参議院 厚生労働委員会 第9号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、求職者支援法案と震災関連の雇用対策ということでお伺いを申し上げたいと思います。
 今回の求職者支援制度、これは生活保護になる前の第二のセーフティーネット、こういうことで、平成二十一年度補正予算におきまして自公政権当時にできました緊急人材育成支援事業という予算措置がスタートでございました。これは、非正規労働者が増加をする傾向とともに、失業期間の長期化に伴って雇用保険を受給できない方たち、大変増加をしておったわけでございます。大変重要な課題への対応であったと思っております。その理念を引き継ぎまして今回法制化されることになったということに関しましては、大変意義のあることであり、今後もこうした不断の改善ということを続けて、よりいい制度にということをお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
 そこで、初めにこの緊急人材育成事業ということに関して振り返ってみたいと思います。
 まず、現在の雇用者のうち非正規労働者が三分の一になっているという状況がございます。こうした非正規労働者が増加をしてきた背景というのをどのように政府は分析しているんでしょうか。
○政府参考人(生田正之君) 非正規労働者が増加を続けてございますけれども、これにつきましては、まずグローバル化に伴います国際的な企業競争に対応するためのコスト削減ということがございます。それから、流動的な産業構造の変化への柔軟な対応という企業側のニーズがあったわけですけれども、労働者側にも多様な働き方に対するニーズというのもございまして、こういったものの相互要因で増えてきたんじゃないかというふうに考えてございます。それから、制度面から見ますと、労働者派遣法の改正なども含めまして規制緩和が非正規労働者の増加に影響した面もあるというふうに考えてございます。
○山本博司君 この事業は職業訓練に加えて生活支援を推進をするということで、ちょうどリーマン・ショック以降の大変深刻な不況が続いている中で大きな成果が上がったのではないかと思います。
 政府として、これまでこの事業がどのような効果があったのか、この点、どのように分析されているんでしょうか。
○副大臣(小宮山洋子君) 緊急人材育成支援事業の実績といたしましては、事業を開始しました平成二十一年七月から二十三年三月末までの累計の受講者数が、目標の二十三万人に対しまして三十三万四千五百四十九人となっています。訓練修了後三か月経過時点で把握いたしました就職率、これが目標の六〇%に対して六八・八%となっています。これは、修了をした者のうち、引き続きほかの訓練を受ける人を除いた数から割り出したものです。
 このように、訓練受講者数そして就職率共に目標を上回る水準で推移をしておりまして、職業経験が十分でない方や長期失業の方など、非常に就職が困難な方の就職を実現するという意味では成果を上げてきたというふうに認識をしております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 本来であれば、第二のセーフティーネットということで、そのまま生活保護に落ちてしまうという可能性があった人がこの事業によって生活保護にいかなくてもいいという、そういう面では一つの大きな負担軽減という意味でも役に立っているんじゃないかと思います。
 ただ、今回、このセーフティーネットの考え方、生活保護との関係ということで、この生活保護制度も、就労による稼得能力のある方への生活保護制度の活用ということもより慎重に考えるべきではないかという、そういう声も強くなるんではないかと思うわけでございまして、この緊急事業とこの生活保護との関係、これをどのように置かれて考えているんでしょうか。
○政府参考人(小野晃君) お答えをいたします。
 今議員おっしゃられたとおり、この基金事業、第一のセーフティーネットである雇用保険と最後のセーフティーネットである生活保護の間に位置するものとして行っている事業でございます。おっしゃられたように、この事業によりまして、失業のために生活費に不安を抱える方が安心してこの訓練を受講されて、就職に必要な技能を身に付け就職をされるということが可能になって、結果的に失業により直ちに生活保護に至る状況を一定程度食い止めるという役割を果たしてきたんではないかというふうに思っております。
 また、数値的な試算として昨年の六月に公表されましたナショナルミニマム研究会の中間報告というものがありまして、この中で、十八歳から二年間職業訓練を受けた男性が正規雇用された場合に、職業訓練を受けずに生活保護を受給し続けた場合に比べて行政経費がどうかという試算がありまして、それによりますと、最大一億円を超える効果があるという推計結果も示されております。
 以上でございます。
○山本博司君 それでは、大臣にお聞きをしたいと思います。
 この事業のやられてきたこれまでの課題ということと、それから、今回法制化をするということで、今までの予算措置をしてきた事業とどのように違うのかという点、それから、目標に関して今後どのように、まあ今までの事業は六〇%ということで、六八%が就職率ということでございましたけれども、その目標値をどのように設定するのか、この点をお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(細川律夫君) 今、基金事業で職のない方、雇用保険を受けられない方、この人たちに対しての訓練をしながらその生活資金を提供して、そこで職業能力を身に付けていただいて就職につなげているところでございます。この背景は、もう既に出ておりますように、非正規労働者がもう増えてきている、三分の一以上になってきている、そしてまた長期の失業者が増えてきていると。これが、景気が悪くなったからそういう方が増えたというんではなくて、もう恒常的にこういう人たちが増えてきていると、こういう過程がございます。
 そこで、基金事業、これによりまして、基金事業として、これは私は非常にいい形での基金事業が進んだと思いますけれども、これを恒久化することによって、これによって、そういう恒常的になっているこの非正規労働者、そして長期失業者、そういう人たちがこの制度によりまして就職をしていけると、こういう制度とするものでございまして、その点については私は生活保護に落ちないようなそういう形での第二のセーフティーネットをしっかり張ることができるというふうに思っております。
 そこで、大事なことは、これは職業訓練をして、しかも生活資金まで提供して職業訓練をするわけでありますから、これが就職に結び付かなければこれは意味がないということになります。基金事業では就職率が六〇%という目標でありました。それを上回る結果も出ておりまして、この求職者支援制度、これを施行するときに目標値も当然立てなければいけないと思いますけれども、これは基金事業での目標値なども勘案をいたしまして目標を設定をしたいというふうに思っておりまして、要は、しっかりした目標値も立てて、それを実現することによって職のないそういう方に対してしっかりした仕事に就けるようにこの制度でしっかりやっていきたいと、このように考えておるところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この緊急人材育成事業、実際、就職率が六八%であったということで、以前の委員会でも実態はどうなのかということを、実際、大阪市等でのハローワーク等の実態の調査等でも、今までの制度ですと、報告書がアンケートで記入されるわけですけれども、就職していましたというチェック欄では、派遣労働者とかパートタイム労働者とか自営とか、何でも働いていたということであればチェックされているということも含めて、本当にきちっとした就職を含めた形でなっているかということになるとまだまだ課題があるのではないかと、こういうふうな指摘もさせていただいたケースがございます。今回かなり改善をされているということでございますけれども、そうした目標値ということも含めて進めていくようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。これは質問ではありません。こちらからお話をしたいと思います。
 それでは、内容に関しまして入らさせていただきたいと思います。
 まず、求職者のモラルハザードの懸念ということで伺ってまいりたいと思います。
 今回、この事業は生活支援ということで、月十万円と訓練実施場所への交通費が支給されるということが今回の事業でございます。今までの、先ほどの議論でもございましたけれども、最低賃金でも、低い地域で二十日間フルタイムで一日八時間働いても十万円に収入にいかないというケースもございますし、雇用保険制度での求職者給付額、これも十万円未満ということになります。そういう意味で、この訓練希望者が不正受給、いわゆる給付金目当てという形でそれを活用するということは大変大きな問題があって、この不正受給を見破る様々な必要があると思いますけれども、その手だて、対策ということをどのように考えていらっしゃるんでしょうか。
○政府参考人(生田正之君) 委員御指摘のように不正受給はあってはならないことだということで、これを防ぐための抑止効果を持ったような措置を導入するということを今回の法律の中でも考えてございます。
 求職者支援制度の法制化におきまして、ハローワークが求職者に対しまして罰則で担保された報告の徴収やあるいは立入検査ができるというふうにまずいたしまして、求職者が受給する給付金につきまして不正受給があった場合につきましては、不正受給額の三倍までの額の返還、納付を命ずるようなこと、そういう制裁措置を設けております。
 それから、訓練実施機関と話をして不正をするというケースも基金訓練の場合に散見されたわけですけれども、そういった訓練機関が関与している場合につきましては、訓練機関と連帯して返還、納付を命ずることができるというふうなことも法律上に書きまして、不正受給の抑止を図っているところでございます。
○山本博司君 この返還金を支給額の三倍にしたという、この具体的な理由は何かあるんでしょうか。
○政府参考人(生田正之君) 今回の求職者支援制度の給付を受けます際には、最初に事実関係の把握をハローワークの窓口でするわけですけれども、これにつきましては、受給者からの申告に依存する面が非常に強いということがございまして、確かに不正受給が生じる余地があるということでございます。その余地のための厳しい措置という発想でございます。
 納付の金額につきましては、通常の制度ですと受け取った金額と同じ額をお返しいただくというのが基本なんですけれども、悪質な手段により給付を受給した場合につきましては、雇用保険制度の失業等給付につきまして納付命令制度という、ほかの制度と比べても非常に厳しい不正受給に対する制裁措置があるんですけれども、それが三倍返しということになってございまして、それを参考にしながら今回三倍返しという厳しい措置を盛り込んだところでございます。
○山本博司君 もう一つ、今回交通費が支給されるようになったということで、これは大変有り難い形でございます。今までこの交通費がないということで、通える範囲の中でその受講を選んでいくということがなかなかできなかったということが今回から利用できると。特に、地方の場合は車での移動が中心となってくるということもございまして、この交通費の範囲の中に駐車場の料金とか、こういったことも概念として入ってくるのか、この辺の具体的な基準に関してお聞きしたいと思います。
○政府参考人(生田正之君) 具体的な交通費の支給基準につきましては、法案の成立後、労働政策審議会で議論していただいて決めるということでございますけれども、法律を作ります段階で労働政策審議会で議論した際に、こういうのが参考になるというものがございまして、それが雇用保険の通所手当でございます。雇用保険の通所手当につきましては、公共交通機関につきましては実費という発想でございまして、上限が四万二千五百円なんですけれども、一か月四万二千五百円の上限で実費を出すということなんですが、自動車の場合につきましては距離、地域に応じた定額ということになってございまして、この定額がいろんなバリエーションがございます。
 そういうのが参考になるということですけれども、今後、関係審議会で十分議論して決定していきたいというふうに考えてございます。
○山本博司君 それと、皆さん先ほど質問がされた件ですけれども、被災地での求職者支援についてということでございます。
 今被災された方々、大変な状況でございまして、ただ、新たな職を目指されて一定のスキルを身に付けるということは大変重要なことでございます。その意味でもこの職業訓練の役割、大変大きいわけでございまして、じゃ、新しい求職制度、被災者の方々の優遇措置若しくは支援策、このことに関しましてもどのように検討されているのか、お聞きをしたいと思います。
 先ほど、資産要件とかという形でもあるということでございますけれども、金融資産とか土地や建物を持っていたとしてもすぐに生活の維持ができないというようなこともございますけれども、この辺、やっぱり支給要件の緩和であるとか、また他の地域に優先的に受講ができるとか、そういったできるところから対応するということが被災者にとりまして大変大事な点でございます。この辺りの部分に関してお聞きしたいと思います。
○政府参考人(生田正之君) 今の基金訓練の制度におきましても、今回の震災で被災された方々につきましては、例えば建設分野の訓練をするだとか、あるいは訓練・生活給付の支給要件につきまして緩和するといったことにつきまして取り組んでおるところでございます。
 そういったものも参考にしながら、この制度自体は十月一日施行でございますので、十月一日までにこういう具体的な要件につきましては省令で決めることになってございますが、その省令で決めることにつきまして労働政策審議会で御議論いただきますけれども、今日いただいた御意見も含めまして十分議論していただいて、被災された方々がしっかりと支援されるような仕組みになるように検討を進めていきたいと考えてございます。
○山本博司君 是非とも、被災者の方々にとってより有効にこの制度が使えるように推進をしていただきたいと思う次第でございます。
 次に、今度は職業訓練の実施機関、この内容に関してお聞きをしたいと思います。
 特に認定基準ということでございます。実際、栃木県の訓練実施機関の不正事案ということでもございましたけれども、奨励金目当てに不正でこういう形で基金訓練を使うということで、大変信頼性が損ねた事案だと思います。その反省を踏まえて、第四条で職業訓練の認定ということを規定してございますけれども、具体的にどのような基準になるのか、お示しをいただきたいと思います。
○政府参考人(小野晃君) お答えいたします。
 新制度で、この職業訓練実施機関認定基準というのは非常に重要な基準だというふうに位置付けております。今お話ありましたように、具体的には厚生労働省令で施設設備あるいは講師、カリキュラムの内容、訓練期間等の要件を定める予定にしております。
 今後、労働政策審議会において具体的な基準の内容は審議いただくことになりますけれども、今考えておりますのは、やはり今の基金訓練事業の認定基準を更に厳格化をするという方向で、例えば、教育訓練機関については教育訓練の実績、しっかりした実績がちゃんとあるというような要件を加えていく、あるいは講師の要件について、今の基金訓練事業については質が十分じゃないんじゃないかという問題もありましたので、訓練指導の経験があるというようなことを講師の要件に加えて強化をする、あるいは不正があった訓練機関は一切認定をしないというより厳しい形の基準設定を検討していきたいと思っております。
○山本博司君 それから、地方との問題といいますか、ちょうど私、四国ですけれども、やっぱりなかなか地方は首都圏と違いまして訓練コースが非常に少ない、パソコンのコースのみとか、そういう地域によって訓練の提供コースが不足する、受講できない、こういった問題をやっぱり解消しないといけないと思っておりますので、地域ニーズと訓練内容のマッチング、どのように考えていくかという点、この点についてもお聞きしたいと思います。
○政府参考人(小野晃君) 今度の制度におきましては、やはり求人求職ニーズに即して各地域で、量はもちろんですが、質も含めて十分な訓練機会が確保されるという仕組みを新たに構築していくことが重要であると考えております。
 この法案の中にもありますように、厚生労働大臣が関係者の意見を聴きまして、職業訓練の実施目標、例えばどういう分野でどれぐらいの規模で訓練を実施するのか、あるいはそのための有効な施策はどういうものなのか、まず全国レベルの訓練実施計画を定めまして、これを踏まえて都道府県単位ごとに労働局、都道府県、地域の労使団体、あるいは民間の教育訓練機関等との協議の場を設けまして地域の具体的な訓練計画を毎年度定める、これに基づいて訓練コースを設定をしていくということにしております。
 おっしゃられるように地域ごとに訓練機会の格差があってはいけませんので、できるだけ質、量共に必要な訓練を各地域ごとで確保するように、具体的な訓練コースの設定に当たりましては、独立行政法人の高齢・障害・求職者雇用支援機構が訓練実施機関の開拓あるいはいろんな支援ということも行うことにしております。こういった計画的、体系的な仕組みの中で、地域間で訓練機会の格差が生じないように対応していきたいと思っております。
○山本博司君 是非とも地域のそういう格差ということを排していただきたいと思います。
 訓練内容の充実ということを指摘をしたいわけですけれども、今回の緊急の事業に関しましても大変苦情が様々ございました。それは訓練の質の問題で、例えばパソコン教室の受講生から見るとはるかに講師の質が落ちているとか、また学習塾の経営者の方々が奨励金とか様々な目的でともかく競うような形でやっているとか、質の問題が非常に大きく問題になっております。
 一月三十一日の労働政策審議会の建議では、訓練実施機関にカリキュラムを積極的に改善する取組を促すために就職実績に応じた財政的支援を行うべきと、このように述べておりまして、恒久化というのは持続できる体制を整備するということが大変重要であると考えるわけでございます。この意欲ある訓練実施機関、どのように内容充実も含めて取り組んでいくのか、その具体的な取組に関してお聞きしたいと思います。
○副大臣(小宮山洋子君) 委員がおっしゃるとおり、質を上げていくということは非常に重要なことだと考えております。
 財政的な面で言いますと、例えば受講者一人当たり基礎額五万円を支給しているところ、そのコースの就職率に応じて就職者一人当たり一万円又は二万円を上乗せをするというような就職実績に応じた財政的な支援を行うことを今検討をしております。そのほか、やはり質を上げるためには、実績があることを要件に加える、あるいは訓練指導の経験があることなど講師の要件を強化するなど、認定基準を厳格化することにしております。
 さらに、訓練修了後の就職状況をしっかりと把握いたしまして、過去の就職実績の高い訓練から優先度を持って認定をするとか、一定水準未満の就職率のところは不認定にするとか、そういうところはしっかりと厳格にやりまして、訓練内容、質が充実するように努めてまいりたいと思っております。
○山本博司君 是非とも、大事な点でございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 次に、就職支援という観点からお聞きをしたいと思います。
 最終的に就職に結び付けていくということが大変大事な段階でございます。就職相談の段階から、求職者の経験とか希望業種、資格、適性、様々な情報を的確に把握をして、きめ細やかな対応をしていくということが大事でございます。
 今回の新しい制度では、この就職支援、ハローワークが主体となって実施をするということでございます。具体的にどのような内容になるのか、また基金訓練から改善された点、この点をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(生田正之君) お答えいたします。
 求職者支援制度につきましては法律にきちんと書き込むということがございまして、それに伴ってハローワークの就職支援につきましても相当強化されているというところでございます。
 まず、受講する訓練につきましては、ハローワークの方で御本人に合った訓練の受講指示をするということで、キャリアカウンセリング等をきめ細かに行いまして、本人に合った訓練の指示をします。その指示をした上で御本人ごとの就職支援計画を作りまして、その就職支援計画に基づきましてハローワークに定期的に来ていただくというふうにいたします。来ていただくのは訓練受講中だけじゃなくて、修了後も一定期間定期的に来ていただくというふうにするということでございます。
 それから、訓練修了後につきましては、必要に応じて担当者制による就職支援を実施するということで、訓練の受講前から修了後まで一貫してハローワークがきめ細かく支援を実施するという考え方でございます。
 一方で、今回、新しい取組といたしまして、就職支援計画に従わない場合につきましては一定期間給付が受けられないようにするということですとか、あるいは、場合によっては給付の受給額の返還をしていただくだとか、そういったペナルティーを加えるということによりまして受給者の方にもしっかりと就職活動に取り組んでいただくような仕組みにするということでございまして、こういった取組を着実に実行して訓練受講者の就職を実現していきたいというふうに考えてございます。
○山本博司君 今回、この制度、今御指摘ありましたようにハローワークが中心となってその就職の支援をしていくということで、ハローワークの役割、大変強化をされるわけでございます。実務量が飛躍的に増大をすると。
 今回、基金訓練の平成二十二年度実績は二十六万九千人余りの受講数があるわけでございますので、これと同様の規模ということであると。この人たちの個別の支援計画をハローワークの担当の方々がそれぞれ作成をして担当者制の就職支援を行っていくということは相当の人員の確保がやっぱり必要になってくるのではないかと、こういうふうに思われます。一方では公務員の定員削減ということが言われておりますけれども、こうしたハローワークの方々の人員の確保、こういう点ではどのように考えていらっしゃるんでしょうか。
○副大臣(小宮山洋子君) 現在のハローワークの中で当然効率的にもっとできるように工夫をしていくことは前提ですけれども、それでもやはりここは増員をしていかなければならないと考えております。
 ハローワークの中できめ細かな就職支援をしている就職促進指導官、これは長期失業者に対して、あるいは障害をお持ちの方に対して、また若い人たちに対して個々にきめ細かに指導しているわけですが、その就職促進指導官を百八十四名増員をすることをこの制度創設後考えておりまして、その結果として三千百五十六名にこの指導官がなるというように予定しております。また、訓練の受講前から修了後まで一貫した支援を実施するための専門の相談員につきましても、百五十一人増やして二千八人にすると、このような増員を予定をしております。
 とにかく、求職されている方が早く就職されますように、ハローワーク挙げて強力に支援をしていけるような体制を整備したいと考えています。
○山本博司君 ありがとうございます。大事なハローワークの人たちでございますので、その支援をお願いをしたいと思います。
 それでは、財源に関して大臣にお聞きをしたいと思います。
 一月三十一日の労働政策審議会の職業安定部会の報告では、財政が厳しい状況にあるとはいえ、求職者支援制度の本来あるべき姿とは異なるものであり、何よりも当部会における議論の積み重ねを全く踏まえておらず、ILOの基本原則である公労使三者構成によって合意形成を行うという労働政策の意思決定の在り方を尊重しないと受け取られる進め方であり、極めて遺憾であると、このようにございますけれども、こうした報告が出されたということをどのように認識をしているのか、また、労使代表にどのような理解を進めていくのか、この点、大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(細川律夫君) この財源の問題、求職者支援制度の費用をどのように誰が分担するかという問題につきましては、これ、労政審議会の方からは大変厳しい御指摘もいただきました。ただ、労働政策審議会の中でも、この求職者支援制度を早急に恒久的な制度として創設することが最も重要なことだと、こういう共通認識の下で、今先生が指摘されたように厳しい指摘がございまして、本来国が全額負担をすべきものだという、そういう御指摘をいただいたところでございます。
 ただ、早急に対応をしなければならないということで、国が応分の負担をしつつ労使も参画する仕組みとして恒久化することについてはやむを得ないという結論をいただいたわけでございまして、この求職者支援制度、これを法案として提出するまでの過程におきまして、労政審の方からは労使の皆さんから厳しい指摘もいただいております。
 そういう中で、財源の問題についても大変重要な課題でございまして、この法律の施行後三年を目途にいたしまして見直しをすると、こういうことで、法案にもそのことを明記をいたしておりまして、財源の問題につきましても検討をしっかりしていくと、こういうことを法案の中に書いているところでございます。
○山本博司君 今までの緊急人材育成事業は予算措置として全額国庫から基金を積立てして負担をしてきたわけですけれども、今回は今ありましたように雇用保険の附帯事業ということで、二分の一を国庫負担したとしてもあとは雇用保険の財政を圧迫するんじゃないかと、また雇用保険料の引上げにつながるんじゃないかと、こういう懸念もあるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
○国務大臣(細川律夫君) この附帯事業ということにいたしましたのは、これは求職者支援制度につきましては、現行で行っておりますこの基金事業の実績を見ますと雇用保険の受給終了者が六割以上を占めるということにおきましては、この雇用保険制度の拡大とも評価できるのではないか。あるいはまた、この求職者支援制度によりましてしっかりした就職ができると、こういうことになりますと雇用保険制度の財政の問題へも貢献もできると。こういうようなこともいろいろ踏まえまして雇用保険の附帯事業とさせていただいて、国には応分の負担、二分の一負担と、こういうことにさせていただいて、雇用保険の国庫負担が四分の一でありますから、二分の一ということで、それ以上の応分の負担をさせていただいたと、こういうことでございます。
 そこで、委員が御指摘の附帯事業でこの求職者支援制度を実施をすれば雇用保険の保険料の料率を上げるようなそんな事態も考えられるのではないかと、こういう御指摘でございますけれども、これにつきましては既存の雇用保険の保険料率の範囲内で実施をすると、こういうことにいたしております。
 この点につきましては、労働政策審議会の建議の中でも、これについてはこのように建議をいただいております。積立金に係る弾力倍率が一倍を下回る場合には、求職者支援制度における給付等について見直すものとするとともに、労使の負担については積立金の関係で上限設定など制約を設けるべきであると、こういうような建議もいただいておりまして、そういう意味で、一定の制約の中で実施をしていくと、こういうことで保険料率のところに掛かってくるようなことがないように実施をしてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
○山本博司君 最後の時間で、震災関連の雇用対策でお聞きをしたいと思います。
 政府は今、被災者の就労支援のために、「日本はひとつ」しごとプロジェクトのフェーズ1という段階からフェーズ2という新しい段階に進んでいるということを聞いております。被災者の方々、職に就いて暮らしに必要な収入を得るということは被災者の安心とまた生活再建のスタートになると思います。このフェーズ1の進捗状況を確認をしたいと思います。
○副大臣(小宮山洋子君) 就労を支援し、そして雇用を創出するために関係省庁でこの会議をつくりまして、おっしゃるように、緊急のものとしてフェーズ1を出し、フェーズ2でそれを裏打ちする補正予算などについての方策を今取っているというところです。
 この中で、やはり雇用を創出するためには、その雇用創出のための基金事業とそれから当面の復旧事業、それからあとマッチングをするために「日本はひとつ」しごと協議会をつくり、ハローワークが中心になってマッチングをしていくこと、それから雇用の維持確保というその下支え、その三つの分野で展開をしているんですけれども、その今の進捗状況からいいますと、雇用創出基金事業で一万四千百人分、それから復旧事業で三千五百五十三人分、それから被災者向けの求人で三万三千二十九人分、農業、漁業分野の求人で千二百三十三人分、トータル五万二千人分の雇用の機会が確保をされている。これは五月十一日現在ですが、これだけの雇用機会をつくってきていますので、今着実に進められていると思っておりますが、更に力を入れていきたいと思っています。
○山本博司君 今、五万二千人の雇用機会確保できたということで、進展されていると思います。ただ、多くは被災地以外の方の雇用も多いということでございまして、やはり住み慣れた地域の被災者の方々が雇用の確保をされるということ、大変大事でございます。雇用の場をやはりどうつくっていくかという、そういう意味では大変大事だと思います。瓦れきの撤去とか仮設住宅の建設とか、これからどんどんあるわけでございますけれども、この被災地での雇用対策、このことに関してお聞きしたいと思います。
○副大臣(小宮山洋子君) 最初からこの目的としまして、被災者の雇用をつくるという、支えるということと被災した企業をしっかりと支えていくということを目的としてやっておりますので、当面の復旧事業についても可能な限り地元の建設業者が受注できるようにすること、復旧事業についても、ハローワークに求人を出していただいて、そこでしっかりと被災した方たちが仕事を得られるように、インセンティブとしまして雇入れ助成金とかそれからトライアル雇用などの奨励金の額も上げまして、なるべく被災者が得られるようにしているというようなことです。
 今、補正予算によりまして、復旧事業の推進でトータル十五万人の雇用を創出をしたい、そして重点分野の雇用創造事業に災害対策ということで、もう高齢者や子供の見守りからほとんどのものが仕事になるようにしてございますので、そうしたことで被災者を中心に五万人分の雇用創出をしたいと、そのように考えています。
 ただ、委員がおっしゃったように、求人の三万人余りというのは八割以上が被災地外で、皆さんは被災地離れたくないとおっしゃっているので、これはフェーズ3、第三段階以降、復興会議などでのグランドデザインも見ながら、しっかりとこの後に続いていく仕事を地元でつくり出さなければいけないというふうに考えております。
○山本博司君 最後に、大臣に、この雇用創出に向けた大臣の決意、今、三県で八十四万人ぐらいの方たちが就業していたということでございますけれども、大臣の決意をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(細川律夫君) 今度の震災を契機といたしまして、被災者はもちろん、全国で雇用に大きな影響を与えてくるんではないかと、こういう心配がございます。そこで、先ほど副大臣の方からお話がありましたように、「日本はひとつ」しごとプロジェクト、フェーズ1に続きましてフェーズ2を取りまとめて、それを実施するということで全力で取り組んでいるところでございます。
 具体的には、被災した復旧復興事業での雇用、そしてまた重点分野雇用創造事業の積み増しによって雇用の創造、あるいは被災された方を雇い入れた場合に対しての企業への助成の充実、あるいは出張相談、求人開拓、そしてまた雇調金、雇用調整助成金の更なる拡充や雇用保険の延長給付の拡充というような、こういう関係施策、約四兆三千億円によりまして百七十万人を上回る雇用の創出、下支えの効果を見込んでいるところでございます。
 せんだって、私も経団連などの主要経済団体、また職業紹介の事業所等に対しまして、この震災に伴う雇用対策に対して積極的に対応してほしいと、こういう直接の要請もしてまいったところでございます。
 今回のこの震災によります雇用問題というものは大変深刻なものでございますから、これはもう国中みんなが応援ということで、雇用の創造、雇用の維持、しっかり取り組んでいかなければというふうに思っております。私も先頭に立ってしっかり頑張ってまいりたいと、このように考えております。
○山本博司君 終わります。