参議院 国民生活・経済・社会保障に関する調査会 第2号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 今日は、後藤参考人、また樋口参考人、本当にありがとうございました。大変貴重な内容で、本当に参考になりました。
 まず、後藤参考人にお聞きしたいと思います。
 私もこの生活困窮者を含めた中間就労ということは大変大きなテーマであると思います。ちょうど公明党も二年前に、社会保障を各分野ごとに推進をしていくということで、この貧困と格差の問題とか、また引きこもりとか、そういう問題に対してプロジェクトチームを組んで、新しい福祉社会ビジョンという提言をさせていただきました。そういう中に、やはりこうした方々に対しての支援というのは今の社会保障の中では外されてしまっているといいますか、十分ではないという、そういう中で、そういう社会的包摂といいますか、ソーシャルインクルージョンという分野での支援をやらないといけないという形での取組がありました。そういう中で、私たちも、釧路であるとか埼玉の教育支援とか、又は中間就労の現場とか、引きこもりとか障害者の方々のこういう先ほどのようなお話も聞かさせていただきまして、そのとおりだと思います。
 ただ、やはり現状、NPOの方々は大変苦しい状況でございまして、やはりこういう中間就労的な形のものを支援していくためにも新しい法整備が必要であると思いますし、当然そのための財源というのは、恒久的な法律つくることによって、単年度ではなくて支援するためにも法律が必要であると思います。
 そのことに関してどうお考えかという点と、それともう一つは、やはりNPOの方々、大変御苦労されているわけです。現実的に、今の法整備の中で、NPOの支援の法整備ができておりますけれども、まだまだ今の現状であれば厳しいのが実態でございまして、こういう地域で核になる方々の支援という意味では、法整備であるとか、もっと更にそういう点が必要ではないかと思いますけれども、この点、いかがでございましょうか。
○参考人(後藤千恵君) 私もそのように思います。NPOなど、先ほどのコミュニティービジネスを始め、本当に今、地域の中で地域のために活動していく、そうした団体を本当に増やしていくということが今すごく求められていると思います。
 ただ、実際に運営をうまくやっていく、経営を成り立たせていくというのは本当に難しくて、先ほども申し上げたような行政の下請みたいになってしまったり、独自に本当にやりたいことをやるときに、それがビジネスといいますか、やっぱり収益につながりにくいというのがどうしてもありますので、大変厳しい現状があると思います。そうしたものを支援していくときに、おっしゃられたように、何らかの法律、私も必要ではないかと思っております。例えばコミュニティー活動基本法というようなことを言われているところもございますけれども、やっぱりある法律をベースにしっかりと支援していく必要性は私もあると思います。
 ただ、支援していくときにとても気を付けなければならないと思いますのは、これまでもいろいろな緊急雇用創出事業などで一時的に人件費を補ったり、そういう運営費を出したり、そういう形での支援ということになりますと、そのお金がなくなってその年度が終わったところで事業も終わりということがこれまでずっと続いてきました。半年、一年、まあ大体一年とか二年の事業でとても地域のためにいいことをやろうとしているのに、運営費に頼ってやっていたがために、それが切れたときに、金の切れ目がで終わってしまうというケースが間々あります。やっぱりそこは何とか自立して食べていけるような形態を維持しつつ、その応援の仕方としては、やはり立ち上げの支援、設立のときの支援、事務所の経費とかパソコンとか、そういった立ち上げ支援というのはとても重要だと思います。その後、運営をどう成り立たせていくか、これは社会全体のやっぱり支援が必要になってくると思います。例えば、イギリスでは、そうした団体が、NPOに類似した団体は十七万団体あって、六十万人以上が有給で働いています。やっぱり社会でそういうニーズがあって、そこにお金が回る仕組みができている。寄附金だけでも年間一兆円に上るような国ですけれども、やっぱりそういったところでやっているところにお金を出していく、社会でそういう経営を支えていくということが重要になってくるんではないかと思います。
○山本博司君 ありがとうございます。
 それともう一つ、先ほどの渡邉社長のような事例ということで、すばらしい事例がやられているということで、ほかにも様々そういった取組をされている企業とかNPO法人もございます。でも、こうした今精神障害の方々とか、そういう大変意欲があっても働けない。環境をつくっていくためには、やはり今の雇用制度の中の法定雇用率の制度の問題とか、またそういう障害者の方々の配慮のそういう様々な部分の法整備とか、こういうことも併せてやっていかないといけないのではないかなと思います。
 ちょうど今国会ではこうした精神障害者の方々の雇用の問題ということが話し合われるわけですけれども、そういう全体的な中でどう進めていくかということに関して、この点はいかがでございましょうか。
○参考人(後藤千恵君) その必要性は感じます。ただ、やっぱり法定雇用率などで定めて、本当にそういう人たちを育てて抱えて頑張っていこうという意欲がない企業に無理やり押し付ける形になってしまいますと、罰金を払えばいいじゃないかぐらいの感じで、なかなか本当は進みにくいかもしれません。
 ISFネットさんがなぜしっかりと続けていられるか。それは、先ほど申し上げたように、そういう人たちを戦力とし、本当にそれを企業の成長につなげていけているからだと思うんです。そういう人たちをお荷物だと感じ、法定雇用率があるから特別の部屋で特別の仕事をさせていればいいんだというような考えの企業がもしもそういう人たちを雇い入れたとしても、そこで働く人たちは幸せになれないと思うんですね。
 やっぱり制度があって無理やりではなく、本当に企業のインセンティブを高めていく、本当に企業はそういう人たちを力にしていくんだという、そういう意欲を持ってもらう。そういう企業のやっぱり受皿を増やしていく。そういう意味では、ISFネットさんは今物すごくセミナーとかたくさん開いていて、年間二千人以上の方が見に来られています。やっぱりしっかりとやればやれるんだということを多くの方に知っていただきたい。そうやって、本当の意味で質のいい雇用を広げていく、無理やりではなく、じわじわと本当にやりたいという企業を増やしていく、そういう取組が必要なんではないかと同時に思います。
○山本博司君 ありがとうございます。本当にそのとおりだと思いますので、そうした点を含めて国会の方で議論しないといけないと思います。
 樋口参考人に、今、非正規が一千七百万人で実際常雇用が九百九十万人ということで、この方々の雇用改善、またその対策ということのお話をいただきました。そういう中で、先ほども触れられましたけれども、教育訓練支援機関のジョブ・カード、この制度の定着は非常に大事だというお話でございました。
 二〇一〇年に行政刷新会議で、これは廃止ということが閣議決定された場合がございました。これはすぐ撤回をされた形でございますけれども、こういう一つの背景の中にまだ課題も多い、でも非常に大変大事な制度であるという、こういう点を含めてどのように認識されていらっしゃるかという点をお聞きしたいと思います。
○参考人(樋口美雄君) ジョブ・カードの制度そのものといいますか、そのものと、それをどう使っていくかというような運用上の点というのは、やっぱり分けて考えていく必要があるのかなというふうに思います。その使い方によって効果もあれば効果もないというようなことになりますので、その運用が重要だろうというふうに思います。
 今まで割と概念的に、これは有効だとか、これは無駄だというようなことが議論されてきた。その点については、むしろやっぱりエビデンス・ベース・ポリシーというふうに言われている客観的事実に基づいてそういったものの有効性というのを見極めていかなければならないだろう。最初のころは例えばそれが価値がないというものであっても、運用の仕方を変えることによって実はすごく有効なものになっていくというようなことがございますので、そういった点を考えるべきではないか。要は、証拠に基づいてその都度その都度その評価をしていくべきだろうというふうに思います。これはほかの施策についても全部同じように言えるんではないかというふうに思います。
 もう一点、先ほどの後藤委員に対する御質問もちょっと触れてよろしいでしょうか。
 どういったものがNPOの支援で必要かということでありますが、やっぱりNPOをやる人たちというのはすごい熱い思いがあります。その熱意たるやすごいということでございますが、そのなかなか熱意が実態の運営、運用にうまくいっているかというと、そこがつながっていないところがあって、例えば開始したものの一、二年でやめてしまいますという実態があるだろうと。
 であるとするならば、そのNPOを運営していく人たちをいかに能力開発していくかというようなものが必要でありまして、これはよく言われています中間組織というものになるかというふうに思います。そこの運用の能力開発でありますとか、あるいは会計制度、こういったものも思いだけではうまくいかないわけでありまして、そういったものをどう会計制度を整えていくかということをこれは実際の教育を行っていく。あるいは経営力の点ですね、こういったものをその中間組織の中においてしていくといったものが必要なのかなと。日本はまだ、一部政府によるサポートもありますが、そこのところが弱いというような印象を持っているということでありまして、そこをやっぱりやっていくことによってこの持続可能な組織にしていくことができるんではないかというふうに思います。
○山本博司君 終わります。