参議院 本会議 第7号 令和2年3月11日
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
私は、自民、公明を代表して、ただいま議題となりました令和二年度地方財政計画、地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、安倍総理並びに関係大臣に質問いたします。
まず、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に心からお悔やみ申し上げますとともに、感染された方々にお見舞いを申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の拡大は依然として予断を許しません。状況の変化を見据え、臨機応変な対応が求められております。
また、この三月十一日で東日本大震災から丸九年となりました。犠牲となられた皆様方に哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
これからも党を挙げて、被災地に寄り添い、誰一人置き去りにしない復興を進めていくことをお誓い申し上げ、質問に入らせていただきます。
初めに、地方財政計画について伺います。
令和二年度の地方財政計画においては、地方税及び地方交付税の増加等を背景に、一般財源総額で令和元年度を〇・七兆円上回る六十三・四兆円を確保するとともに、地方交付税総額で前年度を〇・四兆円上回る十六・六兆円を確保いたしました。
臨時財政対策債については三年連続の減少と、しっかりと抑制されたものとなっており、安定的な財政運営のための一般財源総額の確保と財政の健全化の両立が図られております。今後とも、増大する地方の財政需要については地域の実情に十分配慮したきめ細やかな対応が必要です。
とりわけ、新型コロナウイルス感染症に関する地方財政上の対応は喫緊の課題です。
既に政府は令和元年度予備費による対応を実施しておりますが、引き続き、地方自治体が必要かつ十分な対応ができるよう財政上の支援を講ずる必要があります。具体的には、今後の普通交付税の繰上げ交付や特別交付税による柔軟な対応など、あらゆる手段を総動員すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
安定した自公政権の下において、地方創生が大きく進展をしております。
日本海の隠岐諸島にある島根県海士町は、かつて人口流出が止まらなかった町でありましたが、大きな危機感を感じて、海産物を冷凍する施設を造ったり、高校に島外の生徒を呼び込み活気ある町づくりを進め、Iターン移住者は過去十五年間で六百五十人を超えました。
平成二十七年度に創設されたまち・ひと・しごと創生事業費は、これまで毎年度一兆円が計上され、令和二年度も引き続き一兆円が計上されております。こうした施策を一層推進し、地域の活性化を図ることで、地方財政の改善が進み、経済の好循環を生み出す効果が大きいと考えます。
令和二年度より、第二期まち・ひと・しごと創生総合戦略の下での取組が始まります。持続可能な地方創生に向けて更なる充実強化が求められております。地方創生に向けた安倍総理の御所見を伺います。
今回の地方税改正の中には、税負担軽減措置として、ローカル5Gの設備に係る課税標準の特例措置の創設が盛り込まれております。
本年は、5Gの商用サービスについて本格的な展開が控えております。高速、大容量、低遅延、多数同時接続という利点を生かして、全国各地で様々な活用が期待されております。特に、地方では、少子高齢化が急速に進む中、地域課題の解決に向けた取組への活用が大いに期待されています。
この5Gは、国民に広く利益が及ぶ国家戦略であり、力強く前に進めるべきと考えますが、総理の認識を伺います。
こうした5Gの活用には、ICTインフラ環境の整備が不可欠であります。光ファイバーなどの超高速ブロードバンドの基盤が前提となります。
総務省では、地理的に条件不利な地域においても、光ファイバーの整備を行うため、支援事業を進めていると承知しております。離島や山間部などの過疎地域を始め、財政事情の厳しい自治体においても、地域活性化の観点から着実に整備していただきたいと思いますが、総務大臣の御所見を伺いたいと思います。
次に、未婚の一人親家庭への支援について伺います。
今回の地方税法改正において、国税と同様に、個人住民税における未婚の一人親に対する税制上の見直しが行われます。これにより婚姻歴の有無による不公平の解消が図られ、子供の貧困対策は一歩前進するものと評価いたします。制度の周知徹底やプライバシーに配慮した制度設計に努めていただきたいと思います。
今回の見直しにもかかわらず、多くの一人親家庭は低所得者世帯であり、所得控除しても手元にお金が残らないとの指摘もあります。約百四十二万世帯の一人親家庭のうち、約五割が貧困世帯と見られています。経済的な困窮を見過ごしていては、親から子へと続く貧困の連鎖を断ち切ることはできません。
今回の見直しにとどまらず、一人親家庭に対する更なる支援策を強化すべきと考えますが、総理の認識を伺います。
次に、防災・減災対策に関して伺います。
令和元年度には、相次ぐ大雨や台風により、各地で河川の氾濫による堤防の決壊、住宅の浸水など甚大な被害がもたらされました。
こうした深刻な被害を踏まえ、令和元年度の補正予算を編成するとともに、令和二年度地方財政対策では、緊急浚渫推進事業費の創設、緊急防災・減災事業費及び緊急自然災害防止対策事業費の対象事業の拡充、技術職員の充実に係る地方財政措置などを行うこととしております。
この中で、緊急浚渫推進事業費の創設は、自治体が単独事業として、緊急的に管理する河川のしゅんせつ、土砂の撤去、樹木の伐採などを実施できるようにするものであり、被害を未然に防ぐためにも大変重要な事業であります。この緊急浚渫推進事業費の創設の意義について、総務大臣の答弁を求めます。
さらに、緊急防災・減災事業は復興・創生期間の令和二年度まで、緊急自然災害防止対策事業は防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策の期間の令和二年度末となっており、今後の取扱いが注目されております。
緊急対策が終了する令和二年度以降も、中長期的な視点で防災・減災、国土強靱化対策に十分な予算を確保し続け、災害への備えを万全にしなくてはなりません。更なる防災・減災、国土強靱化対策に向けた総理の決意を伺いたいと思います。
地方税法等の一部改正案及び地方交付税法等の一部改正案は、地方創生の推進、防災・減災対策の強化に資する重要なものであります。地方の声にしっかりと耳を傾け、ニーズを反映させていくことがますます重要です。
両法律案を令和二年度予算と併せて早期に成立させる必要があることを申し上げ、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山本博司議員にお答えをいたします。
令和二年度地方財政計画等についてお尋ねがありました。
令和二年度の地方財政計画においては、地方の一般財源総額について前年度を〇・七兆円上回る六十三・四兆円確保する中で、地方交付税総額を〇・四兆円増額するとともに、臨時財政対策債の発行額を〇・一兆円抑制し、地方の一般財源の質も改善しました。
今後とも、地方公共団体が地域の実情に応じた重要課題にしっかりと取り組んでいけるよう、地域経済の活性化やめり張りを付けた歳出構造の見直しにより、一般財源総額を安定的に確保しつつ、財政の健全化に取り組んでまいります。
また、新型コロナウイルス感染症に関する地方財政上の対応については、新型コロナウイルス感染症対策本部において決定した第一弾及び第二弾の緊急対応策において地方負担が見込まれる事業については、災害並みの措置を講ずる観点から、手厚い地方交付税措置を講じることとしています。
今後とも、地方公共団体の御意見も踏まえながら、その財政運営に支障が生じることがないよう、関係省庁と連携しつつ、適切に対応してまいります。
地方創生についてお尋ねがありました。
御紹介いただいた海士町は、島にある特産品を生かし、次々とヒット商品を生み出してきました。そのアイデアをもたらしたのは、島の外からやってきた若者たちです。チャレンジの場を積極的に提供することで、御指摘のように、日本中から多くの若者たちのIターンを集めている地方創生の好事例です。
若者が将来に夢や希望を抱き、その場所でチャレンジしたいと願う、そうした地方創生をつくり上げることが持続可能な地方をつくる鍵であると確信しています。
第二期総合戦略では、地方にこそチャンスがあると考える若者たちの背中を力強く後押ししてまいります。
地域おこし協力隊は、任期が終わった後、六割の若者が定住している実績があります。この協力隊を政権交代前の八倍近い八千人規模へと大きく拡充します。
東京から地方へと移住し、起業、就業する場合に最大三百万円を支給する。地方でのチャレンジを促すこの制度を更に使いやすいものとします。
地方での兼業、副業を促すため、人材のマッチングや移動費の支援を行う新たな制度を創設します。関係人口を拡大することで将来的な移住につなげてまいります。
あらゆる施策を総動員して、若者たちがその未来を託すことができる地方創生を進めてまいります。
5Gについてお尋ねがありました。
5Gがもたらす変革は、経済のみにとどまらず、安全保障を始め世界のあらゆる分野に大きな影響を及ぼすとの認識の下、国家戦略として取り組んでいくこととしております。しっかりと未来を見据えながら、大胆な税制措置と予算により、研究開発とインフラ整備への大胆な投資を促し、イノベーションを力強く後押ししてまいります。
5Gは、自動運転や遠隔医療などを可能とすることを通じて、人手不足や高齢化など、地域が直面する社会課題の解決に大きく寄与するものです。まさに地方創生の切り札であり、速やかに全国展開を進めることが重要です。
そうした観点から、昨年の周波数割当てに当たっても、地方も含めた広いエリアでのサービス展開が行われるよう条件を付したところです。また、農業、工場、建設現場などで活用実績を積み上げ、その横展開を図ることで早期の普及を図ってまいります。
一人親家庭に対する支援策についてお尋ねがありました。
未婚の一人親に対する税制上の対応については、全ての一人親家庭に対して公平な税制を実現する観点から、死別、離別の場合と同様の条件で一人親控除を適用することとしました。
この改正法案の早期の成立をお願いするとともに、法案の成立後は、新たに対象となる方に控除が適切に適用されるよう、周知徹底を図ってまいります。また、控除の申告の際には婚姻歴の有無が職場などに知られないよう、プライバシーに配慮した制度設計とするよう努めてまいります。
さらに、今回の税制上の対応以外にも、就業支援を基本としつつ、子育て・生活支援や経済的支援などの施策を総合的に進めており、児童扶養手当制度について、近年、多子加算額の倍増や所得制限限度額の引上げ等、拡充を図ってきたほか、児童扶養手当と障害年金の併給要件の緩和について所要の法案を今国会に提出しています。
今後とも、新たに策定した子供の貧困対策に関する大綱に基づき、一人親家庭の所得状況や生活実態、経済状況の変化等を踏まえつつ、必要な支援の充実を図っていきたいと考えています。
更なる防災・減災、国土強靱化対策に向けた決意についてお尋ねがありました。
近年の災害の激甚化を考慮すると、防災・減災、国土強靱化を中長期的視点から進めることは重要であると考えています。このため、一昨年末に、近年の災害から得られた教訓や社会経済情勢の変化等を踏まえ、国土強靱化基本計画を見直し、中長期的な目標や施策分野ごとのハード、ソフトにわたる推進方針を明らかにしてきたところです。
今後とも、必要に応じて国土強靱化基本計画を充実させながら、必要な予算を確保し、オールジャパンで防災・減災、国土強靱化を進め、国家百年の大計として災害に強いふるさとをつくり上げてまいります。
また、令和二年度までを期限としている緊急防災・減災事業債及び緊急自然災害防止対策事業債のその後の対応についても、地方団体の取組状況や御意見等も十分にお聞きして適切に検討してまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕