参議院 国土交通委員会 第14号 平成27年6月11日
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日は、道路運送車両法及び自動車検査独立行政法人法の一部を改正する法律案に関しまして、国土交通大臣にお伺いをしたいと思います。
自動車産業構造の変化やグローバル化の進展等に対応して、自動車の安全性を確保すること、これがますます重要になっております。また、近年、交通事故による死傷者数は減少傾向にございますけれども、いまだ多くの方々が交通事故の犠牲になっておりまして、この交通事故の現状、依然として深刻な状況でございます。
飲酒運転やスピード違反の取締りの強化や、またシートベルトの着用率の向上などのこうしたソフト面の対策とともに、道路照明やガードレールの設置を始めとするハード面の整備が大きな効果を上げていると考えますけれども、これを更に進め、事故を未然に防ぐことが求められております。最近では、衝突被害を軽減するブレーキなどの、運転をアシストする、こういう設備が増えてまいりましたけれども、やはり日頃の点検整備と車両検査、これを確実に実施することが自動車の安全性確保の前提になると考える次第でございます。
今回の改正はこうした自動車の安全性確保に向けた大事な取組でございまして、幾つかの課題についてお聞きをしたいと思います。
まず、リコール問題に関してお伺いをしたいと思います。
今回の改正では、リコールの実施に必要な報告徴収、また立入検査の対象に装置メーカーを追加することとなっておりまして、より迅速な情報収集、これが可能となっている次第でございます。この点は評価したいと思います。
今回のタカタ製エアバッグの不具合の問題に関しましては、いまだ原因究明に至っておらず、発生原因の特定にまだまだ時間を要するようでございますけれども、万一発生すれば命に関わる危険な事故が起こり得る状態であるわけでございます。
去年の十二月の会見で太田大臣は、原因の特定を待っていると時間が余りにも掛かり過ぎる、そして不安が広がるということもありまして、全数回収して調査を行う、いわゆる調査リコールを行う必要があると、こういう判断に至ったところです、ホンダも同様の考えです、リコール制度の見直しとか、もう少し今回の対応状況をよく見て検証したいと、こう話されておりました。
今回の法改正はこうした検討の結果行われたと、こう理解をしておりますけれども、法改正の検討状況の狙いはどこにあるのか、またこれに関しましての大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(太田昭宏君) タカタ製エアバッグにつきましては、一部の自動車メーカーがいわゆる調査リコールということを行っています。この調査リコールは、市場で事故が発生しておらず、車両に何らかの不具合があるかまだ特定されていない段階で、自動車メーカーが念のため自主的に車両を回収して不具合の調査を行うというものです。
このように、調査リコールは製造上の問題が特定された上で行われる通常のリコールには至らない任意の措置であるために、制度化することまでは考えておりません。今回のタカタの事案ではアメリカでも調査リコールを実施しておりますが、これもあくまで任意の措置でありまして、制度化はされていないという状況です。
一方で、近年の自動車は、装置の共通化、モジュール化の進展によりまして、不具合の原因を自動車メーカーだけで全て把握することは困難であると。こういう状況から、この法案では、新たにリコールに関する国の報告徴収と立入検査の対象に装置メーカーを加えるということにさせていただいたものでございます。これによって、国が装置に関する技術的な情報や同じ装置を使用しているほかの自動車メーカーの情報を直接入手することが可能になりまして、リコールの迅速な実施が図られるものと認識をしています。
今後、この改正によりまして強化されるリコール対策にしっかりと取り組んで、自動車の安全確保に万全を期したいと、このように考えているところでございます。
○山本博司君 大臣、ありがとうございました。
こうした自動車の電子化によりまして、安全や環境に関する技術、これが急速に進化しております。また、技術も複雑化しておりまして、リコールの件数も増加しているという状況もあるわけでございまして、自動車メーカーの自主的な申出だけでなくて、やはり安全性の確保、命を守るという観点で、国がリーダーシップを発揮してよいのではないかなと私は考える次第でございます。今後の議論で是非検討していただきたいと思う次第でございます。
次の質問に移りたいと思います。
こうした中で、自動車の革新的技術の開発普及と独立行政法人改革を推進するために、二つの法人を統合して、独立行政法人自動車技術総合機構、これを設立することになっております。現在、車検検査を担当している自動車検査の独法と、自動車の基準策定や新車の検査、またリコールを担当する交通安全環境研究所、これが統合することによりまして、それぞれ単独で活動するよりも大きな結果を出すシナジー効果、これが期待されると考えるわけでございますけれども、この二つの独法を統合することでどんな効果が期待をされているのか、特に自動車の安全性確保、このことに関しましての取組、どのような期待がされているのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(田端浩君) お答えいたします。
今回統合します二つの法人は、いずれも自動車の安全、安心を確保する業務を担っているところであります。今回、統合の結果、自動車の設計段階から新車、使用過程の段階までの業務の一体的な実施をすることによりまして、車検時の不具合情報の活用による基準の改善や迅速なリコールの実施、また研究部門の知見の活用によります新技術に対応した効率的な検査手法の開発などのこういう連携が可能となります。これによりまして、自動車の安全、安心のための体制強化が図られるものと考えております。
○山本博司君 是非とも安全確保のための推進をお願いしたいと思います。
また、交通安全環境研究所に関しまして、これまで独法では鉄道関係業務についても実施をしているわけでございます。先ほどの質問でもございましたけれども、政府の日本再興戦略の中にも、インフラの海外展開、これを戦略的に進めることとしておりまして、交通分野における海外受注額、平成二十二年度の〇・五兆円から十年後には七兆円まで引き上げるということを目指しているわけでございます。
また、もう一方では、鉄道の建設後五十年以上経過したものは、トンネルで約六割、また橋梁では約五割を占めるということで、こうした鉄道施設、車両の老朽化対策ということも喫緊の課題でございます。
名称が自動車技術総合機構、こうなったわけでございますけれども、やはり鉄道関係分野、業務が縮小されるんではないか、こういう危惧の声があるわけでございますけれども、この点に関してもう一度確認をしたいと思います。
○政府参考人(藤田耕三君) 現在、交通安全環境研究所におきましては、鉄道関係の業務といたしまして、新技術の安全性評価等に関する研究、あるいは事故、トラブルに対する原因究明、製品の国際規格への適合性の認証などを行っておりまして、多方面にわたりまして大変重要な役割を担っております。
平成二十五年十二月の閣議決定、独立行政法人改革等に関する基本的な方針におきましても、鉄道インフラの戦略的な海外展開等において重要な役割を引き続き担う必要がある、それから、対外的プレゼンス等の研究部門としての必要な機能が損なわれることがないようにする、このために、統合に当たっては、交通安全環境研究所の名称を維持するとともに代表権を有する役員を置くということが決められております。この閣議決定に基づきまして、統合された自動車技術総合機構におきましても、その一部門として交通安全環境研究所を存続させることとしております。
こうしたことから、鉄道関係業務の役割、プレゼンスの確保を図ってまいりますし、したがって、今回の統合により鉄道関係業務が縮小されることはないというふうに認識をしております。
○山本博司君 安心をいたしました。
次に、車検制度に関して伺いたいと思います。
今回の改正では、自動車検査における民間の整備工場の業務範囲、これが拡大が盛り込まれておりまして、小型の貨物自動車の中古で購入した場合の新規検査、これを民間の整備工場でもできるようになるわけでございます。現在、年間で五万件該当車両があるということでございますけれども、これが民間で進むようになれば、独法の自動車検査の事業が縮小が想定されているのかどうか、どのような影響が出ているのかどうか、そういうことを確認をしたいと思います。特に人員体制の見直しということも想定しているのかどうか、この点、いかがでしょうか。
○政府参考人(田端浩君) 現在、自動車検査独立行政法人では、全国で九十三事務所におきまして、年間約八百万台の基準適合性審査を実施をしております。
この検査法人におきまして、今後、開発普及が進む自動走行や燃料電池自動車といった革新的な技術に対応して、電子的な診断装置でありますスキャンツールを活用するなど、新しい審査方法を導入し、同法人の業務を高度化をしていく、こういう新しいニーズがございます。また、これに迅速に対応していくための体制を整備する必要もございます。
このため、今般の法案によります民間整備工場の業務範囲の拡大に伴いまして、直ちに同法人の人員とか予算を縮小するものではないと認識をしております。
○山本博司君 是非、その点もよろしくお願いしたいと思います。
こうした業務範囲の拡大に伴いまして重要になってまいりますのは、民間の受ける担い手の確保でございます。少子化や若者の車離れの進展の中で、将来の選択肢の多様化によりまして、自動車整備士養成学校の学生数、過去十年間で半数に激減する一方で、団塊世代の整備士が引退をされております。また、ハイブリッド車や電気自動車などの新技術対応ということから整備士の新規採用枠が拡大をしておりまして、整備士の人手不足、大変顕著となっております。
約三十四万人の整備士数ということでございますけれども、この整備士の数が不足すれば、適切な整備ができなくなり、自動車の安全環境の確保にも重大な支障が出てくるおそれがございますし、これ、整備事業の基盤を揺るがしかねない課題でもあると思います。こうした自動車整備士の確保、どのように考えているのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(田端浩君) お答えいたします。
御指摘の整備士不足の関係の対策でありますが、国交省は、平成二十六年度から、自動車関係の十五団体から構成されます自動車整備人材確保・育成推進協議会と協力しまして、人材確保の取組を全国的に行っております。
今年度も、全国五百八十校の高等学校へ運輸支局長が訪問し、整備士の重要性や魅力について説明をする、また小中学生を対象とした整備の仕事の体験イベント、また女性を含めた若者向けのポスター等によりますイメージ向上、こういうものを取り組んでいます。また、昨年度の高校訪問の際に校長先生などからいただいた御意見を踏まえまして、インターンシップによる整備の仕事の体験学習の拡充、あるいは整備事業者等によります奨学金制度の紹介、あるいは整備工場で働きながら整備士資格を取得できる二種養成施設の説明の充実、こういう新しい取組も今年度からまた取り組んでいきたいと考えております。
○山本博司君 今、整備士の数が約三十四万人ということでございますけれども、大変大事な分野でございますので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
これに関連いたしまして、自動車整備士の確保の中で、車両技術、これの高度化に合わせまして、整備士としてより高度な技術また知識、これが求められておりまして、人材確保のためには、上級資格でございます一級整備士、これを持つ人材を養成していくということが求められているわけでございます。
平成十四年度よりこの一級自動車整備士技能検定試験が実施されておりますけれども、二級自動車整備士の技能に加えまして、ハイブリッド車とかハイテク技術に関する知識であるとか、また環境分野の知識の習得とか、さらにはお客様の悩みに応える高度な、高いコミュニケーション能力、こういったことも求められるわけでございまして、今、八千五百八十六人、一級整備士の数がございますけれども、しかしこの資格を取得しなければ実施できない業務というのはなくて、一級を取得しても給与に手当が付かない企業、約六割近い企業があると言われておりまして、こうした一級自動車整備士の方々、車社会全体を見直していきますと、真のやっぱりプロフェッショナルとしてのそういう技能、これが求められていると思います。
また、キャリアパスという観点からも、こうした一級整備士の環境改善、これは必要だと考えますけれども、太田大臣にこの点を含めてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(太田昭宏君) 現場で働く人が、この整備士あるいは建設労働者あるいはパイロット不足、トラックを始めとする運転手の不足、電力関係で働く現場の労働力不足、これがこれからますます、幾らビジョンを作っても、そこで働く人が育ってこなければ何ともならないと思います。
整備士は非常に、本当に半数ぐらい、不足していると答えているところがありまして、山の高さは裾野の広さによると、裾野の広さの中に山の高さが決まると、こういうことはいろんなことで明らかでありますが、裾野が広がるということをやった上で、高い山の先端というところには富士山のように美しいものがあって初めて裾野の広がりの人が加わるんだと思います。
そういう意味では、今答弁しました自動車整備士自体を幅広くしていくということと同時に、そして二級、そして一級と取った人が、富士山の山頂のように美しさと、そして給料もいい、待遇もいい、活躍の場があるということに持っていかなければならないと私は強く思っているところです。そのためには、まさに一級の自動車整備士が、能力に見合った処遇が与えられて充実した活躍の場が得られるというキャリアパスが確立することが必要だと思っています。
こうした考え方から、自動車整備人材の確保・育成に関する検討会を自動車関係業界、整備士養成学校等とも今月中に立ち上げて、一級自動車整備士の育成や処遇の改善を含めた具体策を取りまとめていきたいと、このように今月中に動き始めるという状況にいたしました。
○山本博司君 大臣、ありがとうございます。
大変大事な分野でございますので、よろしくお願いをしたいと思います。
次の質問でございますけれども、次に自動車情報の利活用ということに関してお聞きをしたいと思います。
世界最先端IT国家創造宣言では、目標として定められました二〇二〇年までに世界最高水準のIT利活用社会の実現、これを達成するために、ビッグデータの利活用による革新的な新産業、新サービスの創出、また利便性の高い電子行政サービスの実現などが課題の柱として位置付けられております。
この自動車のビッグデータの利活用に関して、今、国交省では有識者から成る検討会を立ち上げて報告書をまとめられたと思いますけれども、この点に関して報告いただきたいと思います。
○政府参考人(田端浩君) お答えいたします。
今委員御指摘ありました自動車ビッグデータ、将来利活用の在り方、本年一月に自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョンとして策定、公表いたしました。
この将来ビジョンにおきましては、テレマティクス等を活用した新たな保険サービスによる安全運転の促進、自動車の履歴情報を収集、活用したトレーサビリティーサービスによります自動車流通市場の活性化、また、自動車の故障診断技術の高度化による安全、安心の向上、検査・整備情報の総合活用によります効率的な検査、整備の実現、こういった新サービスの実現を目指すことが盛り込まれております。このような新サービスにつきましては、二〇二〇年東京五輪大会頃までの実現を目指すこととされています。
今後、国交省といたしましては、関係業界と連携し、トレーサビリティーサービスの実証実験、運転情報等の活用による安全運転促進効果の検証など、将来ビジョンの実現に向けた取組を進めてまいる所存でございます。
○山本博司君 是非ともお願いしたいと思います。
最後に一問、ICTを活用した自動車の安全性確保ということに関しまして、大臣の決意をお聞きしたいと思います。
○委員長(広田一君) 時間が参っておりますので、簡潔に願います。
○国務大臣(太田昭宏君) ICTの発達によりまして交通分野での活用が急速に進んでおりまして、自動車につきましても、ICTを活用した自動ブレーキあるいは車間距離を維持するとか、交差点における速度制御、こうした技術の導入の開発が進められているところでございます。
様々、これからICT利用ということで、脆弱性を克服しながら、便利でそして安全な交通を実現するということに努めたいと思っております。
○山本博司君 以上でございます。ありがとうございました。