参議院 厚生労働委員会 第17号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 初めに、法案に入る前に、医療の問題に関連をいたしまして、脳卒中対策につきましてお聞きをしたいと思います。
 がん、心臓病に次いで、日本人の死亡原因として三番目に多いのが脳卒中でございます。先日も、プロ野球のコーチが突然にくも膜下出血で倒れ、亡くなられるという悲しいニュースもあったわけでございます。最近では、医療技術の進歩に伴いまして、脳卒中の患者の方々は、発症から急性期、回復期を経て維持期に至るまでに適切なリハビリを行うことによりまして回復をし、社会復帰が可能となるケースも多くなっております。発症の予防とともに、患者の容体に応じて切れ目のない医療体制のネットワークが構築できるように、地域での対策が求められていると思います。
 先日、私は最先端の取組を行っております横浜市の脳血管医療センターを訪問させていただき、様々な視察をさせていただいたとともに、患者の方々とか家族の皆様方から貴重な御意見、御要望をお聞きをする機会がございました。
 この横浜市脳血管医療センターは、脳卒中の専門病院として、急性期医療から回復期のリハビリテーションまで一貫した治療を提供をしておりました。回復期のリハビリ病棟の在宅の復帰率は八三%、全国平均の六六・一%と比較しても充実をしておったわけでございます。また、二十四時間三百六十五日体制で専門医がCT、MRI等の機器を活用し診断、治療を行っておったわけでございます。
 そこで、こうした視察の中でお聞きした中で幾つかお聞きをしたいと思います。まずお聞きをしたいのは、新しい治療方法の普及促進について伺いたいと思います。
 脳卒中の死者のうち約六割を占める脳梗塞は、発症から三時間以内ならば血栓溶解療法、tPA療法で後遺症が残らずに劇的に改善する可能性があり、この療法そのものは平成十七年から保険適用がされております。しかし、副作用の危険が高くて、条件を満たした医療機関だけが実施可能と言われておりますので、治療を受けておりますのは年間約二十一万人と推計される患者全体のわずか二%に限られているということでございました。
 普及が進まない大きな要因といいますのは、まだまだこうしたことが一般市民への周知が不足をしているということとか、救急搬送体制が脳梗塞治療に適した体制になっていないということも言われております。
 そこでお聞きをしたいわけですけれども、この血栓溶解療法につきまして更に普及促進に努めるべきであると考えるわけでございますけれども、現状の状況に関しましてまずお聞きを申し上げたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) これは、新型インフルエンザのワクチンの議論でもよくありましたけれども、なぜ三時間なのかというのがやっぱり極めて大事なところだろうと思います。有効性ということについては私も極めて高いものがあるということは目の当たりにいたしました。
 しかし、その中で、やはり合併症というものが、副作用といいますか、血栓を溶かす働きがあるわけですから、出血をさせてしまうと。この副作用が二一・七%という報告もありますし、ですから最初の診断がいかに大事であるか。しかも、その時間が三時間以内。心筋梗塞あるいは狭心症等であればもう少し長い時間がゴールデンタイムとなるわけでございますけれども、まずは時間を早くするということと診断をしっかりするということが非常に大事なことだろうと思います。そんな中で、三時間以内に的確な診断、治療ができるということで、今限定的にされているというのが現実の認識だろうと思います。
 その後のネットワークの構築につきましては、委員がおっしゃったとおりでございます。何もそれは脳血管疾患に限らず、すべての分野で必要なことだろうと思いますが、今推進のことについて周知をもっと図るべきだということがございました。これは、有効性はもちろんのこと、やはり正確な時間内と、短時間であるということと、その副作用も含めた診断がしっかりしなければいけないということを改めて周知する必要があると私は思っております。
○山本博司君 この現状の対応のtPA療法の症例数というのは現実、掌握はされていないんでしょうか。
○大臣政務官(足立信也君) 承認後、四年間の実施症例数の推計でございます。一年目が三千二百八十一例、二年目が五千三十二例、三年目が六千四百七十九例、四年目が七千六百九十九例で、累計で見ますと二万二千四百九十一例ということでございます。
○山本博司君 まだこの療法につきまして、周知の部分も含めてまだこれからと思うわけでございますけれども、この脳卒中の患者の命といいますのは、今お話がありましたけれども、発症急性期の対応によって左右をされるということでございまして、この救急搬送と医療の連携というのが大変重要になってくると思います。
 その日、横浜市の方からもその横浜市の例をお話を聞かさせていただきました。平成二十年度から試行実施を経まして、二十一年度から脳血管疾患に対応した救急医療体制を正式に運用をして、三十か所の医療機関における受入れ体制とかtPA療法に対応可能な救急搬送体制の整備を図っていらっしゃいました。
 こうした先進的な体制というのを全国的に普及させるということが大変大事であろうと思います。救急搬送を管轄する総務省、そして医療を整備する厚生労働省の連携の仕組みをつくるということが大変求められているわけでございます。
 公明党は、平成十九年に救急医療対策推進本部を立ち上げまして、救急医療の現場視察や実態調査を行いました。脳卒中などの救急医療体制の整備を当時の総務省、厚労省の両省に要請をいたしまして、積極的に働きかけをいたしました結果、昨年の五月に消防機関と医療機関の連携で患者の適切な医療機関に迅速に対応する消防法の改正も実現をしたわけでございます。
 こうした連携体制の充実、大変重要でございます。現状どのようになっているのか、この点に関しましてもお伺いをしたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) 三年前、十九年のときに公明党さんがドクターヘリ法案というのを熱心にやられました。そのとき私どもは、やはり救急医療を始めとした医療提供体制は都道府県が構築する、しかしながら救急に携わっている消防は市町村の単位でやると、この連携のまずさがやはり救急医療体制、業務体制としての構築が貧弱であるというような認識に立って議員立法もさせていただいたところでございます。
 そして今、二十一年五月、昨年の消防法の改正についてですが、各都道府県において、医療機関と消防機関の連携の下、救急患者の状況に応じた搬送先となる医療機関のリストなど、地域における傷病者の搬送及び受入れの実施基準を策定し、医療機関と消防機関で共有すると、そういうことになっているわけでございますが、現在、その策定が済んでいる、二十二年四月一日現在ですが、五つの都県でございまして、東京都、石川県、香川県、愛媛県、鹿児島県でございます。
 厚生労働省といたしましては、もちろん総務省、消防庁とともに実施基準を策定する際の参考となるようなガイドラインを策定し、都道府県にお示ししておりますけれども、現実はまだ五都県であるということでございます。
○山本博司君 今、五の都府県ということでございますけれども、やはりこうした体制というのはしっかり推進をお願いを申し上げる次第でございます。
 また、病院での治療を経た後で、回復期から維持期のリハビリテーションの充実ということも大変地域生活を行う上で、患者のみならず家族の生活にも大きく影響を与えるわけでございます。
 墨田区の事例でございますけれども、平成二十年度から、医師会と行政及び地域リハビリテーション支援センターであります東京都リハビリテーション病院との連携によりまして、在宅リハサポート医制度、これが国の負担によりまして利用者は無料で受けられるようになっているわけでございます。リハビリの必要な区民の方々が住み慣れた地域で安心してリハビリができるようという、医療と介護の両面から支援策が取られている例でございます。
 全国的に、回復期における医療でのこのリハビリと、維持期におけるこの介護でのリハビリ、いずれもまだ絶対的に不足をしているとの指摘もございます。平成二十一年の医療と介護の報酬改定の際には、こうした点も配慮が必要であると思います。今回の医療の報酬改定でも対応がなされていると思いますけれども、更なる報酬改定を求めます。
 また、医療でのリハビリが百八十日の日数制限が設けられて、患者の皆様から、機能を維持改善していくためには大変不便との声もいただいております。
 こうした様々な問題解決へ更なるリハビリテーションの支援の拡充が必要だと思います。このことに関しましても御見解を示していただきたいと思います。
○大臣政務官(足立信也君) まず、二年前の改定において、これは標準的算定日数の今お話がございましたが、これは、リハビリテーションの継続によって改善が見込まれると医師が判断した場合は、この算定日数の目安を超えても何ら今までと変わりなく継続することができるというようにまずはなっております。
 そして、今回の改定でございますが、第一に、回復期リハビリテーション病棟の入院料を引き上げました。そして第二に、休日にリハビリテーションを行える体制を取っている病棟や集中的にリハビリテーションを行っている病棟に対する入院料加算を新設しました。そして第三に、急性期医療機関から回復期に入院する病院や在宅に至るまで、あらゆる場面においてリハビリテーションをも含めた充実した医療を受けることができるよう、地域連携診療計画に基づく連携に対する評価、これを充実させました。しかしながら、様々な意見があるのは私も存じておるとおりでございます。
 個人的な意見になるかもしれませんが、私は、急性期のリハビリテーション、回復期のリハビリテーション、そして維持期という話がありますが、実は回復期というものはもっと時間が掛かる分野も相当あると。この部分は、もちろん医療での回復期のリハビリテーションという考え方もありますが、障害となられた方々の社会復帰や職場復帰のためのリハビリテーション、この部分も極めて大事だと思っています。そして、維持期というのは実はその後になるんではなかろうかというのが私の見解でございまして、そのことにつきましては今、厚生労働省内でどのような形が望ましいのか検討しているところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。是非ともその推進をお願いをしたいわけでございます。
 今、お話を申し上げましたように、この緊急搬送体制の充実とか、専門的な医療機関の質、量両面での確保とか、リハビリ施設の整備、また国民への意識啓発、またさらには財源の確保、この脳卒中対策といいますのは、省庁を超えまして、地方自治体、医療保険者、医療従事者など、多くの国民各位の協力を得なければ解決ができない課題がたくさんあるわけでございます。
 患者会の皆様からは、がん対策基本法の経験に学びまして、脳卒中対策基本法の制定、これを強く要望され、署名活動も展開をされているわけでございます。こうした声を受けまして、国を挙げて力を注ぐためにも総合的な脳卒中対策が必要じゃないかと考えるわけでございます。
 そこで、最後に大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今ずっと貴重な御指摘をいただきましたけれども、まずはこのtPAというのが一定の条件の中で使えば非常に後遺症を減らす効果があると、三時間以内ということで、これは周知されているようで周知されていない、御存じない方が多い。どこの自宅の近くの病院でそれができるのかどうか、こういうことを多くの国民の皆さんが理解をいただくということや、あるいは今おっしゃられたリハビリが非常にこれは重要になってくる。ただ、その前提としてもちろんきちっとした治療体制が必要であることは言うまでもありません。
 そしてもう一つは、予防ということでございますけれども、糖尿病あるいは高脂血症などなど、この前提となる成人病というか、今いろいろな健診もしておりますけれども、そこでその兆候がある方はそれを是正をするような、そういう取組をするということであります。
 繰り返しになりますけれども、一つ重要なのが、やはり迅速に的確な医療機関に搬送されるような初期の対応というのは、これは何度繰り返しても繰り返し過ぎないぐらい重要でございますので、これは消防庁おっしゃられるように、役所は違いますけれども連携をして怠りなきように取り組んでいきたいと、国民の皆さんの死因の三位がこの脳卒中でございますので、そういう取組を続けていきたいと思います。
○山本博司君 是非ともこの命を守るという点での対策をお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、法案に入らさせていただきたいと思います。
 我が国の医療保険制度、すべての国民が何らかの公的医療保険制度に加入するいわゆる国民皆保険制度が取られており、国民が安心して適切な医療を受けることができるこの制度は国民生活の安定に大きな役割を果たしております。
 今回の改正案の基本的な考え方につきましては、財政状況の悪化に苦しむ市町村国保を始めとする各医療保険制度に対して保険料の上昇をできるだけ抑制しようとするものであり、一定の評価ができるのではないかと考えます。
 しかしながら、こうした中、やはり問題がありますのは総報酬の導入でございます。
 今回の改正案では、平成二十二年度から二十四年度までの間の特例措置として、協会けんぽの行う療養の給付等に関する国庫補助率を一三%から一六・四%に引き上げるために必要となる財源を確保するために、被用者保険が負担する後期高齢者支援金の算定方式の三分の一について総報酬割を導入することとされたわけでございます。この結果、協会けんぽの負担する支援金に対する国庫補助が約九百十億円、平成二十二年度につきましては六百十億円程度削減することになったわけでございます。これは、本来、国庫で負担をすべきものであり、健保組合や共済組合の加入者に実質的に負担を肩代わりさせるのであれば、納得を得るための努力を尽くすべきではなかったかと思うわけでございます。
 この問題につきましては、社会保障審議会医療保険部会における議論、平成二十一年十二月四日、十二月八日の二回行われたと伺っております。この議論の中では、総報酬制への支持を示す方がいる一方、負担増となる健保組合側からは強い反対が示され、高齢者医療制度の見直しと併せて議論するべきとの意見も出されたわけでございます。これは余りにも拙速な議論ではなかったかと思います。平成二十二年度の予算編成時期であったとはいえ、もっと当事者間の意見を聞くために時間を掛けて丁寧な議論をすべきではなかったかと考えますけれども、この点に関しましての認識をまずお伺いをしたいと思います。
○副大臣(長浜博行君) 先ほど来議論が出ているところだというふうに思っております。
 医療保険部会の開催日数、先生今二回というお話でありましたが、十一月十六日、十二月四日、十二月八日と三回にわたって議論をさせていただいたところでございます。拙速ではなかったかという御指摘でありますが、スピーディーに処理をせざるを得ない状況であったことは事実でございます。二十年秋以来、まあリーマン・ショック以来の経済の影響が大幅に出る状況の中において、過去の協会けんぽにおける積立金の剰余金もなくなる状況の中において、四千五百億の借入金を起こしているような状況の中においてどうして対処していくのか。もちろん、現在この場で審議をしていただいておりますが、先生御承知のように、年末の十一月から十二月にかけて予算編成をしなければいけない、その予算折衝の過程の中において、この予算関連法案のもちろんスキームを盛り込んだ形での財源を確保しなければいけないということで、大変ぎりぎりの財務当局との交渉をしていたことも事実でございます。もちろん、両石井先生の御指摘にもございましたように、国庫からの真水財源をすべて投入できればそれが、まあ表現が悪いんですが、よろしいのかもしれませんですけれども、限られた財政状況の中において、先生よく御承知のように、今回の二十七兆円という厚生労働予算というのは、大変巨額な金額の中におけるその財政選択の中において、先ほど御説明をいただいたような形でのスキームを取りながら国庫財源も投入するというぎりぎりの交渉をしたわけでございます。
○山本博司君 午前中の参考人の方々のお話も含めて、納得をされていないという現実があるわけでございます。
 この後期高齢者支援金に関しましては、これまでに被用者保険であります健康保険組合、協会けんぽ、共済組合から後期高齢者医療制度に対して毎年三兆円を超える支援が行われておりまして、加入者の人数割で支援割合が決められておりました。
 これに対して、今回の改正案では、平成二十二年度から支援金の三分の一相当の部分を総報酬割として割合を決めることとしているわけです。その結果として、相対的に報酬が多い健康保険組合の負担が増加しているため、健保組合の側から見れば、高齢者医療のために国庫補助の削減をサラリーマンが肩代わりしていると言われているのでございます。高齢者の医療費をどのように負担をするかという制度の問題であるならば、現在行われている高齢者医療制度の見直しの中で議論をすべき課題であったと思います。
 政府の高齢者医療制度改革会議において議論が始まった段階で制度の基本を唐突に変更することに違和感を持っている、また政府の対応に不信感を感じている、今日の午前中の参考人の方でもそうですけれども、多くの声が数多く上がっているわけでございます。なぜ高齢者医療制度の見直しの結論が出る前にこのような提案をしたのか。この時期に提案をした理由、これを明快に、もう一度お願いをしたいと思います。
○副大臣(長浜博行君) 御指摘のように、高齢者医療制度の改革と同タイミングであるならば、当然その高齢者医療制度改革の中での財源負担の問題と答えが一緒に出せたのかもしれません。しかし、現在申し上げているところは、高齢者医療制度を待つ時間的余裕がない状況の中における急速な協会けんぽの財政悪化の状況の中において、かねがね議論があったところの総報酬割、応分負担の被用者保険の中における分担ということで今回こういう方法を取らさせていただいたわけでございます。
 先ほども申し上げましたけど、平成二十一年の三月、舛添厚生労働大臣主宰の高齢者医療制度に関する検討会の中においても、支援金について被用者保険の中では保険者間の財政力に応じての応能負担にすべきとの意見がございましたし、先ほどの医療部会の中においても、もちろん健保連の皆様も参加をされているし、協会けんぽの方も参加をされているという状況の中での議論の中でありましたが、こういった議論は続いていたわけでございます。
○山本博司君 様々な意見が出されていたわけでございますけれども、平成二十一年の十二月二十三日に協会けんぽの国庫負担及び診療報酬改定について決定をしたわけでございます。
 今回の改正案が通ることになりますと、医療費の適正化等に積極的に取り組み、医療保険制度を支えてきた健保組合の役割、努力を無視することにもなりかねないわけでございます。主に大企業の従業員が対象であるとはいえ、健保組合の財政状況は、午前中の参考人のお話ありましたけれども、悪化の一途をたどっております。今年度でも約九割の組合の収支が赤字になり、経済状況の悪化によって保険料収入の減少が顕著になり、赤字総額は約六千六百億円にも上る見込みとなっておるわけでございます。
 このような状況の中で、協会けんぽへの国庫負担軽減分を健保組合にも、今日の午前中でありましたけれども、合意を得られないままに一方的にお願いをすることに結果としてなってしまったことというのは、適切な選択とは言い難いのではないかと思います。これも与党の民主党の津田委員からも御指摘がございましたけれども、合意を得るためにもっともっと努力をすべきではなかったかと思いますけれども、この点に関しまして、いかがでございましょうか。
○副大臣(長浜博行君) 言い訳をするつもりはございません。合意を得る努力をもっともっと続けてまいりますので、大変厳しい財政状況の中でということは午前中の質疑でも御理解をいただけている部分だと思いますので、この法案を出しているからこれでもう話をしないということではなくて、先ほど来申し上げておりますように、私の方から何度でも御説明に上がるつもりでございますし、努力は続けさせていただきます。
○山本博司君 このようなやはり拙速な議論ということが合意を、難しくなっているという状況だと思うわけでございます。この国民皆保険制度を支えてきた健保組合の関係者、加入者の努力に報いるべく、後期高齢者支援金の一部の算定方法にこの総報酬制の導入、これをやめるべきではないかと思います。
 また、二〇%まで国庫補助率を引き上げるべきとの主張も理解できるわけでございますけれども、厳しい国家財政の状況も考慮すべきでございます。今回は一六・四%への引上げが限度であること、保険料負担が増加してしまうことにつきまして、協会けんぽ加入者の十分な理解を得られるように調整に努める必要があると思います。
 そうした状況を考えますと、今回は、少なくとも協会けんぽ国庫補助率一六・四%の引上げに必要な財源はすべて国が負担すべきと思います。子ども手当の支給に要する費用と比較しましたら、さほど大きな額ではないと考えるわけでございます。
 この点に関しましては、大臣にお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今の御質問につきましては、ぎりぎりの国庫負担、そしてそれに加えて総報酬割ということで、いわゆる応能負担の考えを一部導入をさせていただいて保険料の上昇をぎりぎりまでできる限り抑えていこうと、こういう発想で取り組んだわけであります。
 それで、子ども手当の話でございますけれども、これは確かに、子ども手当の緊急性、目先を考えますと、そういう緊急性という意味ではそういう議論もあるのかもしれませんが、これまでの歴史で結局、目先のこういうことが緊急だから子供に掛かる予算は後回しにしよう、後回しにしようということで、結果的に先進七か国で出生率が最低、GDPになっても子供に掛ける予算が最低レベルになってしまったということで、もう四十五年後の推計では一人の現役が一人のお年召した方を支えるということで社会保障の担い手がいなくなってしまう、少なくなってしまうということがもう目に見えている中で、やはり子供のこういう問題というのはあした今日の緊急の課題ではないかもしれませんけれども、そういう議論を積み重ねて結局、先送り先送りで、いつになってもその予算が付かないと、こういうことを繰り返してきたのではないかというふうに考えております。
 どちらも重要な問題でございますけれども、我々の政策判断の中で今回の提案をさせていただき、ぎりぎりの財政の中で極力、保険料上昇を抑えると、こういう取組をさせていただいているというふうに御理解をいただきたいと思います。
○山本博司君 答弁にほとんどなっていないと思うんですけれども。
 やはり、先ほども石井委員とか様々そのお話がございました。やはり、この問題に関しては真正面から取り組んでいただきたいと、こう思うわけでございます。
 この健康保険組合、大変厳しい財政状況にあるということで、この財政力の弱い健康保険組合の後期高齢者支援金とか前期高齢者納付金に係る負担の軽減、これを図る必要があると思います。その意味で、負担の軽減策、このことの見解をお聞きをしたいと思います。
○副大臣(長浜博行君) 財政が窮迫をしている健保組合への国庫補助の問題でありますが、二十二年度予算で二十四億四千万円、前期高齢者納付金等の負担が重い健保組合に対する助成、これは百六十から倍増しまして三百二十億円の予算措置をしているところでございます。
 従前の議論にもありましたとおり、この支援措置は与野党なくこの厚生労働委員会の中での強い要望だというお話も先ほど出ていたようでありますので、来年度の予算折衝の中においても、先生の御質問の趣旨を生かして折衝をしてまいる次第でございます。
○山本博司君 是非ともこの健保組合、財政大変厳しい状況の部分ございますので、そうした軽減策、お願いを申し上げたいと思います。
 次に、国保の財政状況についてお伺いをしたいと思います。
 今回の改正におきまして、前政権で行っておりました国保の財政支援措置の延長がなされているわけでございます。すなわち、暫定措置となっている保険基盤安定制度、国保財政安定化支援事業、高額医療費共同事業及び保険財政共同安定事業、それに係る平成二十一年度までの期限、四年間延長し平成二十五年度まで継続することとしております。
 現在、多くの市町村、今日の午前中の参考人の方からのお話ございました、一般会計からの法定外の繰り出しを行っておりまして、平成二十年度決算においては、その総額は約三千七百億円となっているわけでございます。依然として厳しい財政状況が続くこの市町村国保からは、これら国保の財政基盤強化策の期限の再延長について要望が出されているところでもありました。
 このため、今回の改正に対しましては、財政状況が厳しい市町村国保に配慮した措置として評価する意見も出されておりますけれども、課題といいますのはこれは抜本的な解決策でございます。暫定的な措置、これを恒常的な措置とすることに含めまして、国保に対する国庫補助を更に増やす、また市町村国保の抜本的な問題解決策、このことに関しましてどう取り組むべきお考えなのか、お聞きをしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 国保の抜本的な改善ということでございますけれども、この厳しい収支というのは言うまでもございません、二十年度の収支は約二千四百億円の赤字ということでございます。これについて、我々はまずは本法案でも広域化を一定程度進めていくということを申し上げ、そしてさらには、前から続いているこの財政基盤強化策の延長に伴う公費の負担額二千五百四十億円、年間でございますが、これを引き続き続けていくということについて取り組んでいくということであります。
 そして先ほど来、答弁申し上げておりますけれども、国保固有の、特有の課題について、これについては今までこういう調査はしておりませんでしたけれども、各国保を選んで特有の課題についての調査をして、どういう改善策がピンポイントで打つことができるのか、こういうことも検討をしていくということであります。
   〔委員長退席、理事森ゆうこ君着席〕
 いずれにしましても、大きい改革といたしましては、後期高齢者医療制度に代わる新しい医療制度、これを打ち立てていくということでありますので、その議論の中でも国保の体力強化、そして広域化、こういう議論が出ておりますので、その中での御議論を見て、我々も対策を強化をする点があれば強化をしていきたいと思います。
○山本博司君 今、問題解決の一つということで、広域化の推進が重要だということがありました。この被保険者が特に少ない小規模の市町村国保、これは高額な医療費が発生することで財政運営が急激に不安定になるという構造的な問題を抱えているわけでございます。平成の大合併によりまして、市町村国保の保険者数は大幅に減少しておりますけれども、それでも財政基盤の強化のためには更なる広域化が求められていると思います。
 そこで、今回の改正では、市町村国保の都道府県単位化を進めるための環境整備として、都道府県が市町村の意見を聞きつつ、新たに広域化等支援方針を策定ができるようになっておりますけれども、具体的に都道府県単位化をどのように進めていくおつもりでしょうか。
 また先日も、総務委員会との連合審査がございまして、地域主権改革法案について議論をいたしましたけれども、市町村国保の広域化はそもそも市町村の自主的な判断にゆだねられているものでありまして、都道府県の市町村に対する関与はこの地方分権、地域のことは地域で決めるという、こういう大きな流れに逆行するのではないかと、こうした指摘もあるわけでございます。この点につきましてもどのようなお考えなのか、お示しをいただきたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 今御指摘いただいた点は貴重な御指摘だと思います。
 地方自治ということで、今、国保は市町村単位でそれがなされているということでありますが、その一方で、余りにも規模が小さい保険者と中規模の保険者と混在をして、格差が開き過ぎているんではないか。
 これ平成十九年度の数字ですけれども、一年間当たりの保険料額の最高が秋田県の大潟村で十二万一千四百三十九円、最低額が沖縄県の粟国村で二万三千六百三十三円ということで、五倍、最高と最低で開きがあるということでございまして、これについて、やはりもう少し安定的に運営をするためには規模を一定程度確保しようということで、そういう意味ではなじみのあるというか、一つの区切りである都道府県が適当ではないかということで、今回、広域化を支援するための広域化等支援方針、これは都道府県が決定をするわけでありますが、もちろん市町村の意見も十分よく聞いて決定をするということで、運営事業の広域化、財政運営の広域化、都道府県内の標準設定と三つのカテゴリーに分けて、それぞれ詳細な項目について、都道府県が音頭を取って、こういう方針を決定するということになっているところでありまして、まずこういう方策から進めて都道府県のリーダーシップを発揮していただくような、そして地方自治体の自主性も尊重していくような、そういうまず取組を進めていきたいと思っております。
○山本博司君 ちょっと時間がありませんので飛ばして、最後の質問をしたいと思います。
 社会保障の今後ということでお聞きをしたいと思います。
 医療、また年金、介護、福祉、この社会保障制度の、安定的に運営され、万が一のセーフティーネットが構築されてこそ活発な経済活動も行うことが可能になり、我が国においても経済成長を目指すことができると思います。アメリカでは、この国民皆保険の第一歩となる医療保険制度の改正を成立させ、オバマ大統領が署名をしたという報道もございました。我が国の医療保険制度はいずれの保険者にとっても大変厳しい財政状況にございます。安定的に運営がなされるような不断の見直しを行い、国民皆保険制度を堅持することが大変重要でございます。
 この点に関しての大臣の見解をお聞きして、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) この皆保険というのは、本当に日本が誇るべきものだというふうに思います。よく、社会保障の充実と経済成長は両立しないと、こういうことを言われる方もいらっしゃると思いますけれども、私は、経済成長の基盤をつくるものが社会保障であると、こういう考え方ができるのではないかというふうに考えております。
 そのためには、やはりその制度の不断の見直しと、そして財源を確保するというのは言うまでもありませんが、その財源については、税金あるいは保険料、窓口の自己負担、あるいは国の財政でいえば、経済成長をして税収を上げるか、あるいは借金をするか。
 非常に、財源というのはどこから持ってくるかというのは限られているわけでございますので、国民の皆さんの御理解をいただいて、何しろ浪費をなくすというのは大前提でございますけれども、それについても、政府の中で、今後の将来像を示すような議論をしていきたいというふうに考えております。