参議院 決算委員会 第2号 平成29年3月28日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。決算委員会の質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、子育て支援と発達障害を抱える方々の支援について質問をしたいと思います。
   〔委員長退席、理事松下新平君着席〕
 まず、平成二十七年度の決算に関して伺います。
 決算審査の審議は、国の予算の執行状況を審査することによりまして、今後の予算編成で財政の無駄を減らし、民主的コントロールを徹底させることにございます。参議院では、その独自性を発揮すべく、決算審査の充実に努めてきたところでございますけれども、平成二十七年度の決算は、平成二十年度決算以来、約七年ぶりに来年度の予算編成前から審査に入ることができましたのは、誠に意義深いことと考えます。
 今回、対象となっております平成二十七年度の予算につきましては、地方創生、子育て支援、一億総活躍など、我が国の諸課題への対応を強力に推進し、経済再生と財政健全化の両立を実現することを目指しておりまして、着実な成果を上げていることに高く評価をしたいと思います。
 しかしながら、会計検査院からは、官庁や政府出資法人などを検査した平成二十七年度決算検査報告の中で、税金の無駄遣いや不適切な会計処理、また資金の積み残しなどとして四百五十五件、計約一兆二千百八十九億円の指摘があった次第でございます。こうした指摘は大変に残念なことでございまして、検査報告をしっかり受け止め、見直しが必要であると考えます。
 そこで、こうした会計検査院の指摘を踏まえて、昨日成立をしました平成二十九年度予算においてどのように反映をされたのか、総理の見解をお聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 平成二十七年度決算検査報告において、会計検査院から四百五十五件、一兆二千百八十九億円の指摘を受けたことは誠に遺憾であります。検査報告の指摘事項は様々なものでありますが、その内容に応じて一つ一つ着実に改善策を講じ、その後の予算や会計事務などにしっかりと反映させていくことが重要だと考えています。
 昨年十一月の検査報告を受け、私からも各大臣に対して、検査報告事項について確実に改善するよう指示を行い、平成二十九年度予算編成等においても適切に反映を行っているところであります。例えば、農業基盤整備促進事業等における助成単価について、実際の作業内容、現場条件などを踏まえた単価を導入する、独立行政法人住宅金融支援機構において出資金の規模を適正に見直し、不要と見込まれる出資金について国庫納付を行うこととするなど、適切に対応しています。
 決算結果や決算報告を次年度以降の予算編成や予算執行に反映させていくPDCAサイクルの取組は極めて重要と考えており、今後とも的確に反映するように努めてまいります。
○山本博司君 今後とも、それをしっかりと推進をお願いしたいと思います。
 次に、子育て世代への支援に関しまして伺いたいと思います。
 自民党、公明党による安倍連立政権となりましてから、経済対策により、経済・雇用環境は大幅に改善をしてまいりました。しかし、長いデフレ経済が続いたことによりまして、いまだにゆとりや豊かさを十分に実感できないという声も多く聞かれます。特に、子育て世代の家庭にとりまして、経済的な負担が重くのしかかり、生活への不安がいまだに解消されないという声も多く伺ってきているわけでございます。
 公明党は、一人一人が輝き、活躍できる社会の実現を目指し、成長戦略の着実な実行とともに、成長と分配の好循環を機能させることが重要であると考えております。最も支援が必要とされるこうした子育て世代に対しまして、働き方改革による長時間労働の是正や保育所の整備、また児童手当の拡充を始め教育費や医療費、こうした社会全体で様々な子育てに係る負担を軽減し、結婚や子育てに希望を見出せるように、抜本的な支援強化が必要でございます。
 また、子育て世代の支援には貧困の連鎖の解消も大きな役割を果たします。二月十五日の政府の経済財政諮問会議では、民間議員から、子育て世代に焦点を当てた所得の再分配や教育費の負担軽減、さらには長時間労働の削減の必要性について提言があったと伺っております。
 こうした経済の好循環という観点から、子育て世代への支援重視ということを打ち出すことが大変重要であると思います。政府として、これまで少子化対策に取り組んでこられておりますけれども、まず、この子育て世代への負担軽減に対する総理の認識を伺いたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 安倍政権が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり出していくことであります。成長によって果実を生み出し、そしてその果実を子育て世代、あるいは介護、社会保障にしっかりと充実をしていく、そして安定した社会基盤の上に更に成長していき、それがまた果実を生んでいくという、成長と分配の好循環であります。そして、それは広く国民に均てんされていく、多くの人たちがその成長を享受できるようになっていく、そういう社会をつくっていくわけであります。
 その中でも、今委員が御指摘になられたように、子育ての環境整備は重要な位置を占めています。希望どおりの人数の出産、子育ての実現に向け、若者の経済的な不安定さや長時間労働、仕事と子育ての両立の難しさ、教育費負担の重さなど、希望の実現を阻む壁を一つ一つ取り除くため、取組を進めてまいりました。
 平成二十九年度予算においても、保育人材の処遇改善として、保育士等について、おおむね経験三年以上で月額五千円、七年以上で月額四万円の加算を行うとともに、全ての保育士等を対象に二%の処遇改善を盛り込んでおります。こうした取組によって、保育士等の処遇は、政権交代後、合計で一〇%の改善が実現するわけであります。民主党政権時代には、プラスではなくて、実はマイナス一・二%、保育士の皆さんの処遇は下がっていたわけでありますから、それから比べれば、この四年間でプラス、劇的に一〇%増やすことができたと思っておりますが、まだまだ不十分であろうと、こう思っております。
 子育てをしながら仕事を続けることができる社会をつくり出すことは、子育て世帯の所得を支えることになるのはもちろんでありますが、日本経済の持続的成長にもつながっていくわけであります。成長と分配の好循環の実現に向けて、引き続き安倍内閣の取組を進めていく考えであります。
○山本博司君 ありがとうございます。
 公明党は、社会のための教育ではなく、教育のための社会を目指しております。平成二十九年予算編成の過程で、長年取り組んでまいりました給付型奨学金制度の導入を進め、経済的理由による進学を断念することのない社会に向けて大きな前進を遂げることができたと思います。この機会に、こうした子育て世代の教育費負担を軽減するために、幼児教育から大学などの高等教育まで、教育費の無償化の実現へ向け取り組む必要があると考えます。
 人格形成の基礎を培う幼児教育の無償化につきましては、連立政権が発足してから一貫して取り組んでおりまして、平成二十六年以降はこの無償化の範囲も段階的に拡大をしております。小中学校は義務教育として無償でございますし、高校等も実質的に無償化されました。今後は、大学などの高等教育の無償化につきまして、教育立国を築くという、こういう意味からも、将来的に無償にするのは大きな流れであると考えます。
 財源の確保は、これは大きな課題であると思いますけれども、未来への投資という、こういう観点から教育費の無償化に取り組むべきと思いますけれども、総理の認識を伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 公明党の皆様が教育費の無償化に向けての強力なエンジンとしてその役割を果たしてこられたことに対しまして、改めて敬意を表したいと思います。
 まさに教育投資は未来への先行投資であります。特に、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲があれば専修学校や大学にも進学できる、そういう日本をつくっていきたいと考えております。それは私の信念でもあります。
 このため、これまでも、幼児教育無償化の段階的推進、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大など、教育費負担の軽減に取り組んできたところであります。
 来年度からは、幼児教育の無償化や高校生への奨学給付金、授業料免除の拡充に加えまして、無利子奨学金について低所得者世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消することとしております。これは長い間の宿題でありましたが、やっと果たすことができると思います。そしてまた、卒業後の所得に応じて返還月額が変わる所得連動返還型奨学金制度を導入することとしております。つまり、なかなか給与が少ない段階では、これは返済が猶予されていく、給与が増えていく段階で返済が可能になっていくという、そういう仕組みであります。さらに、意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によって進学を断念することがないよう、給付型奨学金制度を、これ返済不要の給付型奨学金制度を新たに創設をいたします。
   〔理事松下新平君退席、委員長着席〕
 高等教育については、これら一連の施策を一体的に進めることにより、確実に子供の進学を後押しすることが可能となると考えています。
 いずれにせよ、優先順位を付けて一歩ずつ諸施策の充実を図っていくことが重要であり、今後とも、必要な財源を確保してしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○山本博司君 力強い答弁、本当にありがとうございます。
 教育の目的は子供の幸せにあると言われております。一人の子供をどこまでも大切にして、子供の可能性を開く教育、そして教育のための社会の実現を目指し、是非推進をしていただきたいと思います。
 ここで、医療費負担に関連してお伺いをしたいと思います。
 地域で安心して子育てするには、子供の医療費無料化も大きな視点でございます。公明党が中心となって各地方議会で推進してきたこともございまして、子供の医療費無料化は大きく今前進をしております。
 ところが、地方自治体が子供の医療費を無料化するなどの窓口負担で独自に助成をしていることに対しまして、いわゆるペナルティーという形で国が国民健康保険の補助金を減額措置をしているという、こういう現状がございます。これはまさしく少子化対策に逆行するものと言わざるを得ません。そのため、公明党はこれまでにも政府に対して強く見直しを求めてまいりました。
 この補助金減額調整措置、早急に見直すべきと思いますけれども、方針を大臣に御報告いただきたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今御指摘をいただきました子供の医療費助成に係るいわゆる国保の減額調整措置、これにつきましては、かねてより公明党の皆様方から繰り返し御指摘をいただいてまいりました。
 それを踏まえまして、昨年六月二日に閣議決定されたニッポン一億総活躍プランにおいて、子どもの医療制度の在り方等に関する検討会の取りまとめを踏まえ、見直しを含め検討し、年末までに結論を出すと、こういうふうになっていたわけでありましたが、これを受けて、関係審議会における議論なども踏まえまして検討を行った結果、全ての市町村で未就学児までは何らかの助成措置をやっているということでございますので、そういう実態を踏まえて、自治体の少子化対策の取組を支援する観点から、平成三十年度より、未就学児までを対象とする医療費助成については減額調整措置を行わないということといたしまして、昨年末に各都道府県宛てに通知を行ったところでございます。
○山本博司君 これは、対象を未就学児までということで、来年の四月から実施をされるということで、これは大変大きな一歩でございます。この見直しを行った場合に生じた財源、これを各地方自治体が他の少子化対策に確実に充てられるように、そのことも含めて推進をお願いをしたいと思います。
 こうした少子化対策を始め社会保障の充実といいますのは極めて重要でございまして、今後も財源の確保が求められている次第でございます。
 平成二十七年から開始されました子ども・子育て支援新制度、最終的には一兆円超の財源が必要とされておりまして、そのうち七千億円が消費税増収分から充てるとされております。平成二十九年度の本予算では、この制度における保育サービス量の拡大に当たりまして六千九百五十八億円が計上されておりまして、当初予定されておりました消費税増収分とほぼ同額が計上をされる形になっております。今後も、増税の延期等によりまして子育て世帯に深刻な影響が出ることのないように、安定的な財源の確保に取り組んでいただきたいと思います。
 安倍政権におきましては、財政健全化目標として、平成二十七年度までに対GDP比の赤字を平成二十二年度比半減、また平成三十二年度までには黒字化するという、こういう目標を立てております。そこで、社会保障の財源の確保と財政健全化目標同時達成に向けてどのように取り組むのか、総理の所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 社会保障制度を持続可能なものとして次世代に引き継ぐということが極めて大事な安倍内閣としての責務だと思っておりますが、世代間、そして世代内の負担の公平を図るために、給付と負担の在り方につきましては、これは不断の見直しをしないといけないということで、社会保障改革を着実に進めていく、そして同時に、現役世代、子育て世代への支援を強化をしていくと、こういうことだと思います。
 一方で、財政健全化目標の達成も重要でございますので、こうした考えの下で、来年度予算につきましては、医療や介護などの給付と負担の在り方について一定の見直しを行いつつ、社会保障・税一体改革やニッポン一億総活躍プランに掲げた充実策を取っていくということを考えております。
 具体的には、社会保障の充実について、安定財源を確保しながら、保育、介護の受皿整備、あるいは年金の受給資格期間の短縮などを実施をすることといたしましたほかに、保育士、介護人材などの処遇改善を実施をしていくこととなっておりまして、着実な取組を続けてまいりたいというふうに思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。是非とも推進をお願いしたいと思います。
 次に、発達障害のある方への支援ということでお伺いをしたいと思います。(資料提示)
 今パネルにありますように、発達障害といいますのは、自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、LDと呼ばれる学習障害、ADHDと呼ばれる注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害でございまして、その症状が通常低年齢で発生すると定義されておりますけれども、実際の症状には、言葉の発達に遅れがあったり、集中力とか注意力が続かなかったり、また、読み書き、計算、人とのコミュニケーションが極端に苦手だったりと多種多様でございます。こうした発達障害のある方にそれぞれの特性に応じた支援を強化する改正発達障害者支援法が昨年の五月に成立をいたしました。
 私も、発達障害の支援を考える議員連盟のワーキングチームの実務者の一人として、この法改正に一貫して取り組んでまいりました。当初の支援法成立から十年が経過をいたしまして、発達障害という言葉は大分国民の間には浸透してまいりましたけれども、その中身の理解というのはまだまだでございます。
 そうした中、こちらのパネルにありますように、これは、四月二日は国連が定めた世界自閉症啓発デーとして、世界中、日本各地で青色に染める啓発イベントが開催をされるわけでございます。東京タワーもブルーにライトアップされます。このイベントに安倍総理も出席をされたことがございます。四月二日から八日までが発達障害啓発週間ということでございますけれども、こういう啓発活動に取り組まれておりますけれども、まだまだ細やかな支援というのは十分とは言えません。
 今回の法改正では、障害者基本法の理念にのっとり、乳幼児期から高齢期まで、ライフステージに応じまして切れ目のない支援が盛り込まれております。また、教育、それから福祉、医療、労働、こういう縦割り行政を壁を越えてスムーズに連携が進むよう期待されるわけでございますけれども、そこでまず総理に、この発達障害者支援法の改正の受け止め、どのように思っていらっしゃるんでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 昨年の発達障害者支援法の改正は、法制定から約十年間の社会状況の変化を踏まえ、山本議員も中心メンバーである超党派の議員連盟で精力的に議論が行われた結果、実現したものと承知をしています。
 今回の改正は、医療、教育、労働など関係機関が相互に連携し、一人一人の発達障害者への切れ目のない支援、そして保護者、家族への支援を身近な地域で受けられるようにするものでありまして、障害者本人、家族の生活に資するものと考えています。
 政府としては、今回の法改正に沿った取組を重ねることで、発達障害者の方々がその能力や個性を発揮できる社会の実現に向けて、支援の一層の充実を図っていきたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 そうした中、総務省行政評価局が一月二十日に文部科学省とそれから厚生労働省に改善を勧告をしております。その勧告の概要、大臣、御報告をお願いしたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 総務省の行政評価局が行いました調査でございますけれども、発達障害者支援法施行から約十年という機会を捉えまして、初めて発達障害者支援の実態を調査したものでございます。
 調査の結果、乳幼児健診において発達障害が疑われる児童を見逃しているおそれがあるということ、それから、乳幼児健診の結果について市町村から保育所及び幼稚園に積極的に引き継ぐ意識というのが十分でない事例、専門的医療機関において発達障害が疑われる児童生徒の初診待ちが長期化している事例などが明らかになりました。
 そこで、今年の一月二十日に文部科学大臣及び厚生労働大臣に対して勧告をさせていただいたのですが、市町村における乳幼児健診の取組実態を把握して発達障害が疑われる児童の早期発見に資する有効な措置を講ずること、学校などにおける適切な支援と進学先への情報の引継ぎを促進すること、専門的医療機関の確保のための一層の取組を行うことなどの内容でございます。
 しっかりとこの勧告を実行していただいて、関係者による支援の充実を図っていただきたいと考えております。
○山本博司君 早期発見、早期療育の重要性や連携の必要性、そして切れ目のない支援ということが大事だということが示されていると思います。
 そこで、その勧告にも指摘されている個々の課題について伺いたいと思います。
 まず、早期発見の体制について伺います。
 現行の乳幼児健康診査は、母子保健法の規定によりまして、対象年齢が零歳児、一歳六か月児、また三歳児、こうなっておりまして、その後少し空きまして就学時健診となっております。
 この小学校入学前の就学時健診は、短時間の健診では的確に判断できないとか担当する医師が発達障害の専門医ではないなどとの理由から、早期発見につながる発達検査とか行動観察を導入していないところがたくさんございますので、発達障害が見逃されている可能性もあります。そのため、社会的なつながりが増えてくるちょうど五歳、集団的な行動をする五歳の頃に健診を行う自治体が増えておりまして、発達障害の早期発見に効果が出ている事例も多く見られておりまして、この五歳児健診の法定化も求める声も上がっております。
 また、早期療育も大きな課題を抱えております。
 発達障害に関する診断、診療を行っておる医療機関におきまして、申込みから初診までに十か月間掛かっているという事例も実際あるということでございまして、適切な対応が取れずに問題となっております。申込者数の増加や専門医の不足が要因でございまして、特に専門医の養成は急務でございます。
 そうした状況に対しまして、高知県では四年前からこうした発達障害の専門医の育成に着手をして、平成二十八年度からは医師以外の専門人材の研修も始めております。
 また、山口県では、独自に指導を行っている医師にもお会いさせていただきました。年間三千人を超える発達障害の診療を行っているお医者さんでございまして、年三回から四回の勉強会で発達障害を診る小児科医の医師の育成もされておられました。そのお医者さんいわく、一人やっぱり一時間とか一時間半診察時間が掛かりますから、手間と診察時間が掛かるということで、診療報酬が安いために小児科医は発達障害の診療を避ける傾向にあるんだということも御意見を伺った次第でございます。
 いずれにせよ、こうした発達障害の早期発見とそして健診、また早期療育の体制整備、これが必要であると思いますけれども、塩崎厚労大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 発達障害を見逃すことなく早期に発見をして支援をしていくと、こういう観点からの御質問をいただきました。
 一歳六か月健診や三歳児健診におきまして、精神発達の状況とか言語障害の有無などの健診項目を盛り込むように、今私どもから通知で示しているところでございます。また、市町村が任意に、今お話がございましたけど、任意に実施する健診、例えば五歳児健診などでも項目として盛り込まれている例もあるというふうに承知をしておりますので、私どもとしてもよく検討してまいりたいと思っております。
 このことに加えて、保護者の理解を得て乳幼児健診の結果が就学時の健康診断に確実に引き継がれるということが大事でありますので、その連携も必要と考えておりまして、このためにどのような対応が必要か、そしてできるのかということを文科省ともよく議論をしてまいりたいと思っております。
 それから、発達障害のある方が早期に適切な療育を受けるということについての重要性についてもお触れをいただきましたが、発達障害の診療ができる専門の医師などを育成するとともに、かかりつけ医等がこの発達障害に対応できるということが、そういうような裾野を広げるということも同時に大事だと思っております。
 厚労省では、今、地域で指導的な立場にある医師などを対象にいたしまして、国立精神・神経医療研究センター、ここで専門的な研修を実施をいたしております。同時に、都道府県等が発達障害に対応できるかかりつけ医などを育成する場合に国から費用の二分の一を補助をしているわけでございまして、今後とも、このような取組を通して、発達障害の早期発見、早期療育に努めてまいりたいというふうに考えております。
○山本博司君 是非とも、大事な視点でございます。そしてさらに、家族支援ということも大変大事でございますので、あわせまして、ペアレントトレーニングとかペアレントプログラムという制度がございますので、推進をお願いしたいと思います。
 次に、教育の課題に関して伺いたいと思います。
 文科省の平成二十四年の調査によりますと、公立小中学校の通常学校に通う児童生徒の六・五%に発達障害の可能性があると言われております。今、小中学校に一千万人の方が通っていらっしゃいますから、六・五%といいますと六十五万人でございます。これに特別支援学校などを加えますと、およそ十人に一人の割合で発達障害の人がいると考えられます。
 障害のある子供たちに早期から継続的に適切な教育や支援を提供して能力を伸ばせるようにするとともに、保護者の不安を解消して安心して子育てができる環境整備が求められております。特に、特別支援教育の担当教員だけでなく、全ての教職員に対する発達障害に関する専門性の向上が重要でございます。
 平成二十九年度の予算に関しまして、小中学校における通級指導担当職員の基礎定数化が実現する運びとなりました。このパネルは通級での児童生徒数の推移でございますけれども、毎年増えておりまして、平成二十七年は九万人を突破しております。そうした中で、教員拡充の背景は、発達障害がある子供が急増して、希望しても教員不足で通級指導を受けられない待機児童の方々が一万人にも上る実態がございます。
 公明党は、こうした教員確保におきまして基礎定数の導入ということを提案し、平成二十九年度の予算編成の議論では、一度は見送られる方向に傾きましたけれども、粘り強く訴えた結果、今、麻生大臣がいらっしゃいますけれども、実現の道筋を付けることができました。ありがとうございました。関係者からは喜びの声が上がっております。
 こうしたことを始め、ICTの利活用であるとか特別支援教育コーディネーターへの支援であるとか、これは特別支援教育の充実が大変必要であると思いますけれども、文科大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(松野博一君) 特別支援教育の充実に関しましては、まず、山本議員を始め御党の大変な御尽力もあり、障害に応じた特別の指導、いわゆる通級指導の担当教員の基礎定数化を含む義務標準法の改正法が昨日成立をしたところであります。
 また、ICTの利活用も有効な施策であると考えており、文部科学省としては、障害のある児童生徒が入手、使用しやすい支援機器等の教材開発を支援するとともに、児童生徒の障害の特性に応じた効果的なICTの利活用について、実証研究等を通じて普及をしてまいります。
 さらに、特別支援教育におけるコーディネーターについては、当該教員が学校の中で組織的に機能するよう努めることを各教育委員会等に求めており、今後とも、コーディネーターとしての業務を中心に行えるよう促してまいります。
 なお、障害のある児童生徒の支援内容等の引継ぎが適切に行われるよう、次期学習指導要領の改訂において、特別支援学級に在籍する児童生徒及び通級による指導を受ける児童生徒について、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成を義務付ける予定としております。
 文部科学省としては、これらの取組を通じて引き続き特別支援教育の充実に取り組んでまいります。
○山本博司君 大変大事でございまして、一人一人の個人の教育の指導計画を、やはりしっかり情報を共有しながら進めていくことが大事でございます。また、これは福祉とそれから教育の連携も大事でございますので、しっかりお願いをしたいと思います。
 また、発達障害の障害を特性と捉えて社会に多様な受皿を整備していくことが重要でございまして、既に様々な形で取組が進められております。
 東京大学の先端科学技術研究センターでは、突出した能力を持ちながらも学校になじめない小中学生に学びの場を提供する異才発掘プロジェクト、ROCKETを実施をしております。ここでは、未来のエジソンを育てようということで、将来の日本を牽引する人材育成を目指し、各分野のトップランナーの講演やワークショップを通じて、様々な子供たちの能力を伸ばして可能性を開花させることができるように今取り組んでおられます。
 一億総活躍の加藤大臣はこのROCKETプロジェクトを視察されたということでございますけれども、一人一人の状況に応じてその力を最大限伸ばすという支援が大変重要であります。加藤大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(加藤勝信君) 今月二十三日に、今の異才発掘プロジェクト、ROCKETを視察に行かせていただきました。このプロジェクトは、二〇一四年から始まったということで、今委員御指摘のような目的を持ってやられております。ユニークな子供たちが自分らしさを発揮できる場をつくることでユニークな人材が育つ社会的な素地を生むという、まさに学びの多様性を切り開く挑戦というふうに思いますし、毎年五百人を超える応募者もあるということであります。
 また、こうした先端的な研究に取り組んでいる研究者の中にも、かつては不登校だったと、こういう方もいらっしゃいます。そうやって自らの力で切り開ける方ばかりではなく、障害を乗り越えられる方ばかりではなくて、やはり障害がどうしても乗り越えられない、そうしたことに関して、また政府としてしっかりとした支援をしていく必要があるというふうに思います。
 政府においても、誰もが個性を尊重され、家庭で、地域で、職場で将来の夢や希望に向けて取り組める、まさに多様性が認められる一億総活躍社会の実現を目指しているわけでありますし、先般六月の閣議決定のプランでは、発達障害など社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供、若者等の就労、自立に向けて、また、個々の人の特性に応じた教育、中退からの再チャレンジ、就労などについて関係機関が連携して伴走型の支援をしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○山本博司君 大変大事でございますので、そうした推進をお願いをしたいと思います。
 さらに、就労の課題について伺いたいと思います。
 発達障害は子供の問題とみなされがちでございますけれども、社会に出てからも継続した支援というのは欠かすことができません。今回の法改正におきましては、就労支援におきましても国が主体となって就労定着支援を行うことということを法律に明記いたしました。また、発達障害者の支援地域協議会、これを都道府県、政令市に設置をして、そして住民が幅広く相談できるような支援体制の強化を図ることも盛り込んでおります。
 昨年、障害者差別解消法が施行されまして、職場においてもこうした合理的配慮が求められることになりました。相談体制を整えるなどのこうした職場環境の整備が重要でございますけれども、こうした発達障害者の方の就労支援に関しまして、厚労大臣の認識をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) このところ、発達障害のある方々から新規の求職申込件数がハローワークに大変増えております。就労支援に対するニーズがこうやって高まっているわけでありますので、教育現場、学校とよく連携をしながら就職支援というのをやらなきゃいけないというふうに考えておりまして、厚労省として、まず特別支援学校等の関係機関とチームを組んで、就職から職場定着まで一貫した支援を行うチーム支援というのを実施をしております。それから、普通高校や一般の大学においても、発達障害のあります学生さんが存在をすると考えられるために、全国のハローワークや新卒応援ハローワークなどの場において、個別相談や本人の希望を踏まえた求人開拓など、担当者制によるきめ細かな就職支援、これをやっているわけであります。
 また、事業主に対しても、昨年四月から、障害のある方の募集、採用等に関しまして、今御指摘をいただいた合理的配慮の提供義務、これを課されているわけでありますが、このことについては、発達障害の特性というのがありますので、これに配慮をした事例を掲載をいたしました事例集、これを周知をするなどによって事業主に対してその理解を促進をして、発達障害のある方の職場定着というものを図っているわけでございます。
 今後とも、発達障害のある方の特性に応じたきめ細かな支援を実施をいたすとともに、職場の方々の理解の促進を図って、雇用や職場定着を推進してまいりたいというふうに考えております。
○山本博司君 あとの質問は午後にしたいと思います。
○委員長(岡田広君) 午後三時三十分に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十五分休憩
     ─────・─────
   午後三時三十分開会
○委員長(岡田広君) ただいまから決算委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、足立敏之君、小野田紀美さん及び新妻秀規君が委員を辞任され、その補欠としてそのだ修光君、藤井基之君及び里見隆治君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(岡田広君) 休憩前に引き続き、平成二十七年度決算外二件を議題とし、全般質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。午前中に引き続き、質問をいたします。
 発達障害の方とも大きく関係をしております引きこもりに関しまして伺います。
 内閣府は、昨年九月、十五歳から三十九歳の引きこもりが約五十四万人に上るとの推計結果を公表いたしましたが、四十歳以上の増加しているとされる大人の引きこもりの実態は不明でありました。
 今回、KHJ全国ひきこもり家族会連合会が初めて四十歳以上の引きこもりに関して家族らから聞き取り調査を実施いたしました。その調査によりますと、引きこもりの平均期間は二十二年間に及び、一度は行政や病院の支援を受けたにもかかわらず、その後に途絶えていたケースが半数に上っております。生活時間が昼夜逆転したり、家庭内暴力などの行動が多く見られたとのことでございます。
 この引きこもりは、若者だけの問題ではなくなっております。八〇五〇問題とも言われておりまして、八十歳の親が五十歳の子供の面倒を見る事例も多くなっております。
 私も議員となってからこの十年間、引きこもり支援について取り組んでまいりました。長期化すればするほど孤立は深刻になり、社会復帰が困難となります。安倍政権では、一度失敗してもチャレンジできる社会を目指しておりまして、大人の引きこもり支援は大変大事でございます。
 こうした四十歳以上の大人の引きこもりの実態調査も含め、支援を拡充すべきと考えますが、加藤大臣、塩崎厚労大臣の見解を伺います。
○国務大臣(加藤勝信君) 委員御指摘のように、内閣府においては、子ども・若者育成支援推進法に基づき、引きこもり状態にある若者の状況を把握するため、平成二十七年に十五歳から三十九歳の方々の調査をさせていただきました。そこでも確かに長期の引きこもりが問題として指摘されておりますし、また、我々が目指す一億総活躍社会の実現を図っていく観点からも、四十歳以上の引きこもりの状態にある方々の実態把握は重要だというふうに認識をしておりまして、次回調査に向けて、関係省庁や引きこもり状態について知見のある有識者などと十分に連携をさせていただいて、四十歳以上の方々も対象に加えるべく検討してまいりたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 四十歳以上の方を含めた引きこもり状態の方々に対しましては、都道府県等に設置をされております専門相談窓口でございますひきこもり地域支援センター、ここでの相談支援、それから生活困窮者自立支援制度における相談窓口での御本人の状況に応じた包括的な支援、そして、すぐに就労が困難な方々への就労準備の支援などを行っておりますが、現在、国会にも提出をして、先ほど審議入りをいたしました地域包括ケアシステム強化法案、この中においても包括的に支援をする体制を整備しているというところでございまして、この中で、これまでの支援に加えて、大人も含む引きこもり等の社会的孤立の状態に置かれている方々を早期に発見をし、確実に支援することができる地域づくりを目指してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○山本博司君 是非とも、大事な問題でございますので、しっかりと調査と、それから生活困窮者支援法の枠組みでございますけれども、任意事業という形でなかなかまだまだ支援が不足しておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 以上で質問を終わります。