参議院 文教科学委員会 第2号
○斎藤嘉隆君 民主党・新緑風会の斎藤嘉隆でございます。
通常国会ではこの委員会で十分議論をする場がなかなかありませんでしたので、久しぶりの委員会での質疑ということになります。どうぞよろしくお願いをいたします。
早速でございますけれども、教育再生あるいは経済の改革ということで、現政権が二本の大きな柱を掲げて様々な形で政権運営をしていらっしゃる、このことを十分認識をした上でお聞きをさせていただきたいと思います。
まず、教育改革の議論については、新聞報道なんかを見ていますと、この閉会中も含めて矢継ぎ早に様々な教育改革の方向性が示されてまいりました。地方自治体も同様で、いろんな首長さんがいろんな形でこの教育改革について議論をしている。これはややもすると、十分な検証もなく、この国会での議論もなく、中教審などの議論に先んじて、まさに、ちょっと言い方は申し訳ありませんが、改革ありきでいろんな形で議論が進んでいるのではないかなと、そのようにも思います。
このところずっと、私の知る限りでは一九八〇年代以降こういった状況がずっと続いてきました。教育の改革は、改革をするけれども、なかなかすぐ効果が出るようなものでもありませんし、なかなかうまくいかないと。誰も責任を取らずに、これも現場が矢面に立つような形で批判をされて、全体として教育に対する、何というか、評価、信頼が薄らいでいく、そんな状況があったのではないかなと思います。
うまくいかないからまた次の改革を次々と出していく、結局なかなかうまくいかない。政治主導で行われてきた教育改革というのは、私は正直余り成果がこれまでなかったのではないかと思います。むしろ、苦労して積み上げてきた教育現場や地域社会のいろんな形でのノウハウを崩すということにつながってきたのじゃないか、まさに失われた教育三十年という感じもいたすところであります。
そんな中で、今、現場あるいは子供たちというのはいろんな形で教育のまさに最前線で大変苦しんでいる状況がございます。この教育現場の実情というのを是非的確に直視をしていただいて、こういった改革論議をしかるべき場で進めていただきたい。午前中の石橋議員との議論の中でもありましたけれども、十分時間を掛けて、必要な検証に基づいて教育改革の議論を進めていくということを是非お願いをしたいと思います。
この三十年の教育改革の中で、私は、本当に現場にとってプラスであった、具体的に成果が出た改革というのは僕は三つしかなかったと、極論を言えば、そのように思います。
〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
一つは、これは文部科学省が大変熱意を持って進めてきた定数増計画に基づく例えば少人数学級の実現などの定数増のことです。これも計画的に進めてこられたことについては大変評価をしたいというように思っていますし、もう一つは、これもいろんな国民的議論の中で大きな理念を持って実現をしていただいた学校五日制、これも今いろんな形でそれぞれの地域社会の中でこの五日制を活用して子供たちが活動しているという状況がございます。この二つが本当に大きなものでは成果があったと思っていますし、また、これは民主党政権の下でも進めてまいりました高校の無償化、これも数少ない大きな成果のあったものの一つとして挙げられるのではないでしょうか。
今日は、この定数増計画に基づく学級規模の縮小の問題とそれから学校週五日制の問題についていろいろな形で議論をさせていただきたいと思っています。今日は財務省の山本政務官にもお越しをいただいております。ありがとうございます。
まず初めに、お手元に資料の方を示させていただきました。新聞記事の抜粋でございますけれども、十月二十九日の日経新聞であります。小中教員一・四万人削減を、財務省。文科省は増員を求めるという記事であります。この中に、委員の皆さんの意見としてこのように書かれています。教員の定数増については考え方が古い、そういった意見が相次いだ、また、国庫負担の削減を求める方針で委員の意見が一致をしたというような形で報道がされていますが、政務官、これは事実でしょうか。
○大臣政務官(山本博司君) 斎藤委員、大変にありがとうございます。
このことに関しましては、財政制度審議会等に関してそうした議論があったということでございます。
○斎藤嘉隆君 今回のこの財務省の財政審の議論、今日の時点で議事録が出ているかどうか、先週末の時点ではいろんなところを探したんですけれども議事が分かるような内容はなかったんでありますけれども、ちょっとこのことについて少し確認をさせていただきたいと思います。
資料一枚おめくりをいただいて、二ページ目の方を御覧をいただきたい。高等教育における公財政支出という資料があります。これは、この財政審の場で委員の皆さんに財務省から示された資料の一部であります。高等教育における公財政支出ですから、いわゆる大学教育における公財政の支出、日本がどういう状況かということなんだと思いますが、これ、政務官、この資料について、審議会の場で委員の皆さんに何を理解していただくためにお示しをしたもので、どのように説明されたのか、簡単にお知らせをいただけますか。
○大臣政務官(山本博司君) これに関しましては、この高等教育に関する公財政支出が低いという指摘に関して現状の数字を表した形でございます。
例えば、大学生のカウント数が少ないということとか、教育機関への直接の補助のみカウントする、こういう公財政支出に含まない奨学金であるとか私的部門補助の割合が高い、こういう点もこの中に指摘をされている部分でございます。ですので、この奨学金など私的部門補助を含めた在学生の一人当たりの公的支援を含めればアメリカと遜色ない水準になるという形でございまして、いずれにしても、この高等教育における公的支援の程度、租税負担率との割合で考えるという形の資料でございました。
○斎藤嘉隆君 今の御説明で大体分かりました。
僕の方でもう一度これ確認をしますと、グラフの方に①、②、③というふうに示させていただきましたけれども、①のグラフを見ると、日本は他の諸外国に比べて、あるいはOECDの平均に比べて個人が家計から支出をする私費の支出が突出して多いんだと。これ計算をしますと、大体日本が六七%は私費の支出、家計から出していると。OECD平均だと大体三〇%、アメリカだと六〇%ぐらいだということなんですけれども。
ところが、今の山本先生のお話だと、日本の公的支出が小さいのは、これからはそういうことが言えるけれども、実は確かなことではないんだと。日本のこの公財政支出の中には日本が手厚く行っているいわゆる私的補助、簡単に言えば奨学金の部分がカウントをプラスされていないと。だから、グラフ②の日本に当たる部分、七二・五という部分が、オレンジ色の部分がありますけれども、この部分だけがこの公財政支出の方にカウントされていて、比較的大きい、諸国に比べて大きい青色の二七・五の私的部門補助ですね、グラフ②の、こちらの方がプラスをされていないと。これをプラスをして考えると、大学の在学者一人当たりの公的支援は、国民一人当たりのGDPで二六%、アメリカは二六・七%なのでほとんど遜色ない。決して日本の大学教育への公的支援は少なくないんだということを多分御説明をされたんだと思います。
そういう形でよろしいでしょうか。
○大臣政務官(山本博司君) その形で結構でございます。
○斎藤嘉隆君 それで、これ、日本の大学生、大学教育に対する支援が決して諸外国に比べて劣っていない、アメリカなんかと比べても遜色はないというのが、どうも私、実感として同意ができないものですから、このことについて少し中身を精査をして調べてみたんです。
一枚めくってください。資料の三。
これ、ちょっと二ページの方と見比べていただくと分かっていただくかもしれませんが、二ページのグラフの②ですね、二ページのグラフの②の青い部分、いわゆる私的部門補助の部分だけ抜粋をして、中身の内訳を示したグラフがこの三ページのグラフなんです。大体これ、マッチしているのが分かっていただけると思いますけれども。
財務省の皆さんの言い分ですと、この部分は日本はもう私的に補助をしているんだからこの部分もカウントすべきなんだというような形で今もまさに政務官がお話をされましたけれども、この内訳を見ると全くそのような状況にないということが分かっていただけると思います。
日本の欄を見ていただくとほとんど青一色です、青一色。青いのはいわゆる貸与補助といって、これは英語を直訳をすると、これ貸与補助となっていますけれども、教育ローンなんですね、教育ローン、奨学金ではないんです。奨学金というのは、この中でいういわゆる薄い紫の部分を、いわゆる世界標準でいえば、世界のスタンダードでいえばこの部分を奨学金というのであって、日本のいわゆる奨学金というのは貸与部分、貸して返ってくるお金ですから、現実的には私的補助とは言えないということだと思います。
政務官、日本のこの青い部分、奨学金、プラスカウントをすべきだというふうに財務省がおっしゃっているこの奨学金というのは、総額で大体予算ベースで幾らなんでしょうか、これ。
○大臣政務官(山本博司君) 済みません、通告のない質問でございますので、今こちらの方に手元としては用意をしていない状況でございます。
○斎藤嘉隆君 済みません、大変失礼をしました。
これ、二ページの方にも実はあるんですけれども、下の方に実は書いてあるんですが、日本の奨学金に換算をしてあって、公財政支出に盛り込むべしと財務省さんが言われているこの青い部分の私的部門補助というのは大体一兆円あるんですね、一兆円。この部分をプラスをすると、さっき政務官がおっしゃったようなアメリカと日本が遜色がないという状況になるのであって、実際は、この教育ローンの部分をこのように私的補助にストレートに入れるというのはやはりいかがなものかというように思います。
これ、実は、貸与型の奨学金の部分を除いて、二ページのグラフ③にあるような計算を私の方で一度してみました、GDP比で。そうすると、アメリカの在学者一人当たりの公的支援というのは、今二六・三、アメリカの一人当たりのGDPの公的支援というのは大体二六・三%になります。これに対して日本は一九・〇%になります。自己負担が全ての内容において高いと言われるアメリカと比べても、このように高等教育への公的支援は八割に満たないんです、アメリカの状況に比べて。
これが、より現実、国民の生活感あるいは子供たちの実情に近いものではないかと私は思うんですけれども、財務省としてこの点についていかがお考えですか。
○大臣政務官(山本博司君) データの内容に関しまして、改めてお示しいただければ事務方で精査をしてまいりたいと思います。
〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕