参議院 国土交通委員会 第4号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 十一月の五日の本会議に続きまして、土砂災害防止法改正案につきまして質問を申し上げたいと思います。
 初めに、改めて、本年夏の土砂災害や台風、御嶽山の噴火被害などでお亡くなりになられました方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げる次第でございます。
 本日は、法案に関連する部分と、砂防堰堤の整備、またテックフォースに関しましてお聞きを申し上げたいと思います。
 近年のこの豪雨被害、太田大臣も話されておりますように、局地化であり、また激甚化であり、集中化しております。思いも寄らないこうした大きな規模になることも珍しくないということでございます。私たちは、自然の脅威に何よりも謙虚に向かい合っていかなくてはならないと思います。
 そこで、改正案に関連してお聞きを申し上げます。
 まず、開発許可に関しましてお聞きをいたします。
 今回の改正案では、土砂災害警戒区域及び特別警戒区域の指定促進に向けまして、その前提となる基礎調査の結果公表の義務化が、これが盛り込まれているわけでございます。この基礎調査が進み、結果の内容によっては、土砂災害の発生が予想される地域に関しましては都市計画法に基づきまして開発許可が出ない特別警戒区域に指定されると想定される場合もあると考えられます。
 しかし、今日の午前中でもいろいろな議論がございましたけれども、この区域指定には一定の時間が掛かります。一年以上ですと一万六千七百か所と、こう言われておりますけれども、この区域指定が決定される前に開発許可が行われた場合には基本的に許可がされることになるわけでございます。
 そういうことも含めまして、この基礎調査で土砂災害の危険性が予想される地域に関しましては区域指定がされる前でも開発許可を出さない、こういうことが国民の安全を守るという点では私は良いのではないかと思いますけれども、この点に関する見解をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(小関正彦君) 都市計画法の開発許可制度におきましては、土砂災害特別警戒区域が指定されている場合には土砂災害防止法に基づき対策工事が実施されているなど、支障がないと認められる場合を除いて、原則として開発許可をしてはならないこととされております。一方、開発許可申請がなされて許可の時点までに区域指定が行われないときは、許可基準に適合していれば開発許可をしなければならないこととされております。
 そのような場合におきましても、開発許可部局と防災部局とが連携を図り、申請者に対して、基礎調査の結果、開発区域には災害の発生のおそれがあることなどを情報提供し、注意を促すということにつきまして地方公共団体に対して技術的な助言を発出し、許可の運用が柔軟かつ適切に行われるようにしてまいります。
 以上でございます。
○山本博司君 これは是非、大事な点でございますので、国民の安全を守るためにしっかりそうした形の対応をお願いをしたいと思います。
 次に、建築物への規制に関してお聞きをしたいと思います。
 土砂災害特別警戒区域では、その地域内で建築される建物に関しましては、建築基準法施行令に定められました土砂等の衝撃等に対しまして安全性を確保できる構造になっているかどうか、この建築確認がされることになっております。一定の基準に達していますと、これは建物が建つわけでございます。
 しかし、例えば崖の下にあって、雨が豪雨で土砂災害が起こって、たとえ建物は倒壊していなくても完全に埋まってしまうという、こういう特に大きな被害が生ずる可能性がある場所におきましては、どんなに建物が構造的に強い建物であったとしても、危険性があるというこの時点で建築自体を禁止する措置、これは私は必要ではないかなと思います。
 もう一方、建築基準法には災害危険区域制度というのがございます。これは、地方公共団体が条例を定めることで住居の建築を禁止することもできると、こうされているわけでございます。私は、命を守るというこういう点から、安全性を確保するために、必要に応じてこうした土砂災害防止法とこの建築基準法の制度を適切に組み合わせて、場合によっては建築禁止という厳しい規制強化、これを取るということも必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(橋本公博君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、土砂災害特別警戒区域の指定が行われた場合には、その地域内に建築される建築物には、想定される土砂等の外力により倒壊しないという構造基準に適合することが求められるところでございます。
 しかしながら、建物が倒壊せずとも建物が完全に埋まってしまうような特に大きな被害が生ずる可能性がある箇所につきましては、土砂災害特別警戒区域による規制に加えて、建築基準法に基づき災害危険区域を定めて住居の建築の禁止等を行うことが大変有効であると考えております。
 今後、地域の実情に合わせまして、これらの制度を組み合わせて活用することに関して、改正法の施行に合わせ地方公共団体に対し周知をしてまいる所存でございます。
○山本博司君 是非、人命を守るという観点からその周知を含めて推進をお願いしたいと思います。
 さらに、要援護者への対策ということでお聞きをしたいと思います。
 広島市の災害におきましては、保育所とか障害者とか高齢者の関連施設、社会福祉関連施設が二十五か所被災に遭ったという報告を受けております。例えば障害者の就労B型の八木園というところでは、土石流によって流されました。また、二〇〇九年、山口県の防府市の特別養護老人ホームで七名の方が亡くなられましたけれども、私も現地に行きましたけれども、こういう地域に特養が建っているということも驚いたわけでございます。
 私は、先日の本会議で、こうした福祉避難所の整備を始めいわゆる災害弱者への支援ということを強く訴えたわけでございますけれども、この要援護者へのきめ細やかな対策というのは大変大事でございます。
 そこで、まずこうした要援護者が利用する施設、これが一体どのような場所に存在しているのか、また災害への、土砂災害等への備えが十分かどうか、こういう全国的な実態把握、総点検が私は必要であると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 全くそのとおりだと思います。
 それで、私も防府のこととか、今回八木園とかいろんな事例を見ておりますけれども、とにかくどれだけあるかということについて、これは二十一年八月に調べたデータがありまして、一万四千施設という、これ国交省と厚生労働省との、一緒にやったことです。これは、その後五年経過していますから、相当施設もできたであろうし、また状況も変わっているということもありますから、直ちに、これは厚生労働省とよく連携しまして、今月中にも調査に着手をして、そして、私の考えでは、今年度中にはきちっとして数字が出るようにというふうに思っています。
 それから、今回のこの警戒区域とか、そうしたことの区域指定に限らず、去年仙北市で、秋田の、行きましたときに、政務官が行ってもらったんですが、非常になだらかに見えるんですね、なだらかに見えるところが土砂で流されたということがありますから、従来のそうしたことだけではない、特にこの要援護者の関連施設については念には念を入れて、まずは一定の基準で調べさせていただきますが、さらにその辺の注意を喚起するということが大事だというふうに思っております。
○山本博司君 大臣、是非ともお願いをしたいと思います。そうした社会福祉施設かなり、私も全国回らせていただきましたけれども、山間地域とかそうした地域にもございますので、総点検をお願いをしたいと思います。
 次に、法案に関連をしまして、砂防堰堤等の整備についてお聞きをしたいと思います。
 私、現地広島を回らさせていただきまして、多くの住民の方々が、この砂防ダム、大変大きな効果を発揮したということをお聞きしました。大町地区とか八木地区等でやはり土石流を止めて土砂を止めたということで、下にいらっしゃる住民の方々は人命を守られたというふうに強くおっしゃっておられました。
 広島県はこのほど予算を組みまして、この砂防ダムの建設を進めることになっております。今後は、やはり人命を守るという観点から、砂防堰堤の整備、これを着実に進めていくということが私は、大臣、必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 今回の広島市での災害におきましては、百七の渓流で土石流が発生をして、甚大な被害を及ぼしています。御指摘のとおり、八木地区では工事中の砂防堰堤が下流の被害を軽減して、少なくとも人命に関わらなかったという効果を発揮したことが確認をされています。また、安佐南区の大町地区では砂防堰堤が土石流を完全に止めているという事例もございますし、そうしたことを考えますと、砂防堰堤の整備というのは非常に重要だというふうに思います。
 ただ、財政制約があって、たくさんの地域ですから、そこでどういう順番でやっていくかという、そうした人命を守るという観点から効果が高い箇所、ここを優先してという優先順位をしっかり付けて直ちに動きたいというふうに思っているところでございます。
○山本博司君 是非、優先順位を付けながらお願いを申し上げたいと思います。
 もう一問、砂防ダムに関しましてですけれども、現地訪問した際にも要望されました。今回、土石流等で砂防のダム、土砂が満杯になっております。一部では、八木地区では若干修復をしないといけない部分もあるかというふうに聞いておりますけれども、今後、豪雨災害が発生をしたときにやはり心配であるという声も聞いているわけでございます。やはりこの土砂を撤去してもらう、砂防ダムにたまった土砂を撤去してもらう、今進捗を、進められているということも聞いておりますけれども、この状況を御報告いただきたいと思います。
○政府参考人(池内幸司君) 委員御指摘のとおり、八木地区、大町地区では砂防ダムが下流の人命を守っておりますが、一方で土砂も堆積しております。このうち、大町地区の砂防堰堤につきましては既に堆積土砂の撤去を完了いたしております。また、八木地区の砂防堰堤につきましては堆積土砂の撤去を年内に完了するとともに、次期出水期までに工事を完了させる予定でございます。
○山本博司君 是非その点もお願いをしたいと思います。
 さらに、治山ダムにつきまして農林水産省にお聞きをしたいと思います。
 今回、広島の被災地を回った際にも、砂防ダムは土石流が食い止められたということでございましたけれども、八木地区を回る中で、治山ダムが破壊をされて、もう真っ先にコンクリートの大きなものが下に流れていったということでございまして、残念ながら土石流を止めることができなかった治山ダムがございました。これ、治山ダムは治山事業でございますので、森林法に基づく水資源の涵養とか、山地災害を防ぐための森林を維持造成するという目的があることも承知しております。砂防ダムは砂防事業でございますので、そういう趣旨はよく分かるわけでございますけれども、しかし、この治山ダムに関しましても土砂災害対策といいますか、そういう強化の検討を私はするべきではないかなというふうに実感をした次第ですけれども、農林省、いかがでしょうか。
○政府参考人(本郷浩二君) お答え申し上げます。
 今回の広島での災害を含めまして、治山事業により整備された治山ダムは渓流の浸食の防止ですとか、土石流のエネルギーの抑制等に一定の効果があったものとは思っております。
 一方で、農林水産省といたしましては、近年の豪雨等による山地災害の発生状況を踏まえ、これまでの治山事業の効果の検証等を行いながら、土石流に対するダムの機能の強化等について検討を行っていく必要があると考えております。現在、既に広島におきましては、広島県と連携をさせていただきまして検討会を設置して検討を始めたところでございます。
 今後とも、このような検討を踏まえまして治山事業を推進し、地域の安全と安心の確保を図っていく考えでございます。
○山本博司君 是非この治山ダムに関しましても検討をしていただきたいと思います。やはりハード的な砂防、治山を含めて、しっかりこういう点に関して安心できる環境をしていただきたいという声でございました。
 続きまして、最後に、テックフォースに関しまして伺いたいと思います。
 今回被災地を回る際にも、住民の皆様から、このテックフォースの皆さんに対する、活動、大変高い評価がございました。真っ先に駆け付けてくれて、二次災害を注意しながら最後まで対応していただいたと、こういう形の声を多く聞いたわけでございます。
 このテックフォースに関しましては、国交省の職員による緊急災害対策派遣隊のことでございますけれども、大変プロの目から、技術者集団として今回の役割というのはもっと高まってくるのではないかなという気がいたします。やはり、これから予想される南海トラフの巨大地震対策であるとか、広域的で長期間にわたる災害とか、度重なる災害、こういったことでも対応できるような訓練や研修の充実というのが私は必要ではないかなと思います。
 このテックフォース、大変大事な役割であると思いますけれども、大臣、この更なる体制強化も含めまして、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(太田昭宏君) 平成十六年の中越地震、これを契機にしまして、国交省としてテックフォースを組織しました。これは、日常業務はそのまま置いておくんですが、それぞれ派遣をしていただいたりして訓練をしたり、そうした技術も身に付けるということで、現在、東日本大震災以降更に充実させまして、隊員数は約六千六百名に増強ということになりました。東日本大震災以降で倍になったという状況です。
 災害になりますと、自衛隊、そして消防、警察の皆様に大変御努力いただいたということがよく報道されるんですが、実は今御指摘のように、最初に、災害が起きたら真っ先に、テックフォースのまあ一部と考えたらいいんですが、リエゾンというのが直ちに市町村長の横にぴたっと付いて、災害が起きますと何をしていいか首長さんも分からない、そこをぱっと付いて参謀役になるという、そのリエゾンが常に真っ先に駆け付けるというシステムになっておりまして、去年の大島でも、今回の広島におきましても、下の方から見るんじゃなくて山の方にううっと上がっていって、これが二次災害が起きるか起きないかということを全部歩いて、棒でつついたりいろいろしながら、また、目視したりいろいろしながら、二次災害が起きないようにということをずっとやっているのもテックフォースでございます。
 このテックフォースが活躍をして、二次災害あるいは災害救援ということに重要な役割を果たすようになっており、出動回数も増加し、そして、専任部隊じゃないものですから、なかなかこれだけ災害が多いと負担が多くて、行きますと本当に泊まる場所もなかったり、結構徹夜に近いような状況もあるものですから、私は大変健康ということで心配をしています。事故のないようにということも言っているわけですが、更にこれを技術も磨いて皆さんがしっかりやっていけるようにと、単に精神的なものだけじゃなくて激励をしていかなくてはならないと思っています。
 今日、委員会で大事なテックフォースだと言っていただいたということを改めて国交省のメンバーに申し上げたいと、このように思っているところでございます。
○山本博司君 やはりこれからの様々な災害の対策におきましてもテックフォースの役割、大変大きいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 やはり今回の土砂災害防止法の改正に関しまして、いかに実効性を高めていくかということがこれから大事でございますので、これからまだまだ様々な災害対策が必要になるかと思いますので、しっかり推進をお願い申し上げたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。