参議院 厚生労働委員会 第14号
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日も国民年金法の一部改正案についてお聞きを申し上げたいと思います。
平成二十一年二月二十三日に公表されました財政検証では、夫のみ就労のモデル世帯の場合、所得代替率五〇・一%が確保できるとの結果が出されたわけでございます。この結果につきましては、これまでの当委員会の質疑におきましても、経済前提の置き方とか世帯ごとの働き方の違い等、十六年改正のときに決めた現役世代の平均収入の五〇%台を確保することが難しくなったのではないか、また公約違反ではないか、こういった様々な議論がなされてまいった次第でございます。
しかし、報道でもそうでございますけれども、そもそも認識が間違っていたり、わざと一部分だけ取り上げるなど、誤解を招く表現もあるために難しい議論となっておりまして、一般の国民にも分かりやすくこの制度の内容を改めて確認をする必要があると思います。
そこで、まずこの財政検証に関する論点に関しましてお聞きを申し上げたいと思います。
国民年金法第四条の三及び厚生年金保険法第二条の四において、政府は少なくとも五年ごとに国民年金、厚生年金の財政に係る収支について、その現況及び財政均衡期間における見通しを作成しなければならない、こう定められております。
年金財政の健全性を確認をすることになっているわけでございますけれども、そこで、この財政検証とはどのように定義をされているのか、まず確認をしたいと思います。
○政府参考人(渡邉芳樹君) 財政検証の定義ということでございますが、法律的には、ただいま先生御指摘のとおりの条項に基づきまして、政府が少なくとも五年ごとに国民年金、厚生年金の財政に係る収支についてその現況及び見通しを作成すると、こういうものでございますが、その財政検証というのは、従来の財政再計算と、まあ紛らわしい言葉でございますが、一つ大きな違いがございます。それは、平成十六年制度改正が保険料の上限固定、給付の自動調整、積立金の活用、そして本法案にあります基礎年金国庫負担二分の一という四つの柱で長期にわたり持続可能な制度骨格というものを定めたわけでございまして、それまでの財政再計算というのは、五年ごとに今後保険料はどうしようか、給付水準はどうしようかということを探りながらのものであったわけでございますが、この財政検証は、今申し上げた四つの柱がどのように機能していくかという現況と見通しを見るというものがその本質になっております。
内容的には、御承知のように、少子高齢化の状況を示す将来推計人口の前提、被保険者数推計において基軸となる労働力率の前提、物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りの経済前提、その他の前提といたしまして、年金制度の被保険者や年金受給者等の初期値である基礎数と、それら被保険者や年金受給者の将来における年々の変化を推計するための前提となる脱退率、死亡率などの基礎率などなどについて、前回の見通しを作成した時点から起こった人口や経済などの様々な変化を踏まえた前提を置いた上で、法律の定めるところに基づき、おおむね百年間にわたって年金制度の財政計算を行い、財政見通しを作成することにより、ひいては年金財政の健全性というものを検証していこうというものでございます。
○山本博司君 今説明いただきましたこの財政検証、おおむね百年間にわたる長期の年金財政の状況を見通すものであり、今後の社会経済状況について一定の前提、これを置く必要があると思うわけでございます。
具体的にどのような前提を規定しているのか、説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(渡邉芳樹君) 先ほど申しましたように、前提条件は多岐にわたりますが、重立ったものについて触れさせていただきます。
一つは、将来推計人口の前提につきましては、平成十八年十二月の国立社会保障・人口問題研究所による合計特殊出生率及び死亡率について、中位、高位、低位の三とおりをそれぞれ設定しております。
それから、長期的な経済の前提につきましては、金融や経済の専門家等によって構成された経済前提専門委員会における検討結果の報告に基づいて客観的に設定するということとされたものでございます。これは、長期的には日本経済及び世界経済が現下の金融危機に起因する混乱を脱した後、再び安定的な成長軌道に復帰することを想定した上で、マクロ経済の基本的な関係式を用いて長期の平均的な経済の姿として設定をしております。
具体的にその要素については確認的な点多いと思いますが、物価上昇率については、日本銀行金融政策決定会合において議決された中長期的な物価安定の理解を踏まえて、一・〇%と設定をさせていただいております。
賃金上昇率については、被用者一人当たりの実質経済成長率が実質賃金上昇率に相当すると仮定し、実質経済成長率が〇・八%となる想定の下に、物価上昇率一%と将来の被用者数の変化率マイナス〇・七%を加味して、名目で二・五%と設定をいたしました。
運用利回りにつきましては、国内債券を中心とする安全運用が基本である公的年金においてもこの安全性を損なうことなく内外の分散投資を行ったことにより得られる結果として分散投資効果〇・四%を見込み、実質長期金利の二・七%、物価上昇率の一・〇%を加えた形で四・一%と設定しております。
また、労働力率は、働く意欲を持つすべての人の就業を実現するために昨年四月に取りまとめられた新雇用戦略やその後の雇用政策の推進等によって実現すると仮定される姿における労働力率の見通しを用いております。
なお、金融や経済の専門家等による検討結果の報告においても、政府の取り組む施策との整合性を取るということが指摘されております。
以上のようなことをどのように評価いただくかというのは様々な御意見はあるわけでございますが、私ども当局といたしましては、専門家の御意見あるいは既に出ている客観的な統計や行政目標等々を前提としておりますので、バラ色の前提を設定したという理解をしておるわけではございませんで、適切な設定の下に行われた最終的な所得代替率が基本ケースにおいて五〇・一%となるという結果が出てきたものと受け止めております。
○山本博司君 次に、この所得代替率についてお聞きを申し上げたいと思います。
平成十六年の改正では、保険料引上げの上限設定、また積立金の活用、そしてただいま審議をしております基礎年金の国庫負担を二分の一へ引き上げるとともに、負担の範囲内での給付水準を自動調整する仕組みであるマクロ経済スライドを導入することが定められておるわけでございます。そして、この給付水準につきまして、標準的な厚生年金の世帯の給付水準は少なくとも現役世代の平均収入の五〇%を上回るもの、このように定めてございます。
そこで、お聞きを申し上げますけれども、平成十六年の改正ではなぜこの所得代替率五〇%を基準にしたのか。また、この年金制度は、老後生活の基本的部分を支える給付水準を確保しようと、こうしているわけでございますけれども、現役世代の収入と年金世代の給付との関係について分かりやすく御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(渡邉芳樹君) 十六年改正当時におきましては、年金の給付水準について、年金制度を真に持続可能な仕組みとしていくためには年金を支える現役世代の保険料負担が過大にならないように配慮しながら給付水準の見直しを行っていくことが必要であるという基本的な認識を持っておりました。その場合においても、年金制度がその役割を果たすことができるよう、給付は高齢期の生活の基本的な部分を支えるものとして一定の水準を確保することが必要であるという認識をまた一方で持っておったというところでございます。
そういう認識をめぐって様々な議論が行われたわけでございますが、平成十六年改革に向けて平成十五年十一月十七日に発表させていただいた厚生労働省案におきましては、最終保険料水準は厚生年金は二〇%、給付調整は五〇%台半ばでの維持を目指すと。試算をいたしましたところは、最終的な所得代替率は五四・七%ということを打ち出させていただいたのが厚生労働省としての考え方でございました。
その後、政府部内、与党の中での様々な御議論、先ほどの大きな基本的な認識をめぐっての様々な御議論を経まして、最終的な政府案としてまとめられましたのが二〇%の最終保険料率ではなく一八・三%の最終保険料率ということでございました。この下で、満額の老齢基礎年金二人分及び男子平均賃金で四十年就業した場合の老齢厚生年金の合計額の現役世代の平均手取り収入、これは男子平均手取り賃金に対する割合である所得代替率について将来にわたり五〇%を上回ることとする目標が法律の附則においても明らかに定められたところでございます。
こうした経緯を経て五〇%ということが決まってきたということを御説明させていただきたいと思います。
○山本博司君 そして、もしこの所得代替率五〇%を下回った場合、法律ではどのような規定がされているのでしょうか。
○政府参考人(渡邉芳樹君) 五年に一度行われる財政検証はおおむね百年程度にわたる年金財政の見通しを作成するものでございますが、法律上は、次の財政検証が行われるまで、すなわち今後五年以内の間に所得代替率が五〇%を下回ることが見込まれる場合には、所要の検討を行い、マクロ経済スライド調整期間の終了その他の措置を講ずるとともに、そうした措置を講ずるに際しては、給付及び費用負担の在り方について改めて検討を行い、所要の措置を講ずると、こういうふうに規定されておるわけでございまして、見通しの中で五〇%の維持は可能であると、私ども今回も財政検証の結果としていただいたわけでございますけれども、この法律制度そのものはやはりこの五年ごとの検証を経て状況の変化を見ながら、いざというときには給付と負担をしっかり見直していくという段取りを記述していただいていると、こういうものだと思っております。
○山本博司君 現状のデータ、これは五年後の財政検証のときでも六〇・一%と見込まれております。五〇%を大きく上回っておりますから、直ちにこの給付と負担の見直しが必要という事態ではないと思うわけでございます。五〇%を下回っているとすぐ破綻になると、こういった説明をする方もおられますけれども、こうした国民を惑わすような言動、厳に慎むべきだと思います。
さらに、モデル世帯の定義について様々な意見がこの委員会でも出されました。モデル世帯は所得代替率の基準となりますので、この定義を変更するということは一つの尺度、物差しを変えるということにもなりますので、長い期間の推移を見るためにもむやみに変更するべきではないと考えるわけでございます。そこで、このモデル世帯の定義とはどのようなものなのか、また、このモデル世帯ではどのくらいいると推計されるのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(渡邉芳樹君) モデル世帯という言葉自身が大変価値観を含んでいるというふうにも言われますから、様々な御批判、御議論をいただくわけでございます。モデル世帯というのは法律上、制度上の概念としては定められているものではございません。ここで、財政検証の関連資料でお示しした夫のみ就労の場合の世帯ということでございますが、法律上は夫が厚生年金に加入している男子の平均的な賃金で四十年間就労し、妻がその全期間にわたり専業主婦であった同年齢の夫婦の世帯と記述しているわけでもなく、先ほど申しましたように平均賃金で四十年間の厚生年金と基礎年金、そしてもう一方の基礎年金という記述がなされているわけでございます。
そういう法律の規定と、実際上、説明の便宜上申し上げることとの落差なりの中で様々な御意見を賜っているわけでございますが、話を現実界の方に戻して、現在の現役世代に見た場合に、夫が被用者である世帯のうち妻が専業主婦やパートなどで国民年金三号被保険者である世帯というのが調査をしたらその時点でどの程度いるかというと、実際には六割から七割程度いらっしゃるわけでございますが、一方でこんな状態が四十年変わることなく続くのかという御指摘については、それはなかなか難しかろうけれども、年金制度としてもとより把握することは非常に困難な事実関係ではないかというふうに思っております。
要するに、御指摘のようにこのような世帯が望ましいか望ましくないかということではなくて、長い歴史の中の年金における給付水準を図るための物差しとして使ってきた一つのパターンでございますので、今回の検証においても使わせていただいておると同時に、あわせて、様々御議論がありますように他の世帯類型における平均賃金だった場合の数字も併せて発表させていただきましたが、様々なそういう世帯類型というものについて常に並行して所得代替率などでどういうことになっているかというのを情報公開していくことは大変重要なことであると考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
国民年金の第三号被保険者であればパートで働いていたとしても保険料を納めない状況もあるわけでございます。また、モデル世帯というのは夫のみ就労の場合の世帯の平均像を示したものでもないわけでございまして、働き方が多様化するということとこのモデル世帯の規定とは別の議論として進めるべきと思います。
今回の試算というのは、国民年金保険料の納付率についていえば、将来の厚生年金の給付水準に及ぼす影響を一定の経済前提の下で機械的に試算したものであり、今から約三十年間、二〇四〇年ごろまでで納付率などの数字がずっと現在の状況が続けばという話であり、年金制度の安定性に直ちに影響を与える話ではないと思います。
この点につきましても、平成十六年改正のときから既に検討されていたと思いますけれども、今回の財政検証の結果を受けて年金制度のフレームの変更の必要性があるとお考えなのか、また、財政検証に対する大臣の評価についてお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) フレームを変える必要はないと思います。
ただ、今後、マクロ経済スライドを終了させるような時期が来るか。来るとすれば、また、先ほど来申し上げているように、積立金の枯渇があるというようなことを想定、そういう事態になればそれは微調整していくということは十分可能だというふうに思っていますが、当面すぐフレームを変えるということは考えておりません。
○山本博司君 ありがとうございます。
さらに、新聞報道によりますと、共働き世帯や単身世帯はすべて所得代替率が四〇%以下で問題であるかのような誤解を招く記述をされている場合がございます。
共働きかどうかなどの世帯の類型がどうであれ、世帯一人当たりの所得が同じであれば所得代替率も同じであります。逆に言えば、共働きでも所得が低ければ五〇%以上の代替率となる場合もあるわけでございます。これは所得再分配の機能の効果が出ているためであると思いますけれども、この所得再分配機能という点につきまして説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(渡邉芳樹君) 講学的には所得再分配というのを税で行うか保険料で行うかとか様々な御議論がございますが、現実に今機能しております厚生年金制度あるいは国民年金制度というものは、その保険料方式の下で御指摘のような所得再分配効果が強く働いております。具体的には、基礎年金というものを通じてそれが発揮されるということがございます。
そして、ただいま御指摘ありましたように、公的年金における基礎年金の所得再分配効果をもってすると、同一類型の世帯であっても世帯一人当たりの所得が高いほど所得代替率は低くなる。逆に言えば、所得代替率の低いと言われた世帯は所得も年金も高いということでございます。こうした所得再分配効果が公的年金制度に働いているということをやはりしっかり私どももより説明を強め、御理解をいただくということが肝要かと思っております。
○山本博司君 次に、この所得の再分配機能についての理解を深めるために試算例をお示しをいただきたいと思います。
夫婦共働き世帯で、夫婦での所得が月額八十万円の場合と月額三十万円の場合の夫婦の年金月額と所得代替率についてどのような試算になるのか、御提示をいただきたいと思います。
○政府参考人(渡邉芳樹君) 数字を今から述べますので、数字ばかりで失礼申し上げます。
夫婦の所得月額の総額が八十万円の場合、夫婦の手取り賃金で六十六・六万円と想定いたします。夫婦……(発言する者あり)
○委員長(辻泰弘君) 答弁を続けてください。
○政府参考人(渡邉芳樹君) いいですか、済みません。
夫婦二人分の年金月額は三十・二万円、所得代替率は四五・三%でございますが、夫婦の所得月額の総額が三十万円、手取り賃金二十五万円の場合、夫婦二人分の年金月額は十九・五万円、所得代替率は七八・〇%と、こういうふうに高く出ます。
また、二〇五〇年時点におきまして、夫婦の所得月額の総額が二〇〇九年水準で八十万円の場合、二〇五〇年水準で夫婦の所得月額の総額は百四十二万七千円、手取り賃金で百十六万八千円という計算になりますが、夫婦二人分の年金月額は物価で現在価値に割り戻した値で四十四万円、所得代替率は三七・七%。
夫婦所得月額の総額が三十万円、二〇〇九年水準の場合でございますが、二〇五〇年水準では夫婦の所得月額の総額は五十三・五万円、手取り賃金で四十三・八万円、世帯一人当たりの年金月額は、物価で現在価値に割り戻した値で二十七万円、所得代替率は六一・六%。
例えばのことでございますが、今御指摘のあった八十万円と三十万円の世帯について申し上げました。
○山本博司君 ありがとうございます。
所得額の違いによって、こうした夫婦共働き世帯の場合でも所得代替率が六〇%を超える例もあるわけでございます。モデル世帯だけが五〇%を確保でき、それ以外の世帯では五〇%を確保できないというわけではないわけでございまして、一律に決め付けるような議論、これは避けるべきと考えるわけでございます。
また、厚生労働省が五月二十五日にまとめました公的年金の給付と負担の割合を示す給付負担倍率に関する新たな試算では、払った保険料の何倍受け取れるかということにつきまして、来年、二〇一〇年に七十歳になる人の給付負担倍率が六・五倍であるのに対しまして、二十歳になる人の給付負担倍率が二・三倍であると発表されました。報道によっては、この年金世代と若い現役世代との間で三倍近くの差が付くために若者の年金離れが増加し問題ではないか、こういう指摘もございます。今日も議論がございました。
こうした世代間の格差が拡大していることへの認識、これはどのようになっているのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(渡邉芳樹君) 報道によりましては、五年前に同様の計算をし発表をしている数字があるにもかかわらず、前回との比較よりも格差そのものを報道しているというものもあったように思いまして、なかなかその報道についての評価というのは私どもの方からは難しいなとは思っておりますが、いずれにせよ、今回の発表は、前回、五年前の数字との比較ということで出させていただいたものでございます。昨今の経済情勢を織り込んだ割には、前回と比べて今回の結果はそれほど大きく変化していないというふうに私ども感じております。
また、若干の変化の理由も、現在の経済情勢ということを考えますと十分説明の付く範囲内であるということでございますので、逆に、経済成長に向けていかに経済の再生策を講じていくか、それから、少子化対策で人口構造の流れをどうやって変えていくかということは、これ、待ったなしで努力を続けていかなければいけない。その結果として年金制度のパフォーマンスは上がっていくものというふうに考えております。
○山本博司君 この給付と負担との関係の見直し、また持続可能な年金制度にしていくためにも、こうした格差が生ずるということはやむを得ない面もあると思いますけれども、こうした若者の年金離れは防ぐ必要があると思います。
若い世代には、保険料として払った分ももらえないのではないかという、払い損ではないかという意見もあるわけでございまして、この点に関しまして大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 税であれ保険であれ、それぞれの世代についてそれぞれの時代できちんと生活できて幸せを追求できればいいわけなので、先ほど古川さんに対してお答えしたのと同じことになりますが、物すごく単純な議論をすれば、自動車事故の保険を掛けていますね、火災保険掛けていますね、掛けた金額の元を取っていないからといって事故がないことを喜ばない人はいません。掛け捨てになる可能性がありますね。家が燃えちゃって、要するに保険金全部掛け捨てになって損だとだれも言いませんね。
だから、そういう保険の大きな議論から言うと、長生きというのは事故に当たるんです、まさに保険理論から言うと。そういうところまでをカバー、(発言する者あり)いや、誤解ないように。保険理論で言っているんですよ、分かり切ったことで。そういうことまでをカバーするのが保険ですから、つまり年金なので、介護もそうです、医療もそうです、だれも病気したいと思っていない、だれも認知症にかかりたいと思っていない。だけれども、そのときへの拠出なので、自分が掛けたお金がどれだけでというような議論をするよりも、きちんとした公的年金制度を守っていく、介護保険制度を守っていく、国民皆保険というこの医療保険制度を守る、それが大事なんだということをよく理解をする必要があるというふうに思います。
○山本博司君 ありがとうございます。もう是非ともこうした若い世代へのアピールを含めた対策をお願いを申し上げたいと思います。
それでは、財政検証の最後の問いに関しまして大臣にお伺いを申し上げたいと思います。
昨日の連合審査会でも触れさせていただきましたけれども、年金制度を持続可能なものとするためには、こうした経済の成長と社会保障の安心の両輪が必要であるということでございまして、特に年金財政に関しましては、出生率の改善と経済対策が重要であると思います。この点に関しましての大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 今おっしゃるとおり、大きな二つのファクターは、経済成長率、それからもう一つは、労働力ということはつまり出生率であるわけですから、この二つを伸ばしていくための政策をやっていかないといけない、そういう方向での政策の努力を続けているつもりでございます。
○山本博司君 ありがとうございました。是非ともよろしくお願いをしたいと思います。
次に、来年一月に発足をされます日本年金機構の準備状況についてお聞きを申し上げたいと思います。
この年金機構は、これまでの反省に立ちまして、非公務員型の公法人としてスタートするものでございますけれども、意識改革を行いサービスの質の向上を図るとともに、効率的で公正、透明な事業運営を行う組織となるようにしなくてはならないと思います。
まず、このほど社会保険庁から移行する職員のうち九千九百七十一人の採用を内定をしたということでございますけれども、どのような基準で採用が行われてきたのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(薄井康紀君) 私は日本年金機構の設立準備事務局長を仰せ付かっておりまして、その立場でお答えをさせていただきたいというふうに思います。
昨年の七月に閣議決定をされました日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画におきましては、機構の社会保険庁職員からの職員採用ということで、正規職員が九千八百八十人程度、それから有期雇用の、今准職員と呼んでおりますけれども、これが千四百人程度と、こういう形になっているところでございます。
昨年、日本年金機構設立委員会が設けられまして、十二月に設立委員会の方で職員の採用基準は決められております。具体的には、高い使命感を持ち、法令を遵守し、業務改革やサービス向上に積極的に取り組む意欲がある者、それから、機構の業務にふさわしい意欲、能力を有する者である、また、社会保険庁職員からの採用に当たりましては、懲戒処分を受けた者は採用しない、こういったこと等を内容といたします職員採用基準を定めまして、社会保険庁職員からの機構職員の募集が行われたところでございます。
その後、設立委員会の下にございます日本年金機構職員採用審査会におきまして採用審査が行われまして、五月十九日の日本年金機構設立委員会におきまして、採用候補者名簿に記載された者の社会保険庁職員の中から正規職員として九千六百十三名、それから准職員として三百五十八名の採用が内定がされたところでございます。
○山本博司君 次に、新しい組織には外部からの優れた能力を有する人材を積極的に活用することが重要でございます。民間からの採用についても現在進められているとのことでございますけれども、この採用状況に関しまして報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(薄井康紀君) これも昨年の閣議決定されました基本計画におきまして、機構の正規職員一万八百八十人程度のうちでおおむね千名程度につきましては外部、民間から人材を採用することとされているところでございます。
これにつきましては、設立委員会の下で採用審査活動ということで進められておりまして、民間からの職員募集というのを四月末までに職員の募集の応募を受け付けたところでございます。
現在まだ作業が進行中でございますけれども、千名程度の募集に対しまして一万二千名弱の応募があったところでございまして、現在採用審査が進められているところでございます。
○山本博司君 この年金機構、公的年金の運営を再構築するという観点から、効率的な組織とならなくてはならないわけでございます。こうした採用によって、年金機構の発足時にはこれまでの社会保険庁よりどのぐらいの職員数が減少することになるのか、お示しをいただきたいと思います。
○政府参考人(薄井康紀君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、日本年金機構の人員数でございますけれども、正規職員として一万八百八十人程度、それから正規に準ずる形の有期雇用職員も含めまして、有期雇用職員六千九百五十人程度とされているところでございます。
社会保険庁の正規の職員の定員数でございますけれども、二十年度末におきまして一万三千七百三十人でございます。二十二年一月の社会保険庁の廃止のときにおきまして、これまで社会保険庁が行ってきた業務の一部、これは厚生労働省あるいは全国健康保険協会が行うことになります。これに伴いまして約六百二十名はそちらの方に定員が振り替えられると、こういう形になっております。これは仕事が付いて人も動いていくということでございます。
一方で、日本年金機構の方でございますけれども、業務の外部委託等によります効率化を行うことといたしてございまして、それによりまして正規職員八百三十五人の減を図る。それから、機構設立後におきまして、業務の改革等を進めまして、業務システムの刷新を進めることによりまして削減をすることが予定されております業務量におおむね相当する人員、これ約千四百人ということでございますけれども、これにつきましては有期雇用職員、准職員と呼んでおりますけれども、そういう形で整理をされてございます。
こういうことによりまして、冒頭申し上げたような形での機構設立当初の人員数の予定になっていると、こういうことでございます。
○山本博司君 この法令また各種の規定を遵守するとともに社会的な規範に従うこと、これは当然でございますけれども、もしこの法令違反の行為が発生した場合に、状況を迅速に把握し処分を行うとともに、この再発防止策を措置するということは大変重要であるわけでございます。
これまでの社会保険庁の状況を考えた場合、一段と厳しい取組をすべきと考えるわけでございますけれども、こうしたコンプライアンス確保の仕組みをどのように構築をしていくお考えなのか、この点に関しましても御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(薄井康紀君) 社会保険庁におきましても、一連の御指摘を踏まえましてコンプライアンスということは重視をいたしているところでございますが、日本年金機構におきましては、適正に業務運営を実施をする、国民の信頼を確保すると、こういう観点からコンプライアンスの確保というのは業務を進める上で最も重要なことの一つであると考えているところでございます。
このため、これは設立委員会で御議論をいただいておりますけれども、機構には組織横断的にコンプライアンスの確保への取組を行いますコンプライアンス委員会というものを設ける、それから専門の担当部署、リスク・コンプライアンス部と考えておりますけれども、それを設けると、それから外部の弁護士の参画の下での法令違反通報制度をきちっとやっていくと、こういった形によりまして、問題事案が起きればそれを把握してこれに的確に対応すると、こういう仕組みを整備をしてまいりたいと考えているところでございます。
日本年金機構が国民に信頼される組織となるよう、今後、適切なコンプライアンスの確保に向けて更に取り組んでまいりたいと考えております。
○山本博司君 さらに、この業務の効率化、合理化を進める上で重要なのは外部委託の推進であるわけでございます。公的な役割を担う中で、コストの削減、サービスの向上は常に図らなくてはいけないと思います。
そこで、こうした業務の外部委託についてどのように考えているのか、具体的にどのような内容、範囲の業務を外部委託にするのか、この辺に関しましてお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(薄井康紀君) 日本年金機構の業務につきましては、業務運営の効率化を図るために積極的なアウトソーシングを推進するということが閣議決定されました基本計画において定められております。
この基本計画におきまして、機構において外部委託を行う業務といたしまして幾つかございますけれども、届出書等の一次審査、それから厚生年金、健康保険の電話照会、国民年金の免除勧奨、厚生年金の納付督励、年金相談センターの運営、それからバックオフィス業務、こういったものを新たに外部委託をするということといたしているところでございます。
それから、これは外部委託ということで外に出せばいいということではございませんで、やはり委託先をきちっと適切に選んでいくということ、それから委託業者が業務を進める中身をきちっと進行管理も含めまして管理、監視をしていくということ、それから委託業務に関します情報の適切な公開、こういったことも必要と考えておりまして、それらの取組を進めてまいりたいと考えております。
このことにつきましては、日本年金機構、外部へ委託する際の基準という形で、厚生労働省告示として定めたところでございます。
○山本博司君 この年金相談とか記録問題の対応ということでも、各地の社会保険労務士の方々には様々な形で協力をいただいているところでございますけれども、新しい組織になってからも、これまでどおりに、またそれ以上に協力を求めていかなくてはならないと思います。こうした社会保険労務士の活用についての考え方、この点に関して説明いただきたいと思います。
○政府参考人(薄井康紀君) 社会保険労務士の皆様方には、現在も年金相談等で様々な形で御協力をいただいているところでございますけれども、日本年金機構の設立後におきましても、その機構の業務を円滑に進めるという上では更に一層の御協力をいただけたらと考えているところでございます。
昨年の七月の基本計画におきましては、全国の年金相談センター、現在五十一か所ございますけれども、この相談業務については外部委託を行うということが基本計画に定められておりますが、その委託先につきましては、限られた準備期間の中で委託業務の品質を確保できる体制を構築をするという観点で円滑に移行を実現できるということで、全国社会保険労務士会連合会に来年の一月から委託するということを予定をいたしているところでございます。それから、年金事務所におきます年金相談窓口の一部につきましても、社会保険労務士の方に御協力をお願いすることになると考えているところでございます。
いずれにいたしましても、年金等に関します経験が豊富で質の高い社会保険労務士の皆様方の活用ということは、機構の業務を円滑に進める上で非常に意義のあることと考えておりますので、今後ともよく連携、協力を図ってまいりたいと考えております。
○山本博司君 今の日本年金機構の準備状況をずっと聞いてまいりました。しっかりした対応をよろしくお願いを申し上げたいと思います。
時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。