参議院 厚生労働委員会 第4号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、児童福祉法改正案についてお聞きを申し上げたいと思います。
 少子高齢化の進展による社会構造の急激な変化に伴い、高齢者への対策だけでなく、少子化対策が重要な課題となっております。政府は、子育てと仕事の両立の実現を目指して、昨年の末に「子どもと家族を応援する日本」重点戦略をまとめました。就労と結婚・出産という二者択一の構造が少子化の要因ととらえて、保育所の整備など子育て支援サービスの拡充と、長時間労働の改善などによるワーク・ライフ・バランスを未来への投資としての車の両輪と位置付けております。
 この重点戦略が基で今回の法改正も行われてきておりますけれども、初めに、この重点戦略では少子化対策の取組を推進するための社会全体の目標をどのように設定しているのでしょうか。代表的な例について教えていただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) 重点戦略会議、とりわけその一つの柱であります仕事と生活の調和の推進のための行動指針というものは、数値目標を十四定めております。大きく三つの分野に分かれておりまして、就労による経済的自立、それから健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会、三つ目として多様な働き方、生き方が選択できる社会ということでございます。
 具体的な数値目標の中で特に代表的なものを申し上げますと、まず週の労働時間が六十時間以上の雇用者の割合を現行の一〇・八%から、十年間でございますが、半減をすること。それから、第一子出産前後の女性の継続就業率を現行の三八%から五五%とすること。三つ目としまして、三歳未満児の保育サービスの提供割合を現行の二〇・三%から三八%とすること、小学校一年生から三年生の放課後児童クラブの利用割合を現行の一九%から六〇%とすること等の目標を掲げているところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 このように、今説明していただきましたように、重点戦略、実現するために様々な目標値を設定されております。そして、今回の法案では、子育て支援サービスの充実を目指して、各種訪問事業の拡充や地域子供支援センターの設置など、四つの事業について法律上の位置付けを明確にいたしました。この四つの事業はこれまで各市町村で行われてこられましたけれども、今回、この子育て支援事業を法律上に位置付けることで具体的にどのような効果があるとお考えなのか、大臣からお答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 午前中の質疑で私が子供だったときのことと若干比べましたけれども、昔はおじいちゃん、おばあちゃんが一緒に住んでいた、それから地域が非常に子供の数が多くてつながりがありましたから、何か分かんないことあれば祖父母に聞くとか、隣近所の年配の方に聞くと、いや、お産はこうですよとか、子育てはこうですよと教えてくれた。それが、この核家族とか地域のつながりがなくなったことで、やっぱり孤独感とか負担感、それから不安感、それで特に、むしろ、先ほど森さんでしたか、専業主婦ほどもうどうしていいか分かんないような状況になるというようなことがありましたので、今回、いわゆるこんにちは赤ちゃん事業という全戸訪問すると、これを法制化することによって、今のような様々な不安感、負担感、孤独感、こういうものを解消するために支援をしていくという、そういう意味では大きな意義があるというふうに思います。
 そして、それとともに、やっぱり今回法制化することによって、いろんな支援の質、どうでもいいわけじゃなくて、ただ支援すればいいわけじゃなくて、支援の質を確保するということ。それから、社会福祉法に基づいて自己評価の仕組みなどの対象となる、そういう意味での質を向上させる。それから、法律で決まっていますよということで、みんなが気軽に社会的認知を受けて利用できると、利用頻度の向上ということも考えられると思いますし、それから、やはり国が旗振っても現実に身近なところで動くのは市町村ですから、市町村が積極的にそういう事業をやることができる。やはり、私はきちんと法制化することはそれなりの意義があると思います。昔はその法律がなくても地域の力、家族の力、それがカバーしていた。さすがに時代は変わりました。それを補うために法律の力でやっていると、そういうことでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 地域で支える、大変今後ますます重要になってくると思いますので、支援事業の促進に取り組んでいただきたいと思います。
 それでは、具体的な支援事業の内容に関しましてこれからお聞き申し上げたいと思います。
 まずは、訪問事業についてお聞きをしたいと思います。
 午前中からもこの論議出ておりますけれども、いわゆる生後四か月までの家庭を訪問するこんにちは赤ちゃん事業と呼ばれる乳児家庭全戸訪問事業については、育児不安の解消とか児童虐待の未然防止に資するためにも公明党はこれまでも強く主張してきた点でございます。
 今までは、市町村において実施されてきたものであり、原則としてすべての乳児のいる家庭を訪問するということで規定をしておりました。しかしながら、これまでの市町村の現状を見ますと、訪問を拒絶する家庭もあり、全戸に訪問をすることは大変困難なことだと思います。
 先ほども訪問者の質のことがございましたけれども、本来、児童相談所と連携をして確認できないのはそうした訪問できていない家庭であると思いますけれども、この訪問できていない家庭に対してどのような対策で状況を把握されようとしているのか、お考えをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) こんにちは赤ちゃん事業、乳児家庭全戸訪問事業でございますが、既に実施をしている市町村でもできる限りすべての家庭を訪問できるようにということで御努力をいただいています。
 まず最初に、お子さんが生まれるとき、妊娠した際に母子健康手帳の交付をする、あるいは出生届を受理をする、そういった機会にこういう事業がありますよということで御理解を得て中身を説明をしておくというような、まずそういう積極的な周知をする。それから、一般的な広報をするというようなことで、この事業が訪問をされる家庭にとってメリットがあるということをまず周知をするということをやっていただいているところでございます。
 ただ、実際に、先生おっしゃいましたように、なかなか訪問ができないケース、一つは、お子さんが例えば入院をしているとか長期の里帰りというようなことで居住地にお子さんがいなくてなかなかここをうまく把握ができないというようなケース、それから、いらっしゃることが分かっているにもかかわらず訪問の同意が得られないということで訪問ができていないケースというのが実際にございます。
 今、自治体で様々な工夫をしていただいています。まず、訪問者の氏名とか連絡先を記載をした不在票のようなものを入れていただいて、後日また電話をしたりということで説明を一生懸命して訪問させていただくというようなこと、また、それでも訪問ができない場合には、何かもう少し積極的な訪問の方法が取れるかどうかというのを検討したりというようなことを既に自治体でやっていただいているような状況でございます。
 こうした自治体の取組も参考にしまして、今度法制化がされた後の訪問の仕方等々についてガイドラインを策定をして、できるだけこのサービスが全部の家庭に届くように努力をしていきたいと考えているところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 こうした訪問できていない家庭で児童虐待ということが発生しているとすれば大変な大きな問題でございますので、しっかり実態の把握を含めてお願いを申し上げたいと思います。
   〔委員長退席、理事谷博之君着席〕
 次に、地域子育て支援拠点事業についてお聞きを申し上げたいと思います。
 中学校区に一か所、全国で一万か所にこの地域子育て支援拠点を設置する計画ということでございますけれども、きめ細やかな相談や助言ができ、育児不安の解消に重要な役割が期待をされておりますけれども、まだまだ地域によっては普及していないというふうに思います。この支援センターがどこに一体あるのか、何ができるのか、こういった基本的な広報がまだ徹底されていないという指摘もございます。
 私、目黒を確認しますと保育園の名前が挙がっておりましたけれども、この地域子育て支援拠点でどのような活動を行っていくのか、また周知徹底を行って各家庭に伝えていく考えなのか、この辺を教えていただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) 地域子育て支援事業は、地域で育児について悩みを抱えている親子が気軽に訪れて相談を受けたり、また同じような立場の方々と情報交換をしたり触れ合ったりということができるという事業でございまして、子育ての負担感、孤独感を和らげる事業として非常に重要な事業だというふうに考えております。
 現在、市町村でこの周知について、例えばパンフレットを作るとか市町村の広報に載せるとか、それから、NPOの方々が最近子育てに関する情報をガイドブックとかネットの情報の形で提供しておられますが、そういったところに載せていただくとか、様々な工夫をして情報提供しているところでございます。それから、今般、こんにちは赤ちゃん事業、全戸訪問事業等々も全市町村でできるだけやっていただくということですから、本当に必要な人に、個別の家庭に情報を届けるチャンスになりますので、これらの事業もしっかりと活用をしたいというふうに考えております。それから、国といたしましても、この事業の趣旨や具体的な取組の好事例を市町村にパンフレットの形でお示しをしていきたいというふうに思っております。
 これらの方策によりまして、皆さんにきちんと情報が伝わるように努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 地域の子育ての力を高めていくためにもこうした地域の交流拠点大変大事でございますので、普及に努めていただきたいと思います。
 次に、一時預かり事業についてお聞きを申し上げたいと思います。
 午前中でも論議がございましたけれども、専業主婦の方でも通院とか冠婚葬祭などで幼い子供をだれかに預けたいと思うときがございますけれども、そんなときに利用できるサービスがこの保育所の一時保育ではございます。働き方とか生活が多様する中での理由を問わないということで、ニーズは大変高まっております。この一時保育について今後どのような計画で拡充を進めていくお考えなのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) この一時預かり事業、大変ニーズも伸びているところでございます。十六年に策定をいたしました子ども・子育て応援プランに基づいて現在はこのサービス量の増加を図っているところでございますが、プランの目標値、これは二十一年度末の目標でございますが、九千五百か所に対しまして、まだ十九年度実績では七千二百十三か所ということでございます。更に一層の努力が必要というふうに思っております。今回の法改正で法律上の位置付けをする、また市町村に実施の努力義務を掛けるということでございますので、この法律を契機に更に普及に努めるということをしたいと思っております。
 それからさらに、現在、社会保障審議会少子化対策特別部会で次世代育成支援のための新たな制度設計をしているわけでございますが、その基本的な次世代育成支援のための基礎サービスとしてこういったものも位置付けて、これからの普及について議論を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○山本博司君 この一時預かり事業でございますけれども、特に地方においてこの一時保育ということは大変重要でございますので、地域差の解消も含めて対応をお願いを申し上げたいと思います。
 さらに、今回の法案改正のポイントの一つでございます家庭的保育事業、保育ママについてお聞きをしたいと思います。
 政府は、二〇一七年までに保育所受入れ児童を現在の二百万人から百万人増やす新待機児童ゼロ作戦を本年よりスタートさせました。今回は、保育所による保育を補完するものとして、自宅など家庭で乳幼児を預かり保育を行う保育ママの制度も法律上位置付けることになりました。この制度は、東京都二十三区などでは家庭福祉員などとして既に行われたものであり、これを全国的に普及させることで待機児童の解消に大きな役割を果たすと思います。今回の改正案では、保育ママの要件を保育士や看護師などの有資格者だけでなく、資格がなくても国が定めるガイドライン以上の条件をクリアして研修を受ければ認めることになっております。
 そこで厚生労働省にお聞きをいたしますけれども、この保育ママの制度を拡充するためには多くの人に保育ママになってもらう必要があると思いますが、このガイドラインは具体的にどのように規定する予定でございましょうか。また、研修の内容についても教えていただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) この家庭的保育事業でございますが、量を拡充するとともに質を保っていくという、この量と質のバランスが非常に大事だろうというふうに考えております。したがいまして、本法案においては、家庭的保育者の担い手といたしましては、保育士を原則としつつ、保育士資格を持たない方々についても研修等を行っていただくことを前提に認める方向で考えているところでございます。特に、研修をしっかりと課して保育の質を確保をするということが大事だというふうに考えておりまして、就業前に必要な基礎的な知識や技術の習得を目的とした基礎研修、このほかに就業後についても経験年数に応じた現任研修などの体系化ができればというふうに考えているところでございます。
 研修の方法、具体的内容につきましては、今後定めます実施基準やガイドラインで検討をするというふうに考えているところでございます。ガイドラインの内容等につきましては、専門家の方々にもお集まりをいただきましてしっかり検討していきたいというふうに考えているところでございます。
○山本博司君 次に、児童福祉法に関連をいたしまして、放課後子どもプランについてお聞きをしたいと思います。
 放課後子どもプランは、放課後や週末などに子供たちに安全な遊びとか生活の場を提供する事業でございますけれども、まずその概要について御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) 放課後子どもプランでございますが、これは平成十九年度から、放課後等の子供の安全で健やかな居場所づくりを推進するために、市町村におきまして、教育委員会が主導をして、福祉部局と連携を図り、原則としてすべての小学校区において、文部科学省が実施をする放課後子ども教室推進事業と厚生労働省が実施をする放課後児童健全育成事業を一体的あるいは連携して実施をする総合的な放課後対策でございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 核家族が今後増えていく中で、共働きとか一人親の家庭が多くなってきております。小学校の授業が終了して親が家に帰ってくるまでの放課後の時間帯に安心をして過ごせる環境があるというのは、子供を犯罪から守る安全確保の観点からも大変重要なことだと思っております。
 公明党はこの放課後対策の推進について一貫して主張してまいりましたが、この放課後子どもプランが保護者や地域住民の協力を得て一段と定着ができるようにすべきと考えます。
   〔理事谷博之君退席、委員長着席〕
 その上で大臣にお聞きを申し上げたいと思いますけれども、先ほど説明ございました文部科学省の放課後子ども教室、そして厚労省の放課後児童クラブ、これを一体的あるいは連携して実施する、このようにしてございますけれども、この一体的あるいは連携して実施するということはどういう意味でとらえていらっしゃるんでしょうか。この放課後対策の事業を将来的にはどこがどういう方針で主体的に取り組んでいくお考えなのか、舛添大臣の御見解をお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 午前中も申し上げましたけれども、文部科学省と厚生労働省の所管をどうするかという話につながるので、幼保一元化の話もそうであります。ですから、こういう問題を解消しようとすれば、例えば省庁再編成で子供のことや家庭のことを考える省を一つつくるというのも一つのアイデアでありますけれども、片一方は教育、片一方は福祉という観点からやるわけですけれども、しかしながらこれを一体としてやれるところがあれば、例えば同じ建物を使っているという場合にはもう実質的に一体としてやっている。ただ、別々の建物を使っているところもあります。
 今のこの行政組織、つまり厚生労働省と文部科学省が併存している状況においては、連携を図りながら協力しつつ、子供のために何が必要かと、そういう観点からきちんと政策を実施することが重要だと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 地方の各自治体、工夫を凝らして保護者の高いニーズにこたえて意欲ある児童への支援を行っていくなど多様なサービスを取り組んでおるわけでございます。そういう意味で、大変運用費用の捻出とか御苦労されている部分がございますので、それぞれの自治体で放課後対策を拡充するという点からもしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、困難な状況にある子供の社会的養護についてお伺いを申し上げたいと思います。
 社会的養護体制は、戦後、戦災孤児対策として制度化されたものでございますけれども、近年では虐待による要保護児童が増加していると、このような指摘もございます。平成十二年には児童虐待防止法が施行され、これまで家庭内で埋もれていた虐待が徐々に発見されるようになってはきていますが、まだまだ全面的な解決にはつながっておりません。
 今月は、御案内のとおり、児童虐待防止推進月間でもございます。社会的な関心を持ってもらうために、オレンジリボン運動とともに様々な活動が行われております。
 そこで、まず最近の要保護児童の推移と児童虐待の実情につきまして御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) 最近の要保護児童の推移、児童虐待の実態ということでございます。
 まず数字的なもので申し上げます。最近の要保護児童の推移でございます。児童養護施設等の施設に在籍をしているお子さん、それから里親委託の児童数を合わせますと、平成十七年度四万五十八人、十八年度四万二百九十八人、十九年度四万七百九人と、年々増加をしているような状況にございます。
 また、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数も、平成十七年度三万四千四百七十二件、平成十八年度三万七千三百二十三件、十九年度四万六百三十九件ということで年々増加をしておりまして、特に児童虐待防止法の施行前である平成十一年度の数字と比べますと三・五倍に増加しているというような状況にございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 やはり児童虐待の割合が高くなっているということでございまして、虐待を受けた子供に対する支援というのは大変大きな課題となっております。
 そこで、今回の法案は、社会的養護の主軸である施設養護ではなくて、家庭的な環境の下で少人数で養育を行う里親制度の見直しが規定をされております。児童養護施設の入所児童数約三万名に比べて、里親の委託児童数はおよそ一割の約三千六百名といまだに低い割合となっており、虐待を受けた子供が増加している中で家庭的養護への移行の必要性はますます高まっていると思います。厚労省は平成二十一年度までに里親委託率を一五%まで上げるとの目標を掲げており、更なる拡充が求められております。
 そこで大臣にお聞きをいたしますけれども、この養護施設と比較して、里親制度などの家庭的養護がどういった点で利点があるのか、メリットはどのようなものであるのか、改めて確認をしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 先ほど南野委員の御質問にもお答えいたしましたけれども、やはり温かい家庭環境の中で子供を育てるということは非常に重要だと思います。
 そういう意味で、家庭的な養護のメリットというのは、特定の親代わりの養護者との間で非常に緊密な感情関係を持てると。それから、地域での生活を通じて隣近所との付き合いがきちんとできる、まさにこういうことが欠けていたわけですから。それから、やっぱり施設での集団生活で様々な制約もありますから、こういう点の制約も逃れることができる。それから、今度自分が成長してどういう家庭を持つんだろうというときの一つのイメージにもなり得る。様々ないい点があると思いますので、そういう意味で、養育のための里親、この制度とともに今ファミリーホームということで小規模で、まさに数人の子供を預かって家庭的環境で育てると、こういう事業を更に推進していきたいと思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 本年六月、私も広島で支援をしていただいている方から一通のお手紙をいただきました。この方は長年里親としてお子さんを養育してきた方でございますけれども、その手紙の中には、様々な御苦労をした中でその養育をしてきたお子様が成長をして地元の国立大学に入学したことがつづられておられまして、そのお子様から、今まで本当に育てていただいてありがとうという感謝の言葉を言われたという、そういうお手紙でございました。
 七月に入りまして、私もその広島の方に行きまして、その御家族の方とお会いをさせていただきました。本当に温かな、そういう中で育っていらっしゃるということで感激をしたわけでございます。
 今回の法案では、現在は同じ制度の中で混在をしている養子縁組を前提としている里親と社会的養護の担い手としての養育里親を区別して、養育里親に対して研修を義務化しております。これによって養育里親の役割が明確になり、支援策の拡充が期待されているので重要な改正であると思います。
 しかし、新しく里親になろうというのはとても重大な決意が必要でございます。児童相談所における相談体制の充実など、里親制度の普及に向けた取組が求められていると思いますけれども、今後どのような普及策を実施をしていくお考えでしょうか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) 里親制度、非常に今重要な制度ということで、国際的に見ても日本の里親の比率、大変低い中でございますから、これをしっかり増やしていきたいというふうに思っております。
 今回の法律で、養育里親をいわゆる養子縁組を前提とした里親と区別をして、社会的養護の体制の一つの大きな柱として位置付けをするわけでございます。この非常に大きな社会的な貢献をしていただくわけでございます、役割を担っていただくわけでございますので、それに併せて手当の引上げをするというのがまず一つでございます。
 それからもう一つは、里親になるというのは大変やはり難しい問題だろうと思います。そこで研修をしっかりするという体制、これ今まで都道府県によってやはりばらつきがございましたので、どの都道府県でもしっかりと研修をして登録制度を整備をしていくということ。それから、里親が養育に悩んだときにこれをバックアップできる、あるいはどうしても休みたい、少し心身を休ませないと大変だというときにレスパイトのようなことができるというようなことも含めて、この里親を支援をする仕組みをちゃんと制度として整備をするということが大事だろうというふうに思っております。その意味で、里親支援機関事業を法定化をいたしまして、これを充実をしたいと思っております。
 このような制度を通じて里親制度を普及をさせ、定着をさせていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この里親制度が定着するような更なる対策を講じていただきたいと思います。また、養育里親については、地域によってはなかなか普及していない地域もございます。拡充が必要であると思いますので、積極的な取組をお願いをしたいと思います。さらに、児童相談所の役割が多岐にわたっており、業務量が増大しているという指摘もございます。NPO法人とか社会福祉法人など、地域の力を活用をした取組も御検討をいただきたいと思います。
 次に、ファミリーホーム制度についてお聞きをしたいと思います。
 養育者の住居で五人から六人の要保護児童を養育するファミリーホームは、児童養護施設に比べ、比較的小規模の生活単位を持つ施設となるので、きめ細かい対応が期待をされています。
 この制度は、一部の自治体が独自で実施している仕組みを国の社会福祉事業として全国に広めるものでございますけれども、このファミリーホームとはどのようなものであるのか、その概要について、運営面も含めて御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) この里親ファミリーホームでございますが、虐待を受けた子供たちをできるだけ家庭的な環境の中で育てることができるようにしようということで、里親と並んで今回、法改正の中に盛り込んだものでございます。法律上、小規模住居型児童養育事業という名称でございますが、このような家庭的な養護を推進するという目的でございますので、里親が五、六人程度の子供を養育をするというようなイメージでございます。
 現在、一部の自治体におきまして里親ファミリーホームというふうな形で呼ばれておりまして、大変良い形の養育が行われている事例がございます。そういったものを参考にしまして、まず養育的な環境である養育者の住居で子供を養育するということ、それから複数の子供が共に育つことによって、子供同士の相互作用も生かしながら養育をするということ、それから複数の子供をお預かりをする、養育をするということで、それに対しての適切な体制を確保していくということ、こういったファミリーホーム独特のメリットがありますので、このメリットを生かした新たな養育事業として創設をしようとしているものでございます。
 今回の法律で想定しておりますのは、養育者の住居におきましておおむね六名程度の子供が生活を送るということを考えております。養育者といたしましては、例えば養育里親として複数の子供を一定期間以上受託したことがあるなど、相当の経験を有する方をお願いをしたいと考えております。また、六名ということで、かなりお子さんの人数があるわけでございますので、家事や養育の補助を行う者をきちんと確保をするという形態にしようと考えております。それから、住居、ハード面につきましては、日常生活に支障がないように必要な設備を有し、かつ子供に対して適切な援助が行うことができるような形にしたいということで、そういった一定の要件を課して進めたいと考えているところでございます。
 里親と並んで、家庭的な環境の下での養護の一形態としてしっかりと育てていきたいというふうに考えているところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 このファミリーホーム、五人から六人の児童を養育するということは、養育者だけで養育するのではなくて、補助者も必要となる場合がございます。国の事業として位置付けられたものでありますから、こうした事業運営に係る費用もしっかり実情に合った形での予算措置をしていただきたい、強く要望をいたします。
 次に、児童養護施設などで入所している子供に対する施設内での体罰若しくは性的暴力が頻発したことを受けて、今回の改正では施設職員などに通告を義務付けるなど対策を強化をしておりますけれども、施設内での虐待防止のために具体的にどのように規定しているのか、またこうした虐待を受けた子供に対するケアはどう考えているのか、このことを簡潔に教えていただきたいと思います。
○政府参考人(村木厚子君) まず、施設内虐待防止のための今回の法改正の内容でございますが、一つには、虐待を受けたと思われる子供を発見した者に対して通告義務を課すことや施設内虐待を受けた子供が都道府県等へ届出ができるようにしたこと、二つ目といたしましては、通告した施設職員等に対する不利益取扱いを禁止をすること、三つ目といたしまして、届出、通告があった場合の子供の保護や施設に対する立入調査、質問、勧告、指導、業務停止等の処分等の都道府県が講じるべき措置について定めたこと、四つ目としまして、国による施設内虐待に関する検証、調査研究、都道府県等による施設内虐待の状況等に関する公表の規定、これらを盛り込んだところでございます。
 具体的な進め方につきましては、先進的な取組をしている自治体の例も参考にしながら、ガイドラインを策定をいたしまして進めていきたいと思っております。その際、虐待を受けた子供や施設に入所しているほかの子供たちのケアというのが大変重要でございますので、子供の心的外傷の状況の把握と対応、必要な場合には子供の措置変更や一時保護、専門機関や医療機関による必要な支援、こういったことをしっかりやっていく必要がありますので、これらについてもガイドラインの中に盛り込みまして、虐待を受けた子供の権利擁護が適切に図られるようにしたいと考えているところでございます。
○山本博司君 是非ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 大臣にお聞きをしたいと思います。
 以上、見てまいりましたように、子育て支援策について様々な支援の拡充が強く要望されているところではございます。これらの支援策を推進するためには、やはり財源が問題になってまいります。冒頭に述べました「子どもと家族を応援する日本」重点戦略の中では、母親の育児休業中の給付金支給や保育サービスなどを充実させると、現在の少子化対策の予算四兆三千三百億円に加えて、新たに年間一兆五千億円から二兆四千億円が必要であるとの試算が出ております。さらに、政府の社会保障国民会議の持続可能な社会の構築分科会では、この試算よりも、障害児へのサービスの充実、保育所の増設など、更なる財源の上積みを求めております。
 大臣におかれましては、少子化対策、喫緊の課題であると認識され、御尽力をしていただいておりますけれども、今後の少子化対策の充実についての大臣の決意をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 今御指摘いただきました社会保障国民会議の最終報告の一・五兆ないし二・四兆円、これでも実は足りない部分があるということでございます。
 これは、社会保障については、先ほど申し上げましたように、骨太の方針でもきちんと予算措置ができればまず優先的に対応するということでございますので、予算の編成過程において、税制改革の動向を見ながらきちんと対応してまいりたいというふうに思いますし、それから、例えば労使の間でどういうふうにしてその費用を折半するか、国民がどういう形で分担するか、そういう世代間公平ということも含めて全体のこの負担についてまた議論を重ねていき、より良い形で社会保障の中の一つの大きな柱でありますこの少子化対策に全力を挙げていきたいと思っております。
○山本博司君 是非ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 次に、児童福祉法に関連する課題だと思いますけれども、引きこもり対策についてお伺いをしたいと思います。
 この引きこもりとは、様々な要因が複雑に絡み合って、就学や就労など自宅以外での生活の場が失われており、社会的な参加の場が少ない又は全くない状態を示し、全国では数十万人から百万人いると推計されております。厚生労働省では、平成十五年には引きこもりに関する具体的な支援方法などを盛り込んだガイドラインを作成し、これまでは各都道府県の精神保健福祉センターや保健所において相談などの対応をしておりました。しかしながら、各自治体の対応にはばらつきがあるため、昨年の十二月六日の当委員会におきましても私も質問をさせていただきまして、総合的な政府一体となった対策の確立をお願いをしたわけでございます。
 その後、厚労省の中に引きこもり関連施策の推進チームを発足させ、総合的な施策に取り組んでいただいており、関係者の皆様から大きな一歩を踏み出したとの期待の声が寄せられております。さらに、来年度の概算要求では、引きこもりの問題の早期発見、早期対応のため、引きこもりの状態にある本人や家族からの相談などの支援を行う、仮称でございますけれども、ひきこもり地域支援センターを都道府県や指定都市に整備する方針を求めております。
 そこで、このひきこもり地域支援センターの概要について御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) お答えを申し上げます。
 引きこもり対策につきましては、今先生お話しございましたように、これまでは精神保健福祉あるいは児童福祉、ニート対策等において相談等の取組を実施してきました。しかしながら、今お話がございましたように、もっと包括的にやるべきではないかというお話でございましたので、私どもとしても省内にチームを設定し、また今回の概算要求におきましてひきこもり地域支援センターを要求いたしておるところでございます。
 このひきこもり地域支援センターでございますが、各関係機関の連携の強化を図ると同時に、一番ねらいとしておりますのは、引きこもりに特化しました第一次の相談窓口としての機能を果たすということを期待をして設置する方向で今検討いたしております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 このひきこもり地域支援センターの運営につきましては民間団体にも委託することも可能とされておりますけれども、具体的にどのような姿をイメージしているのでしょうか。また、これまでの精神保健福祉センターとか保育所、さらにはニート対策で大きな効果を発揮している地域若者サポートセンターや若者自立塾、さらには医療機関や福祉施設、教育機関との関係が重要であると思います。
 これらの連携についてどのようになるのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) ひきこもり地域支援センターについてでございますけれども、まさに御指摘のように、そういう関係機関と連携が大変大事であるというふうに思っております。現在検討中でございますけれども、このセンターには引きこもり支援コーディネーターというものを配置をし、引きこもりに係ります第一次の相談窓口としての役割を担っていただくということ、それから、さらには地域における関係機関とのネットワークを構築する、また地域における引きこもり対策にとって必要な情報を広く提供すると、そういった役割を担っていくことを想定をいたしております。
 お話にございましたひきこもり地域支援センターの運営でございますけれども、各都道府県、指定都市が実施主体となるというふうに思っておりますが、各地域の実情に応じまして、精神保健福祉センターあるいは児童相談所等の公的な機関が実施をできるほか、お話にございましたように、NPO法人等の民間団体に運営委託ができる方向で検討いたしております。
 それから、関係機関との連携の問題でございますが、効果的な引きこもり対策を推進するという観点から、関係機関と支援センターとで構成される連絡協議会を設置をするということを想定しておりまして、本人あるいは家族の方が抱える個々の実情に応じた実効性のある支援が行われるように支援をしていきたいと思っております。
○山本博司君 先日、私も四国の香川県、愛媛県、この引きこもりの親の会の方とお話をさせていただきました。香川県では障害福祉課がその対応をされているということで、親の会の方たちと相談をしながら、一体どういう場所に設置をしたらいいか、またセンターへの要望、様々な形でのそういうコミュニケーションが取られておられました。ただ、全国的にはそういう形で、あるところでは健康増進課とか、様々な窓口が、違いがございますし、また予算に関しましても、国が三百五十万、一か所に出すということでございますけれども、県が予算を確保しないといけないというところもございます。
 ですから、来年度から全都道府県に実施をしていくということが、格差のないような形で進めていただきたいと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) 今、概算要求をいたしまして、財政当局と今折衝中でございますが、私どもとしては必要な予算額を確保したいと思っておりますし、今御指摘いただきましたように、各都道府県、指定都市で差がないように、全県あるいは全指定都市で実施をされるように十分努力をしてまいりたいと思っております。
○山本博司君 次に、この引きこもりの方々、大変高齢化しているということがあるわけでございます。全国引きこもりKHJ親の会では、引きこもりの平均年齢が三十歳を超えているとの全国調査を発表しております。また、東京都においても本年二月に、実態調査では、都内の引きこもりは十五歳以上から三十四歳以下、約二万五千人で、そのうち三十歳から三十四歳が全体の四三%を占めているとのことでございます。先日も香川のこのオリーブの会では、両親の年齢が、父親が六十一歳以上が六七%、母親が五十六歳以上が八九%、また本人の年齢も三十代以上が六五%と、本人も高齢化、長期化しておりますし、御両親も高齢化されているということでございます。
 こうした高齢化、長期化している引きこもりの方々への対策について教えていただきたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) 御指摘いただきましたように、この問題、大変深刻でございます。十分な統計的なデータはございませんけれども、私どものところで実施をしました引きこもりに関する実態調査によりますと、発生から経過年数が十年以上になっているというものが二三%を超えております。それからまた、引きこもりの年齢も、お話ございましたように、三十歳を超えているという方が三二%ぐらいでもう三分の一ぐらいを占めております。そういった意味で、長期化、高年齢化というのは大変深刻な問題でございまして、これは更にこれからも拡大をするだろうというふうに思っております。
 したがいまして、この対策でございますけれども、今回相談窓口を設置いたしましたのもその一環でございますが、何よりもまず早期の発見、それから早期の対応というものが極めて重要だと考えておりますので、この引きこもりのセンターを中心に、これから各般の資源を活用して対処していきたいというふうに思っております。
○山本博司君 大変この親の会の方々を含めまして、私も愛媛、香川、また広島等でも様々なお話を聞いておりますけれども、高齢化、長期化している状況の中で、両親の方々はもう大変な思いをされていらっしゃいます。自分たちが亡くなった後どうしたらいいんだろうか、家庭内暴力も含めて様々な形で悲痛な声を聞くわけでございます。御家庭だけで悩んでいる状況を社会が支えて、医学的、福祉的なアプローチにつなげられるような、家族を支える支援の充実が求められております。特に、今厚労省の委託による五つの研究班による報告を踏まえて、引きこもりをもたらす精神的、医学的援助システムのガイドラインを来期以降にまとめる予定であるというふうに伺っております。現在、この引きこもりにはよって立つ法律がございません。こうしたガイドラインというのは大変大事であると思います。
 それでは最後に、大臣にお聞きをしたいと思います。
 これまで申し上げてきたように、この引きこもり対策は総合的な施策が重要であると思います。麻生総理からは、若者を支援する新法を検討するとの所信表明がございました。現在、内閣府を中心に法案作りが進められていることでございますが、この中に引きこもり対策も盛り込まれるとのことでございますが、総合的な施策の充実に向けて大臣のお立場からも積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、大臣、この引きこもり対策への決意をお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 来年の概算要求で約五億円の予算を要求して、そのうち四億五千万がこの地域の引きこもりセンターであります。
 この問題は、今委員るる御指摘のように、本人も苦しむ、家族も苦しむ、大変複雑な問題を抱えております。関係省庁とも連携を取りながら、この引きこもり対策、厚生労働省としても正面から取り組んでまいりたいと思います。
○山本博司君 是非ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 最後に、時間がありますので、一問ちょっと飛ばしました内容に関して触れさせていただきたいと思います。
 児童福祉法に関連する問題でございます。地域福祉の世話役であります民生委員についてお聞きを申し上げたいと思います。
 民生委員は援助が必要な住民と行政をつなぐ重要な役割を担っており、同時に、児童福祉法第一条第二項に基づき、児童委員を兼務することで、生活保護世帯とか母子家庭などへの助言だけでなく、児童虐待とか引きこもり、家庭内暴力、高齢者の見守りなど幅広い地域の課題に尽力されてきました。
 しかし、最近では、民生委員の全国的に数が不足しており、独り暮らしの高齢者の増加とか、近所付き合いの希薄化などで敬遠する人が増えてきたことが原因と見られております。こうした民生委員並びに児童委員の不足に対する状況は早急に改善するべきと考えておりますけれども、どのように対応するおつもりなのか、お答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(阿曽沼慎司君) 御指摘のように、民生委員、児童委員の役割はますます重要になってきているというふうに私ども認識しております。
 現在の状況でございますが、平成二十年の三月末現在で、定数が二十三万二千九十二人に対しまして二十二万七千二百八十七人ということで、充足率が九七・九%という数字になっております。
 できる限り私どもとしてもその欠員が生じないようにということで、一昨年の一斉改選の際には、年齢要件を見直しをする、あるいは民生委員、児童委員を確保しやすい環境づくりを図るということでいろいろな手を打ってまいりました。また、本年三月の全国担当者会議におきましても、必要な人員の確保に努めるようにということで、各都道府県に十分周知をいたしております。
 御指摘のように地域福祉の重要な担い手でございますので、今後とも民生委員、児童委員が十分確保されますように更に徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。
○山本博司君 是非ともこの充実も含めた対応をお願いをしたいと思います。
 以上でございます。