参議院 環境委員会 第4号 平成31年3月20日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、国立公園満喫プロジェクトということに関しまして質問をしていきたいと思います。
 我が国では、観光先進国を目指す政府の戦略といたしまして、二〇二〇年には訪日外国人の旅行者数四千万人ということを目指しております。その一つとして、この国立公園を、世界水準のナショナルパークということを打ち出している次第でございます。国立公園を所管する環境省では、二〇一六年の五月にこの国立公園満喫プロジェクト、これが立ち上がりまして、訪日外国人の国立公園の利用者数を二〇二〇年までに一千万人、この目標を打ち出している次第でございます。
 国立公園は我が国の豊かな自然が凝縮された観光資源でございまして、宿泊施設などの滞在環境の改善であるとかアクティビティーの充実などによって、東京とか京都とか、こういうゴールデンルートのみならず地方への誘客を進めるということでは、全国にインバウンド効果を波及させるためには大変魅力的なコンテンツであると考える次第でございます。我が国を訪れる四人に一人国立公園を利用するというこの目標は大変意欲的な目標でございまして、その実現に向けてしっかり取り組んでいただきたいと思う次第でございます。
 そこで、スタートして三年近くが経過をして一定の成果が出ているかと思いますけれども、この国立公園満喫プロジェクトに関する取組に関しまして御報告をお願いしたいと思います。
○政府参考人(正田寛君) お答えいたします。
 環境省の国立公園満喫プロジェクトにつきましては、二〇一六年に選定いたしました八つの国立公園におきまして先行的、集中的に取組を進めており、例えば、エコツアー等の体験型コンテンツの充実でございますとか、ビジターセンター等の拠点施設の快適な利用環境の創出、案内板等の多言語化、海外へのプロモーションなどを行っているところでございます。さらに、二〇一七年より、訪日外国人利用者数の多い公園など十地域におきまして、ソフト事業を展開いたします展開事業というものを実施しているところでございます。
 その成果の一つと言ってよろしいんでしょうか、今年度、実際に国立公園を訪れていただいた訪日外国人を対象に、国立公園の滞在に係る評価につきましてアンケートを実施したところでございます。その結果でございますが、滞在全体につきまして、大変満足あるいは満足と御回答いただいた方が約八七%という結果でございました。
 二〇一九年度からは、新たに国際観光旅客税も活用いたしまして、これまでの取組の成果や知見を更に広く展開し、取組の充実を図ってまいる考えでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 このプロジェクトの推進、二〇一九年度予算、この予算に関しましては、昨年度から大幅増額の百六十二億五千三百万円、これが計上されております。今お話がありましたとおり、本年一月からスタートしました国際観光旅客税、これも約五十億円が入っているということで、この事業の急速な進展、これが期待をされているところでございます。
 そこで、この国際観光旅客税、どのように活用されるのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(正田寛君) 環境省におきましては、今委員から御指摘ございましたとおり、国際観光旅客税のうち五十億円余を活用いたしまして、観光ビジョンに掲げます二〇二〇年四千万人、八兆円と、この目標達成に貢献するため、国立公園の美しい自然を活用しました観光資源の整備等による外国人旅行者の満足度向上を図り、国立公園の磨き上げとインバウンド向けの新たなプロモーションを推進してまいります。
 具体的に申し上げますと、利用拠点の滞在環境の上質化でございますとか、多言語解説の整備充実、野生動物観光のコンテンツづくりの推進、国立公園内ビジターセンターのインバウンド対応機能強化、こういったことによりまして国立公園の磨き上げを進めますほか、JNTO、日本政府観光局のグローバルサイトと連携いたしまして、国立公園一括情報サイトの構築でございますとか大変訪日外国人の利用者の多い新宿御苑におきまして、国立公園の情報発信機能強化によりまして、インバウンドに向けた新たなプロモーションを進めることとしております。
 これらの施策によりまして、国立公園を訪日外国人の多様なニーズにも対応した楽しい利用空間へと変革し、外国人旅行者の満足度向上を図ってまいります。
○山本博司君 是非とも、この旅客税の活用を積極的にお願いをしたいと思います。
 次に、国立公園内の開発行為ということでお聞きをしたいと思います。
 今回のプロジェクトでは、高付加価値で多様な宿泊体験を提供するために上質な宿泊施設の誘致に民間事業者を活用する、こういう内容も含まれております。地域をリニューアルをして統一したデザインの中で外国人観光客にも対応した宿泊施設ができるということは、これは地域の魅力を高めるためにはとても大事なことであると私は思います。
 その一方で、国立公園の最大の魅力、これは自然そのものでございますので、我が国を代表する優れた自然を後世に残すために、国立公園、これは指定をされているわけでございます。自然公園法に基づいておのずと一定のルール、規制の下で開発行為が行われるべきでございまして、自然が損なわれることのないように整備をすべきものと考えます。
 一部では、国内外の富裕層向けの上質なホテルとか旅館の誘致、これを推進するために規制緩和するとも受け取れかねない、こういう面も出ているというふうに聞いておりますけれども、この自然保護と利用のバランス、大変重要でございます。この国立公園内の開発行為、どのように規制をしていくのか、確認をしたいと思います。
○国務大臣(原田義昭君) 自然公園法に基づく理念というのは、まずは、自然景観の保護と併せて、それを利用する、また利用者の受入れ環境をできるだけ整備するという大きな目的があります。
 多少繰り返しになりますけれども、満喫プロジェクトというのは、もうとりわけ自然環境を保全をしながら利用関係者の受入れ環境を更に良くするという観点から、八つの公園を指定して整備をしておるところでございます。
 今お申し越しの、そういう意味でその両者をいかに調整を図るかというのは実は大事なことでございまして、今、規制緩和の動きがあるんではないかということは必ずしもつまびらかじゃございませんけれども、いずれにしましても、私どもとしては、その二つの大なる目標をしっかり調整しながら、行き過ぎが起こらないように、また両方がバランス取れるように努力していきたいと、こう思っております。
○山本博司君 是非とも、この自然保護と開発のバランスということを十分注意をしていただきながら進めていただきたいと思います。
 地域のリニューアルという点で、廃屋の撤去に関して伺います。
 全国の観光地では、廃業した宿泊施設の窓が割れたり、また倒壊寸前といった景観を悪化させているケース、これも各地で発生をしております。こうした廃屋を撤去するためには、国立公園内の指定された限られた地域であれば撤去しやすい何らかの推進のための支援策、これも検討できるかと思います。
 所有者の理解を求めて民間事業者が実施することが前提になっているわけでございますけれども、こうした国立公園の魅力を向上させるためにも、撤去を推進するのであれば、各地方自治体の負担、これを極力少なくするような国の支援策、これが必要ではないかと思いますけれども、見解をお示しいただきたいと思います。
○政府参考人(正田寛君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、国立公園におきます廃屋による自然風景の阻害等は大きな課題と考えてございます。平成三十一年度からは、新たに国際観光旅客税を活用いたしまして、利用拠点の滞在環境の上質化の一つの柱といたしまして対策を進めることとしております。
 具体的に申し上げますと、国立公園の利用拠点におきまして、自然環境と文化資産が相まって形成される地域の魅力を外国人旅行者にもより感じてもらえるようにするため、地元自治体、環境省、民間始め地域の関係者が協議いたしまして利用拠点再生計画を作成し、その計画に基づき各主体が連携して滞在環境の上質化を進めていこうというものでございます。
 この計画の策定でございますとか廃墟の撤去費用に対する支援を予定をしておりまして、これにつきましては、事業実施主体といたしまして、地方自治体でございますとか民間事業者も予定しておるところでございます。
 また、廃屋の撤去につきましては、先ほど申し上げました利用拠点再生計画に沿いまして、跡地で民間事業者が新たに事業を実施すると、こういうことを前提としてございまして、撤去後、新たな地域の活性化に資するものを対象に支援を行ってまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。こうした支援、大変大事でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、具体的な地元の事例ということで伺いたいと思います。
 瀬戸内海、これは、一九三四年に我が国で初めて指定されました歴史のある国立公園でございます。この中に、屋島という地域、これは香川県の高松でございますけれども、自然が豊かで多島海景観の眺望が大変優れているほか、平家物語に出てきます源平の合戦、これでも有名でございまして、地元の高松市だけでなく、地域が誇れる貴重な地域資源でもございます。
 しかし一方で、この屋島への観光客数といいますのは、瀬戸大橋の開通で、ピークが一九七二年の年間二百四十六万人、これがピークでございまして、その後は長期低落傾向にございまして、最近では五十万人台で推移をしております。また、屋島山上におきましては、先ほどありましたように、施設の老朽化が進み、建物が廃屋として放置されるという、こういう問題も顕在化するとともに、二〇〇四年には、山上のアクセス手段として重要な役割を担っておりました屋島登山ケーブル、これが休止をされ、再開することなく廃止に至りました。
 しかしながら、最近では、日本書紀にも記されております古代山城の一つである屋嶋城跡が二〇〇二年に確認をされまして、これまで景観を阻害しておりました廃屋の撤去も進んで、大きくこの屋島再生に向けて進んでおります。こうした屋島が有する文化財保存、活用を核とした屋島全体の活性化が強く求められているわけでございます。
 高松市では、二〇一七年から、国土交通省所管の景観まちづくり刷新支援事業、これを活用しながら屋島を含む地域の活性化に取り組んでおりまして、今まで五十万人の観光客数を七十万人に増やす計画を立てております。また、今年は瀬戸内国際芸術祭が開催をされますので、インバウンドの拡大も期待をされております。
 そこで、国土交通省にお聞きをいたしますけれども、この高松市における景観まちづくり刷新支援事業、この取組状況を御報告いただきたいと思います。
○政府参考人(長井俊彦君) お答えいたします。
 高松市では、風光明媚な瀬戸内海国立公園内にあり、国の史跡、天然記念物にも指定されている屋島地区等の景観を刷新するため、これまでに、屋島山上の駐車場でありますとか山上に至る景観配慮型道路の整備等を実施しているところでございます。この結果、屋島地区の平成三十年の入り込み客数につきましては約四十九万人となりまして、平成二十五年から約四万人の増加ということでございます。
 また、今お話もありましたが、民間による、運営継続が危ぶまれておりました山上水族館でありますとか周辺の観光関連施設のリニューアルが計画されるなど、民間投資も誘発しているところでございます。
 今後、山上拠点施設でありますとか登山道の整備等が予定されているところでありますが、これらの整備と相まって民間投資が更に誘発され、屋島地区全体の景観が刷新されまして観光客数が増加していくことが期待されているところでございます。
○山本博司君 大変成果が上がっていると思います。これ、屋島以外にも、地域的に玉藻公園とか栗林公園も含めて整備をしていただいている状況だというふうに聞いております。
 この事業、現在、全国十か所で実施をされているということですけれども、来年度で終了の事業ということに聞いております。この三年間で十か所で得られた大変大きな効果というのを、この二〇一九年の事業で終わらせることなく、それぞれの事業を地域で、その後のこの十か所での進化も進めていくということも含めてこの事業を全国的にも展開すべきではないかと考えます。
 その意味で、この景観まちづくり刷新支援事業、二〇二〇年以降も継続、拡充する必要があると考えますけれども、国交省の見解を伺います。
○政府参考人(長井俊彦君) お答えいたします。
 景観まちづくり刷新事業につきましては、今御答弁申し上げましたように、高松市を始めといたしまして十地区において着実に成果が上がりつつあります。二〇二〇年度以降の事業の継続、拡充につきましては、そうしたこれまでの成果等を踏まえながら今後検討してまいりたいと考えているところでございます。
○山本博司君 是非とも、これから概算を含めて出てくると思いますけれども、継続、拡充をするということで前向きに御検討をお願いをしたいと思います。
 続きまして、国立公園の魅力ということで、この屋島に関しまして、国立公園内に位置するために、高松市が同じく二〇一七年度から、環境省の事業でございますけれども、今までお話ししてきました国立公園満喫プロジェクトの展開事業の十地区に屋島も採択されております。そして、屋島の絶景プロモーション事業、これが実施をされておりますけれども、この二年間の成果について御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(正田寛君) お答えいたします。
 御指摘ございましたように、国立公園満喫プロジェクト展開事業といたしまして、八公園十地域で実施しているところでございますが、この一つが高松市屋島におきます屋島の絶景プロモーション事業でございます。
 高松市におきましては、この展開事業の中で、瀬戸内海国立公園にある屋島を中心に、周辺の観光資源と併せて瀬戸内海の景観を楽しんでいただこうと、こういう目的で、この二年間で、モニターツアーの実施によります外国人目線での観光資源の発掘、プロモーション動画の作成、これをSNSや動画サイトでも発信していくこと、パンフレットの多言語化等のプロモーション事業を実施してきたところでございます。
 今後、作成されました動画の活用や視聴したユーザーの分析等により、誘客に向けたプロモーションを更に強化する予定と承知しております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 推進をしていただいておりますけれども、国立公園のこうした魅力を伝えて利用を促進するためには、地方自治体、この連携も大変重要であると思います。また、こうした動画のプロモーションの作成、様々な受入れ環境を整備しても、海外に対して情報発信がうまくできていなくては観光客の増加にもつながらないと思います。
 そこで、大臣にお聞きしますけれども、本年はラグビーのワールドカップもございますし、明年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックも開催をされます。世界中が注目する今こそ、こうした情報発信を強化すべきと考えますけれども、この国立公園の魅力、今後どのように発信をしていくのか、お聞きをしたいと思います。
○国務大臣(原田義昭君) 各国立公園において、地域と連携し、これまでツアーコンテンツの発掘、磨き上げ等、受入れ環境の整備を進めてきたところでございます。
 こうした地域の魅力やコンテンツの発信のため、本年二月に、JNTO、日本政府観光局のグローバルサイトの中に、国立公園の魅力やモデルコース、体験できるアクティビティーの情報を提供するウエブサイトを構築したところでございます。来年度におきましては、本ウエブサイトをアクティビティーの予約まで一気通貫で行うことが可能な利便性の高いものとする予定でございます。
 さらに、SNSや動画等を活用して、閲覧者の興味、関心等に応じた情報発信を行い、このウエブサイトへ誘導するなど、JNTOとの連携の下、プロモーションを強化し、国立公園への訪日外国人の誘客を促進してまいりたい、こう思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。是非、こうした情報発信、強力にお願いをしたいと思います。
 次に、ジオパークに関してお聞きをしたいと思います。
 ジオパークとは、ジオというのは地球、大地でございますし、パークは公園、これを組み合わせた言葉でございます。地球の活動が生み出した地形や地質に学び親しむとともに、その地域の歴史や暮らし、食べ物に触れることで持続可能な社会の実現に寄与する、この取組でございます。SDGsの理念にもつながる取組でございまして、今、日本ジオパークには四十四地域、そのうち九地域がユネスコの世界ジオパークにも認定をされております。このうち、ジオパークにつきましては二十六か所の地域が国立公園と重複しておりまして、観光資源としても大きなポテンシャルを持っていると思います。
 地元の中国地方にございます山陰海岸のジオパークでは、京都府、兵庫県、鳥取県の一府二県三市三町、これにまたがっておりまして、東西約百二十キロメートルにわたる広大な地域でございます。国立公園にも指定をされております。こうした美しい砂浜や柱状節理と呼ばれる岩の柱、また鳥取砂丘も含まれておりまして、地形が形成される過程を知ることができる貴重な地域になっております。
 また、この地域では、ボランティアの方々、地元の方がガイドをしたり海岸の清掃活動に励むということも含めまして、地域の活性化にも貢献をされております。
 こうした魅力あふれる自然を活用して、エコツーリズム、また観光教育、これを充実させるということはジオパークと国立公園との連携が重要であると考えますけれども、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(原田義昭君) ジオパークの大事さ、重要さについては、議員がただいま詳しく説明いただいたところであります。まさに国立公園とジオパークを、とりわけ重複する地域においては更に力を入れなきゃいけない、こういうふうに認識しているところであります。
 ジオパークにおける重要な地形、地質の保全や環境教育、観光等への活用のための計画策定への支援、国立公園とジオパークの連携した取組に関するシンポジウムの開催等を進めておるところでございます。
○山本博司君 是非このジオパーク、私も週末、島根県の隠岐諸島に参る次第でございますけれども、世界ジオパークに認定されておりますし、また大山隠岐国立公園でもございます。その意味では、この取組というのは、連携した取組、大変大事でございますので、大臣、推進をよろしくお願いしたいと思います。
 最後の質問になりますけれども、この訪日外国人の国立公園利用者、二〇二〇年までに一千万人という目標、現在六百万人まで来られたということでございますけれども、相当意欲的な目標であると思います。
 今後も、国土交通省や観光庁だけでなくて外務省や経産省、密接に連携しながら、環境省の立場を主張しながら進めていかれると思います。その意味では大臣のリーダーシップが求められると思いますけれども、この目標に向けた大臣の決意を最後にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(原田義昭君) 二〇二〇年においては四千万人という大きなインバウンド目標を政府として立てておりますし、また、そのうちの非常に大事な、一千万人を国立公園に呼び込もうと、これもまた私どもにとっても本当に高い目標でございますけれども、何としてもこれを完成させなきゃいけない、実施させなきゃいけない、こういうふうに思っているところであります。取組の推進に当たりましては、地域の自治体や民間事業者、関係省庁としっかりと連携し、目標の達成に向けて省を挙げて取り組む所存でございます。
 訪日外国人国立公園利用者数を二〇二〇年までに一千万人とするとともに、国立公園の保護と利用の好循環を図りながら地域の活性化にもつなげていきたいと、こう思っております。
○山本博司君 今日は、国立公園の満喫プロジェクトを通じまして、観光ということを中心に質問をさせていただきました。一千万人目指して、是非大臣のリーダーシップを更にお願いをしたいと思う次第でございます。
 以上で質問を終わります。