参議院 本会議 第5号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 私は、公明党を代表し、土砂災害防止法改正案について、関係大臣に質問をいたします。
 初めに、本年の夏の土砂災害や台風、御嶽山の噴火被害などでお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 私は、発災の翌日、広島市に向かい、公明党の県議、市議とともに被災された地域を回りました。余りにもすさまじい土石流の爪痕に言葉もありませんでした。
 公明党は、直ちに土砂災害防止法改正検討プロジェクトチームを設置し、何度も被災地を訪れ、議論を重ね、九月二十六日に土砂災害に関する未然防止策についての提言を政府に提出しました。今回の改正案は、我が党の提言を十分踏まえており、大いに評価できるものと考えております。この改正案が実効性のあるものとなるよう取組を進めていくべきであります。
 近年の自然災害は、異常気象によるゲリラ豪雨や台風災害が頻発しており、思いも寄らない大きな規模になることも珍しくありません。自然の脅威に私たちは何よりも謙虚に向き合っていき、災害の検証と不断の見直しが必要であります。
 そうした意味から、災害を未然に防止するためにハード、ソフト両面による総合的な対策が必要と考えます。現在、政府が取り組んでいる防災・減災対策の重要性が更に増していると考えますが、防災・減災対策に対する国土交通大臣の基本的な認識をお伺いいたします。
 この土砂災害防止法は、平成十一年に広島市などで五十一名もの犠牲者が出た土砂災害を受けて翌平成十二年に制定されました。しかしながら、今般の豪雨では、前回の土砂災害の被害を大きく上回る甚大な被害が発生し、七十四名という多くの尊い命が失われました。
 この広島市の土砂災害では、土石流などが発生した百六十六か所のうち、七割余りが土砂災害警戒区域に指定されていませんでした。全国でも五十二万か所の危険地点がありますが、指定が済んでいるのは三十五万か所にとどまっております。法が施行されて十五年近く経過しているにもかかわらず、土砂災害警戒区域の指定がどうして進まないのか、まず、その理由について国土交通大臣にお伺いをいたします。
 今回の改正案では、都道府県が土砂災害警戒区域に指定するための前提となる基礎調査が終わり次第、危険性が高い地域を公表し、調査が進んでいない場合は、国土交通大臣が都道府県に対して是正を要求できる規定を盛り込んでおります。この基礎調査には防災・安全交付金が活用されることになりますが、危険地点を多く抱える都道府県は効率的、計画的に調査を進める必要があります。各都道府県が基礎調査を迅速かつ加速的に実施できるように、今回の改正を実効性のあるものにすべきと考えますが、国土交通大臣の見解をお聞きいたします。
 また、広島市の場合では、短時間のうちの豪雨であり、深夜から未明という時間帯だったこともあり、市が避難勧告を出した時点で既に土石流が発生しておりました。もっと早く勧告を出すべきではなかったのか、土砂災害警戒情報を活用していれば被害を少しでも減らすことができたのではないかとの指摘がされております。
 改正案では、市町村が避難勧告などを発表する際の判断に利用してもらうため、土砂災害警戒情報を発表した時点で都道府県は関係市町村に通知するよう義務付けることになっております。市町村が空振りを恐れずに避難勧告に踏み切ることができるよう国が支援をすべきと考えます。この土砂災害警戒情報について、どのように活用していくのか、国土交通大臣に御説明いただきたいと思います。
 さらに、地域の特性や実情を踏まえつつ、それぞれの災害の規模に見合った安全な避難場所の確保が大変に重要であります。広島市の場合は、避難所に指定されていた場所が土石流に流されてしまったケースがありました。安全な避難場所の確保に向けた対策を今回の改正ではどのように講じているのか、国土交通大臣に伺いたいと思います。
 次に、福祉避難所について伺います。
 東日本大震災のときにも、高齢者や障害者、妊婦や乳幼児など、いわゆる災害弱者と呼ばれる方たちの被害が甚大であるとの指摘がありました。今後の災害時に同じ轍を踏んではなりません。公明党はこれまで、災害時の要援護者避難支援ガイドラインの見直しなど、災害弱者と呼ばれる方たちに配慮した避難対策や地域づくりを進めるべきと考え、推進をしてまいりました。
 災害救助法で定められている福祉避難所は、一般の避難所での生活に支障を来す要援護者を受け入れるため、バリアフリーの設備や生活相談員の配置など特別の配慮がなされた避難所であります。しかし、指定が進まず、指定していても設備が十分ではないと指摘されており、市町村間のばらつきが顕著になっております。こうした福祉避難所の指定促進を国としても支援すべきと考えますが、防災担当大臣の認識を伺いたいと思います。
 災害リスクコミュニケーションについて伺います。
 地域の防災力を高め、災害を最小限度の被害に収めるためには、公助、共助だけでなく、コミュニティーや住民自身の自助が不可欠であります。情報を発信をする行政や専門家と、情報を受け取る住民が、その情報を自身で生かすことができるようにすることが重要です。それぞれの役割を明らかにし、共通の意識を持ち、協力関係をつくること。その方策として、互いに危機について意見や情報を交換し、共有し合う災害リスクコミュニケーションが求められていると思います。
 東日本大震災のときには、釜石の奇跡と呼ばれる防災教育が大きな効果を発揮しました。私たちにできることは、日頃から防災について学び、話し合い、防災への関心を高め、啓蒙していくということではないかと思います。
 災害リスクコミュニケーションの推進に向けた防災担当大臣の決意を伺います。
 発災から二か月が経過した先月二十五日にも広島市の被災地を訪問しましたけれども、依然として土砂災害の爪痕は厳然と残っておりました。住民の皆様が口々に言われていたのが、これからどのように生活していけばよいのか、もうここには住めないのではないかという生活再建への不安の声でした。
 こうした声に応え、国民に寄り添い、希望の持てる社会となれるよう、更なる努力をお誓い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣太田昭宏君登壇、拍手〕