参議院 厚生労働委員会 第6号
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日は震災対策に関連をしまして、災害弱者と呼ばれる方々への支援に関しましてお聞きを申し上げたいと思います。
今回の大震災は、高齢者、また障害者ら災害弱者の方々を含めまして多くの犠牲が出ております。死者一万四千人のうち、身元が判明した人の半数近くは六十五歳以上の高齢者とも言われております。また、東日本大震災が発生してから一か月が経過をしておりますけれども、いまだに避難所生活をされている方々が十三万以上に上ります。仮設住宅の建設もこれからという状況を考えるときに、なかなか避難所生活も長期化をする、そういうおそれもございます。
いまだにおにぎりとかそういったものしか支給されないとか、上下水道が復旧していないために衛生状態が悪化をしているとか、感染症が発生をして体調を壊す方々も増えていると、そういう状況を、この避難所の状況を聞くにつれましても、こうした問題の影響を直接受けているのが災害弱者と呼ばれている方々でございます。阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、各自治体の地域の防災計画の中で、この高齢者とか障害者、乳幼児、児童、日本語に不慣れな外国人などの要援護者を災害弱者と規定をして様々な支援の対象にしていると思います。
そこで、今回の東日本大震災におきまして、こうした災害弱者の方々がどのぐらい被災をし、高齢者とか障害者の福祉施設がどのくらい倒壊をしたのか、こういう実態の把握をする必要があると思いますけれども、この点に関しましてどのような取組をされているのか、お聞きをしたいと思います。
○副大臣(大塚耕平君) 御質問いただきました件につきまして、後段のまず施設がどのぐらい被害を受けたかということについて御報告を申し上げます。
私どもも状況把握に努めておりまして、岩手県では百九施設が被害を受けまして、うち全壊、半壊が十一施設、宮城では全壊、水没等のみの報告が上がってきておりますが、三十二施設がそういう状態になっております。福島県では九十六施設が被害を受けまして、うち全壊、半壊等が二施設でございます。今申し上げました数字は介護保険施設等の被害状況でございます。
また、障害福祉施設等につきましては、現時点で分かっておりますのは、岩手では六十五か所が被害を受け、全壊、半壊等が四十七か所、宮城では百十九か所が被害を受けまして、全壊、半壊等が八十か所、福島では二十九か所が全壊、半壊等の被害を受けたというふうに承知しております。
こうした中で、被災した介護施設の高齢者等の皆様については、現在、他の施設への受入れをお願いをしているところでございまして、四月十八日現在で約二千八百人の方々が受け入れられたところでございます。また、障害福祉施設の障害児の皆さん等については、やはり四月十八日現在で四百三十四人を他の施設等に受入れをしていただいたところでございます。
○山本博司君 今の御報告といいますと、全貌というよりも今把握をしている部分ということで、かなり少ない実態だと思います。
例えば岩手県ですと、難病の患者の方は八千人いらっしゃいますけれども、安否不明を含めて確認をできているのは一割ぐらいで、こういう中で難病患者の方々の団体等もそういう対応をしているということでございまして、被災者の全貌というのはまだまだ分かっていないんではないかと思います。また、そういう障害者等の入所施設、様々ございますけれども、その方たちがどこに行って、また介護施設もそうでございますけれども、当然、在宅で自宅にいらっしゃる方々、またほかの他県に避難をされている方々、様々いらっしゃると思います。
そういう部分で、しっかりこの実態を把握しながらそういうきめ細かなケアというのが必要になるんではないかなと思います。そのことをこの後質問を申し上げたいと思います。
この災害弱者への避難支援対策、これは平時からの事前の対策が重要でございます。平成十七年には、内閣府、総務省の消防庁、そして厚生労働省が連携をして、災害時要援護者の避難対策に関する検討会、これが開かれまして、災害弱者対策の指針として災害時要援護者の避難支援ガイドライン、これが作成されております。その内容は、一つには情報伝達体制の整備とか災害時の要援護者情報の共有とか避難支援計画の具体化、また避難所における支援、また関係機関等の間の連携というものでございまして、こうした各自治体に体制の整備を求めているわけでございます。
そこで、内閣府にお聞きをいたしますけれども、このガイドラインについて、各自治体につきましてこれまでどのように対応されてきているのかお聞きをしたいと思います。
○政府参考人(小田克起君) 平成二十二年三月末時点でございますけれども、避難支援計画を策定済みの市町村は約六割でございます。ただ、この時点で平成二十三年度末までに策定を予定しているという市町村まで含めますと大体九七%でございます。
他方、要援護者名簿の整備状況でございますが、平成二十二年三月末時点で約九割の市町村が整備中ということになってございます。
○山本博司君 この計画が今回どうであったのかということもいろいろ検証する必要があるかと思います。現実的には、この避難計画それ自体がまだ策定していない、要援護者の名簿等の共有状況もされていないというまた地域もあるわけでございます。
今回も、これは岩手の難病の方でございますけれども、まだ行方不明になっていらっしゃる御両親でございますけれども、十分間、車椅子を含めて移動しようと思った中で津波に来たということで、その息子の方が、避難に時間が掛かる、難病患者の避難計画があれば、悔しいと、このように息子さんが言われている記事が載っておりました。こうした避難計画を含めて、やはりしっかり事前に対応するということはこれからは大事になるのではないかと思います。
そして、その意味でもう一つ、これは三月の二十八日に、福島県の認知症の女性が四か所目の避難所である新潟県の避難所におきまして、その方は認知症の女性の方でございますけれども林道で遺体で発見をされたと、こういうことが記事に出ておりました。そこの中で、その避難所の方、その担当の方は、その女性が要介護で認知症であるということを全く知らなかったと、そういったことが分かっていれば対応ができたというふうなこともございます。これは今、全国のそれぞれ被災地での様々な要介護の方、障害者の方、そうした被災者の情報をどう管理をしてケアをしていくかということが大変大事になるのではないかと思います。
総務省では、こうした避難者の所在地などの情報を把握するために、全国避難者情報システム、これを構築をされました。このシステムでは、避難した方が避難先の市町村に氏名とか生年月日とかまた住所とか避難先の情報を提供をするということで避難前の市町村が所在を把握をして、見舞金などの各種給付の連絡とか国民健康保険証の再発行とか、そういったことで便宜を図るものということでございまして、まだこれエクセルの簡易なシステムでございますので、こうした中には基本的な住民の基礎データだけですから、介護とかそういう要支援の情報というのは全く活用できるようになっておりません。
一方、阪神大震災を経験をしました西宮市では、被災地の経験と教訓、情報化のノウハウを生かしました被災者支援システム、これを活用しております。この避難所の関連システムとか仮設の住宅管理システムとか復旧復興関連システム、この中には要介護の状況とか障害者の関連情報もきちっと入れていくような形の福祉サービスが提供されて、これは全国の地方自治体に無料でオープンソースを提供しているという状況もございます。また、さらに関西学院大学の災害復興制度研究所では、新潟中越地震の際に導入されて効果が上げられました被災者支援台帳の整備、これも提言をされているわけでございます。
今やはり厚労省は、例えば先ほどの高齢者の方々の入所のマッチングの部分と言われておりますけれども、ニーズが合った形で対応するということの部分だと思うんですけれども、そうじゃなくて、その実態を把握しながら、そこに要介護者の方々、障害者の方々にどんな支援が必要なのかということをしっかりやるべきではないかと思うんです。
それで、提案でございますけれども、そうした被災者の様々な情報を一元的に管理し情報集約ができる体制をつくるべきと考えます。これ、総務省とも連携をしながら、そうした行政の手続の短縮化とか被災者のそういう漏れの防止にも役立つんではないかと思います。これは、このことに関してのちょっと見解をお聞きしたいと思います。
○副大臣(大塚耕平君) 先生御指摘の総務省の全国避難者情報システム、これは四月の十二日付けで総務省から各都道府県あてに協力を依頼する通知が出まして、先生が解説していただいたとおり、避難者の皆さんの情報を自己申告していただいて、そのことによって各自治体、避難地域における対応を促進を図るというものでございます。こうした対応によって、全ての避難者、被災者の方々が今どこにおいでになってどのような状態にあるかという実態を把握するということなくしてきめ細かい対応はできないというふうに思っておりますので、先生御指摘のとおり、こういうインフラを整備するということは大変重要なことだと思っております。総務省ともしっかり話をして、これが活用されるようにしたいと思います。
あわせて、そういう中で、今先生のお話をお伺いしていて難しい課題だなと思いましたのが、例えば認知症の方々とか御自分で自己申告できない方々の情報はどうしたらいいのかと。御家族の方々が提供してくださる場合はいいですけれども、今回、御家族が被災されたり、あるいは認知症でよその施設に行かれた方が御自分の情報を正確に申告できないようなケースも含めて、しっかり対応を考えてまいりたいというふうに思います。
○山本博司君 是非とも、これ、個人情報の保護という点もあるかも分かりませんけれども、しっかりこういう面でのやっぱり検討、被災者の側に立った支援ということを是非とも検討をお願いしたいと思います。
さらに、この災害弱者の実態把握には、今一生懸命、臨時の窓口の方とか担当職員の方が配置をしながら、避難所や在宅の要援護者の下に直接訪れまして現状とか支援のニーズを把握をするということがもう大変重要であると思います。
既に岩手県では、震災の被害が大きかった陸前高田市など三市町村に障害者相談支援センター、これを開設をし、回復をしていない福祉行政を担う市町村のこの機能を県が直接担うことで相談支援などを手掛けて大きな効果が上げているということも伺っております。
こうした点というのは長期的な視点で取り組まなくてはいけませんけれども、被災した各県においての相談体制の窓口というのはどのようになっているのか、御報告いただきたいと思います。
○副大臣(大塚耕平君) 御指摘の要介護の必要な方々に対して市町村等の介護保険担当窓口や地域包括支援センターがケアマネジャーの皆さんの紹介や介護サービス利用についてのアドバイスを行っておりますので、基本的にはこうしたところが相談窓口になっているものと認識をしております。また、窓口に付随して少し御説明をさせていただきますと、被災地へのケアマネジャーの派遣や医師、保健師等の戸別訪問にケアマネジャーが同行することにより要介護高齢者のニーズ把握に努めるということも行っております。
また、被災された高齢者が地域包括支援センター等を積極的に活用できるよう、高齢者の皆さん向けのリーフレットを作成し周知をしているということもございます。また、障害者の皆さんについては、自治体職員や保健師、相談支援専門員等が避難所等を巡回させていただきましてニーズ把握を行っているとともに、サービス利用についてのやはり障害者の皆さん向けのリーフレットを作成し周知を図っているところでございます。
先生が最初に御紹介くださいました岩手県の障害者相談支援センターのような対応が非常に効率的であるということであれば、他の県でも是非こういう対応がしていただけるように厚生労働省としても相談をさせていただきたいというふうに思います。
○山本博司君 是非ともその推進を含めてお願いをしたいと思います。
これまで災害弱者の方々への福祉的な支援ということにつきましては、自治体の職員の方とか福祉施設の職員、またNPO団体を始めとする多くの方たちの懸命な活動によりまして支援をしていただいております。敬意と感謝を申し上げる次第でございます。
しかし、避難生活が長期化する中で疲労もピークに達しておりまして、自らも被災者である方たちだけの支援だけではおのずと限界もございます。被災地域以外からのボランティアなども駆け付けていただいておりますけれども、今後のことを考えますと、こうした全国各地から福祉支援活動への人材投入ということを国の方針として明確に定めて、これらの費用に関しましても全面的に公費で保障するといった思い切った体制を取るべきと考えるわけでございます。
これから補正予算の議論もあるかと思いますけれども、そうした中での積極的な検討をお願いをしたいと思います。このことに関しまして御見解をお聞きします。
○国務大臣(細川律夫君) 委員が御指摘のように、専門の職員を派遣をいたしまして福祉支援活動に積極的に取り組んでいかなければというふうに思っております。そういう意味で、これは県あるいは関係団体あるいは厚生省の現地スタッフ、これは一体となってしっかり今やっているところでございますけれども、これまで被災地以外からの介護職員の派遣可能、これの情報の収集とか、あるいは被災地の介護職員派遣のニーズの集約、両者のマッチングと、こういうことも進めてまいりました。今でも、専門の職員が六百二十人外部から派遣もされているところでございます。
これからもこういう職員の派遣ということは大変大事であると、むしろ必要がより強くなってきているというふうにも思いますので、財政的な面も含めてしっかり応援もしていくように頑張りたいと思います。
○山本博司君 是非ともお願いをしたいと思います。
次に、仮設住宅に関しましてお伺いを申し上げたいと思います。
今後、各地で仮設住宅が建設をされますけれども、この仮設住宅につきましても、高齢者、障害者の方への配慮が重要でございます。阪神・淡路大震災のときには高齢者の孤独死が問題になりました。一方、中越地震の際には高齢者への入浴サービスが大変喜ばれたと伺っております。今回の対応でも、入浴や買物とか食事などの生活支援サービスの提供がなされるなど、十分な配慮が必要であると思います。この手続の簡略化など、障害者に対する配慮も求められております。
一部地域では、高齢者や障害者への優先入居が実施されるとの話も伺っております。今日の新聞報道には、百か所以上の仮設住宅地にデイサービスなどの介護・保育拠点を併設させる方針を検討していると、こういうふうな形で第一次補正の七十億前後のことも報道されておりますけれども、こうした高齢者、障害者への配慮という意味での見解をお聞きしたいと思います。
○副大臣(大塚耕平君) こうした皆さんへの配慮が必要だという点については、先生と認識を共有させていただいております。
現状をちょっと御報告をさせていただきますと、例えば応急仮設住宅の入居決定に際しましては、高齢者、障害者等の個々の世帯の必要性に応じて決定すべきものと思っておりますので、機械的な抽せんはこうした方々に対しては行われていないこと、あるいは従来お住みになっていたコミュニティーを維持することも必要でありますので、例えば単一世帯の入居ではなく、従来の地区にいらっしゃった数世帯単位での入居も検討させていただいております。また、入居決定に当たっては、応急仮設住宅での生活が長期化することも想定いたしまして、高齢者の皆さんや障害者の皆さんが過度に集中しないように配慮する等の対応を既に図らせていただいております。
また、御下問の中にございましたように、今後、福祉仮設住宅のようなものをしっかりと設置をしてまいりまして、高齢者や障害者の皆さんのニーズや実情にしっかりと配慮をした対応をしてまいりたいというふうに思っております。
○山本博司君 是非とも、この仮設住宅、一刻も早く着工ということもございますけれども、障害者、高齢者の方に配慮した対応を厚労省がしっかり推進をしていっていただきたいと思います。
また、災害弱者のこうした現状を踏まえましても、経済的負担の軽減ということが大変必要であると思います。公明党もこれまで政府に二度こうした観点から提言をしてまいりました。特に、医療費とか介護施設の利用料とか障害者の補装具等の利用料の減免であるとか各種保険料の免除、さらには今倒壊をしておりますこうした福祉施設の整備の補助率のかさ上げであるとか、障害者の施設の食費とか光熱費の減免等、様々な財政的な支援が考えられると思いますけれども、大臣、この経済的負担の軽減ということをどのように今決意をされているんでしょうか。
○国務大臣(細川律夫君) 被災されました人たちへの経済的な負担というのは、これはもう極力負担は軽くするように国としてもやっていかなければというふうに思っております。
そういう意味で、介護保険や医療保険におきましては、被災地にお住まいの方で生活にお困りの方については利用者負担を免除するということにしていることのほかにも、市町村等に対して保険料の減免そして徴収の猶予というのをこれ働きかけているところでございます。これらの利用者の負担あるいは保険料の減免等につきましては、これは国としても財政的支援措置を行うということで補正予算への計上も検討しているところでございます。
その他いろいろ、福祉施設あるいは病院関係、これらの再建につきましても、国の方としては財政的な措置を最大限頑張っていきたいというふうに思っております。
○山本博司君 是非とも、この経済的負担の軽減という、災害弱者の方々にとりまして一番大変大事な部分でございますので、推進をよろしくお願い申し上げたいと思います。
最後に一問、これからの高齢者の方の支援に特化した課題ということで一問だけお聞きをしたいと思います。
生活不活発病、先ほどもございましたけれども、大変今回こういう避難所の生活で動き回ることが不自由になったということを併せまして、高齢者を中心にこうした心身の不調を訴える方が増加をしております。この対策に関しましてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(宮島俊彦君) 生活不活発病への対応でございますが、避難生活長期化いたしますと、心身機能の低下などのこの病気が発症するという懸念がされています。このため、被災県の避難所の方へパンフレット、ポスターの配布、ホームページへの掲載などを通じて、体を動かしてもらって心身機能の低下を防ぐことを、その重要性について周知を図っております。
また、理学療法士協会などの十七団体で構成される生活機能対応専門職チームの活動、あるいは保健師の被災地での活動、あるいはリハビリ専門医の派遣など、こういった取組を通じまして被災地の被災者の方の生活不活発病に対する予防対策を支援していきたいと思っております。
○山本博司君 以上で質問を終わります。ありがとうございました。