参議院 国土交通委員会 第8号 平成30年4月10日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、建築基準法の改正に関してお伺いをしたいと思います。
 まず初めに、既存建築ストックの活用に関して伺いたいと思います。
 空き家は人口減少などで全国的に年々増え、二〇一三年時点で全国に約八百二十万戸あり、二十年で約一・八倍に増えております。近年も増え続け、ごみの不法投棄や火災など、防犯や防災面での悪影響が社会的問題ともなっておるわけでございます。この空き家対策につきましては、各自治体が様々に模索しておりますけれども、解体には費用が掛かり、現状では人口減で住宅として再利用するニーズは乏しい状況にもございます。
 こうした中、新しいニーズを開拓し、住宅をそれ以外の用途に変更して活用することが求められており、今回の法改正におきましては、安全性の確保と既存建築ストックの有効活用を両立しつつ建築規制を合理化していく内容が盛り込まれておりまして、大変重要な改正であると思います。この改正を機に、これまでなかなか活用が難しかった古民家を始めとする既存建築ストックの活用が進むことを期待されるところでございます。
 そこで、まず法案の内容に関して伺いたいと思います。
 今回の改正では、耐火基準や用途変更の手続の規制を緩和することで既存住宅などの転用を後押しする内容が含まれておりますけれども、具体的にどのような規制緩和及び制度の合理化が行われたのか、そして、その合理化が行われることでどのような効果を考えているのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(伊藤明子君) お答え申し上げます。
 今回の改正法案では、空き家の増大等を踏まえ、ほかの用途への転用による既存建築ストックの有効活用を図るため、防火関係の規制の合理化と建築確認の手続の合理化を行うこととしております。
 具体的には、三階建ての戸建て住宅等を福祉施設等とする場合には、警報設備の設置など在館者が避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とします。また、用途変更に伴って建築確認が必要となる規模について、その上限を百平米から二百平米に見直し、二百平米以下の他の用途への転用は建築確認の手続を不要とします。これらの改正により、用途変更に伴う費用や手続の費用負担が軽減されることになり、既存建築ストックの有効活用が促進されるものと考えております。
 特に、費用の低減効果につきましては、現行制度によれば、三階建ての戸建て住宅を転用しようとする場合、耐火建築物とするために全ての柱、はり、壁、床等の主要構造部について石こうボードによる被覆など大規模な改修工事を行う必要があり、実質的には建て替えざるを得ないのが現状であります。
 改正後は、警報設備の設置等を条件として耐火建築物としなくてもよいこととなるため、間取り変更などに必要な費用を除きますと改修費用は二、三百万程度にとどまることから、建て替えと比較しますと大幅に費用負担は軽減されるものと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。この改正で大きく費用負担が軽減をされるということでございまして、既存建築の活用につながるということで、大変重要であると思います。
 その際に、火災報知機やスプリンクラーを設置することで火災への備えとするということになりますけれども、耐火建築物にすることを不要にした場合でも防火の備えに支障はないということでいいのかどうか。今回、防火関連の規制の考え方を見直したということでございますけれども、どのような見直しなのか、御報告いただきたいと思います。
○政府参考人(伊藤明子君) お答え申し上げます。
 国土技術政策総合研究所において実施している防火・避難に関する総合技術開発プロジェクトにおきまして、火災初期における用途による火災性状の差が小さいことを踏まえまして、在館者が安全に避難できる規模や避難を支援するための措置などについて技術的な検証を行ってまいりました。こうした検証の結果を踏まえて、三階建てでも延べ面積二百平米未満の小規模な建築物であれば、柱、はり、壁、床等の主要構造部に一時間の耐火構造を求めなくても、基本的に避難安全性の確保が図られると考えております。ただし、利用者が寝泊まりするいわゆる就寝用途については、就寝中であっても火災の発生を早期に覚知できるよう、各居室において連動して作動する警報設備の設置を条件とする予定です。
 さらに、就寝用途のうち、自力避難が困難である高齢者などが専ら利用するグループホームなどについては、避難経路となる階段への火災拡大を抑制するため、階段等と居室との間への扉の設置又は居室へのスプリンクラーの設置のいずれかを条件付ける予定であります。
 こうした合理化により、必要な避難安全性が確保されるものと考えております。
○山本博司君 是非とも、この安全性の確保、大変大事でございますので、しっかり進めていただきたいと思います。
 次に、この法案に関連しまして、スプリンクラーの設置について伺いたいと思います。
 高齢者や障害者向けのグループホームなどの小規模な福祉施設にはスプリンクラーの設置が義務化されておりまして、防火対策が大きく改善をされているところでございます。これは、近年、スプリンクラーが未設置のグループホームで犠牲者が出る火災が相次いだことから、このスプリンクラーの整備を段階的に強化してきたわけでございまして、二〇一五年の四月の消防法施行令の改正におきましても、免除されておりました二百七十五平方メートル未満の小規模福祉施設につきましてもこのスプリンクラーの設置、義務付けられておりまして、いよいよこの三月で猶予期限を迎えたわけでございます。
 そこで、消防庁に伺いますけれども、最近の小規模社会福祉施設、このスプリンクラー設備の設置状況、実態、結果を御報告いただきたいと思います。
○政府参考人(猿渡知之君) お答え申し上げます。
 自立避難困難な方が主として入居される社会福祉施設につきましては、従来延べ面積二百七十五平方メートル以上の施設に義務付けされておりましたけれども、認知症高齢者グループホームなどの小規模な施設での火災等も踏まえまして、平成二十七年四月からは二百七十五平方メートル未満のものにも全て義務付けされているところでございます。
 ただし、既存の施設につきましては、この平成三十年三月三十一日までは経過措置期間とされてございまして、消防本部に対する調査結果によりますと、平成二十九年十二月一日現在で、対象となる九千二百四十三施設のうち七二・一%、六千六百六十一施設は既に設置済みでございます。残りの二千五百八十二施設につきましても、大半の施設が経過措置期間中に設置される見込みと。その結果、全体の九七・八%の施設が対応済みになるという報告を受けてございます。
 なお、各消防本部におきましては、今年の四月一日以降も、現在も鋭意、立入検査等により指導を進めているところでございますけれども、その状況等も踏まえまして改めて調査を実施するなど、全ての対象施設にスプリンクラー設備の設置が行えるよう全国の消防本部とともに尽くしてまいりたいと思います。
○山本博司君 今、設置率九七・八%ということで、これ我が党も積極的に推進をしてきたわけでございまして、是非ともこれ一〇〇%を目指して更に推進をしていきたいと思います。
 その上で、大事なことは、設置義務のあるこの福祉施設、一定の段階を迎えたということで、次はその先にある宿泊を伴う福祉施設に関しまして、初期消火に欠かせないこのスプリンクラーの設置を推進をしていかないといけないということでございます。
 先ほども鉢呂先生からお話ございました、本年一月の札幌の共同住宅そしあるハイムで火災が発生して十一人の方が亡くなるという、そういう惨事が起きたことは記憶に新しいことでございますけれども、この施設は古い旅館を改築をして、老人ホームや無料低額宿泊所として届出がない。ですので、民間のアパートと同じ扱いでございまして、スプリンクラーの設置義務はない状況であるわけでございます。
 そうしたことも含めて、首都圏でも、例えばデイサービス、お泊まりデイサービスとかございますけれども、やはりスプリンクラーの設置ができないためにやめざるを得ないというところもたくさん出ております。こういう超高齢化社会に伴いまして、こうした施設などに、全国多数あると想定されるわけでございまして、この安全管理体制の強化、これが求められております。
 それで、厚労省にお聞きしますけれども、こうした福祉施設へのスプリンクラーの設置に対する支援、更に進めるべきと考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(八神敦雄君) 福祉施設に関するスプリンクラーの設置ということでお尋ねございました。
 まず、札幌の火災を受けてということでございますが、無料低額宿泊所を含む生活保護受給者が居住する施設の防火安全体制につきまして、今回の火災を受けまして、先月、新たに地方自治体の福祉部局、消防部局また建築部局が連携をいたしまして、生計困難者等が居住する施設に防火安全対策を助言するといった取組を依頼したところでございます。まずは、こうした取組によりまして、無料低額宿泊所における防火対策というものを進めたいと考えております。
 また、現在、国会で御審議をいただいている生活困窮者自立支援法の関係で、無料低額宿泊所の設備、運営などに関する基準につきまして、法律で根拠を持った最低基準を定めて、違反した場合には改善命令を発出できると、こういった対策をして規制の強化を図るといったことを考えてございます。
 また、スプリンクラーにつきましてということでございます。
 現行の消防法令におきまして、自力避難困難な方が主として入所をする社会福祉施設には、延べ面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置が義務付けられているというふうに承知をしてございます。
 一方、無料低額宿泊所を利用されている方の状況がどうなのか、また、施設のような形態のものから一般のアパートのような類型のものまで様々ございますことから、一律にスプリンクラーの設置を義務付ける必要があるかといったこと、設置の必要性、負担といったことを考慮しながら検討をしていく必要があると考えてございます。
○山本博司君 是非とも、これ今後の検討課題として、しっかり前向きに設置を考えていただきたいと思います。
 それでは次に、既存ストックの活用を促進していく中での古民家の活用について伺いたいと思います。
 近年、古民家を宿泊施設や飲食店に改修をして観光振興に役立てるために、官民挙げて支援をする動きが全国各地に広がっております。いわゆる古民家は、昭和二十五年の建築基準法の制定前から存在する建物が多数でございまして、当然、現在の建築基準法には適合しない既存不適格建物となるわけでございます。大胆な規制改革によりましてこうした古民家などの歴史的建築物の活用を進めることは、地方創生を推進する上でも大変重要であると考えます。
 このほど、各自治体が建築基準法の適用除外の枠組みを利用した独自条例を整備する際のガイドラインを策定して都道府県に通知をしたということですけれども、この概要を伺いたいと思います。
○政府参考人(伊藤明子君) 魅力ある観光まちづくりの推進に向け、地域の伝統的な材料、工法を用いた古民家などの歴史的建築物を活用することが重要だと考えております。
 伝統的な材料、工法などを用いている歴史的建築物は、建築基準法に基づく現行の建築基準に適合されることが難しい場合があります。このため、条例により、現状変更の規制及び保存のための措置を講じ、建築審査会の同意を得て特定行政庁が指定した建築物については建築基準法の適用を除外する仕組みを設けていますが、文化財保護法に基づかない独自の条例を制定し、具体に適用を除外した事例は限定的な状況にございます。
 このため、条例の制定、適用除外建築物の指定、保存活用などの取組を促進するため、条例制定のプロセスや留意点、適用除外建築物の安全性を確保するための代替措置の事例等を盛り込んだガイドラインを今年の三月十六日に公表したところです。
 今後、説明会等によりガイドラインを周知するとともに、シンポジウムの開催による機運の醸成を図り、条例整備を通じた歴史的建築物の保存、活用を促進してまいりたいと考えております。
○山本博司君 大臣に、この古民家に関して伺いたいと思います。
 古民家の再生、活用といいますのは、地方移住の促進、また地域コミュニティーの復活や空き家問題の解消に貢献するとともに、外国人観光客の地方滞在需要の増加につながっていくということで、可能性をすごく秘めているわけでございます。
 政府におきましても、住生活基本計画におきまして、伝統的な日本家屋としての古民家等の再生や伝統的な技術を確実に承継し発展させることなど、古民家をめぐる問題が今後取り組むべき課題として明示をされているわけでございます。
 公明党におきましても、全国各地域に残る日本の住文化である古民家を次世代へと継承するための活動を支援するために、昨年の九月に古民家再生議員懇話会を結成した次第でございます。古民家のこうした再生、活用で地方創生へのすばらしい取組を応援すべきと考えますけれども、国土交通省、今、住宅政策、観光政策、総合的な国土政策、こういう分野を担っておりますけれども、大臣の古民家に対する認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(石井啓一君) 古民家は日本らしさを感じられる空間を有しておりまして、観光立国の観点からも、クールジャパンや事消費の場として大いに注目をされているところであります。こうした地域に残る古民家を宿泊施設等に改修、活用することは、国内外からの旅行者の増加、雇用の創出などにより、観光を通じた地方創生にも大きく寄与するものと考えております。
 一方で、このような古民家を用途変更して再生する際、建築規制に適合させるために現代の材料、工法の利用が必要となるため、文化的な価値が損なわれることが課題となっておりました。このため、先ほど御質問がありましたガイドラインの普及に加えまして、今回の改正法案では、小規模な建築物については柱、壁等を耐火構造とする大規模な改修をすることなく転用ができるようにするなど、他の用途への円滑な転用を可能となる建築基準の合理化を図ることとしております。
 こうした取組を通じまして、貴重な地域の資源である古民家が伝統的な風合いを維持した形で活用され、観光振興や地方創生に寄与することを強く期待をしているところでございます。
○山本博司君 是非とも古民家の再生、活用ということも含めて、積極的に推進を、大臣、お願いをしたいと思います。
 さらに、今回の改正では、木造建築の推進に向けましての制限の合理化も行われております。
 今日は林野庁からお越しいただいておりますけれども、建築物の木造、木質化に欠かせないのは国産材の利用促進、安定供給でもございます。
 今回の税制改正で、森林環境譲与税、この創設が見込まれておりますけれども、この国産材の利用促進に向けてどのように活用するのか、御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(渡邊毅君) お答えをいたします。
 我が国の森林は、今本格的な利用期を迎えつつあることから、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を両立していくということが非常に重要でございます。このためには、国産材の安定供給体制の構築と木材の需要拡大を車の両輪として進めていくということが重要だと考えております。
 このうちの木材の需要の拡大につきましては、公共建築物を始め、これまで余り木材が使われてこなかった中高層や中大規模、非住宅など新たな分野における建築物の木造化、内装木質化、木質バイオマスのエネルギー利用、付加価値の高い木材製品の輸出拡大などの施策に取り組むこととしております。
 さらに、平成三十年度税制改正大綱におきまして、平成三十一年度から導入するとされております森林環境譲与税、これは仮称でございますけれども、これにつきましては、市町村は間伐や木材利用の促進等の森林整備及びその促進に関する費用に充てなければならないとされておりますことから、例えば都市部における公共建築物の木造化、内装木質化等に活用することで木材利用の拡大が進むことを期待しているところでございます。
 こうした施策の推進によりまして、建築物等への木材利用の促進に取り組んでまいりたいと考えております。
○山本博司君 やはり林業を魅力ある産業にするには、需要の拡大というのが大事でございます。その意味では、このCLTの活用促進、これを図るべきと思いますけれども、最後に大臣に認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(石井啓一君) 国土交通省では、CLTを利用した建築物を建てやすくするよう建築基準の整備を進めてきておりまして、平成二十八年にはCLT工法について一般的な設計方法を定め、個別の大臣認定を受けなくても建築できるようにしたほか、本年三月には床や屋根に用いるCLTについて、五層の厚いものに加え三層の薄いものを使用できるようにいたしました。
 また、今回の建築基準法の改正案においては、木の良さを実感できるよう防火規制の合理化を図ることとしております。具体的には、中層建築物で構造部材であるCLTをそのまま見せるいわゆる現しを可能とする内容を盛り込んでおりますので、CLTの利用促進につながるものと考えております。
○山本博司君 是非ともCLTの促進も含めて、お願いをしたいと思います。
 以上で質問を終わります。