参議院 文教科学委員会 第6号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、著作権法の一部を改正する法律案に関しましてお聞きを申し上げたいと思います。
 まず、政府提案に盛り込まれております内容についてお伺いをしたいと思います。
 著作権法の考え方、これは権利の保護が優先されなくてはならないというのが基本ではございますけれども、今回の改正案では、権利制限規定の追加が行われております。第三十一条第三項におきまして、国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信が行うことができるようになっておるわけでございます。これによりまして、市場における入手が大変困難な出版物である絶版等の資料、これが、利用者がこれまで以上に積極的に活用できるようになるということも含めまして大変重要なことであると思っておる次第でございます。
 これに関連しまして、この国立国会図書館に対してのデジタル化ということに関してお聞きを申し上げたいと思います。
 我が国の知の宝庫でございます国立国会図書館、納本された図書館資料のデジタル化、積極的に進めているわけでございます。特に、自公政権のときの平成二十一年の補正予算、大幅な予算ということで百二十七億円確保され、そして現在のところ、このデジタル化が対象資料の四分の一まで至っているわけです。まだこれは道半ばでございます。更なる対応が必要なわけでございまして、このデジタル化の現状、また予算、今後どのように進んでいくおつもりなのか、見解をお聞きしたいと思います。
○国立国会図書館長(大滝則忠君) 国立国会図書館では、平成十二年度から所蔵資料のデジタル化に取り組んでおります。
 資料デジタル化予算は、平成十二年度から二十三年度まで総額百五十三億円でありました。これには平成二十一年度補正予算の百二十七億が含まれております。
 これまでの資料デジタル化の実績として、平成二十三年度までの古典籍資料、和図書、和雑誌、博士論文などの当館所蔵資料の約四分の一、すなわち二百二十三万冊のデジタル化を実施いたしております。
 引き続き、所蔵資料のデジタル化を進める必要があると考えております。厳しい予算状況の下ではありますが、今後とも資料のデジタル化について進捗を図ることができるように努力してまいります。
○山本博司君 平野大臣、この予算ということに関して、大変大事なデジタル化の予算が今現在、先ほどありましたように、今ほとんどゼロの状況でございます。先ほどの補正予算の百二十七億、また、その後、平成二十二年度の補正予算で十億追加がございますけれども、あと毎年一億円程度の予算は今現在ゼロになっている次第でございます。そういう意味では、この一番大事なデジタル化ということに関して、もっとその部分に関してしっかりしていただきたいということが一つのお願いでございます。これ、後でまたお話をしたいと思います。
 そして、今回の改正の中で、公立図書館、また大学の図書館などまでも送信を行うことが可能になったわけでございますけれども、この国民の知のアクセスの向上、情報アクセスの地域間格差の解消、それが進展されるということが予想されるわけでございます。
 ですから、今までなかなか図書館まで足を運ぶことができなかった高齢者とか障害者の方々、これがデジタル化された資料を利用することができるということで、容易にアクセスをすることができるようになるわけでございます。その意味で、この国民生活の文化的な貢献、これが大変期待されるわけでございます。こうした中でも、やはり視覚障害の方とか聴覚障害の方、発達障害の方、この利便性の向上とともに、情報格差の解消ということは大変大事でございます。附帯決議等でもこういった問題に関しましても記載をされているわけでございますけれども、こういう点に関してどのように取り組まれるか、見解をお伺いをしたいと思います。
○国立国会図書館長(大滝則忠君) 国立国会図書館では、利便性の向上のため、紙資料やデジタル化資料等を統合的に検索できるシステムを構築し、今年から利用に供しております。この統合検索システムにより、視覚障害者が便利なように、全国の点字図書館や公共図書館が所蔵する点字図書などの所在について検索できるようにいたしました。
 一方、視覚障害者の利便性を念頭に置いて、平成十四年度からデジタル録音図書の国際標準規格でありますDAISY化に取り組み、現在まで約八百タイトルを作成しております。平成二十一年度著作権法改正の際の附帯決議を踏まえ、今年度は視覚障害者等に配信できるように既存のシステムの機能改修を行っており、来年度の実施を目指しております。また、デジタル化資料の視覚障害者等の利用については、昨年度、実施計画を策定し、今後、読み上げが可能なコンテンツの拡大に努めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 こうした障害者の方々を含めましての対応ということもお願いしたいわけですけれども、現状はやはり予算がほとんどないというのも実態でございます。これ平野大臣、官房長官もまた国対委員長もされていらっしゃる、まあ管轄外でございますけれども、このデジタル化ということも含めた対応を是非ともお願いをしたいと、こういうことを指摘をしたいと思います。
 次に、修正案に関しましてお聞きを申し上げたいと思います。
 この音楽等の私的違法ダウンロードにつきまして、今回この修正案が衆議院で議決をされました。平成二十一年の著作権法の改正につきまして、権利者に無許諾でアップロードされたものと知りながら、権利者に無断で音楽、映像をダウンロードする行為が著作権法上違法とされることに至ったわけでございますけれども、先ほど審議等でもございますように、四十三・六億ファイルの違法ダウンロード、六千六百億円以上の被害ということで、大変大きな被害でございます。コンテンツ産業の健全な成長の阻害をするおそれのある違法ダウンロードというのは大変ゆゆしき問題でございますし、今回この修正案の提出となった刑事罰について、民事罰よりも抑止力が期待できるという、こういう意見もございますけれども、一方で、その運用には私は慎重な検討が必要であると思います。
 そこで、提出者にお伺いをしますけれども、慎重な検討が必要であるにもかかわらず、なぜあえて刑事罰を導入した理由、このことを簡潔にお伝えいただきたいと思います。
○衆議院議員(池坊保子君) 今、山本委員がおっしゃいましたように、平成二十一年の著作権法改正において、音楽や映像作品の違法配信対策の一環として、新たに違法配信と知りながら行う私的使用目的のダウンロード行為が違法であるよというような法律が作られました。そのときには罰則が設けられませんでした。
 しかし、今委員からも御指摘のあったように、日本レコード協会の調査によれば、改正著作権法の施行が違法配信、違法ダウンロードを通じた違法な音楽等の流通量の減少に与えた効果というのは本当に限定的であったんですね。なお一層の対策を講ずる必要がある、それでなければレコード協会はいいものをこれからも作り出していくことはできない。違法に配信されているファイルの違法ダウンロードは、例えばそれが音楽ファイルの違法ダウンロードであれば、アーティストの著作権やレコード会社の著作隣接権を侵害する行為であるとともに、多くの人に繰り返し行われることによって音楽産業に多大な損害を与え、ひいてはアーティストが次の作品を世に送り出すことを難しくしてまいります。
 この修正案は、違法に配信されているものであることを知りながら、有償の音楽、映像を私的使用目的でダウンロードする行為に対して罰則を設けるとともに、関係事業者に対してこうした行為を防止するための措置を講ずる努力義務を課すものでございまして、著作権の保護のみならず、音楽文化、映像文化の振興、音楽産業、映像産業の健全な発展に寄与するために私は必要であるというふうに判断いたしました。
 公明党は現場を大切にしてまいる党でございますから、もちろんこれを行いますには段階的に三年という、その間に周知徹底をしながら、だけれども、こういうような違法ダウンロードが減らなかった事実を踏まえ、そして未成年者の方々は今本当にインターネットが大好きです、その人たちが音楽を聴く場合の弊害等を私はしっかりと皆様のお声を聞きながら、でも、いけないことは丁寧に、きめ細やかに法律を作り上げながら、やはりこれはしっかりと保護し、生産者を守っていくことも必要だし、また、これを法律に違反するんだからしてはいけないということで、していない多くの子供たち、未成年者もいます、大人たちもいます、そういう人たちを大切にしなければいけないということも私は事実ではないかというふうに考えております。
 捜査に対しても恣意的になるのではないかというようなお考えがありますが、親告罪等々を作っておりますし、そうならないような努力をしております。
 全ての事柄は光と影がありますけれども、影はなるべくそうならないような努力をして、光を大切にしていきたいというのが私ども提出者の気持ちでございます。
 卵は安い方がいいのです。消費者は安い卵を手にしたいです。でも、卵を作る人たちが駄目になったら、いい卵を私たちは手にすることもできないというのが私たち提出者の気持ちでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 今回の修正案、様々な議論がある中で、私的違法ダウンロードを行っているのはやっぱり中学生とか高校生の子供たちである、このダウンロードが違法であるということを理解していないという場合も多い、こういう指摘もございます。
 このような状況の中で罰則を付ければ、先ほどありましたように、子供たちが摘発の対象となると。子供たちは全く教育を受けるチャンスもない状況の中で刑事罰化へ進むということに対して、余りにも拙速ではないかと、こういう意見もあるわけでございます。
 その意味では、この著作権の教育の充実、子供の時代での取組が大事でございます。その点に関して、これは文科省、大臣、お願いしたいと思います。
○国務大臣(平野博文君) 今委員の方からるる御指摘、またこの委員会でのいろんな御議論をする中で、どういうところが違法になるんだというところが非常に分かりにくい、グレーのゾーンが多いと。こういう中での、やっぱり著作権という本来持っている権利の保護、あるいは公正な利用、さらには科学技術の進展に伴う、非常に複雑になってきている、こういうことでございます。
 そういう中で、今日までも、委員御指摘のように、また御理解いただいていますように、かなり著作権法の改正というのが、二、三年単位で改正をして追い付いていっている、追い付かなきゃならないと、こういう状況の下で、今御指摘の教育の充実、まさに国民の皆さんにやっぱり周知徹底をする、子供さんにおいても著作権というのは非常に大事な権利なんだということを周知徹底するということは非常に大事であると思っております。
 したがいまして、学校教育におきましては、中学校や高等学校の学習指導要領において著作権にかかわる記述を充実を今しているところでございます。違法ダウンロードの問題についても教科書等で取り扱われるようになってきているわけであります。平成二十年の三月には中学校の学習指導要領を改正をいたしておりますし、二十一年三月には高等学校の学習指導要領を改正、著作権に関する記述を更に増やしておりまして、そういう観点で啓蒙を図っているわけであります。
 これからも国民に向けて、より普及と啓発を図ることによってこのことが徹底されれば、私は文化活動が更に発展すると、かように思っていますので、引き続き積極的に進めてまいりたいと、かように思っております。
○山本博司君 是非ともよろしくお願いしたいと思います。
 最後に一問、その著作権の問題で、デジタル教科書の課題ということでお聞きをしたいと思います。
 このデジタル教科書、教育現場で様々な形で推進をされております。震災でも六十三万冊の教科書が流されたとか、様々な形でクラウド化とか、デジタル教科書への注目が集まっているわけでございます。昨日も私は横浜のフューチャースクールの実証校に行ってまいりまして、パソコンとか電子黒板を利用した、こうした授業を大変感銘を受けて見させていただいた次第でございます。このデジタル教科書を推進する上で一番の課題が著作権の許諾を取ることだと言われておりまして、今、様々な形でこの問題がなかなか進まないということがございます。
 文科省では、学びのイノベーション事業等で、この推進ということで普及を進めておりますけれども、コンテンツの充実ということでも、この著作権の許諾の円滑化の推進ということを更に進めないといけないと思いますけれども、この点最後に大臣に聞いて、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(平野博文君) これは大変大事な御指摘だと私は思っております。特に、デジタル教科書の普及というのはこれから大きく進んでいくと、こういうふうに思われますから、したがって、著作権、隣接権含めて、より円滑にこの問題については対処しなきゃならないと、かように考えているところでございます。
 したがいまして、実証研究、こういうことを実際進めていくとともに、デジタル教科書、教材の位置付けや著作権制度上の課題をしっかり踏まえて今御指摘の点について対処してまいりたい、かように思っております。
○山本博司君 以上です。
 ありがとうございました。
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 今日は、四人の参考人の皆様、本当に大変にありがとうございました。今日午前中から質疑で、大事な法案でございます。その意味で、今日はこの修正案等に入ります刑事罰の導入ということを含めて四人の皆様にお聞きをしたいと思います。
 まず、市毛参考人、久保利参考人、法律の専門家ということでございまして、今回、二百万以下の罰金、二年以下の懲役という刑事罰が付くわけでございますけれども、市毛参考人、現時点で、青少年の教育であるとか、またアップロードの取締り執行状況とか、様々な対策を取れば刑事罰に関して考えてもいいのかどうかということも含めて、この重みがどうなのかとか、もう一回、さらに、この辺の抑止力にはならないという面を含めて、この点をお話しいただきたいと思います。
 また、久保利参考人は、それを受けましてどういうふうに考えているかということをまずお聞きしたいと思います。
○参考人(市毛由美子君) まず、先ほど御説明させていただいたとおり、前回の著作権法改正の段階で利用者保護ということで三点の措置を実施することが必要であるというような報告書が出ておりますけれども、そういった権利者自らの努力によって、やはり違法ダウンロードの阻止する効果がどれぐらい効果があったのかと、どれぐらい努力をしたのかということについて、やはり刑事罰を導入するという国民の人権にかかわることをしようというのであれば、きちんと御説明ないし検証がなされる、そういうステップを踏むべきであるというふうに申し上げております。
 ちなみに、日本レコード協会さんが日弁連の意見書に対して反論の御意見をいただいておりますけれども、例えばアップロードに対してどのぐらい刑事摘発がなされているかということに関して、レコード協会さんの会員による刑事告訴事件として把握しているものは、平成二十三年度六件、刑事訴追を行っておるという御報告がございます。
 他方で、先ほど申し上げているとおり、音楽ファイルだけで、音楽の違法ダウンロード数だけで十二億ファイルあるというところで、年間六件、これは協会さんの把握されている数字だけということでございますけれども、こういう裁判が起きたという報道等も聞こえてまいりませんので、要はアップロードに対しての刑事罰が本当にきちんと執行されているとは言えないのではないかという評価の方が大勢を占めているということでございます。
 そういったいろんなことをやってみて、それでもやはり必要だということであれば、そこはその段階で御議論をいただくということで構わないと思いますけれども、今の段階で、そういった検証がなされていない、しかも修正案という形で、専門家の意見等も聞いていただけないまま国会の方を通ってしまうというところが、やはり手順として、手続として、民主主義的な要はルールの決め方としていかがなものかというところに疑問を呈させていただきます。
○参考人(久保利英明君) 久保利でございます。
 まず、刑事事件というのは、これはこの案件だけじゃなくて全ての事件がそうですけれども、まず一つは可罰的違法性、もう釈迦に説法ですけれども、要するに、ペナルティーを科すだけの重要性があるものかどうか。紙一枚盗んだって窃盗は窃盗なんだけど、紙一枚で窃盗罪で起訴するだけの価値があるか。それはそういう意味があるかというふうに言えば、多分、誰もないと言うんですね。ですから、可罰的違法性の問題で相当落ちていきます。
 もう一つは、起訴便宜主義というのがあって、検察官が起訴するかどうかというときには、その行動をした人の状況というものをいろいろ配慮しながら、本当にこれは起訴をして立件しなきゃいかぬものかどうかというふうにそこでチェックを掛ける。これは全ての事件についてそうですよね。そういうときに、この種の案件だけそういうチェックがないというふうに考える方がそれはおかしくて、それは当然そのチェックは掛かるであろう。
 次に、そうなったときに、刑事事件になる、あるいは刑事罰を科することのマイナス点として萎縮という言葉が随分言われました。何を萎縮するんでしょうか。違法行為であるそのものをやらないようにするというのを萎縮というふうに言うんでしょうか。それは抑止とか制止とかという話であって、正しい方向に向かっているわけですから、それはそういう行動はしないようにしましょうというのは当然のことだと思います。
 そういうふうに、違法なダウンロードをしないようにしましょうと言った結果、本当に音楽からみんなが離れていくんなら、それはもう音楽産業としてはしようがないですよね。いいものがない、魅力的なものがないということですよ。正規物も欲しくない、CDも買いたくないという、そんなレコードばっかり作っていた、そんな音楽しか作っていないんだったら、それはもって瞑すべしだと僕は思います。それはしようがないでしょう。
 そうではなくて、正規なものをもっと広めましょう、そのためにはいろんなマークを付けましょう、あるいはクリエイティブ・コモンズというのがありますけれども、私の作ったものはどうぞ皆さん自由に使ってくださいという選択を自分で選ぶこともできるし、絶対駄目ですよというのもあるし、お金をくれたら使ってよろしいというのもあるしというCCというマークを付けるというのもアメリカでは現にスタートしているし、日本でもその運動は始まりました。
 というふうに考えてみると、実は何か刑事罰と刑事罰を付けないというその二つの陣営が大げんかをするんではなくて、刑事罰が必要だと思ったら刑事罰を付ければよい、その行使には抑制が当然利きます、必要です。だけど、そのことによって違法行為が減るんだったら、そこから後はマーケットの判断でありますから、そこから後レコードが売れるかどうかというのは、これはある意味ではレコード業界の努力の話でもあるわけですね。
 ですから、そこは、そういう条件つくった上で売れなかったら、おまえら、ろくなもの作らないから駄目じゃないかということになるかもしれません。ただし、その客観的な要件、条件をつくってくださいと。少なくとも、みんなが悪いことだと認識できるような、そういう条件をつくってくださいというのが私はこの立法だと思うんです。
 そういう意味では、アップロードは駄目だけどダウンロードはいいなんという、そんな片道切符みたいな訳の分からない話はないはずであって、これは、必ずアップロードする人はダウンロードを誰かがすると思うからわざわざアップロードしているわけなんで、それをセットで駄目ですよというふうに申し上げるには、二年、二百万というのはちょうど手ごろな刑事罰ではないかなと。かつ、それに起訴便宜主義と可罰的違法性が入ってくれば、そんなとんでもない状況は起きないというふうに、私は、日本の警察、とんでもない検察官もいますけれども、基本的にはそうではないだろうというふうに信じております。
○山本博司君 ありがとうございました。
 じゃ、あと、私も政治家になる前にIT業界におりましたので、津田参考人また岸参考人に最後にお聞きしたいと思います。
 このネットビジネスをどう発展、公正化していくかということが一つの大きな論点だと思いますけれども、そういう意味で津田参考人、この刑罰が国内のインターネットサービスの阻害要因になると、特にクラウドサービスとか、そういう技術の面の衰退があるというふうな部分での御指摘がございますけれども、そういう部分を含めてどういう点がそういう成長産業の阻害になってしまうのかという点と、最後に、岸参考人は、そういったことを踏まえて、ネットビジネスの、先ほどお話がありましたビジネスの発展のために市場の公正が大事なんだと、こういう点を簡潔にお願いをしたいと思います。
○参考人(津田大介君) 多分これは岸参考人とも恐らく意見は同じだと思うんですけど、IT業界というのが非常にアメリカの産業に牛耳られていると。実際、我々が使っているOSはマイクロソフトかアップル、そして、使っているスマートホンのOSもそれを握られている。グーグルか、アップルか、アマゾンか、マイクロソフトか。そして、ほかのあらゆるシリコンバレー発のウエブサービス、ツイッターもそうです、フェイスブックもそうです。というようなときに、じゃ日本のIT産業は何もできないのかというときに、これは、実際やっぱり現場で話を聞く、特に弁護士の方とかに話を聞くと、やはり日本の著作権法だと、今のコンプライアンス重視主義のときに、ネットで情報を、特にユーザー投稿型のサービスをやるときに非常にリスクが高いということは話すんですね。
 それは何かというと、一つはアメリカの著作権法、一九九八年にできたDMCAの存在というのが非常に大きくて、DMCAというのは非常に、ある種権利者を保護する規定も設けられているんですが、一方でユーザーを保護する、そして業者も保護する規定があるんですね。一つはセーフハーバー、免責条項というのが入っていて、幾つかの条件を満たしたら、著作者からこれ著作権違反だよという依頼が来たら、ノーティスがあったら、じゃ、すぐ削除しますよという体制があるとか、自らそのサービスとして著作権侵害を、何だろう、推奨するような文言が入っていないとか、幾つかのやることをネット業者がやっておけば、そこから先、著作権侵害には業者は問われないという、そういう著作権法の立て付けになっているんですね。
 加えて、アメリカの著作権法にはフェアユース、公正利用というのが入っているので、そこで、じゃグーグルとかユーチューブとか、ユーチューブなんて特に最初はもう本当に違法なテレビ番組とかしかなかったわけですけれども、それで訴訟なんかも起きていますけど、なぜ負けずに今続いているのかというと、アメリカの著作権法には免責条項とフェアユースということで、非常にある種とんがったサービスを出した中で、ユーチューブなんかであれば、確かに著作権者の権益はそこでいっとき侵害されるかもしれないけれども、結果的にはそれがプロモーション効果みたいなものも生んでいくんだったら、経済になるんだったら認めていこうという形で、今は逆にユーチューブみたいなものも、存在も、合法的な存在プラスアルファとして今認め、組み込まれてきているというところがあるわけですね。
 翻って、日本の著作権法というのは、そういった免責条項みたいのが入っていないということと、ある意味、著作権法は非常に厳しい、そしてフェアユースみたいなものはないので、そうすると非常にリスクが高いんですね。何かユーザー投稿型のサービスを利用しようというふうになったときに、やはりリスクが高いのでなかなか展開できない。
 ユーチューブがはやったときに日本も当然パクった、何だろう、丸パクりしたようなサービス出しました。NTTも出しました、ソニーも出しました、いろいろ出しました。でも全部、結局きちんとしたユーザーの楽しみを、支持を得られるようなサービスが出なくて、結果的に残ったのはニコニコ動画だけです。あれは、でも、ニコニコ動画も、非常に権利者とのぎりぎりのせめぎ合いの中、最終的には認められるという形になったんですが、そういったものの制約条件があることが日本発のネットサービスをやっていけない一つの理由になっている、阻害要因になっているということは事実でしょうし、どう、本当に日本のサービスをアップル、グーグル、アマゾンの中に負けないでやっていくというときに、またこのダウンロード刑罰化というふうになると、また相当それをユーザーに課すことになるでしょうし、場合によってはこれ幇助みたいなものにもウエブサービスの方がつながっていく可能性があるということになると、やはりなかなかとがったサービスは出しづらいよねというような阻害要因にはなってくるんではないかなと思います。
 以上です。
○参考人(岸博幸君) 私は津田参考人とは若干意見が違うんですけれども、アメリカで著作権法はいろんな規定を設けています。それで、ネットビジネスに有利な規定も当然作っているんですけれども、あえてそういうネットビジネスに有利な規定を作ることが、今後のネットビジネス、ネット上ではプラットホームレイヤーとコンテンツレイヤー両方でビジネスを成長させるために必要だとは思っていません。逆に、今の規定でも、さっき津田参考人も言ったニコニコ動画みたいな、ある意味では世界に通用するサービスができていますので、やはり、本来必要なのは、市場を公正にすること、それは、やっぱり価値あるコンテンツにはちゃんと対価を払うということをする、その中で競争を促進することが必要でして、ちなみに私は、実は、津田参考人が最初の意見陳述で文化の保護と言いましたけど、私はこれも実は反対でして、文化こそ競争、競争というか切磋琢磨を通じて進化するものだと思っていますので、そういう意味では、コンテンツレイヤー、プラットホームレイヤー両方を共通してやはりネット上でも公正な市場、リアルと同じような市場をつくらないといけない。そのための第一歩が、やっぱりこういう違法ダウンロードみたいなものに罰則化をちゃんと付けるということだと思っています。
○山本博司君 ありがとうございました。