参議院 厚生労働委員会 第14号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、野党から提出をされたいわゆる後期高齢者医療制度の廃止法案についてお聞きをしたいと思います。
 四月から始まった後期高齢者医療制度については、確かに新しい保険証が手元に届かなかったり、保険料の徴収ミスが起きるなど、お役所的仕事の部分があり、高齢者に配慮した説明や準備が不足した点は素直に反省すべきと思います。しかし、この新しい制度が目指す方向は、今後の高齢社会を見据えたものであり、制度の骨格は維持すべきであると考えます。その上で、制度の理解と定着を図るとともに運用上の改善をすべきではないかと考えます。
 ところが、今回の法案は、新しい制度を廃止して従来の老人保健制度に戻すという考え方のようでありますが、対案を示さず元の制度に戻せというのはいささか無責任な態度ではないか、具体的な対案を野党の方々でまとめて提出すべきではなかったかと思います。
 また、その上で、この法案を廃止法案と言っておりますけれども、この法案が成立しても制度は廃止にはなりません。政府が法制上及び財政上の措置を講じるとしているだけで、必要な法案を別途提出しなくてはなりません。これでは政府に丸投げするだけであり、責任ある対応ではないと思います。衆議院に二月二十八日に提出された法案ではもっと踏み込んでいたのではなかったかと記憶しておりますが、いずれにしましても、今後の方向性を示さないと具体的な議論ができないと思います。
 そこでまず、厚生労働省にお伺いをいたします。
 先ほども午前中、津田委員の質問で若干触れていただきましたけれども、もしもこの法案が成立をして、政府が法制上、財政上の措置を講じなくてはいけないとすればどのような法律改正が必要になるのでしょうか。また、来年四月までにどのような事務的な手続が必要となると想定できるのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(水田邦雄君) お尋ねになりましたこの法案についてでございますけれども、政府に長寿医療制度を廃止するための措置を講ずることを義務付けているものでございまして、仮にこの法案が成立した場合には、この法案に基づき私どもが、政府が講じなきゃならない法制上の措置は、まずは、まず長寿医療制度の廃止、医療費適正化の推進の廃止等を行うことに伴います高齢者の医療の確保に関する法律の改正でございます。
 それからもう一点、この法律に関しましては、保険料の特別徴収をやめることに伴います高齢者医療確保に関する法律等の改正がございます。さらに、入院時生活療養費の対象年齢を引き上げることに伴う医療保険各法、健康保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法等の改正でございます。また、七十歳から七十四歳の自己負担割合を一割のままに据え置くことに伴います医療保険各法の改正がございます。それから、国民健康保険料、国民健康保険税の特別徴収をやめることに伴います国民健康保険法、地方税法等の改正などを内容とした法律案を提出する必要があるものと考えてございます。
 それからもう一つ、必要な事務についてはどうかということでございます。この事務につきましては先ほども答弁させていただきましたが、国におきましては必要な法令等の整備が必要でございます。さらに、地方自治体におきましては広域連合の解散手続、それから広域連合が保有する財産や被保険者個人情報等の処分、それから被保険者が再び国保、被用者保険へ加入するために必要な移行手続、被保険者証の返還請求、市区町村が老人保健制度を運営するために必要なシステムの改修、制度変更の周知広報、相談窓口などでございます。また、国民健康保険者、市町村でございますけれども、及び被用者保険の保険者におきましては、長寿医療制度被保険者の各医療保険への再加入手続といった事務手続、それとそれに伴うコストが発生するということが考えられます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 こうした今お話をしていただきましたけれども、この保険料の特別徴収また保険料の負担軽減を遅くとも十月一日までに廃止することとしているので、先ほど話がありました法律を少なくとも十月一日よりも前に成立させなくてはなりませんが、これは物理的にはなかなか厳しいのではないでしょうか。今が六月でございますので、周知のための広報、個々の高齢者の方々への通知のスケジュール、現実的に可能なのかどうか、この点についてお答えいただきたいと思います。
○委員以外の議員(大塚耕平君) 先ほど鈴木委員から礒崎委員への御質問の答弁の中で申し上げましたように、もちろん法制面の対応というのは、法律を制定できれば最もこれが堅固な対応でございますが、政省令等その他の対応によっても諸般の措置はとることができます。十月一日までに法律を制定しようとすれば、これはそれまでの間に、もし今国会が会期どおりに終われば、別途国会を開いていただく必要もございますし、そうした政治情勢等もろもろ勘案いたしまして、現実的な所要の法制面の措置をとることによって対応させていただきたいと考えております。
○山本博司君 今お話ありましたけれども、現実的には大変無責任な内容だと思います。後でちょっとこの点を触れたいと思いますけれども、個々にちょっと聞いてまいりたいと思います。
 午前中の議論でもございましたけれども、システム改修についてお聞きをいたします。
 今回の法案では、本年十月の時点で、第三条第二号の負担軽減によってシステム改修が必要となります。さらに、平成二十一年四月に現制度を廃止し老人保健制度に戻しますので、この時点でもシステム改修、二回必要となります。
 そこで、厚生労働省にお伺いをいたします。後期高齢者医療制度をスタートするに当たってのシステム改修が行われたと思いますけれども、どのぐらいの費用が掛かったのか、御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(水田邦雄君) お答えいたします。
 後期高齢者医療制度の施行に当たって、システムの改修等に必要な経費として国の予算に計上した額は、総計で約三百二十億円でございます。この中には広域連合のシステムのみならず市町村のシステムの改修、これも含まれてございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この報告から類推をしましても、大変、相当の額のシステム改修が今後も発生をするということが想定できると思います。平成二十一年四月から廃止をするという前提で、今年の十月一日までのシステム改修に掛かった費用、これは費用の無駄になるのではないでしょうか。この点についての発議者の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○委員以外の議員(大塚耕平君) まず、結論から先に申し上げますと、先ほども礒崎議員が財政金融委員会の議論を引用してくださいましたけれども、私どもは財政金融委員会では道路の整備計画に無駄があると申し上げて、与党の皆様方は、礒崎議員は違うとおっしゃいましたけれども、無駄ではないとおっしゃったわけでございます。
 そして、今回のこの問題にこれを照らして考えますと、再三この後期高齢者医療制度を元に戻して対応するコストを発生させることは無駄ではないかという御指摘でございますが、私どもは今度は逆にこれは無駄ではないと思っているわけでございます。その上で、山本委員におかれましては、実は大手メーンフレームメーカーにおられましたので大変システムにお詳しいわけでございますが、先ほどの三百二十億円の数字についての私なりの感覚は尾辻委員の御質問に対してお答えを申し上げました。
 そもそも御専門家ですので、もう少し素人なりに少し敷衍をさせていただきますと、広域連合がもし同じシステム、プログラムを使っていて、若干それぞれの自治体、抱えている自治体や広域連合によって差があるとしても、その辺はパラメーターの入力等によって、あるいは多少カスタマイズできるパーツを残して、そういう対応にして、しかし、トータルでは同じシステムを共有して広域連合にこれを配付していれば、恐らくプログラムを作ることとその変更等では、三百二十億円という金額は掛からないのではないかなと、私は私なりの経験上からそのように感じております。
 もっとも、今日申し上げましたように、別途、本当は転用可能なサーバー等を持っていたけれども、全部別の筐体を買ったとか、用意したとか、あるいは広域連合のネットワークを張ったとかということであれば三百二十億という数字もなるほどなというふうに思うわけでございますが、少なくともネットワークは張っていないわけでございますし、かなりその三百二十億という数字自身についても一度検証をさせていただく必要があるかなと私自身は感じております。
 したがって、結論的に申し上げれば、無駄だという御指摘でございますが、むしろ七割の国民の皆さんが元に戻すことを望んでおられる。民意に従うことが議会制民主主義であるとすれば、決して無駄ではない。そして、そのコストは厚生労働省がイメージしておられるコストよりも少なくできるのではないかと思いますが、この点については、もし与党の皆様の御協力をいただければ我々も検証に参加をさせていただきたいというふうに思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 今の三百二十億という件でございますけれども、現実的には、この与党の十二月の段階での激変緩和措置で、実際その掛かっている費用が七十六億円ぐらいだというふうに聞いております。ですから、そういう意味でいったら、初期投資というよりも、こういう一千三百の市町村にかかわる様々な改正の部分だけでもそういう金額掛かっているわけでございます。これはハードというよりもやっぱりサービスの部分というのが非常に高いんではないか。これは現実的に更にまた検証していかないといけないと思いますけれども、今回の部分というのは稼働中のシステムになるわけでございますので、今までは新しい初期の部分ですので、そういった違いがあるということも含めて、どちらにしても十月一日で作ったシステムを負担軽減という形での改修をする、その金額に関してはやはり無駄になってしまうというわけでございますので、そういう点も含めて、ともかく、やはり午前中の論議でも一円でも無駄にはしないという、そういうことでいえば、そういうことも含めて真剣に考えていかないといけないというふうに思います。
 それでは次に、法案の内容についてお伺いをしたいと思います。
 まず、法案の第三条第一号では、保険料の徴収について、できる限り速やかに、遅くとも二十年十月一日までに特別徴収の方法によらないものとすることとして、年金からの天引きを取りやめることとしております。一般的には年金天引きは未納対策としても有効だと言われておりますけれども、この年金天引きを取りやめる理由はどのような理由からでしょうか。簡潔にお答えいただきたいと思います。
○委員以外の議員(大塚耕平君) この年金天引きを取りやめる理由は、そもそも私どもはこの制度に反対をしているわけでございますので、この制度を廃止するに当たって、まず年金天引きを優先して行わさせていただきたいという趣旨でございます。
 それに加えまして、今日の午前中の質疑でもございましたように、実は、天引きにするかあるいは普通徴収にするかによって、現役層が高齢者の保険料を支払う過程において実質増税になるというような、天引き増税というような影響も出てまいりますので、これらの理由を総合いたしますと一刻も早く天引きを取りやめさせていただきたいというふうに思っております。
○山本博司君 この年金からの天引きといいますのは介護保険法を準用したものでございますけれども、そうすると、介護保険料の年金天引きも取りやめるべきと考えていらっしゃるのかどうか、これが第一点でございます。
 また、この保険料を年金から天引きするという考え方、国会ではどのように議論されてきたのか調べてみましたら、平成八年の六月十二日の衆議院厚生委員会において、ちょうど介護保険制度導入の審議会答申が出た直後でございますけれども、現在の民主党の菅直人代表代行が、当時厚生大臣のときにこのようにおっしゃっておられます。高齢者の保険料については、実質的にそう未納が多くならないでやれるような、例えば年金等からの天引きなどの、そういうやり方で対応していくことによってできるのではないかと思っておりますとおっしゃっておられます。要するに、保険料の未納対策として年金天引きは有効であると、このように述べているわけでございます。
 先ほどの発言と含めて矛盾であると思いますけれども、この御見解をいただきたいと思います。
○委員以外の議員(大塚耕平君) 二点御質問いただきましたが、二点目の方からお答えを申し上げたいと思います。
 私どもの菅直人代表代行の過去の御発言を引用しての御質問でございますが、その時点においては、今日多くの国民の皆さんの不安につながっている消えた年金問題等は認識をされておりませんでした。そして、この問題を今年の三月三十一日までに全面的に解決するという、このことがまだ道半ばであるというこの状況下においては、恐らく平成八年の六月十二日のこの国会における議論というのは当てはまらないであろうというふうに考えております。したがって、私どもとしては、今回の天引きをやめるということについては、現下の情勢においては合理的な対応だと思っております。
 そして一点目は、介護についてはどうするかということでございますが、介護の保険料の天引きをどうするかということは私どもは議論をこの段階ではいたしておりません。
 したがって、ここについては方針は決まっているわけではございませんが、しかし一点補足をさせていただきますと、この天引き、源泉徴収というものが実は納税者の皆さんの納税意識を薄めている、低めている制度的な要因であるという面もございますので、もし、行政コストとのバランスにおいて、行政コストが多少掛かっても源泉徴収やいわゆる天引きをやめて、納税者やあるいは保険料を負担していらっしゃる負担者の皆さんが私たちが負担をしているんだと意識を持つことで、国政にあるいは県政、市政に対する関心が高まり、そのことによって税金の無駄遣い、保険料の無駄遣い等が減れば、トータルとしてはかえって行政コストを削減することにもつながると思っておりますので、是非その源泉徴収の一般的考え方についてもしかるべき段階に皆様方と議論をさせていただきたいという気持ちは持っております。
○山本博司君 保険料の利用性向上ということと徴収事務のコスト削減ということをかんがみましたら、年金からの天引きというのは有効な徴収方法でもございます。でも、今回、年金からの天引きを取りやめた場合でも負担を求めないということではありませんので、保険料の徴収をしなくてはなりません。
 今後、この保険料の徴収事務、十月一日からということでございますけれども、どのように行うおつもりなのか、教えていただきたいと思います。
○委員以外の議員(福島みずほ君) この法案はいったん元に戻すということなので、元の徴収に私たちは戻すということで一致をしております。
   〔委員長退席、理事家西悟君着席〕
 それで、先ほどから大塚委員の答弁でもありますが、付け加えて申し上げますと、二〇〇六年の審議の中で平均年金収入で介護四千円、医療六千円という数字が出てきたときに、無理ではないかという主張を私どもはいたしました。また、マクロ経済スライドで年金額は基礎年金部分も含めて目減りをしていっております。介護保険導入のとき、マクロ経済スライドは存在をしておりませんでした。
 ですから、今の段階で、例えば受け取る年金額が一年間で十八万円以上、月額一万五千円以上ある人は年金から保険料がいや応なく天引きされるという点で、今となっては過酷な制度であると考えております。
○山本博司君 次に、保険料の負担の軽減についてお伺いをしたいと思います。
 法案の第三条第二号、第三号では、それぞれの被用者保険でこれまで被扶養者であった被保険者には引き続き保険料を免除して、それ以外の被保険者の保険料もできるだけ速やかに、遅くとも平成二十年十月一日までにその負担を軽減するものとすることとして保険料の軽減を規定しております。
 この保険料の軽減でございますけれども、対象者の具体的な範囲、軽減の具体的な規模を教えていただきたいと思います。
○委員以外の議員(大塚耕平君) 御下問の件につきましては、このデータを私どもも責任を持ってお示ししたいという思いで厚生労働省にこれまで、厚生労働省としては今回保険料が上がった方、下がった方、どのぐらいの数字になっているか確認をさせていただきたいと申し上げておりましたが、現時点においてまだ厚生労働省から参考になる数字をいただけておりません。
 ただ、今日の午前中及び午後の質疑でもございましたように、政府による、厚生労働省による実態調査、これは五月十五日付けの事務連絡を発出して行っておりますが、この回答期限が五月十九日ということになっておりまして、先ほどの大臣の御答弁でも、この調査の結果はできるだけ速やかに公開をする、御報告をいただけるというようなお話でございましたので、これらのデータがもし、今、山本議員から御下問をいただいた件について、我々が推計するに足る調査結果であれば、それに基づいて私どもなりのデータをお示しできるものと考えております。
○山本博司君 具体的に例えば一円以上とか、何らかのそういう判断基準というのは今はないんでしょうか。
○委員以外の議員(大塚耕平君) それは、逆にちょっと確認をさせていただきたいんですが、御質問の趣旨というのは、もし上がった方が一円、二円であれば上がったままでいいけれども、百円以上上がった方は下げるとかという、そういう意味でございますか。
○山本博司君 全員をやるとか、そういう……
○委員以外の議員(大塚耕平君) そういう意味では、私どもの法案では、まず全員、負担が上がった方々については全員元に戻すということを考えております。
 そして、蛇足でございますが、蛇足ではございません、大変重要なポイントでございますが、むしろ負担が軽減された方々もいると思いますので、その方々についてどうするかということについては、先ほど礒崎議員に対してお答えをしたとおりでございます。
○山本博司君 それでは、具体的な人数が分からないということは、財源に関しても分からないということでございますか。
○委員以外の議員(大塚耕平君) 分からないというよりも、厚生労働省の皆様方から私どもがその御質問にお答えするに足る重要な情報をいただけるかどうかということですので、心待ちにしております。
○山本博司君 もうほとんど丸投げに近い法案というのが本当によく分かるんですけれども、スケジュールの部分でちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、先ほどの五本の法改正、それに伴う、平成十八年健康保険法では約五十本の法改正が発生したと言われておりますけれども、具体的にいつまでにそういった法改正をやらないと間に合わないのかどうかという、そういうスケジュール感を教えていただきたいと思います。
   〔理事家西悟君退席、委員長着席〕
○委員以外の議員(大塚耕平君) 先ほどもお答えを申し上げましたように、この法案は十月一日までに負担軽減措置をとるとともに、来年の四月一日をもって元に戻すということを規定している。そして、そのことについて政府に法制措置、財政措置を義務付ける法案になっておりますので、当然その期日に間に合う間において所定の対応をするものというふうに考えております。
○山本博司君 例えば、この十月一日までに軽減であるとか又は天引きとかということでありますと、システム改修をしないといけない。当然それはシステムのメーカーに発注をしないといけない。そのタイミングというのは、法改正ができてないとできないというふうになると思います。
 ですから、当然その時期を、十月一日までに一切そういうことをやるということでありますから、それは六月とか七月とか、もうかなり早い段階でそういったことをやらないといけない。現実的にそれはどう考えても、今のスケジュール感でいって、先ほど局長からもその間の十月一日までにやる作業ということの部分でお話がございましたけれども、ほとんどスケジュール的に見たら不可能に近いというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○委員以外の議員(大塚耕平君) 私は、逆にそうは思っておりませんで、したがって、先ほど一緒に検証させていただきたいと申し上げたのは、一体厚生労働省が予算を付けて広域連合がどのようなシステム対応をしたのか、そこを検証してみませんと、通常、この予算が付いてシステム対応をするのに、恐らくこれまで私どもが認識している情報で考えますと、過去一年ぐらいのスパンで、二年前にこの法案が通ったわけでございますので、過去一年ぐらいの間に行われていると。しかも、この基本のシステムができているということは、これがちゃんとデバッグできるような状況になっていれば、これはそれほど、プログラムを変えるということだけであれば、山本委員の方がお詳しいと思いますけれども、必ずしも物すごい時間が掛かるものではないというふうに思っております。
 加えまして、これは今回の法案がもし与党の皆様の御賛同もいただいて成立すれば、その方向に進むことは明確になるわけでございますので、あとは、その中で、先ほど来御下問のあります負担が下がった方をどうするかということについてコンセンサスが得られた場合、その方々も含めて全部元に戻すということであれば、直ちに元に戻す対応をシステム的に行えばいいと思いますが、もしそのシステム的な対応ができないということであれば、相当複雑なものを、あるいは広域連合ごとにばらばらなものをつくっているんではないかなというふうに推測ができますので、そのことも含めてプログラムの設計の仕様書の段階からどうなっているかということを是非、もし御賛同をいただければ、山本委員にも御参加をいただいて確認をさせていただきたい。
 実は、こういうシステム対応が個々の役所においてどのような言わば仕事ぶりになっているかということは今後の行政の簡素化、制度の簡素化においても大変重要なポイントだと思っておりますので、大変意義のある御指摘をいただいているものと思います。
○山本博司君 納得ができない部分がございまして、天引きに関しても、実際十月一日からなくすという形を取る場合ですと、当然、個々の国民一千三百万の方々に対しての一人一人に通知をしないといけない、その作業を考えた場合に、いつまでにやるかということを考えたら、もう二か月前とかという形になるわけでございますけれども、そういう具体的に、じゃ、十月一日までに今皆様がおっしゃっていらっしゃることをどうしていくかということが具体的に一つも詰められていなくて、すべて政府に丸投げしているというのが今の皆様の法案ではないかなという気がいたします。
 ですので、そういった作業のスケジュール感といいますか、いつまでに何をしないといけないかということに関して具体的なものを、委員長、資料として提出を求めたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
○委員長(岩本司君) 理事会で協議いたします。
○山本博司君 次に、保険料の変動についてお聞きをしたいと思います。
 現在、厚生労働省でも地方自治体での実態調査を行っており、調査の結果を待ちたいと思いますけれども、先日のある新聞社の調査でも、七割の世帯で負担額が下がったとのデータもありました。そこで、こうした新しい制度で保険料が下がった人への対応についてお伺いをしたいと思います。
 今回の新しい医療制度で保険料負担が下がった人に対して、この法案に沿って考えると、十月に負担の更なる軽減がなされます。先ほど言いましたように、全員に対してやるということでございますので、当然、更に多くの方々が下がります。しかし、来年の四月には元の老人保健制度に戻りますので、多くの方々が保険料が上がってしまいます。このことに対して国民は非常に怒るのではないかと思いますけれども、このことをどう説明されるのでしょうか。
○委員以外の議員(小池晃君) 今の御質問ですが、読売新聞の保険料の報道を前提として質問されているというふうにお聞きしました。
 この報道については、これは読売新聞の調査というより、厚生労働省が行っている調査を一部の市区町村、百八十三について集計したものというふうに思われます。この厚生労働省の調査内容ですが、極めて問題が大きいというふうに私ども考えております。
 といいますのは、国保加入世帯について、高齢者単身、それから高齢者夫婦、それから片方が高齢者だけの夫婦、それから高齢者一人と子供夫婦という四種の世帯構成について、三段階の世帯収入について国保の保険料と後期高齢者保険料を比較しております。この調査のモデルというのは、低所得者のようにほとんど資産を持っていない世帯まですべて、資産割を算定している自治体については資産割を払っていることを前提にする。あるいは世帯構成についても、例えば老夫婦と子供夫婦で構成される世帯のように比較的負担増になりやすい世帯構成を除外しております。その点で現実に即したものと考えておりません。
 私どもの推計では、調査モデルのモデル世帯では高齢者世帯の三分の二程度の世帯数しかカバーしていないというふうに思われます。しかも、厚生労働省の調査ではモデルごとの被保険者数を調査をしておりません。このように、この調査結果によれば実態をきちんと把握できず、負担増が低い結果となるのではないかというふうに私どもは見ております。
 読売新聞の調査結果は、七割が国保の保険料より軽減されたということですが、これは厚生労働省の調査モデルで自治体数の七割ということであって全保険者の七割、全被保険者の七割ということではございません。
 このように、この調査モデルは、実態を把握するどころか、七割から八割の世帯が負担減であるという当初の厚生労働大臣の発言に合わせて結論を誘導するようなものになっているのではないかというふうに思わざるを得ません。こうした調査結果に基づいて負担が増える世帯が多くなるという前提に対してはちょっとお答えすることができないと。
 ですから、私どもとしては、現実の問題が出たときに、それに対してどう対応するかということを考えていくというふうにしか答えようがないというふうに思っております。
○委員長(岩本司君) 挙手されていますけれども、よろしいですか。
○山本博司君 もう時間がありませんから。
 済みません。時間がなくて申し訳ありません。
 それと、もう一つの点に関しまして、老人保健制度に戻すということでの影響という点でお聞きをしたいと思います。
 老人保健制度の問題点として、国保では市町村によって保険料に最大五倍の格差がありました。これに対応するために、各都道府県単位に広域連合をつくって、格差を最大二倍までに縮小しました。しかし、今回の法案では、この格差の下に戻ることになります。市町村に多大な負担をお掛けすることになると思いますけれども、この点に関してお話をしていただきたいと思います。
○委員以外の議員(鈴木寛君) 御指摘の点でございますが、今朝の民主党の部門会議でも確認をさせていただきましたが、来年度の予算編成に向けましては、政省令改正を含めて必要な予算の確保を他党の皆様方にも呼びかけて、強く実施を時の政権に、もちろん私どもが担っていれば私ども自らが実現を図ってまいるということの尽力をしてまいりたいというふうに思っております。
 具体的には、まさに今御指摘の市町村国保保険料の地域格差、これは抜本的に是正をすることは本当に大事だというふうに思っておりますし、それから、先ほど来問題になっております高齢者を始め低所得者を多く抱える保険者への支援の抜本的拡充も考えております。
 具体的には、国の調整交付金や都道府県調整交付金の調整率を改善をいたしますでありますとか、財政安定化支援事業と保険料負担の平準化等に資するため、市町村の一般会計から国保特会への繰入れを地方財政措置で支援をする、これを、今も行っておりますが、更に拡充をしていく。それから、高額医療費共同事業交付金のこれを充実、あるいは保険財政共同安定化事業の抜本充実等々によりまして、まずこの共同拠出率を引き上げることによって市町村間のバランスの是正に努めてまいりたいと思っております。
 加えまして、高齢者を含む低所得者対策でございますが、保険基盤安定制度の中で保険者支援制度の抜本拡充、あるいは保険料軽減制度の抜本拡充を行うことによってこうした問題にきちっと対応してまいりたいということを申し上げたいと思います。
○山本博司君 ありがとうございます。
 様々な今角度から見てまいりましたけれども、この廃止法案、私感じまするに、更なるコストを掛けるだけで何らの問題の解決にはつながっていない。新しい制度は、これまでの老人保健制度では超高齢化社会へ突き進む我が国の医療を支え切れないという共通の認識から創設されたものであります。
 平成十二年の医療制度改革の審議では、参議院において関連法案を可決した際に民主党議員が反対討論に立ち、小手先で制度を変えるのではなく、老人保健制度に代わる新たな高齢者医療制度の創設に全力を挙げることが必要と、こう訴えております。また、この医療制度改革関連法案を審議した平成十二年十一月三十日の国民福祉委員会では、共産党を除く各党で、抜本改革の重要な柱である老人保健制度に代わる新たな高齢者医療制度の創設については早急に検討して、平成十四年度中に必ず実施することとの附帯決議を採択をしております。さらに、民主党の二〇〇五年の衆議院選挙マニフェストでは、透明で独立性の高い新たな高齢者医療制度の創設を含む医療・医療保険制度の改革に取り組みますと書かれております。選挙公約であるこのマニフェストを掲げて当選をした衆議院の方々が現在も議席を持っていらっしゃいます。
 老人保健制度の抜本改革に積極的だった民主党がここに至って心変わりをされたのには大変理解に苦しみます。なぜこのようにこれまでの言動と違う対応をされているのか、発議者の方から御説明いただきたいと思います。
○委員以外の議員(鈴木寛君) 先ほど尾辻先生の質問への御回答と重なった部分があるかもしれませんが、御容赦ください、御質問でございますので。
 今引用をされました平成十二年の十一月三十日の附帯決議を受けて、平成十三年の九月七日に社会保障審議会の医療部会で四つの方式、すなわち独立保険、そして突き抜け型、そして年齢リスク構造調整、そして一本化、この四つの方式が示されました。
 私ども民主党といたしましては、この二番目と三番目の混合型ということを取りまして、さらに平成十四年の九月二十五日の当時の坂口厚生労働大臣私案でも独立型ではなくてリスク構造調整方式ということをお示しになって、これは今おっしゃっていただきましたように、私ども、そして与野党の真剣な議論をきちっと踏まえていただいたすばらしい御対応だったというふうに私は思っております。
 厚労省におきましても、まさにA案のリスク構造調整方式とB案のまさに独立方式と、このA案、B案になりまして、繰り返しになりますけど、その後、経済財政諮問会議の議論にかなり引っ張られる形でB案になってしまったというのが現状であるということは委員も御承知のことだと思いますが、改めて私からも確認をさせていただきたいと思います。
 民主党は、一貫いたしまして、この制度を通じた年齢と所得のリスク調整を積極的に進めていく、将来的には保険の一元化を図るという考え方をずっと主張させていただいております。その中で、特にそのリスクを負っております国民保険については先ほど来申し上げておりますような財政的な充実をしていく、このこともマニフェストに公的な負担をきちっと充実をさせるということを盛り込んでおりますので、そのことは御承知をいただいていると思います。
 そうした観点から申し上げますと、保険上、リスクの高い高齢者だけを集めた独立の後期高齢者医療制度を設けて高齢者に別建ての体系をつくることは、むしろこうした医療保険の一元化の流れに非常に妨げになりますので、いったん後期高齢者医療制度を廃止をさせていただいて、そして従来のこの年齢、所得リスク調整を積極的に推進をするという、まさに予算の充実でもって医療保険の一元化を努めていくということが望ましいというのが私どもの考えでございまして、その観点に立った法案であるということを御理解をいただきたいと思います。
○山本博司君 もう時間が来ておりますので、是非政権を担う政党であれば対案を出していただきたいと思います。
 以上でございます。