参議院 厚生労働委員会 第15号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 一般質問ということで、本日は、事故などによってある日突然にだれでも起こり得る二つの病気を中心にしましてお聞きを申し上げたいと思います。
 初めに、軽度外傷性脳損傷というこの病気についてお聞きを申し上げる次第でございます。
 この軽度外傷性脳損傷は、脳で情報伝達を担います神経線維、軸索と言われるそうでございますけれども、その神経線維が交通事故とか転倒とか、またスポーツなどで頭部に衝撃を受けて損傷し、発症する病気でございます。症状は多様にございまして、高次脳機能障害を起こすと、記憶力、理解力、注意集中力などが低下をします。また、手足の動きや感覚が鈍くなる、また視野が狭くなる、においとか味が分からなくなる、耳も聞こえにくくなる、排尿や排便にも支障を来す。重症では、車いすとか寝たきりの生活となる場合もあるわけでございます。
 これらの症状は事故後すぐに現れないことがございまして、注意深い経過の観察が必要ですが、医師からはむち打ちとか首の捻挫、こう誤って診断をされて、適切な治療が受けられずに悩んでいる多くの患者の方がたくさんいらっしゃるわけでございます。大部分は三か月から一年程度で回復をいたしますけれども、一割前後の方々は一年たっても症状が長引いて、一生涯この後遺症に苦しむこともあるわけでございます。外見からではなかなか分からないために、気のせいではないかとか仮病ではないか、こうした偏見にもさらされている厳しい現状がございます。
 私も、この軽度外傷性脳損傷の患者の皆様、家族の方々にも何度もお会いをして、大変この実態といいますか、本当につらい実態というお話を伺っている次第でございます。先日、細川副大臣には患者の方たちにお会いをいただいて、要望を受けていたとのことでございますけれども、こうした方々に対する一刻も早い対策が求められていると思います。
 そこでまず、この軽度外傷性脳損傷につきまして、これまでの政府の対応、どのような認識をまずお持ちなのか確認をしたいと思います。さらに、労災保険の中でこうした神経系統の機能に関する障害等級の認定基準はどのように扱われているのか、このことに関しましてまずお聞きをしたいと思います。
○大臣政務官(山井和則君) 山本委員、御質問ありがとうございます。
 まさに、静かなる流行病とさえ言われているこの軽度外傷性脳損傷、非常に重要な問題だと認識しております。
 軽度外傷性脳損傷については、交通事故などの外傷により脳が損傷し、その結果として持続する頭痛や記憶障害、倦怠感、睡眠リズムの変化等の症状が現れるものと承知しております。
 こうした方々については、二点ありまして、まず一点目は、症状が重度化し、例えば記憶障害等を伴う高次脳機能障害に当たる場合や、麻痺を伴う障害者としての認定基準に該当する場合には障害者自立支援法による福祉サービスの対象となりますが、二点目として、そうした障害の状態に至る前の診断、治療を充実していくべきとの御指摘もあると承知をしております。
 厚生労働省としては、こうした症状にある方々についてどのようなニーズがあるのか、患者団体や専門家等の御意見を十分にお伺いしながら対応を検討していく必要があると思っておりますし、また、労災に関しましては、業務上の外傷性脳損傷による残存障害の等級認定については、現在、MRI、CT等により脳の損傷が確認できるものについて認定基準を定めて運用しております。
 なお、この認定基準においてMRI、CTによる画像所見等により医学的に脳の損傷が確認できない場合についても、なかなかこの画像で確認できないケースが多いんですね、残念ながら。脳の損傷が確認できない場合についても、症状等から脳の損傷の存在を合理的に推測できる場合には、最も障害の程度の軽い障害等級第十四級の認定を行うこととしております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この軽度外傷性脳損傷の方々、大変今の現状の中での支援ということでは厳しいわけでございまして、こうした方々の救済ということを考えていった場合には、まずこの病気の診断基準、この確立をすることが課題ではないかと思うわけでございます。
 この医学界におきましても、軸索損傷に関する論文というのが出され始めておりまして、本格的な研究体制の整備が急務であると思う次第でございます。
 一説では、国内患者数は推定でも数十万に上るのではないかという推計もなされております。こうした方々、早期に全国調査を行うとともに、この軽度外傷性脳損傷の方々、実態把握とか原因の解明、また治療のガイドラインを確立をするための研究を推進する、このことがまず大事ではないかと思います。
 今、厚生労働省では、厚生労働科学研究費の補助金事業というのがございます。こうした事業に積極的に取り上げて推進をしていく、このことを強く思うわけでございますけれども、大臣、この点に関しましてはいかがでございましょうか。
○国務大臣(長妻昭君) 今おっしゃられた軽度外傷性脳損傷については、持続する頭痛、記憶障害、倦怠感、睡眠リズムの変化等の症状が現れる疾病であると承知をしております。
 この外傷性脳損傷の方で記憶障害等を伴う高次脳機能障害の状況になった方の研究については、これまでも科研費で実施をしているところでございます。その意味で、今御指摘の軽度の外傷性脳損傷についての研究というのは、これまでその部分については十分に行われたものではないというふうに考えておりますので、これをどういう形で今後研究を進めていくかについてはよく検討していきたいと思います。
○山本博司君 この軽度外傷性脳損傷の方々、現実的には日本の中で、今大変実態の部分を含めて、非常にまだまだ厳しいのが実態でございます。
 じゃ、一方、世界、アメリカとかそういう分野ではどうこういったものをとらえているかということでございますけれども、この外傷性脳損傷、先ほど政務官からもございましたけれども、静かなる流行病と世界的に関心を持たれているわけでございます。
 これは、世界保健機関、WHOが二〇〇七年に外傷性脳損傷に関する勧告文を発信をしております。その中で、この外傷性脳損傷という静かな、そして無視されている流行病に関して、全世界で闘いを組織しようと、この呼びかけがこのWHOの勧告文にあるわけでございます。そのWHOによりますと、外傷性脳損傷、軽度のほかにも中度、重度も含みますと、世界で毎年一千万人がかかり、十万人当たりの発生頻度が百五十人から三百人ということが言われております。また、WHOは、外傷性脳損傷が二〇二〇年には世界第三位の疾患になると、こういう予測もしているわけでございます。
 また、アメリカの疾病対策センター、CDCが発表しました二〇〇三年の外傷性脳損傷に関する連邦議会報告書によりますと、アメリカでは毎年百五十万人が外傷性脳損傷にかかり、五万人が死亡、八万人から九万人が後遺障害者となり、その累計数は米国人口の二%に当たる五百三十万人に達すると、このようにも言われているわけでございまして、アメリカでは外傷性脳損傷は公衆衛生学上の重要課題として認識されておりまして、一九九六年のクリントン政権時には外傷性脳損傷法という法律も制定をされているわけでございます。
 最近では、アフガニスタンやイラクの戦地から帰還した米兵の中に爆風の衝撃などで軽度外傷性脳損傷が多発をしているために、オバマ大統領は軽度外傷性脳損傷を軍医療上の最重要課題と認めて対策強化策を打ち出しております。アカデミー賞の受賞されました「ハート・ロッカー」という、これも爆弾の処理班ということでございますけれども、この処理班の方々がその後人生どうなっているかという、様々な形でこの軽度外傷性脳損傷に大変多くかかっているということもアメリカでは指摘をされているということで、大変重要な部分でございます。
 こうした海外での状況を踏まえて、我が国でもこうした軽度外傷性脳損傷に関しまして対策を強化すべきと考えるわけですけれども、大臣はこの二〇〇七年のWHOの勧告、政府としてどのように受け止めておられるんでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) 今おっしゃられたように、二〇〇七年にWHOが、損傷後、最初に患者を診るお医者さんが患者さんの意識レベルを評価するための基準を報告しているというものであると承知をしております。ただ、この中には後遺症の基準とかあるいは確定診断の基準というのが示されているわけではありませんので、やはり我が国におきましては、まず診断のガイドラインといいますか、そういう基準を決める必要があるんではないかというふうに思います。
 その意味で、先ほども答弁申し上げましたように、これまで十分な医学的な知見があるものではありませんので、我が国において、日本においてどのように研究していくか、あるいは診断のガイドラインをどうやって決めていくのかについて検討を進めていきたいと思います。
○山本博司君 この軽度外傷性脳損傷、WHO勧告と比べると非常に日本の認識というのは少ない。担当者の方ともお話ししてもこの内容に関しては知らなかったこともございますし、細川副大臣もいらっしゃいますから、今日は軽度外傷性脳損傷、お会いをされた方々が来ていらっしゃいますけれども、やはりWHOの勧告、この基準を少しでも日本としてもこの研究を含めて推進をしていただければと思うわけでございます。その意味で、今この研究事業のこの対象ということで是非とも推進をしていただきたい、また強力に応援をしていただきたいと思う次第でございます。
 その中で、もう一つ別の観点で少しお話を申し上げたいと思います。
 日本の医療現場で、CTとかMRI、画像診断が重視されております。先ほども山井政務官からこのお話がございました。ところが、この軽度外傷性脳損傷では、軸索とともに近くを走る血管が損傷をされて出血が起こらないと、通常のMRIでは脳病変が画像に出ないわけでございます。また、出血巣も時間がたつと吸収をされてしまいますので、よってこの軽度外傷性脳損傷の軸索損傷が必ず画像に出るとは限っておらないわけでございます。ですから、現在、軽度外傷性脳損傷の多くの患者はこの軸索損傷に由来する数々の臨床の症状を認めながらも画像診断では異常なしと、こういう判断をされるわけでございます。ですから、そのため、自賠責とか労災で脳の症状と事故との因果関係、これが認定をされませんので、就労が困難であっても正当な賠償や補償を受けられないで大変困って、困窮しているケースが頻発をしているというのも大変放置できない問題も、この問題という形ではあるわけでございます。
 こうした画像診断に出ない患者に対しましても、総合的な診断によって障害等級を決定すべきと考えるわけでございまして、労務困難な場合には、労働損失の補償という観点から労災保険の障害等級の認定基準の等級の適切な見直しなどが必要であるのではないかな、これが多くの皆様の大変声でございます。この点につきまして認識をお伺いをしたいと思います。
○大臣政務官(山井和則君) 山本委員にお答えを申し上げます。
 画像所見等により医学的に脳の損傷の存在が確認できない場合であっても労災認定をするよう基準を見直すことについては、高次脳機能障害等を的確に診断する手法がまだ確立しておらず、医学的な根拠がまだ乏しい状況にあるため、現時点ではその見直しはなかなか困難であると認識しておりますが、石橋医師によりましても、数十万人ぐらい患者の方がおられるのではないかという推計も出ておりますし、また、数年たって初めてこの病気であるということが分かるという方もおられますので、その意味では引き続き医学的な知見の収集に努めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 そうしますと、先ほどの部分を含めましてこの軽度外傷性脳損傷の方々、これからこうした診断基準を含めてガイドラインという形で進めていく場合には、大臣、今後の認識としては、まずそうした科学研究を具体的に進めて、その後、臨床研究、ガイドライン、そして先進医療という形での保険適用とか様々な形でそれを進めていくという形で進めていけばいいということでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) 今おっしゃっていただきましたけれども、画像診断もいろいろ問題のある、そこに映らないということもございますので、この軽度外傷性脳損傷についてはまず医学的知見を蓄積をしていくということで、診断のガイドラインをやはりまずどうやれば作っていけるのかという前提となる研究をどうやって始めるのかということがまず前提にあるという今段階だというふうに考えております。その意味で、今後どういう形の研究が適切であるかについて省内でまずは検討をしていきたいというふうに考えております。これはもちろん、診断技術の確立ということもその研究の中には含まれるわけであります。
○山本博司君 今、軽度外傷性脳損傷の方々、患者の方々、こういう部分で模索をされているわけでございますので、是非ともそういう道筋を付けていただきたいと思います。
 そして、もう一つ、画像診断技術のことで御質問をしたいと思いますけれども、軽度外傷性脳損傷ではCTとかMRIの画像に脳病変が出ないということが、大きな問題があるわけでございます。この軸索損傷を抽出する最先端の画像診断技術であります拡散テンソルトラクトグラフィーという、こういうDTIという研究も進んでおられまして、こうした臨床応用の場合、画像の再診断の技術、大変重要であると思うわけでございます。例えば、乳がんの早期発見にはマンモグラフィーが大変大きな効果を発揮しておりまして、画像の診断技術の開発という点では、我が国が技術立国としましても今後飛躍的に重要な一分野と考えるわけでございます。
 こうした技術開発の促進支援、大臣、積極的に進めていくべきと考えますけれども、この点、見解をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 画像診断機器をどういうように活用していくかも含めて研究するように検討していきたいというふうに思います。
○山本博司君 ありがとうございます。
 やはり、軽度外傷性脳損傷のこの今本当にこうした法のはざま、様々なこういう社会保障の仕組みに入ってこない方々、大変そういう全国で声を上げていらっしゃるわけでございますので、そういう声をしっかり受け止めていただきながらお願いをしたいと思います。
 続きまして、もう一つの病気でございます脳脊髄液減少症に関しましてお聞きを申し上げたいと思います。
 この脳脊髄液減少症に関しましても、同じように交通事故、転倒、スポーツ外傷などの体への強い衝撃が原因で脳脊髄液、まあ髄液が漏れまして、この髄液が減るために大脳や小脳が下がって神経や血管が引っ張られて頭痛や目まい、耳鳴りとか吐き気、倦怠などの症状が出る疾患でございます。自律神経失調症やうつ病などのほかの疾患と誤診をされたり、単なる怠慢ではないかということで扱われて理解をされない事例も同じように多くございます。患者の皆さんにとりましては、一日も早い診断、治療法の確立が求められているわけでございます。
 そうした中で、この髄液漏れが起きている部分に患者自身の血液を注入をして漏れを防ぎますブラッドパッチ療法でむち打ちの症状が改善をしたという報告が相次いで、こうした関心を集めているわけでございます。この脳脊髄液減少症につきましては、四月十二日に長妻大臣は患者団体の方々とお会いをし、ブラッドパッチ療法の次期診療報酬改定での保険適用に大変前向きな姿勢を示されたとのことでございますけれども、また厚生労働省は、四月十三日に脳脊髄液減少症の疑いがある患者の検査に関しまして保険診療の対象とするよう周知徹底する通知を全国の自治体に出しました。
 そこでまず、この事務連絡の概要に関しまして御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) いわゆる脳脊髄液減少症に関する検査等の保険適用につきましては、都道府県間で取扱いに相違があるとの御指摘をいただいておりましたことから、去る四月十三日に保険局医療課より地方厚生局や都道府県、医療関係団体に対して事務連絡を発出し、その取扱いを明確にしたところであります。
   〔委員長退席、理事森ゆうこ君着席〕
 その内容は、頭痛等の症状が出て初めて受診された場合は、その原因が分からないことから診断に至るまでの検査等の費用は保険請求できる、診断が付いた上でブラッドパッチ療法を行うことについて同意した場合、同意以降に行われるブラッドパッチ療法及び関連する診療からは保険請求できない、最初からブラッドパッチ療法を目的とした場合は保険請求できない、ブラッドパッチ療法を行った結果、症状が改善し、いったん通院が不要となった場合であって、再度同様の症状等が出現した場合については必要な検査等の費用は改めて保険請求できる。
 以上であります。
○山本博司君 ありがとうございます。
 これに関しましては、これまで本当に地域によってばらつきがあるという現状を何回も私ども指摘させていただきましたけれども、当たり前のことが当たり前になっただけという、こういう指摘もございますけれども、検査の保険適用につきましては、是非こうした事務連絡を含めた周知徹底を更にお願いをしたいわけでございます。
 また、その際、今日も患者の方来ていらっしゃいますけれども、この事務連絡、大変これ分かりづらい、もっと国民に分かりやすい形でのそういう工夫も是非お願いをしたいということもございましたので、お伝えを申し上げたいと思います。
 この脳脊髄液減少症につきましては、二〇〇七年度より厚生労働省の厚生労働科学研究事業の一つといたしまして、脳脊髄液減少症の診断、治療法の確立に関する研究班が設置をされまして、髄液漏れと症状との因果関係を明らかにし、診断基準の作成、治療方法の確立、さらにだれが見ても納得できる診療指針であるガイドラインの作成を目的にこの研究事業が進められてきたわけでございます。
 ところが、残念ながら、当初予定の三年間の研究期間内では、科学的な根拠に基づく診断基準を作るために必要な数の症例を得るには至りませんでした。そこで、症例百例を目指して今年度も研究を継続をしていくということになりまして、百例が集まった時点でガイドラインを作成すると、こう理解をしているわけでございますけれども、大臣に、今後の研究事業の見通しに関しましてどのようになっているのか、御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) これも研究事業が二十一年度までで終了してしまうんではないかということで御心配をいただきましたけれども、これは二十二年度も継続をしてやっていこうというふうに考えております。
 研究の名前は脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究ということで、最大平成二十四年度まで実施可能になっておりまして、二十二年度二千五百万円の研究費を付けさせていただいております。これについて、速やかに診断のガイドラインをまとめていただくということを我々はこの研究に期待をして、その中身について随時報告を受けてまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 今年度に今お話がございました脳脊髄液減少症の診断基準の作成、そして来年度にはブラッドパッチ療法の診療のガイドライン、さらに二〇一二年度には保険適用という、当初描いていたスケジュールになるとすれば、大臣が示されておりました次期診療報酬の改定に間に合うと思いますので、是非とも強力に推進をしていただきたい、そのことを思うわけでございます。
 公明党はこうした患者の団体からの要請を受けまして、二〇〇二年から脳脊髄液減少症の問題に取り組んでまいりました。当時、公明党以外の方々、どの党も余り取り合わなかった問題でございましたけれども、二〇〇四年の三月に遠山清彦参議院議員、今は衆議院でございますけれども、参議院の厚生労働委員会で研究推進などを要請をしました。また、古屋衆議院議員もこのブラッドパッチ療法とかの研究と保険適用を求める質問主意書を二〇〇四年には出しております。また、十二月には浜四津代表代行らが脳脊髄液減少症患者支援の会の代表とともに、当時の西厚労副大臣に約十万人を超える署名簿を添えまして治療法の確立とかブラッドパッチ療法への保険適用などの要請をしたわけでございます。二〇〇六年には脳脊髄液減少症のワーキングチームを公明党に発足をしてこの推進をさせていただきまして、三月には渡辺参議院議員が質問をした経緯で、やっと二〇〇七年から先ほどございました研究班が設置をされたという経緯がございました。
 さらに、やはり都道府県でも地方議会とまた患者団体の方が協力をし合って、連携をして、行政にもこの脳脊髄液減少症ということを知っていただこうということで働きかけをされたわけでございます。二〇〇七年には、全都道府県におきまして脳脊髄液減少症の治療推進を求める意見書が採択されております。現在、四十二の府県の公式ホームページで脳脊髄液減少症の治療可能病院ということが公開されるなど、対策が進んでいるわけでございます。
   〔理事森ゆうこ君退席、理事小林正夫君着席〕
 このように、我が党は八年前からこの問題に取り組んでまいりましたが、こうした課題というのは本来やっぱり超党派でしっかり取り組むべき課題だと思います。いよいよその時期がもう来たんではと思うわけでございますので、どうかこのブラッドパッチ療法の保険適用に向けて、もう具体的に、段階になってきたと思いますから、着実に進むように是非ここは長妻大臣の御尽力をお願いをしまして、是非とも推進をしていただきたい、このことをお聞きをしたいと思います。認識をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) まず、診断のガイドラインを作成をするということが大前提になってまいります。今度はきちっと必要な症例数を確保をして、その診断のガイドラインの作成を目指していきたいということに、まずはこの研究を途中の報告も含めて見ていくということであります。改めてこの研究の責任者に今日の質疑もお伝えをして、国会でもかなり期待が高いということを伝えていこうと思っております。
○山本博司君 是非ともこの脳脊髄液減少症、全国のそういう患者、家族の方々、大変期待をして、やっと研究事業から具体的な形で進めていくという形でございますので、先ほどの軽度外傷性脳損傷の方々はそのまだ先でございますけれども、一つ一つこういう福祉の枠から本当に外れた方々に対するそういう支援を、もう是非とも新しい福祉ということでお願いをしたいわけでございます。
 続きまして、これまでお聞きをしてきました二つの病気、症状によって含まれると思いますけれども、交通事故とか脳卒中などによる脳の損傷で記憶とか思考の機能が低下する高次脳機能障害についていち早く取組が進められて、支援事業が実施されていると思います。
 そこで、この高次脳機能障害の支援普及事業、こういった方々、どう支援をしているかという体制をお聞きをしたいと思います。
○大臣政務官(山井和則君) 山本委員、御質問ありがとうございます。
 この高次脳機能障害に関しましては、障害者自立支援法に基づくサービスの対象であることを丁寧に周知してもらうよう、障害保健福祉関係主管課長会議等で繰り返し都道府県に対して依頼をしております。
 また、国立障害者リハビリテーションセンターが都道府県等と連携し、平成十三年度から平成十七年度までの間、計十二地域において、全国に普及可能な支援体制を確立するためのモデル事業を実施しております。
 また、三番目に、モデル事業の結果も踏まえて、平成十八年度より、患者、家族からの相談への対応や普及啓発活動等を行う高次脳機能障害支援普及事業を開始しました。
 そして四点目には、高次脳機能障害支援普及事業はこれまでに全都道府県で実施されております。この普及事業においては、高次脳機能障害に関する支援の中核となる支援拠点機関を置き、障害の方やその家族の方に対する専門的な相談支援、医療機関を始めとする関係機関とのネットワークの充実、障害に関する研修による普及啓発等を実施しております。
○山本博司君 是非とも、この支援体制の強化ということをお願いをしたいわけでございます。
 この支援普及事業の中には、障害のある方とか家族にとりましては大変重要な事業でございまして、診断、治療から社会復帰という連続したケアを本当にどうするのかという意味では充実が求められているわけでございます。しかし、残念ながら、この支援拠点機関というのは、全国によりましてばらつきといいますか、立ち上がったばかりのところもございますし、地域によるばらつき、格差がございます。ですので、こうした方々に対する支援サービスの質の均てん化というのは大変大事だと思います。その点に関しましてはいかがでしょうか。
○大臣政務官(山井和則君) 全国どこの地域に住んでおられても、格差なく安心して生活できるようにする体制がつくることが重要であると考えております。高次脳機能障害の方や家族などから相談への対応等を行う支援普及事業は全都道府県で実施されているが、その中で、支援の中核となる支援拠点機関、病院や福祉施設などは、平成二十二年の四月一日現在、四十六都道府県で六十三か所設置されておりますが、今年度中には全都道府県で設置される見込みとなっております。
 この各都道府県の支援拠点機関で相談対応や普及啓発の業務を行う支援コーディネーターの支援技術の向上を図るため、平成二十一年度から国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、専門的な研修や支援コーディネーター同士で意見交換を行う全国会議を開催しております。
○山本博司君 この高次脳機能障害の方々、そういう様々な支援強化という意味で、よろしくお願いをしたいわけでございます。
 それでは、こうした高次脳機能障害の方々たくさんいらっしゃいますけれども、先日、私は厚生労働委員会で、総合福祉法、障害者自立支援法を廃止して、総合福祉法が議論をされておりますけれども、発達障害の方々の意見、これをどう反映するかということを質問をさせていただきました。今この制度改革推進会議で部会等を開きまして、昨日も制度推進会議が開かれたということを聞いております。
 この中に、じゃ高次脳機能障害の方々、こういった方々の意見をどう集約をしているのか、このことに関しまして、内閣府の方よろしくお願いしたいと思います。
○政府参考人(松田敏明君) 御説明申し上げます。
 今、先生御指摘のございました総合福祉法の制定に向けまして、私ども内閣府で障がい者制度改革推進本部の下に障がい者制度改革推進会議と、こういうものを設けて各分野にわたります検討を進めていただいているというふうなことでございますが、この中で、特に総合福祉法の制定に向けまして総合福祉部会、こういうものを新たに設けまして、この中に関係団体の方にもメンバーとして参加をしていただいているというところでございます。
 また、発達障害者につきましても、総合福祉部会におきまして関係団体の方にメンバーとして参加していただいておりますほか、昨日の親会議におきましても自閉症に関係する団体からのヒアリングを行ったところでございます。
 今後とも、障害の関係者の方々の意見を十分踏まえながら、制度改革に精力的に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
○山本博司君 今、高次脳機能障害の方々も入っているということでございますね。
 今、障害者のこの総合福祉法ということをどうするかということで、様々団体の方、ヒアリングをされていると思います。その中で、この障害の範囲ということをどう見ていくかということが大事な分野でございまして、この障害の範囲、今までですと三障害を含めた形の部分でございましたけれども、やはり発達障害とか難病とか高次脳機能障害の方々とか、所得とか住宅の確保とか生活支援の分野でのサービス拡充にこうした方々の範囲に入るかどうか、このことによって大きな変化が生ずるわけでございます。
 大臣、こうした、現時点でございますけれども、この障害の範囲の拡大ということ、この高次脳機能障害の方々も含めましてどのような今認識でおられるんでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) まず、御存じのように、今の時点でも発達障害や高次脳機能障害については脳の機能障害としてとらえられておりまして、障害者自立支援法に基づく福祉サービス等の対象となっておりまして、予算措置で二十二年度からは低所得者の方は福祉サービスは無料ということにさせていただいております。
 その一方で、いわゆる制度の谷間と言われておりまして、難病等で障害者自立支援法に基づく障害福祉サービス等の対象とならない方々もいらっしゃいます。そういう方々についてはどう扱うかということで、私どもは以前から制度の谷間がない、そして利用者の応能負担を基本とする新たな総合的な制度をつくると、こういうことを申し上げておりますので、その議論の過程でその扱いについても決定をしていきたいと考えております。
○山本博司君 是非とも、この障害者、漏れない形での範囲の拡大も含めて検討をしていただければと思うわけでございます。
 今日は、脳脊髄液減少症とか軽度外傷性脳損傷と言われた方々の、二つのこうした制度の谷間で大変御苦労をされている方々の部分でございますけれども、こうしたある日突然、事故、交通事故等に遭って今までの生活が一変してしまったと、そういう方々が孤立しないで地域で暮らすことができると、そういう意味で福祉的な支援の策の充実ということが大変大事でございます。
 私たちは、この障害があるなしとか年齢等にかかわりなく、安心して暮らせるユニバーサル社会の形成を推進をする必要があるわけでございます。最後に、こうした考え方、大臣の御見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今言われたユニバーサル社会というのは、私が理解するのには、年齢、性別、障害の有無などにかかわらず、だれもが暮らしやすい社会を目指すということだと思います。
 私も、今少子高齢社会の日本モデルをつくろうということでビジョンづくりをしておりますけれども、まさにこういうユニバーサル社会というのも一つの少子高齢社会における日本モデルの到達、ゴールではないかというふうに考えておりまして、こういう考え方に基づいて、具体的には、障害者自立支援法に代わる制度というのを具体的に今議論をしているところであります。
○山本博司君 是非とも大臣、この様々、大変御苦労されている方々の支援を強力にリーダーシップを持って発揮をしていただきたいと思います。
 以上でございます。