参議院 少子高齢化・共生社会に関する調査会 第7号
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本調査会では、コミュニティーの再生とのテーマの下、我が国が直面している外国人との共生にかかわる諸問題の解決に向けて大変有意義な議論を行ってまいりました。
これまでにも、関係各省庁からの取組状況について報告を受けるとともに、それぞれの立場で御活躍されている参考人の皆様に貴重な御意見をお聞きすることができました。この場をお借りいたしまして、田名部会長を始め関係の皆様の御尽力に心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
私からは、これまでの議論を踏まえまして、外国人との共生を実現するため、早急に対応すべき課題について意見を述べさせていただきたいと思います。
我が国は少子高齢化に伴う人口減少社会の到来により労働力の確保が重要な課題となっており、こうした中、外国人労働者の増加が顕著になっております。法務省入国管理局の統計によると、二〇〇六年末現在の外国人登録者は二百八万四千九百十九人で、この十年間で約一・五倍も増えたことになり、我が国の総人口の一・六三%を占めています。こうした傾向は今後も拡大すると見られています。
また、外国人労働者が家族を呼び寄せ定住化する傾向が強くなり、言葉の壁や生活習慣の違いから、地域社会に様々なトラブルが発生しています。我が国が今後、大量の移民を受け入れるかどうかは大きな政策の転換を伴うものでありますし、単なる労働力の補充という観点から是非を問うようなことは拙速に行うべきではないと考えますが、いずれにしても、現実問題として、既に我が国で暮らしている外国人労働者及びその家族の方々が暮らしやすい社会を築くことが求められていると思います。日本で暮らして本当に良かった、このまま暮らし続けていきたい、いつの日にかそれぞれ自身の国に帰ったとしても、日本はすばらしい国だったと、こう言われるようにすることが我が国の責務ではないでしょうか。
こうした観点から、具体的な課題について取り上げてみたいと思います。
まず第一点目に、外国人に対する医療、年金などの社会保障の問題が挙げられます。
社会保障の分野では、医療保険未加入者の増加とそれに伴う外国人の健康問題、医療現場における高額医療費の未払や医療通訳の問題が指摘されております。こうした状況を変えるためには、罰則を強化するよりも、これまで現行の社会保険制度で義務付けられている健康保険と年金、介護保険のセット加入を在留外国人に対しては緩和をするなど、国の医療保険制度の見直しが求められていると考えます。また、永住を前提としない外国人労働者の実情に合わせて、母国へ帰るときに年金の保険適用期間の納付額を返還をする脱退一時金制度の抜本的な見直しを検討すべきと考えます。
さらに、入国管理法が一九九〇年に改定をされ、日系人の就労が原則自由化されてからおよそ二十年が経過したため、改定当初に就労していた外国人労働者も高齢化をし、既に職に就いていない場合があると思います。仕事に就かず我が国に定住した場合、年金制度に未加入であれば生活の糧がないというような事態も想定できるため、早急に実態の調査を行う必要があると考えます。
次に、具体的な課題の二点目として、住宅の確保が挙げられると思います。
外国人労働者は、企業に直接雇用をされているケースは少ないため、寮や社宅を利用できる者は限定をされています。また、民間住宅を借りる場合も、日本人の保証人を求めるケースが多いので借りるのが難しい場合があります。このような中で、多くの外国人労働者に活用されているのが公営住宅であります。市営、県営住宅を始めとする公営住宅は、現に住宅に困窮していることが明らかな方に対して居住の安定と住宅水準の向上を図ることを目的に供給されており、外国人登録をして在留資格のある外国人に対しても入居を基本的に認めているため、比較的入所しやすくなっております。
しかし、そのため、外国人が多く居住してくれば、以前から住んでいる日本人との間で施設の管理やごみの分別、夜間の騒音など、トラブルが発生することも増えております。このようなトラブルの解決には、自治会組織への外国人の参加やNPOを始めとするボランティア団体による支援などが大きな役割を果たします。こうした点についても、地方自治体の取組を支援をする仕組みが求められているのではないでしょうか。
さらに、具体的な課題の三点目として、外国人子女の教育問題が挙げられると思います。
外国人労働者が定住化する傾向にあって、母国より子供たちを連れて生活する者も少なくありません。その子弟に対する教育については、公立の小中学校では日本語による授業が前提となるため、日本語の習得がうまくいかず、学力低下や不登校を招く場合もあります。地方自治体では、外国人子女に対しては日本語教育や生活習慣の指導を行うとともに、カウンセラーや通訳を配置するなどの取組も見られますが、限られた予算の中であり、国からの助成の拡充が必要であると考えます。
政府は、今年度から小中高教員のブラジル派遣制度を新設しますが、ブラジルの日系人社会に対して日本文化の維持に貢献するとともに、派遣終了後は我が国に在住する日系ブラジル人子弟の教育向上に役立つことが期待され、大変すばらしい制度であると思います。この制度を他の中南米地域にも拡大するなど、教育環境の改善に向けて更なる取組が必要であると思います。
また、母国語での教育が可能である外国人学校は、現在、学校教育法で定めている正規の学校とは認めておらず、多くがいわゆる私塾の扱いとなっています。これまでの視察や参考人の意見陳述で明らかになったことは、各種学校の認定基準が厳しく、無認可校か、認可されていても補助金が極めて限定的にしか支給されない各種学校となっているため、学校運営はいずれも厳しい状況となっているということです。このような外国人学校の公共的な役割を認識して、認可基準の緩和と補助金の拡充は早急に検討すべきと考えます。
また、外国人子弟の就学率の低さが指摘されており、もしも国籍を理由に教育上何らかの障壁があるのであれば、これを改めるべきと考えます。教育権をすべての者に保障された権利と位置付ける子どもの権利条約や国際人権規約に照らしても、人権大国にふさわしい改善が求められているのではないでしょうか。
公明党は、永住外国人地方選挙権付与法案を提案をしております。これは、成熟した民主主義国家として、日常生活に密接な関係を持つ地方行政の意思決定に地域に緊密な関係を持つ外国人住民の意思も反映すべきであるとの理念からであり、希望する永住外国人に地方自治体の首長選挙や議員選挙の選挙権を与えることにしています。
いずれにしましても、在留外国人が同じ地域に住む市民として安心して暮らせる多文化共生社会の理念を浸透させることが重要でございます。
総務、法務両省は、現行の外国人登録制度を廃止し、日本人の住民基本台帳と同様の在留管理制度を導入する方針を固めました。また、外務省では、日本語の能力が高い外国人の在留期間を現行の三年から最長で五年に延ばすなど優遇するとの基本方針を固めました。
このように、少しずつではありますが、外国人を受け入れる体制が改善されつつあります。この流れを確かなものとするためにも、開国か鎖国かなどという二者択一の教条的な議論ではなく、今後も引き続き幅広い議論が活発に行われることを念願しております。
以上で意見発表を終わらせていただきます。
発言の機会をいただきまして、大変にありがとうございました。