参議院 国民生活・経済・社会保障に関する調査会 第4号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。今日は、三人の参考人の皆様、大変ありがとうございました。
 私から、それぞれ三人の方に御質問を先に申し上げたいと思います。
 まず、阿部参考人、大変ありがとうございます。私ども公明党も新しい福祉ビジョンというのを昨年末に発表いたしましたけれども、その中に貧困と格差というテーマの中での支援ということで、そのことを盛り込まさせていただいておりまして、阿部参考人が子供の貧困削減に有効な給付付き税額控除、このことの御提言もされていらっしゃいます。
 非常にこのことを、先進国で導入をされている税制の優遇策、優遇措置ということで、スウェーデンとか若しくはアメリカとか、そういう他国での事例、これに関して教えていただきたいと思いますし、もし日本が進めるとしたときの課題なんかも御指摘をいただければと思います。それが阿部参考人でございます。
 また、尾形参考人に対しましては、今の政府が社会保障と税の一体改革ということで議論をされていらっしゃいまして、今日のお話の中でも、社会保障がどんどん増大をしていく中で医療改革をどうしていくかということでの御指摘だったと思います。その意味で、この医療費の増加を予想する中で、医療の質の向上ということと医療費の適正化ということでやはり必要性が高まっているんじゃないかと思います。
 そういう中で、今日、機能の分化と連帯の方向というお話を聞きました。私は香川に住んでおりまして、実は香川県の遠隔医療といいますか、ICTを活用して地域医療情報の連携とか、日本版EHRというふうな形の活用を目指して香川県内で、島が小豆島とか直島がありますから、圏域を含めてそういう形で進んで、かなりそういうモデル的な形で医療費の抑制だとかサービスの質の向上というものを推進しているんじゃないかという実感がございます。そういう意味で、参考人はこういった点をどう考えていらっしゃるかということをお聞きをしたいと思います。
 最後に、大熊参考人に対しましては、私ども公明党も、この福祉ビジョンの中で介護の、十万人の方々に対する総点検をさせていただきまして、提言をさせていただいております。その提言の中の、やはり参考人にも高連携というお話がございました。私たちも、支え手の拡大ということで、やっぱり多くの方々に支えていただかないといけないという中で、ボランティアポイントの制度とお元気ポイントの制度ということを提言をしております。
 このボランティアポイントというのは、稲城市なんかでも実際やられていらっしゃるということで、高齢者の方々が社会貢献をされているボランティア活動の中で、それをポイントとして介護の保険とかサービス料の負担を軽減するというふうなやり方でございます。そして、お元気ポイントというのは、これは三年間介護報酬を使わない、介護保険を使わないでお元気な方々、たくさんいらっしゃるわけですけれども、そういう方々に対して、やっぱり介護予防の取組を評価をして、介護保険料とかサービス料金を負担を軽減するような、そういう仕組みを考えてはどうかということを提言をしております。こういう点、どうお考えになられるか、御見解をお聞きしたいと思います。
○会長(山崎力君) それでは、順番もあれですので、ちょっと申し訳ないんですが、ずらさせていただいて、尾形参考人からお願いいたします。
○参考人(尾形裕也君) 御質問ありがとうございます。
 私も、医療におけるICTあるいはITの活用というのは非常に重要なテーマだというふうに考えております。今日はちょっと時間もありませんので、その点、詳しくお話しすることができませんでしたが、一つは、議員御指摘のように、地域における医療の機能分化あるいは連携というものを支えていく一つの非常に重要なツールたり得るんだろうというふうに思います。
 そういう意味ではまさにおっしゃるとおりだというふうに思いますし、それからもう一つ重要な観点としては、やはりIT化、ICTを進めていくことによって医療の情報がいろいろな形で広まっていく、あるいはデータベースができていくということでありまして、医療の分野ではエビデンス・ベースド・メディシンと、根拠に基づく医療、EBMというようなことが言われますが、やはりそういったものを支えていく一つのツールとしても私は非常に重要なものだというふうに認識をいたしております。
 以上です。
○参考人(大熊由紀子君) 今のポイント制というのはとても楽しいアイデアだと思います。
 ただ、これがかつて介護保険ができる前に、そのようなことは無理だということで、ボランティア切符というので全てを解決しようという提案がなされたことがありました。それは、その切符をためると、自分の田舎に住んでいる親も介護してもらえますと。そして、それらをコンピューターで結んでやっていこうということだったんですけれども、これはやっぱり実現不可能だということが分かりました。
 なぜかというと、ボランティアができる人がたくさんいる場所とそうでない人がいるということから不公平が起きてしまうということで、まず介護保険のようなものの基盤がしっかりあって、その上に今のポイント制が加わる。例えて言えば、デコレーションケーキのときにまずパウンドケーキがあって、上にイチゴとかクリームで飾りがあるとなお楽しいなというような位置付けではないかしらと。なので、元々の介護保険がしっかり行われるようなことについても、もう既におやりですけれども、公明党で頑張っていただきたい。
 特に人材の方から、よく継続性ということがお金の面だけで言われますけれども、人材の面からの社会保障が駄目になっていくのではないか。私の今、大学院生の中で介護福祉士さんを育てている人がいまして、その人の修士論文によりますと、一年生に入ってくるときはすばらしい仕事だと思って目を輝かせて入ってくる人が、三年、四年になって就職のところに出されるその値段、どのくらいの収入かということを知ってどんどん元気がなくなっていく、それから介護現場の過酷さで元気がなくなっていくということを聞いておりまして、せっかく志した人たちまで辞めてしまうような報酬というのを何とかするということも是非お考えいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
○参考人(阿部彩君) 給付付き税額控除のお話だったかと思います。私が岩波新書を書かせていただいたころは子ども手当というのが実現するというのは全くの夢物語でございましたので、そのような中で書いたということをまず御了承をいただきたいと思います。
 給付付き税額控除は所得制限付きのものと所得制限付きでないものがありますけれども、所得制限付きでないもの、特に子供に関するものでは所得制限付きでないものでも、他国でも、イギリス等では導入されております。というのは、もう子ども手当とほとんど変わらない形になります。全て均一な額で子供の数に応じて付与されるという点になりますので、その点では私は子ども手当と同等なものというふうに考えております。
 ただ、所得制限付きの子ども手当のようなものを、児童手当のようなものと所得制限付きの税額控除を比べたのであれば、私は税額控除の方が良いシステムだというふうに思います。それはスティグマが発生しないからですね。それと、削減のプレッシャーも掛かりません。
 給付というのは、どうもみんな、実際にその金額が自分の銀行口座に振り込まれるものですからエキストラなもののような気がしてしまって、税額控除とかですともうそれが自動的になされているので、全くそれの感じ方が違うんですね、財政的には全く同じなんですけれども。そういう意味で、余計なものだ、今は確かに子ども手当は所得制限なしにするべきだというようなプレッシャーが掛かっておりますけれども、所得制限が付いたとしても、財政が厳しくなると低所得者向けのプログラムというのはとにかく縮小の対象になりやすいです、やり玉に上がりやすいです。ですので、そういう意味で私は税額控除の方が良かったんではないかということであの当時は税額控除という形を出させていただきました。
 ただ、税額控除のもう一つの利点というのは、それまでというか、今もありますけれども、見えない形での、アメリカではヒドゥンというふうに言っていますけれども、形での給付というのを、扶養控除との関連です。扶養控除は高所得者層にも付与されますし、高所得者の方が税率が高いので高い額が付与されているんですね。ですけれども、それについて誰も何も批判してこなかった、何となくそれは税制の中の難しいいろんな計算の中でなされてしまうので考えてこなかったんですけれども、扶養控除を考えるんであれば、扶養控除から税額控除に同じ税質の中でくら替えをするというのは再分配的にも非常にかなったことであるというふうに私は思います。それは、所得制限がないにしても、その方が再分配効果が絶対的に高いです、税額控除の方が。
 ですので、その税額控除というのは、あの当時もしかしたら実現可能なんではないかなという形で私は提案させていただきました。ただ、現状の観点からいいますと、子ども手当の兼ね合いをどういうふうに考えるかということをセットとして考えていかなければいけないというふうに思っております。
○会長(山崎力君) 時間ですが、よろしいですか。
○山本博司君 はい、ありがとうございました。