参議院 厚生労働委員会 第18号
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日は、育児・介護休業法の一部改正案に関連しまして、舛添大臣にお聞きを申し上げたいと思います。
その前に、一点だけ高齢者の白内障対策に関しましてお聞きを申し上げたいと思います。
白内障は、加齢などが原因で本来透明である目の水晶体、レンズに相当する水晶体が濁って、物がかすんで見えたりとか、光がぎらついて見えたりする病気でございますけれども、濁った水晶体を取り出して、代わりに人工の眼内レンズを挿入する白内障手術によって見え方が大幅に改善をし、高齢者に喜ばれているわけでございます。
ただ、今日まで、そして現在も広く使われております眼内レンズは一点にピントが合う単焦点眼内レンズであるために、ピントが合う距離以外を見る場合はほとんどの場合眼鏡が必要となる場合がございます。これに対しまして、多焦点眼内レンズは、遠くも近くも見える遠近両用レンズのために眼鏡には依存しない生活が可能になりますから、高齢者の方々の生活の質の向上が期待をされているわけでございます。
課題は、これは高額の治療費でございます。現在、国内で多焦点眼内レンズの挿入手術を実施している施設といいますのは数十施設ございますけれども、保険が適用されていないために、費用は両眼で九十万円から百二十万円にも上るわけでございます。
昨年七月に多焦点眼内レンズの挿入手術は、厚生労働省から将来的な保険適用のための評価を行う先進医療の適用を受けまして、先進医療の実施医療機関として承認されれば保険療養との併用ができることになったわけでございます。レンズの挿入手術自体は保険適用外でございますので、手術前後の診療に関しまして保険適用となるために、費用は両眼でも六十四万円から八十万円でございます。
国は今申請を随時受け付けており、実施医療機関は着実に増加していくものと思われておりますけれども、この多焦点眼内レンズに関しまして眼科医の間でも理解が十分に浸透していないのが現状でございます。患者にも余り知らされておりません。こうした眼科医の方々、患者の方々に理解を広げるとともに、早期のこの保険適用が望まれると思います。今後の取組に関しましてお答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(水田邦雄君) お答えいたします。
先進医療として認められております技術の保険導入についてでございますけれども、これは診療報酬改定の際に検討することとしてございまして、当該技術の有効性、安全性、普及性、それから技術的成熟度等につきまして専門家の御意見を伺いながらその取扱いを決定しているところでございます。
お尋ねの多焦点眼内レンズを用いました水晶体再建術についてでございますが、これも同様の取扱いでございまして、本年秋ごろに関係医療機関から実績報告をしていただいた上で専門家の御意見を伺いつつ、保険導入について検討していきたいと、このように考えております。
○山本博司君 是非とも早期の保険適用になるようにお願いを申し上げたいと思います。
次に、今回の議題でございます育児・介護休業法につきましてお聞きを申し上げたいと思います。
本法案は、男女共に子育てをしながら働き続けることができる雇用環境を整備するために大変重要な改正であると思います。少子化対策の観点からも喫緊の課題となっておりますワーク・ライフ・バランスの環境整備を一層に進める必要が高まっていると考えるわけでございます。
そこで、まず女性労働者の継続就業率につきましてお聞きを申し上げたいと思います。
今、約七割の女性の方々が出産を機に退職せざるを得ない状態、この二十年間続いております。女性の育児休業は、取得率が約九割になり、定着はしてまいりましたけれども、まだまだ制度が十分に機能していないのではないかと考えるわけでございます。平成十九年十二月に決定をされましたワーク・ライフ・バランス憲章及び行動指針では、十年後の平成二十九年の目標値としまして、第一子出産前後の女性の継続就業率を五五%、こう掲げてございますけれども、これは更なる努力をしていかなければなかなか難しいのではないかなと思います。
その意味で、この女性労働者の方々の継続就業率が上がらない理由をどのように分析をしているのか、また今回の改正ではどのように対応しているのか、この二点に関しましてお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(北村彰君) お答え申し上げます。
平成十七年の出生動向基本調査によりますと、第一子出産前後の女性の継続就業率は三八%というふうになっております。この出産の前後で仕事を辞めた女性労働者に対しましてその理由を聞いたところ、仕事を続けたかったが仕事と育児の両立、この難しさで辞めたというのが二四・二%、また、解雇あるいは退職勧奨されたというのが五・六%などとなっております。つまり、三割の方が継続就業したかったけれども退職したということでございます。
このうち、仕事と育児の両立の難しさで辞めたという回答をされた方につきまして、その理由を聞いてみましたところ、自分の体力がもたなそうだったというのが五二・八%で最も多くなっているところでございます。これは、育児休業から復帰すると長時間労働を求められるなど、育児休業から復帰後の働き方が仕事と子育ての両立を可能とするものとなっていないということが要因の一つというふうに考えられるわけでございます。
このため、今般の改正法案におきましては、三歳までの子を養育する労働者に対しまして、短時間勤務制度そして所定外労働の免除を制度化すること、また、子の看護休暇の日数を子供の人数に応じたものとすること、さらに、男性の育児休業の取得を促進すること、こういったような内容を盛り込んでいるところでございます。
今般の改正法案によりまして、仕事と子育てを両立して、継続就業ができる環境の整備を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○山本博司君 次に、男性の育児休業の取得促進策につきましてお聞きを申し上げたいと思います。
厚生労働省の調査によりますと、四十歳以下の男性社員の三割が育休を取りたいと、こう考えておりますけれども、実際には、男性の育休取得率といいますのは、二〇〇七年で一・五六%にとどまっております。先ほどの憲章及び行動指針では、十年後の目標値は一〇%としておるわけでございますけれども、まだまだでございます。現在の育児参加、大変不可欠の課題でございます。男性の育児参加という意味では不可欠でございます。
公明党としましても、この男性の育児参加を一定の割合で導入するパパクオータ制、このことを主張してまいりました。本法案でも、これまでの規定を改めて、専業主婦がいても希望すれば育児休業が取得できるようになり、さらに、夫婦共に育休を取ると取得できる期間が延長されるパパ・ママ育休プラスという内容が盛り込まれております。
こうした男性の育児休業の取得促進、大変重要であると考えますけれども、改正の具体的な内容について説明を伺いたいと思います。
○政府参考人(北村彰君) お答え申し上げます。
男性の育児休暇、今委員おっしゃられましたけれども、非常に大切な課題でございます。特に、育児休業は男性の育児休暇のきっかけになる大事な制度と私どもも考えているところでございます。
男性の育児休業の取得を後押しするために、今回の改正法案におきましては、父母共に育児休業を取得する場合に、育児休業の取得可能期間を延長するパパ・ママ育休プラス、また、出産後八週間以内の父親の育児休業の取得促進、さらに、専業主婦がいる場合に、労使協定により育児休業の取得を除外できるという規定の廃止などを盛り込んだところでございます。
このうち、パパ・ママ育休プラスでございますけれども、ドイツなどのパパクオータ制を参考としたもので、父母共に育児休業を取得した場合に、育児休業の取得可能期間を子が一歳二か月に達するまで延長することができると、こういう制度でございます。
なお、父母一人ずつが取得できる休業期間につきましては、これまでどおり一年に限ることとし、事業主の負担が余り大きくなることを抑えながら、父親が取得すればメリットがあると、こういう制度にしたところでございます。
こうした取組によりまして、父親の育児休業と育児参加の促進を積極的に図ってまいりたいというふうに考えております。
○山本博司君 是非とも促進をお願いをしたいと思います。
次に、育休切り対策についてお聞きをしたいと思います。
景気の低迷によりまして、この育児休業の取得を理由に解雇をされる不利益取扱い、いわゆる育休切りが横行をしているわけでございます。この点につきましては、衆議院段階で修正が行われまして、違反企業名の公表など速やかな紛争解決への対応を実施していただきたいと思います。不利益な取扱いを受けた人が家族や次の就職先のことを考えて泣き寝入りするような事態は避けなくてはなりません。
そこで、この育休切りへの対策についてどのように行っていくのか、教えていただきたいと思います。また、各都道府県の労働局、こうした問題への相談、指導、監督を行っていると思いますけれども、体制の整備が不十分であるとの指摘もございます。法律の実効性確保に向けてのこうした雇用均等室の体制強化、必要であると思いますけれども、この点に関しましてもお答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(北村彰君) お答え申し上げます。
育児休業の取得を申し出た、あるいは取得をしたということを理由とした解雇等の不利益取扱い、これは育児・介護休業法違反でございまして、あってはならないことでございます。こうした事案に対しましては、都道府県労働局の雇用均等室におきまして、助言、指導、勧告により厳正に対処をしてきているところでございます。
また、今般の改正法案におきましても、指導の実効性を更に高めるために、育児・介護休業法違反に対する勧告に従わない場合の企業名の公表、また、都道府県労働局から報告徴収に応じない場合あるいは虚偽の報告を行った場合の過料の創設を盛り込んでいるところでございます。さらに、苦情処理また紛争解決援助のために、労働局長による紛争解決援助制度及び調停制度等を創設することとしているところでございます。
これらに加えまして、労働者が育児休業の申出を行う際に、現行の厚生労働省令におきまして事業主に育児休業申出書を提出することとされておりますけれども、この申出書につきましては、衆議院における御議論も踏まえまして、事業主から休業開始予定日及び休業終了予定日などを追記して労働者に返付するようにすることなどを省令において新たに措置する方向で考えているところでございます。
こうした取組によりまして、育児休業を理由とする解雇等不利益取扱いの防止及び解決に全力を挙げて努めてまいりたいと考えているところでございます。
また、都道府県労働局の体制強化が必要ではないかという御指摘がございました。
都道府県労働局の雇用均等室、大変小さい組織ではございますけれども、育児・介護休業法、均等法、パート労働法などを所管しておりまして、大事な機能を担っているというふうに私ども考えております。
労働者からの相談に対する的確な対応に努めるほか、特に相談がなくても、企業への集団指導あるいは計画的な企業訪問を行いまして、法律が守られているか、規定が整備されているかといったような点を指導するといったように、様々な工夫をいたしながら法の徹底に努めているところでございます。
この法の実効性を高めていくためには、都道府県労働局の雇用均等室の機能を十分発揮していく必要がございまして、御指摘のように、必要な人員体制の整備に私ども努めてまいりますとともに、職員の資質の向上のための研修の充実に努めるなど、しっかりとした体制の強化を図るための努力をしてまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非とも強化をお願いをしたいと思います。
それでは、大臣に質問を申し上げたいと思います。
まず、男性の育児休暇が進まない理由の一つといたしまして、所得が減ることも影響をしております。育児休業給付の水準といいますのは、休業前の六か月の平均給与の五〇%でございます。育休を長く取れば生活の維持は苦しくなるということがございます。
厚生労働省の社会保障審議会少子化対策部会でも、本年二月、給付水準の引上げを今後の課題として指摘をしております。また、今国会でも、雇用保険法の審議が行われまして、給付率を四〇%から五〇%への暫定措置の延長もございました。
こうした育児休業期間中の給与確保というのは重要な課題でございます。今、育児休業給付といいますのは雇用保険でカバーをしておりまして、給付をアップするには新たな財源も必要でございます。その意味で、こうした育児休業制度の取得促進を図るために、税などの別財源を活用しても給付の引上げをすべきとの意見もございます。
こうしたことに関して大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 今委員御指摘のように、雇用保険制度の中でやるということは失業保険よりも上に来ちゃう、五〇を超えると、そういう問題があると思いますから、今、社会保障審議会の中で検討をいただいていますけれども、別建ての制度を考えるということもこれは必要だと思っております。
○山本博司君 是非ともよろしくお願い申し上げたいと思います。
次に、子育て支援策についてお伺いを申し上げたいと思います。
今、経済危機や少子高齢化を乗り越えるためには、人材の育成と確保、これが重要でございます。特に、今後の成長に大きな影響を与える小学校就学前の幼児期に親の経済的な状況によって教育を受ける機会が失われることは避けるべきでございます。
公明党は、未来に人材への大胆な投資を行うヒューマン・ニューディールを提唱しておりまして、幼児教育の無償化を目指しております。幼児教育といいますと文部科学省の施策が多いような印象を受けますけれども、保育行政におきましても、無償化、負担軽減というのは重要な課題でございます。
この幼児教育無償化につきましての大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 財源との絡みという大きな問題がありますけれども、今、社会保障審議会の少子化対策特別部会でそういう問題も含めて議論をしているところでありまして、保育制度の改革と併せて、例えば児童虐待をどうするか、それから子育てに対する経済的支援をどうするか、そういう中でこの幼児教育の無償化、検討を進めていきたいと思っております。
○山本博司君 是非ともこの点に関しましても推進をしていただきたいと思います。
最後の質問でございますけれども、子育て支援策の拡充に関してお伺いをしたいと思います。
今日の議論でもございましたけれども、国内総生産に対します我が国の子育て支援などに関します家族関係支出はわずか〇・八%でございます。出生率を大きく回復をしましたフランス、スウェーデンは三%でございますから、非常に少ないとの指摘もあるわけでございます。
その一方で、政府は、昨年末にまとめました中期プログラムの中で、景気回復後には消費税を含む税制の抜本改革を行って社会保障を強化すると、こうしているわけでございます。医療、年金、介護とともに少子化対策もその柱となっておりまして、具体的な拡充策の検討が重要でございます。
今、日本は、合計特殊出生率が昨年は前年より上がりまして一・三七と、三年連続の上昇となっております。こうした意味でも、更なる子育て支援策の拡充が求められております。大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) まさに子育てに対する財源の手当てというのが、今おっしゃったように、GDPで〇・八%、我が国。これに比べてヨーロッパでは二ないし三%ということで、先般の「子どもと家族を応援する日本」重点戦略の会議でも、みんなが希望するように出産、子育てしようとすると一兆五千億から二兆四千億円のお金が必要だということなので、こういう財源も含めて、中期プログラムに沿ってこの大きな理想に向かって努力をしていきたいと思っております。
○山本博司君 是非とも舛添大臣の強いリーダーシップでお願いをしたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。