参議院 総務委員会 第18号 平成29年6月8日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、電子委任状の普及の促進に関する法律案に関しましてお伺いをしたいと思います。
 この法案は、昨年議員立法で成立をし施行されました官民データ活用推進基本法第十条の三に規定された制度の整備を図るものでございまして、この電子委任状の仕組みが確立されますと、事業者との間でやり取りをされます証明書類や契約書類の電子化の促進に向けて大きな一歩となる大変重要な法案であると考えます。
 そこで、まず初めにこの法律について、必要な意義、また理由、その効果はどのような分野に及ぶものと想定しているのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 企業が紙の契約書や証明書を発行する場合、社員が代表者の印鑑を押すことでその書類が作成責任者によって作成された正式なものであるということが証明できるところでございます。これに対しまして、企業が電子的な契約書や証明書を発行する場合、社員が自分のマイナンバーカードなどを用いて電子的に署名しただけでは、その電子書類が作成責任者によって作成されたものかどうかが分からないという課題がございます。
 そこで、企業の社員が代表者から書類の作成に必要な権限を委任されているということを電子的に証明できる電子委任状を円滑に利用できる環境を整備する必要があることから、本法案を提出したところでございます。
 具体的には、主務大臣が電子委任状の普及を促進するための基本的な指針を策定するとともに、電子委任状の信頼性を保証する事業者を主務大臣が認定する制度を創設することとしております。
 本法案に基づきまして、主務大臣の認定を受けた事業者を介して信頼性の高い電子委任状が流通するようになれば、マイナンバーカードなどを用いて電子書類に電子的に署名した社員の権限を簡易で確実に証明することが可能となり、様々な手続がオンラインで完結するようになると期待をしているところでございます。
○山本博司君 様々な効果が期待をされるわけでございますけれども、人口減少、少子高齢化の中におきましても地方自治体が質の高いサービスの提供を維持していくためにも、こうした行政の効率化というのは欠かせないと思います。先日もこの委員会におきまして地方自治法等の議論がございましたけれども、人口が減少するに伴いまして、行政事務の民間委託、また地方独立行政法人への業務拡大についての論点にもなった次第でございます。
 これまで紙で行ってまいりましたこの手続、オンライン上の電子化による手続に変わっていきますと、行政機関でも事務作業の効率化が大きく進展することが期待できると思います。
 政府におきましても、この電子政府、電子行政の推進というのは大きなテーマでございまして、業務の進め方を見直して、効率的で効果的な行政運営を進めることで公共サービス全体を向上させることが可能となって、さらには経済成長にも大きく貢献をすることが期待されるわけでございます。
 そこで、今回の法律が成立した場合、地方自治体の事務作業の効率化、どのくらい寄与するのか、説明いただきたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 政府では、国や地方の業務や手続全般について、対面・書面原則を廃し、原則電子化を進めることによりまして、行政の簡素化、効率化と国民の利便性向上を図ることとしているところでございます。本法案はその一環として提出をさせていただいているものでございます。
 具体的には、本法案により自治体の行う調達手続の電子化が進み、紙の入札書類や契約書類を確認、整理する手間がなくなり、自治体の事務作業の大幅な効率化が実現されると期待されるところでございます。このため、本法案におきましては、第四条第三項におきまして、自治体に対し調達手続における電子委任状の利用を促進する努力義務を課しているところでございます。
 また、本法案によりまして保育所の入所申請などの手続をオンラインで行うことが可能となりますと、自治体における郵送事務や窓口事務の大幅な効率化も期待できるところでございます。
 本法案が地方自治体における事務作業の一層の効率化に資するものとなるよう、本法案の仕組みや効果につきまして自治体にも今後十分な周知を図ってまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 先月十九日でございますけれども、菅官房長官に対しまして、公明党のICT社会推進本部として提言を手渡してきた次第でございます。その提言の中に、ICTの社会実装と官民データの利活用に関しましては、我が国の経済成長、地方創生を牽引するとともに、全ての国民にとって安心、安全で持続可能な社会を実現するために不可欠なものと、こう考えております。その中で、行政手続のワンストップ化の実現、また地域情報プラットフォームの普及についても提言をしてまいった次第でございます。特に、多忙な子育て世代の支援に係るこの子育てワンストップサービスで対応するメニューを拡充するよう、強く求めたところでもございます。
 そこで、お聞きをしたいと思いますけれども、この法案におきまして電子委任状が普及しますと子育て世代へどのようなメリットが実現をしていくのか、分かりやすく御説明いただきたいと思います。
○大臣政務官(金子めぐみ君) 現在、保育所への入所申請をするためには、勤務先に依頼して雇用証明書を発行してもらった上で、その雇用証明書を保育所の入所申請書に添付し、自治体に提出する必要がございます。今後、電子委任状や電子私書箱を活用し、オンラインで手続を行うことが可能となった場合には、自治体への入所申請書や雇用証明書の提出を在宅のままオンラインで一括して行うことが可能となります。
 子育て世代の住民にとってのメリットとしては、わざわざ自治体の窓口に出向く必要や書類を郵送する必要がなくなりまして、ワンストップサービスが実現すると考えております。
○山本博司君 今、年間四百九十二万件この雇用証明書が発行されているということを考えますと、大変メリットが具体的に出てくるかと思います。
 次に法案の具体的な内容に関して伺いたいと思います。
 法案の第三条におきまして「主務大臣は、電子委任状の普及を促進するための基本的な指針を定めるものとする。」と、こうしておりまして、その二項におきまして目標に関する事項について定めることとしております。
 この目標というのは普及促進に向けた数値的な目標なのかどうか、どのような形を目標としているのか、この目標値に関する設定に関しまして伺いたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 普及目標の具体的な内容につきましては、本法案をお認めいただいた後、有識者や外部の関係者の御意見も伺いながら、委員御指摘の基本指針の中で定めていくこととしております。
 目標の明確性の観点からは数値目標を定めるということも考えられますが、他方、電子委任状の普及は企業の自主的な取組により進むものであることから、定性的な目標設定を行うこともあり得ると考えているところでございます。
○山本博司君 定性的な目標設定もあるということでございます。
 また、法案の第四条で、国の責務として、「広報活動等を通じて、電子契約の当事者その他の関係者の電子委任状に関する理解を深めるよう努めなければならない。」とございまして、二項では情報の提供などの努力義務もなっております。
 この電子委任状の仕組みが、法人だけでなくて個人に対しても普及が促進されなくてはならないと考えます。具体的に、理解を深める周知、どのように行っていくのか、御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、この電子委任状を活用した手続の電子化が広がっていく、普及していくというためには、電子委任状の使い方ですとかメリットということを関係者の皆様方によく理解していただくことが必要だと考えております。このため、本法案におきましては、第四条第一項におきまして、国は広報活動等を通じて関係者の電子委任状に関する理解を深めるよう努めなければならないと規定しております。
 総務省といたしましては、この規定に基づきまして、関係省庁や地方公共団体あるいは関係団体とも協力しながら、セミナーや講習会の開催、マニュアルやパンフレットの配布などの周知活動を行ってまいりたいと考えております。
○山本博司君 しっかりと理解を深める周知をお願いをしたいと思います。
 周知の件で経済産業省にお伺いをしたいと思います。
 この法案では、総務大臣だけでなくて経産大臣も主務大臣となっております。電子商取引の推進にはあらゆる事業所がIT化を進めるということが前提でございまして、特に、これまでIT化になかなか取り組まなかった中小企業経営者に対しましてIT化の必要性また有効性について理解を進めていくとともに、ハード面の設備投資、またソフト面での支援ということが大変重要であると考えます。
 そこで、経産省に、こうした中小企業の方々に対する周知に関して御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(前田泰宏君) お答えいたします。
 中小企業のIT利活用は、業務効率化あるいは販路の開拓あるいは顧客の管理上、非常に有効だと考えております。
 経済産業省といたしましては、二十八年度の予算でございますけれども、ITツールなどの導入をする際にその費用の一部を補助するという制度、それから、ITツールの最新のものを実際に手に取って使えるという体験型の展示会、それから、全国百か所でございますけれども、ITリテラシーを高めるためのセミナー、さらには、ITコーディネーターや情報処理技術者などのIT専門家を実際に中小企業に派遣するなどの支援策をやってきております。こういうようなものを更に拡充しながら、この電子委任状制度についての理解も深めていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 いわゆる中小企業の経営者、担当の専任もいない状況ですから、しっかりこうした周知を含めた支援をお願いをしたいと思います。
 次に、第五条に規定をしております取扱業務に関して伺いたいと思います。
 この五条におきまして、委託を受けて電子委任状を保管し、必要に応じ第三者に送信する電子委任状取扱業務を営む者に対しまして主務大臣が認定できる制度の創設、これが定められております。この電子委任状取扱事業者が今後代理業務も行うということを想定するのであれば、信頼性の高く、セキュリティーも含めてしっかりしていないといけないと思います。
 そこで、この電子委任状取扱事業者の認定要件、どのようなものになっていくのか、また、公布の日から起算をして九か月以内に施行されることを考えますと、今後どのようなスケジュールで認定要件を決めてこれをしていくのか、説明いただきたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 電子委任状取扱事業者が本法案の認定を受けるためには、その取り扱う電子委任状が基本指針などに適合した適正なものであって、その業務の実施の方法が基本指針に適合した適正なものである必要がございます。
 具体的な認定基準でございますけれども、基本指針の中で定めていくことになるわけでございますけれども、電子委任状が法人代表者などの意思に基づき作成されたものであることを所定の方法により確認をすること、また、電子委任状の改ざん、漏えい、滅失などを防ぐため十分なセキュリティー対策が講じられていること、加えて、電子委任状の記録項目や記録方法を標準に適合したものとすることなどを認定基準として定めることを予定をしているところでございます。
 また、本法案は、委員御指摘のとおり、公布の日から九月以内に施行することとなっておりますけれども、施行日の時点から認定申請を円滑に受け付けることができるよう、本法案をお認めいただいた後、速やかに基本指針の策定作業に入りたいと考えております。
○山本博司君 さらに、第十一条で、取扱事業者の認定を受けている旨の表示を付することができることにもなっております。特定電磁的記録上に表示をするということですから客観的に誰もが分かる表示をするということだと思いますけれども、どのようにしていくのか、この認定の表示についての考え方、説明いただきたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 本法案の認定事業者を介して流通する電子委任状、法案の中では特定電子委任状というふうに呼んでおりますが、これは、確かに法人代表者などの意思に基づき作成されたものであることを認定事業者があらかじめ確認している点や第三者による改ざんなどを防止するためのセキュリティー上の措置が講じられている点において、一般の電子委任状よりも信頼性の高いものとなっております。この点を電子委任状を受け取る側が容易に認識できるようにするため、本法案におきましては、認定事業者が認定を受けている旨の表示を付すことができることとしており、あわせて、認定を受けていない者が同様の表示を付すことを禁止をしているところでございます。
 認定を受けている旨の表示を付すその具体的な方法でございますけれども、詳細は省令において定めることとしておりますけれども、例えば認定事業者から電子メールの添付ファイルとして電子委任状を受け取る場合にその電子メール上に表示を付す方法ですとか、認定事業者のウエブサイト上において電子委任状を閲覧する場合、その当該ウエブサイト上に表示を付す方法などを想定をしているところでございます。
○山本博司君 さらに、この法律に違反した場合、例えば認定されていない事業者が不正に取扱業務を行った場合の罰則、これはどのようになっているのでしょうか。また、認定されている事業者に対しまして、認定を取った後にも定期的に検査や研修を行うことなど信頼性を維持して高めていくための仕組み、これが必要ではないかと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
○副大臣(あかま二郎君) お答えいたします。
 本法案では、認定事業者でない者が認定を受けている旨の表示を付した場合などの罰則を五十万円以下の罰金と定めております。また、認定事業者が変更認定の手続を経ずに認定に関わる事項を変更した場合、報告徴収に対して虚偽の報告をしたり立入検査を拒否したりした場合などの罰則を三十万円以下の罰金と定めております。
 このほか、認定事業者については、その業務の実施方法が基本指針に適合した適正なものであることを認定時及び認定更新時に主務大臣が審査することによって、その信頼性を担保することとしております。
 また、認定事業者については、基本指針で定める認定要件の一つとして、定期的に外部機関の監査を受けることを義務付けることを想定をしております。加えて、認定事業者については、何か問題があった場合には報告徴収や立入検査を行うことや、問題が是正されない場合には認定事業者の認定を取り消すことも可能となっており、これらの手段を段階的に用いることで認定事業者に対する信頼の確保に万全を期すこととしたいと思っております。
 以上です。
○山本博司君 成立した後、九か月間の間での準備だと思いますので、しっかりした対応をお願いをしたいと思います。
 次に、官民データの活用に関して内閣府にお伺いをしたいと思います。
 先月三十日に発表されました世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画におきましては、医療や介護や観光、物づくりなどと並びまして、重点八分野の一つとして電子行政の分野、これも位置付けられております。これまでも長年取り組んでまいりましたこのIT戦略がいよいよ新たな段階になってきたと考えます。行政手続などで具体的に目に見える形でのメリットが提示されることが大変重要であると考えます。
 先ほど、子育てワンストップサービスについてお聞きをいたしましたけれども、これに限らず、今後は、特に手続件数の増加が見込まれる例えば介護等の高齢者福祉、今、二〇一四年現在でも要介護者数は約六百六万人でございます。また、死亡に伴う相続手続、二〇一五年度でも死亡者は約百三十万人ということで、相続の手続も大変複雑でございます。こうした各種手続もオンライン上で可能となるよう整備が必要であると考えます。
 我が党の提言におきましても、将来的に、出生から死亡まで、こうした行政手続のワンストップ化が実現できるよう求めているところでございますけれども、そこで、この電子行政分野の推進、今後どのように進めていくつもりなんでしょうか。
○政府参考人(向井治紀君) お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、電子行政分野の推進というのは極めて重要だと考えております。特に、手続といたしますと、国に対するもの、あるいは自治体に対するもの、いろいろございます。
 国に対する手続につきましては原則オンライン化されていることになっておりますが、ただし、必ずしも使い勝手の良いものになってございません、紙がたくさん要ったり。こういうことをまず、国あるいは自治体も含めまして、そういう行政手続を全て棚卸しいたしまして、どういうふうな要件の下にどういうふうな書類を取っているのか等々につきまして細かく洗い出しをしたいと思っております。その上で、できるだけ必要な書類は残していく、あるいは電子化できるものは電子化していくということで、最終的には全てオンラインでできるような形に持っていけるように取り組んでまいりたいと考えております。
 また、先生御指摘の介護あるいは相続等におきましても、できるものからワンストップ化してまいりたいということで、早急にマイナポータル等、あるいはマイナンバーカードを利用いたしまして取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○山本博司君 大変これは大事な分野でございますので、一つ一つ前に進めていっていただきたいと思います。
 最後に、大臣にお伺いをしたいと思います。
 ワンストップサービスの推進に向けましては、このマイナンバーカードの普及とともにマイナポータルの利活用、これが、先ほどもお話もありましたように大きな鍵になると考えます。マイナンバー制度の担当大臣でもございます高市大臣、先ほどもお話ございました、三月十七日、マイナンバー利活用推進ロードマップ、これを発表した際に、利用者目線にこだわって、住民にとってより使い勝手が良い形でサービスを提供できるよう、こういうふうに言及をされたと伺いました。大変これは重要な視点であると思います。本来有用なサービスであっても、使い勝手の悪さが原因で利用が低迷して、限られた数の利用者しか利用していないということでサービスが停止をするというようなこともあってはならないと思いますので、これはしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。
 大臣に、このマイナンバーの利活用の推進、今後どのように進めていくのかという決意をお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 非常に多くの府省庁が関係する、これは非常にこれから長い年月にわたって国民に活用される一つの社会基盤でございます。そんな中で、昨年八月三日の内閣改造でマイナンバー制度全体を担当する大臣を併任することになりました。国民の皆様に対してしっかりと責任を持てる、そして、詳しく書き込んだ利活用のロードマップのようなものが存在していないということで、そこから検討を始めまして、ロードマップを三月に仕上げたということでございます。
 あくまでもやはり利用者目線だと思いました。委員がおっしゃっていただいたマイナポータルにしましても、アカウントの設定などは既に始まっていますが、例えば、私でも簡単にできる、取説不要、三分以内という感じで、簡単にまずできる、作業ができるということが大切であり、そして、当初は今年の夏からマイナポータルを含めて本格的なサービス運用ということを予定していたんですけれども、パソコンで使うということになりますとカードリーダーを別途御購入いただかなきゃなりません。今年の秋にはスマホでも活用できるようになるという見通しが立ちましたので、それなら混乱が起きないようにパソコン、スマホでも使えるようにしていこうと。
 最終的には、やはりテレビ、御自宅のテレビでも、もちろんスマホでもということなんですが、マイナンバーカードが利用できるようにアクセス手段を多様化していくということを目指しております。もう先ほど来申し上げましたような様々な身近なサービスに安心して使っていただけるような体制を取ってまいります。そして、進捗管理もしっかりと行ってまいります。
○山本博司君 是非、大臣、大変大事な分野でございますので、今回の電子委任状の普及の促進に関する法律も大変大事でございますので、この後、成立後もしっかりと対応していただきたいと思います。
 ちょっと時間が早いですけれども、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。