参議院 文教科学委員会 第6号 平成30年4月17日

○委員以外の議員(山本博司君) ただいま議題となりました障害者による文化芸術活動の推進に関する法律案につきまして、発議者を代表して、その提案の趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。
 文化芸術を創造し、享受することは、障害の有無にかかわらず、人々の生まれながらの権利であります。文化芸術は、人々の心に直接的に訴えることにより、障害の有無による分け隔てなく、深い共感や相互理解をもたらすものであります。
 近年、文化芸術の分野においては、アールブリュット、生の芸術等の呼称で、専門的な教育に基づかずに人々が本来有する創造性が発揮された作品が注目されてきております。既成の概念にとらわれないこれらの作品の特性は、文化芸術の発展に寄与しておりますが、その中心となっているものは障害者による芸術作品であり、とりわけ、我が国の障害者による作品は、国際的にも高い評価を得ております。
 現在、平成三十二年の東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会に向けて、文化プログラムが実施されておりますが、両大会の開催を契機として障害者による文化芸術活動の推進に関する機運を高めていくことが重要であります。
 本法律案は、このような視点に立ち、文化芸術基本法及び障害者基本法の基本的な理念にのっとり、将来にわたって障害者による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって文化芸術活動を通じた障害者の個性と能力の発揮及び社会参加の促進を図ろうとするものであります。
 以下、本法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、基本理念として、障害者による文化芸術活動の推進は、文化芸術の鑑賞等を含め障害者による文化芸術活動を幅広く促進すること、障害者による芸術上価値が高い作品等の創造に対する支援を強化すること、住民が心豊かに暮らすことのできる住みよい地域社会の実現に寄与することを旨として行われなければならないこと等を定めております。
 第二に、障害者による文化芸術活動の推進に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、政府は、必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならないとしております。
 第三に、文部科学大臣及び厚生労働大臣は、障害者による文化芸術活動の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本計画を定めなければならないとするとともに、地方公共団体は、基本計画を勘案して、当該地方公共団体における計画を定めるよう努めなければならないとしております。
 第四に、基本的施策として、国及び地方公共団体は、障害者による文化芸術活動に関し、文化芸術の鑑賞及び創造の機会の拡大、文化芸術作品等の発表の機会の確保、芸術上価値が高い作品等の評価及び販売等に係る支援、権利保護の推進等の必要な施策を講ずるものとしております。
 第五に、政府は、文化庁、厚生労働省、経済産業省その他の関係行政機関の職員をもって構成する障害者文化芸術活動推進会議を設け、障害者による文化芸術活動の推進に関する施策の総合的かつ効果的な推進を図るための連絡調整を行うものとすること等を定めております。
 以上が本法律案の提案の趣旨及び内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○吉良よし子君 文化芸術、鑑賞すること、参加すること、さらに、創造し、発表の場や機会が保障されることはもう本当に国民の権利です。大臣も極めて重要とおっしゃられましたけれども、その芸術家の自主性、表現の自由の尊重、また予算の抜本的な増額、改めて強く求めまして、次に、両法案の提出者に法案について伺っていきたいと思います。
 まず、障害者による文化芸術活動の推進に関する法案についてでございます。
 法案の基本理念において、専門的な教育に基づかず人々が本来有する創造性が発揮された作品が高い評価を受け、その中心が障害者の作品であること等を踏まえ、障害者による芸術上価値が高い作品等の創造に対する支援を強化するとありますが、これだけ見ていると、芸術上価値が高い作品等だけを支援するというふうに読めなくもない部分があると思います。
 しかし、私は、価値の高低にかかわらず、全ての障害者の文化芸術活動を支援することが必要と考えますが、本法案もそうした立場という理解でよろしいかどうか、御説明をよろしくお願いします。
○委員以外の議員(山本博司君) 吉良委員にお答え申し上げたいと思います。
 今回の、芸術上の価値が高くなければ支援がなされないのではないか、こういう御懸念についての御質問をいただいたものと思いますけれども、この法案は、まず基本理念の第一に、芸術上の価値を問わず、障害者の方々の文化芸術活動について幅広く促進することをまず掲げております。これは、文化芸術を創造し享受することが人々の生まれながらの権利であることを鑑みたものでございます。これに加えて、この法案では、芸術上価値が高い作品等について定め、優れた才能の更なる飛躍に向けた支援も行うという仕組みとしておりまして、両方の観点から支援を定めているわけでございます。
 御指摘の芸術上価値の高い作品等について規定しておりますのは、近年、アールブリュットなどの呼称で障害者の方々の作品が優れた作品として高い評価を受けるようになっているにもかかわらず、そうした作品等についての支援が十分ではなく、それらが世に出ないままとなっていることや、また、販売、公演等の事業化が円滑に進んでいない、こういった課題があることがございますので、特にそれに対応する必要があったからでございます。
 この法案を契機として、全ての障害者の文化芸術活動の推進について一層の充実を図ることが重要であると考えております。