参議院 総務委員会 第17号 令和2年6月4日

○横沢高徳君 前向きな答弁ありがとうございます。
 そうですね、時間も近づいてきました。私も障害者当事者ですが、障害を受けること自体は必ずしも不幸ではありません。それよりも、障害を受けることによって、共に学んだり、共に働いたり、共に地域社会に参加することを妨げることの現状が不幸であると思います。
 障害を負った人が社会的ハンディを負うことがないような社会をこれからも皆さんと一緒につくっていきたいと思います。どうぞ、皆さん、よろしくお願いを申し上げます。
 本日はこれにて質問を終わります。ありがとうございました。
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、電話リレーサービスに関して伺います。
 聴覚障害者の電話利用の機会を確保することは、社会参加に欠かせないものでございます。国民生活に不可欠な公共インフラとして、この電話リレーサービスを提供できる体制が今回の法制定によって整備されることは大変意義のあることであります。
 私がこの電話リレーサービスを公的制度として導入してほしいという当事者の強い要望を初めてお聞きしましたのは、今からおよそ八年近く前の二〇一二年十二月でございました。東日本大震災の被災地において、電話を通じて聴覚に障害のある方へ情報提供しているお話を伺ったことで、この制度の必要性を実感をしたわけでございます。それ以来、現場の視察、仙台、東京の日本財団の下でやっていらっしゃったプラスヴォイス社というコールセンターや、また沖縄のアイセック・ジャパンというコールセンターにも視察をさせていただきました。
 また、全日本ろうあ連盟の方々、障害者団体の声を伺いながら、二〇一七年には、先ほどお話ございましたインフォメーションギャップバスターの方々と総務省に署名簿を持って公的インフラの制度のことをお願いをした次第でございます。
 また、この当委員会におきましても質問をさせていただきましたし、昨年、予算委員会でも質問させていただきましたので、何とか公的インフラをという思いで取り組んできた者の一人として本日を迎えられたということは大変感慨深いものがございます。この実現を機に共生社会の理念がこの日本の、我が国に深く浸透するように願ってやみません。
 そこで、具体的な課題について伺います。
 これまで民間団体である日本財団がモデル事業ということで限定的に提供しておりましたけれども、利用者や対応時間が限られていたり、警察また消防への通報は受け付けていなかったことから、利用者からは国の責任でこの公共サービスとして提供してほしいという声が上がっておりました。今回の法制定により国の責務が規定をされまして、電話リレーサービスがいよいよ公共インフラとして実施されることになります。
 そこで、所管する大臣として、この法制定の意義、また公共インフラとしてこの電話リレーサービスが実施される意義をどのように認識されているのか、大臣に伺います。
○国務大臣(高市早苗君) 電話というのは、国民の皆様の日常的な、日常生活ですとか、また社会経済活動における基幹的な通信手段でございます。今、山本委員おっしゃっていただいたように、この緊急通報を利用できるサービスとしては特に重要な役割を担っております。
 この聴覚や発話に障害のある方は、介助を受けることなく日常生活で電話を利用するということが困難でございますので、自立した生活の確保に支障が生じております。特に、今般のような新型感染症発生時のような場合、それからまた災害が発生した場合など、皆さんが外出しにくくなって介助を期待することが困難な状況に置かれることがございます。それでも電話を利用できるというようにすることは、生活や業務を継続するという観点からも、命を守るという観点からも極めて重要でございます。
 そこで、本法律案では、公共インフラとしての電話リレーサービスを実現することによって、聴覚や発話に障害のある方がいつでも円滑に適正な負担の下で電話を利用することができるようにするための所要の制度を整備するものでございますので、非常に有意義だと考えております。
 与野党、多くの先生方のおかげでここまでこぎ着けたものだと感謝を申し上げております。
○山本博司君 大臣、ありがとうございます。
 国連の障害者権利条約の第九条及び我が国の障害者基本法の第二十二条では、障害者が電気通信を利用できるための施策を講ずることを国と地方公共団体に求めております。この電話リレーサービスの制度が持続可能なものとしてずっと続いていくように、是非当事者の声も十分に踏まえながら積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、この制度の大きなポイントでございます緊急通報に関して伺いたいと思います。
 聴覚障害の方は、言葉が話せないために、一一九番や一一〇番通報ができない状況が続いておりました。これまでのモデル事業でもこうした緊急通報には対象外であったわけでございます。
 二〇一八年十月に、耳の聞こえない男女三人が雪の奥穂高岳で遭難をしてヘリコプターが出動をしたことがございました。男性二名は助かりましたけれども、残念ながら女性一名が命を落とされました。この救助につきましては、緊急通報が対象外であった電話リレーサービスを利用して電話連絡があり、オペレーターが柔軟に対応したために緊急通報され、救出につながった事例でございました。この事故をきっかけに制度化を求める声は更に大きくなってまいった次第でございます。
 今回の制度では、警察や消防への通報も含めて制度化されたと伺っておりますけれども、具体的にどのような仕組みとなっているのか、御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 電話リレーサービスにおきましては、そのサービスの性質上、まず通報者と警察、消防などの受理機関の間にオペレーター、通訳オペレーターが介在することから、通報者ではなく通訳オペレーターの所在地を管轄する受理機関に緊急通報がつながってしまうという問題が起こり得るというふうに認識をしております。こうした課題を解決するためには、通報者の所在地を管轄する受理機関に適切に通知するための仕組みが必要であるというふうに考えておりまして、電話リレーサービス提供機関におきまして適切に準備いただくことを、総務大臣が定める基本方針に定めることを想定しているところでございます。
 また、総務省といたしましては、警察、消防などの緊急通報受理機関と連携して様々な調整などの協力も進めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 次に、通訳オペレーターの養成に関して伺います。
 今回の電話リレーサービス制度では、年中無休で二十四時間実施することを予定しておりまして、これまでのモデル事業と比較して時間が大幅に延長されます。また、利用者の増加も見込まれておりますので、円滑に行っていくためには、通訳オペレーターの人材育成、確保、これが必要でございまして、一定基準以上の資格、技能を有する者、大変重要でございます。先ほども約五年後で八百人の養成ということございましたけれども、その確保をするためには処遇改善が大変大事でございます。
 さらに、この処遇改善も含めまして、人材育成と確保に向けた具体的なしっかりとした取組が重要であると思いますけれども、その取組を推進する厚労省に伺いたいと思います。
○政府参考人(橋本泰宏君) 厚労省におきましては、通訳オペレーターとしての活躍が期待される通訳者の養成を推進するために、地域生活支援事業において手話通訳者や要約筆記者を養成する地方自治体に対して財政支援を行う、あるいは各地域で実施される養成研修における指導者の養成を関係団体に委託する、こういった取組を実施しております。
 今委員御指摘いただきましたように、通訳オペレーターの処遇改善ということにつきましては、この通訳オペレーターの仕事を魅力あるものとして有能な人材を確保する観点からも大変重要なことだというふうに考えてございます。
 このため、総務省とともに取りまとめました電話リレーサービスに係るワーキンググループの報告書も踏まえまして、今年度、手話通訳者に対するアンケート等を行う調査研究事業を実施いたしまして、まずはこの通訳オペレーターの労働条件あるいは健康面などに関する課題を把握をさせていただきたいと思っておりまして、こういった取組を通じてオペレーターの安定的な確保に努めてまいりたいと考えてございます。
○山本博司君 これは二十四時間三百六十五日サービスがあるわけでございますので、この処遇改善、そして養成という意味では大変大事でございますので、是非ともこの部分に関してはよろしくお願いしたいと思います。
 この電話リレーサービスは、サービスを国民に広く知ってもらい、聞こえない人の自立や働く環境の整備につながることが重要でございます。先ほども御指摘ありましたけれども、現時点では社会的に認知されておらず、不審電話や営業の電話と間違えられたり、罵声を浴びせられて切られてしまうケースが後を絶たないということでございます。こうした状況を改善するためにも制度の周知広報、大変重要でございます。
 この周知については、聴覚障害の方だけでなく、広く国民全般に制度の周知をするということが重要でございます。特に行政機関、さらには金融機関など、問合せなどが電話で対応するケースが多いところでは、この電話リレーサービスを利用した連絡が来ることを想定した研修を実施するなど、円滑に制度が推進できるような支援も必要ではないかと思います。
 そこで、この制度の周知広報をどのように進めるのか、大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) まず、総務省といたしましては、ホームページを始めとする総務省の施策を発信する媒体が様々ございますので、これらを通じて制度についての周知を行います。
 それから、広報の専門家の御知見も賜りながら、実務を担う提供機関や支援機関、厚生労働省などの関係省庁、障害者福祉施設などと連携していただいている地方公共団体、また電話の利用者に直接接することとなる電話提供事業者などと連携しながら周知広報活動に努めてまいります。あわせて、緊急通報の話も先ほど出ましたので、それを受ける警察、消防などにもしっかりとこの趣旨、制度が伝わるように共に歩んでまいりたいと存じます。
○山本博司君 是非ともよろしくお願いしたいと思います。
 この周知広報に関しまして、手話フォンに関して伺いたいと思います。
 現在、日本財団によるモデル事業では、聴覚障害のある方が手話を使って公衆電話のような電話が利用できる手話フォンと呼ばれる装置が羽田空港を始め主要な空港や大学に設置されております。実際に利用するだけでなく、多くの方にこの電話リレーサービスを知っていただくために、空港等を利用する一般の人々がこの手話フォンを目にすることによって聴覚障害の方々の電話利用の必要性に気付くことができるということで、周知の一環としても大いに役立っておりました。全国各地の人が集まる空港、主要な駅、役所など、こうしたことが設置できれば、我が国のバリアフリー化が一層の進展を象徴するような役割も期待できると思います。
 こうした手話フォンの仕組みについて、公共インフラとして維持、継続、さらには拡充していくべきと考えますが、見解をお伺いしたいと思います。
○大臣政務官(木村弥生君) 現在、日本財団により電話リレーサービスのモデルプロジェクトの一環として空港などに設置されております手話フォンは、聴覚や発話に障害のある方の便宜を図る役割とともに、こうしたサービスの必要性について一般の方々に認識していただく役割も担っていると理解しております。
 本法案の成立をお認めいただいた後、公共インフラとしての電話リレーサービスの提供開始に伴って周知広報を幅広く進めていくことにより、これまで手話フォンが担ってきた役割は一定程度カバーできると考えており、今後の手話フォンの在り方につきましては、利用者のニーズを踏まえつつ検討をしてまいります。
○山本博司君 是非とも前向きに積極的に検討をしていただきたいと思います。
 この電話リレーサービス制度とともに、音声認識などの最新技術の研究開発も車の両輪で進めることが重要でございます。多様な情報コミュニケーションの手段の確保が求められております。スマートフォン向けに開発したアプリケーションの「こえとら」、これはNICTの技術ベースに開発されたものでございますし、また、NTTドコモのアプリ「みえる電話」もございます。
 こうした技術開発が進展し、それぞれの障害の程度に合わせた様々な技術が活用できるようになれば、聴覚障害の方々の社会参加の機会が飛躍的に拡大できると思います。この技術開発についての大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 将来的には、この電話リレーサービスに加えまして、音声認識やAIなどの先端技術の向上によって、聴覚や発話に障害のある方が電話を含めた情報通信サービスを更に円滑に利用できるようになる可能性があると思っております。
 この法案に基づきまして総務大臣が定める基本方針におきまして、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関連する技術開発の推進に関する方針を示し、自動音声翻訳技術の活用など、関係者による未来を見据えた技術開発につきましても積極的に促してまいります。
○山本博司君 以上で終わります。