかと考えるわけでございます。
〔理事小林正夫君退席、委員長着席〕
こうした議論があったということを厚生労働省としてどのように認識をされており、今後の議論にどのように生かしていかれるのか、このことを確認をしたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 様々な議論がありました。そして、先ほど家西議員にお答えいたしましたけれども、その中で項目は先ほど六つほど挙げたと思いますが、これは重点的に議論すべき問題で、それぞれが非常に重い問題でございますので、短期間で拙速にやるべきではないということがまず一つでございます。
それから、特別措置法という話が今ございましたが、これは先ほど来お答えしておりますように、同程度のものが発生した場合にまた特別措置法を作るのかと。国としてパンデミックに対して対策本部をつくりいろんな対策を講じなければならないのに、それが予防接種法に位置付けられていないと対処のしようが限られるわけですね。ということからも、今回と同程度のものが発生した場合にちゃんと法律に基づいて対策が取れるようにしておくことは私は大至急でやるべき問題だと、そのようにとらえております。
○山本博司君 ありがとうございます。
次に、健康被害救済の給付水準に関しましてお伺いをしたいと思います。
今回の新たな臨時接種の健康被害救済の給付額につきましては、障害児養育年金、また障害年金の額、死亡時の給付額、いずれにつきましても一類疾病の定期接種と二類定期接種とのちょうど中間の額となっているわけでございます。公的関与の程度によって額を変えていると思いますけれども、このちょうど中間の額と決定した根拠、このことに関しましてどのようなものなのか、御説明をいただきたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 先ほど長浜副大臣が丁寧に詳しくおっしゃられましたけれども、これはやはり努力義務を課すということと勧奨するということ、それによって国のといいますか、公的関与が、程度が違ってくるということの中で健康被害への救済というものが定められていくというスキームだと、そのとおり理解しておりますが、一つだけ申し上げますと、ちょうど大体の金額として、二類あるいはPMDAのものから定期一類は一・八倍程度になっている。その中間ということで一・四倍ほどの額になっているわけですが、ただ生計維持者でない方というのは七百十万だったと思いますが、今回は二千五百万という、これは三・五倍ぐらいということで、中間といえば中間ではございますけれども、かなり大幅に、これは若い方あるいは妊婦さん等がかなりリスクの高い方々だというふうに考えておりますので、やはりその部分は、生計維持者じゃない方というのはかなり大幅に健康被害の救済額を上げているということも御認識いただきたいと思います。
○山本博司君 ありがとうございます。
続いて、新型インフルエンザ対策に関連をしまして質問を申し上げたいと思います。
これまでの新型インフルエンザ対策につきまして検証を行うために、三月三十一日に第一回目の新型インフルエンザ対策総括会議、先ほどからも何度も出ておりますけれども、行われたということでございます。この会議の概要、また今後の取りまとめのスケジュールにつきまして御説明をいただきたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 多少誤解のないように申し上げたいと思いますが、三月三十一日は第一回目でございまして、今回の対策の作成にかなり深くかかわられた方々を中心に事実関係の確認というのをまずやらせていただきました。そして、次回からは、先ほど大臣の答弁にありましたように、テーマを絞って、その分野の専門の方々を中心に議論をしていただくというふうになっております。例えば、広報、水際対策、公衆衛生対策、そして医療体制、ワクチンの接種というような重要テーマごとにそれぞれの専門の方を新たに集めて議論をしていただくというふうになっております。
そして、もう一つ大事な点は、二十一年度の厚生労働省の科学研究費補助金において、今挙げられたテーマに関する内容の研究も既にずっとやっておりまして、その報告が三月、あるいは一部は四月に出ます。この研究成果も反映させようということでございまして、先ほど来、今回の法改正と次回の抜本改正の話がありますけれども、この報告も今回の改正には間に合わない報告でございますから、それを反映させてここでしっかりテーマごとに議論をしていただいて抜本改正に向かうと、そういう道筋を考えております。
○山本博司君 是非とも、議論の推進をお願いを申し上げたいと思いますけれども、この総括会議の検証も含めまして議論が深まるわけでございますけれども、今回の経験、いつ起こるかも分からない次の発生のときにどう生かしていくかというのが大変重要になってくると考えます。
大臣にお伺いしますけれども、今後どのように生かしていくおつもりなのか、御見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) これは国の危機管理の観点からも怠りなくやる必要があるということで、大変大きい問題だと思います。
どのように生かしていくかということでございますけれども、それぞれかなり個別にこの総括会議で議論をしてまいります。その結論が、六月ごろをめどに取りまとめがあるわけでございますけれども、その取りまとめをきちっと国民の皆さんにも公表をして、そして次に新型インフルエンザが起こったときには、それぞれ、やはり定型のマニュアルがすべて通用するとは思いません。その時々の強毒性の状況、世界での蔓延状況などいろいろなパターンが様々ありますけれども、基本的な対応方針というのは六月に決めて、その後、速やかに公表していくことで一定の国民的合意を得ていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
今回の新型インフルエンザのいわゆる第一波と呼ばれる最初の流行は現時点鎮静化をしているというふうに考えられるわけですけれども、これから先、来年の冬までの間には第二波の波が起こる可能性もございます。万全の対策を講じるべきでございますけれども、そこで、海外の事例なども研究して、この第二波の可能性につきましてどのように見ておられるのか、御説明をいただきたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) まず、過去のケースからいきたいと思いますが、これは二十世紀初頭のスペイン風邪、このときには足掛け三年にわたって三波まであった。それから、アジア風邪、これは一九五七年でございますけれども、これも足掛け二年で二つの波があった。
今回の新型インフルエンザにつきましては、アメリカ、イギリスで二波がありました。その間隔が十八週、つまり四か月半ということでございますので、十一月の末に我が国はピークを迎えましたけれども、四か月半ということを考えると、まだまだ可能性はあると思いますし、何よりも、ワクチンを接種された方のどれだけ抗体が持続するのかという調査を今やっておりますが、その効果がなくなる可能性があること、そして感染したと思われる方は先ほど局長が申しましたように二千万人ちょっとであることを考えると、かかっていない、罹患していない方々にとっては更に感染が広まる可能性は十分にあると、私はそのように思っております。
○山本博司君 この第二波の可能性のことを考えますと、このワクチン接種、引き続き大変有効な対策であるわけでございます。現時点で在庫となっている分も含めまして有効に活用することが重要でございます。こうしたワクチン接種率を向上させるためには国民に対する情報提供が欠かせないと考えます。
インフルエンザに対して比較的関心が低くなる季節をこれから迎えるわけでございますけれども、具体的な広報活動に関しましてお示しをいただきたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 恐らく、検証会議、三月三十一日にスタートしたものも、それなりにやはり国民の皆さんは注目されていると思います。
〔委員長退席、理事小林正夫君着席〕
その議論の中で、当然第二波の件やワクチン接種の話もやはり議論される、このこともやはり広報を通じて、しかもオープンにしていきたいと、そのように思っておりますし、やはり広報活動というものは過剰になってはいけないと思いますけれども、新聞あるいはパンフレット等を通じてワクチン接種の意義というものを、ここにいらっしゃる委員の方々はもっとワクチン接種をというふうに共通の理解があるように思いますが、国民の皆さんにとってはまだそこまでないのではなかろうかと、それが二千万人という数に表れているのではなかろうかと、私はそのようにとらえておりますので、その意義、有効性、そして副反応、きっちり海外の情報を、日本の情報を正確にお伝えする、広報していくということが何よりも大事だろうと思います。ホームページ等ももちろん十分活用させていただきたいと、そのように思っております。
○山本博司君 是非とも、広報活動大事でございますので、お願いを申し上げたいと思います。
これまでの議論でも課題となっておりましたこの新型インフルエンザワクチンの有効性や安全性は、十分に検証されるべきものでございます。特に、この輸入ワクチンにつきましては、アジュバントの有無とか製造方法などが国内産ワクチンと違うことから安全性への関心が高まってきたわけでございます。それを反映してか、輸入ワクチンに関しましてはほとんど使われていない状態でございます。在庫分についての契約解除をするなど、様々な課題を残しているわけでございます。
こうした国民的に関心の高いワクチンの安全性の評価について、具体的にどのように行っているのか、また国民に対してどのような情報提供体制を取っているのか、この点に関しましてもお伺いを申し上げたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 安全性についてということですね。
先ほど来、答弁した部分でもございますけれども、やはりこれはまずは有効性、その意義ですね、それと同程度に安全性についてもやはり、今情報収集もちろんしておりますし、それを公開しておりますし、その会議体の中でもしっかり議論されております。そういったことを今後ともやはりオープンにしていくというのが大事なんだろうと、そのように思っております。
あとは、今、買戻しとかそういうことをおっしゃられたような……
○山本博司君 それは後でお話しします。
○大臣政務官(足立信也君) いいですか。はい、分かりました。
○山本博司君 そのことはちょっと後でお話をしたいと思います。
今後、パンデミックが発生をした場合に、今回のように海外から輸入ワクチンに依存するのではなくて、国内で必要な量のワクチンを生産できる体制の整備、これが重要でございます。前政権では、平成二十一年度第一次補正予算で新型インフルエンザワクチンの開発・生産体制の強化費用として千二百七十九億円を計上をいたしました。しかし、政権交代後、この費用は新型インフルエンザワクチンの購入費用に充当されましたので、その充当分を差し引いた分、約二百四十億円がこの新型インフルエンザワクチンの開発及び生産に必要な経費として確保されております。こうした生産体制の整備の際には、これまでの鶏卵での培養だけでなく、生産効率も高いとされる細胞培養法の確立も急務でございます。
いずれにしても、この国産ワクチン開発の体制整備、大変重要な課題でございまして、早急に対応すべきと考えます。この点に関しましては、大臣に見解をお伺いをしたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 先ほど質問の中で、ちょっと一部足りなかったかと思います。
輸入ワクチンの副反応ということがありましたので、これは今まで副反応報告を受けているのは三例でございます。
私、大事なことは、例えば卵アレルギーのある方は、国産にせよGSKにせよ、これは鶏卵培養で、鶏卵でございますので、やはりそこは使えないんであろうということで、ノバルティスの細胞培養、鶏卵を使わないというものは、私は、そのアレルギーの方々にとっては欠かせないものではなかろうかと、そのようにとらえております。
実際の数は三例でございます。
○国務大臣(長妻昭君) 今御指摘の点は、これは大変重要な点でございまして、今おっしゃっていただいた約二百四十億円と、そしてこれは第二次補正予算として措置した九百五十億円、合わせて千百九十億円が今基金にお金がございます。そのお金を使って国産のワクチンの開発等に必要な経費として使っていこうということであります。何よりも、五年以内に国内の生産体制の強化をしていくということで、その対象となる事業者を今選定をしているところであります。
これは、一つは、今申し上げましたように、鶏卵培養法というのは全国民分のワクチンを作るとなりますと一年半から二年掛かってしまうということでありますので、細胞培養法にいたしますと、これ半年間で作ることができるということとなりますので、細胞培養法の開発体制を強化をするということであります。
そして、細胞培養法のまだ生産体制が確立しない、この五年以内ということを言っておりますので、その間は国内企業の鶏卵培養法での生産能力等の強化を図っていくということも引き続き取り組んでいくと。
三番目としては、第三世代ワクチンというものの開発も推進をしたいと思います。今、いろいろな製薬メーカーから非常に興味深いアイデアがどんどん出てきております。例えば、鼻から吸い込むワクチン等々、非常にいろいろな考え方のワクチンが出ておりますので、そういうものも開発体制が推進できるものについては推進をしていくと。
こういう三つについて取り組んでまいりたいと思います。
○山本博司君 是非とも、この国産ワクチン開発の様々な取組をお願いを申し上げたいと思います。
続きまして、もう一問、ワクチンに関しまして質問したいと思います。
今回の新型インフルエンザワクチン、国産と輸入を合わせますと一億三千万人分が余っているとも言われておりまして、こうした状況を考えますと、大量にワクチンを購入した医療機関とか医薬品の卸業者なども在庫が出る見通しでございます。多くの医療機関は、国の方針に協力してワクチンを購入したのだから、在庫ワクチンを買い取るなどして国の何らかの対策を講じてほしいと、こういう要望もあるわけでございます。先ほどもこれは質問がございましたけれども、どう対応されるのか、見解をお聞きしたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 先ほどの繰り返しになると大変恐縮なんですけれども、まずは今回の対策で、特にワクチンについては、国がその流通を管理いたしました。都道府県の調整によって、本当に必要とされる量のみが医療機関に納入されるという仕組みをつくっておりました。ですから、先ほど都道府県によって非常に大きな差があると申し上げましたけれども、きちっとやられているところはほとんど在庫はないような状況に今なっているというところもあるということをまず知っていただいて、とはいえ、やはり在庫は相当数ございます。それが卸のところなのか医療機関なのか。医療機関にいったん出されたものについてはやっぱり品質管理の面から、そこをまた動かすとなると品質管理の面からはやっぱり適当ではないということに、もうほとんど廃棄に近い状況になるんだと思います。
今現在やっておることは、十ミリバイアルのところを一ミリあるいは〇・五に変えていくということとか、医療機関間の融通とかいうことはもう通知しておりまして、先々月来やられているところでございます。
あとは、先ほどの答弁でも明確にはできませんでしたが、返却あるいは国の買取りというお話がございましたけれども、そこはしっかり考えていきたいなと、そのように思っております。
○山本博司君 是非とも、前向きな検討をお願いをしたいと思います。
最後に、質問通告をしておりませんけれども、午前中の家西委員の質問とかまた衆議院等での質問もある内容でございますので、御質問をしたいと思います。
この輸入ワクチン、二社で九千九百万回分ということで、そのうち、今日の議論にもなっておりますけれども、ノバルティス社で二千五百万回分、有効期限が六か月ということで三月末に有効期限が過ぎた、これは二百三十三万回分、約三十億円破棄される見込みであると、こういうふうな形があったと思います。今後、四月末に二百三十八万回、五月末に八百三十万回、六月末に三百六十万回、有効期限が切れるということでございますけれども、これが正しいのかどうか。すべて破棄されると、どのぐらいのお金になるのか。
二百数十億になるのではないかと言われておりますけれども、こうした背景の中で、ノバルティス社の解約交渉を進められているということでございますけれども、どう臨まれるのか。また、こうしたことに関しまして、無駄になるということで先見性がないのではないかというふうな批判もあるわけですけれども、大臣はどう認識をされるのか。このことを、質問通告しておりませんので、分かる範囲でお願いできればと思います。
〔理事小林正夫君退席、委員長着席〕
○国務大臣(長妻昭君) まず、当時の状況につきましては、世界各国、ワクチンが国内分が足りなくなったらこれは大変なことになるという危機管理上の思いで、ある意味では、言葉は適当かどうか分かりませんが、争奪戦の様相を呈した時期もございました。日本国も、前政権が道筋を付けて、仮の書面を結んでそれを確保していったということでありまして、この私の大臣のときに正式な契約を締結をしたと、こういうことであります。
そのときの判断については私は適切であったというふうに考えているところでございますけれども、ただ、今この期に及んだときに、やはり余るという状況になったときに、これ国民の皆さんの税金ですので、できる限り交渉をしてそれを防いでいくということも一つの務めでございます。
これは、GSK社とは交渉をいたしまして、三二%を解約して違約金はなしで済みまして、約二百五十七億円の経費が節約できたということとなりましたが、このノバルティス社については、まだこれは精力的に政務三役そして厚生労働省を挙げて交渉をしておりますけれども、非常に難航をしているという状況でございまして、まだ交渉が継続をしているという段階でございます。
そして、今おっしゃられた納入等あるいは有効期限でありますけれども、これは既に結んでいる契約に基づいてそれが国内に入るというような段階でありまして、今おっしゃられた有効期限につきましては、三月末で有効期限が切れるのが、約ですけれども二百三十万回分、四月三十日に有効期限が切れるのが二百三十万回分、五月三十一日に有効期限が切れるのが八百三十万回分、六月三十日に有効期限が切れるのが三百六十万回分というふうになっております。
ただ、じゃ、幾ら解約できるのかということにつきましては、先ほど来申し上げておりますように今交渉中ということで、我々は、世界でこのノバルティスが契約している国もあるわけでございますので、そういう情報も今必死に情報収集しながら交渉を続けているという段階であります。
○山本博司君 以上で質問を終わります。