参議院 総務委員会 第6号 平成28年11月22日
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日は一般質問ということで、私もNHK受信料に関する課題につきまして、籾井会長を始め関係者にお伺いをしたいと思います。
まず、受信料収入について伺います。
NHKの経営状況を見ますと、この受信料収入が堅調に推移しておりまして、事業収支は二百六十三億円のいわゆる黒字ということでございます。この件で、籾井会長は、差金につきまして視聴者への還元と、こういう点を言及されたという一部の報道もございます。
そこで、籾井会長にお聞きいたしますけれども、現時点でのNHK受信収入に関しましてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞きをしたいと思います。
○参考人(籾井勝人君) 予算は今から経営委員会で議決していただくわけでございますが、以前から言っているとおり、余裕があるときにはお返しするということでございます。
その上で、経営委員会で議決していただいた今のNHK経営計画、三か年計画では、放送センターの建て替え計画が具体化した時点で建設積立金を見直し、各年度の予算、事業計画に反映させるということになっております。これは視聴者との約束だというふうに思っていますし、前・現委員長からも直ちに予算に反映させるようにと言われております。八月にまとめた放送センター建て替え計画では、建物工事費部分が一千七百億、これを今まで、八割弱の受信料を払っていただいている視聴者の皆様からお預かりしているわけでございます。これだけ貢献していただいた皆様に、一応一段落したところで余裕があればお返しするということ、今までは二百五十億円ぐらいの積立てをしてきておりますから、これが要らなくなっておりますので、非常に分かりやすく言えば、その分だけは取りあえずお返ししましょうということでございます。
それから、いろんな今後の必要資金については、当然、我々の予算の中には十分に検討し織り込んでおるということも併せて申し上げておきたい、公共放送の役割を果たすために必要な収支の見通しをきちんと立てておるわけでございます。
○山本博司君 今日はここで新たな提案ができればというふうに考えております。それは、受信料を引き下げることよりも先に、受信料免除の範囲の拡充でございますとか新たな研究の予算を確保する、こういうことで社会的に弱い立場の人たちの支援を行っていただきたいと、こういう点でございます。
具体的に伺います。
私の地元の愛媛県の松山市で小規模保育施設を経営している方からの要望でございました。その方によりますと、保育所を含む社会福祉施設、これは平成十三年以前の施設に対しては受信料免除の規定があるわけでございますけれども、小規模の、十三年以降、そうした保育施設にはその規定が適用されていないということでございます。これは、もう障害者の福祉施設に関しましても同じように同様の要望を伺っているということでございます。
そこで、この社会福祉施設の受信料免除基準、なぜこの平成十三年以前と以降とで違いがあるのか、理由に関してお聞きしたいと思います。
○参考人(松原洋一君) お答えします。
NHKでは、免除の措置の抜本的検討や改廃に関する国会の附帯決議を踏まえて、施設に対する免除についてはその対象を段階的に縮小をしてきました。社会福祉施設に対する免除については、今御指摘のように、平成十三年一月まで社会福祉関係諸法に規定されている施設を免除の対象としてきましたが、法改正によって免除対象が拡大するということのないように、平成十三年の免除基準の変更により、免除対象を限定的に列挙する方式に改めたということでございます。
○山本博司君 この平成十三年で区切るという基準の根拠、これは大変希薄であるというふうに私も言わざるを得ないわけでございまして、子供を預かるという同じ事業をしながら扱いが違うということはこれ不平等ではないかと、また、そうした不平等は解消すべきじゃないかというのが強い御要望なんでございます。
この受信料免除に関しましては、当時の国会、収支の差が赤字であった平成の初め頃のこの免除措置の廃止の議論、縮小の議論、これは確かに国会でも議論をされましたけれども、今大きく環境は変わっております。収支も上がっておりますし、また、こうした社会福祉施設も様々な形で、小さなNPO法人とかいう形で子育てや障害者福祉をやっているわけですけれども、この受信料の免除基準、これは見直すべきと私は考える次第でございます。
具体的に、その上で認識を伺いたいんですけれども、平成十三年以降にもしこうした社会福祉法人に免除規定をした場合にはどのくらいの金額が掛かるのか、この規模感も含めて御認識を伺いたいと思います。
○参考人(松原洋一君) 御承知のように、免除の措置は一般の視聴者の負担によって成り立つものであるということを十分踏まえて、社会的、経済的環境の変化に応じ、より公平で合理的な受信料体系を構築するという観点から、御指摘も踏まえてその適用範囲について引き続き検討をしていきたいというふうに思っています。
なお、免除基準を見直した場合は、その影響ですが、NHKに今登録されているデータから推計をすると、現時点で年間数億円程度というふうに考えております。
○山本博司君 やはり社会福祉施設、もう介護も子育ても障害者福祉も含めて、様々な形で今関わっているわけでございます。そういう意味で、そうした弱者、弱い方々のための支援をしているところに対して、この免除に関しての規定を、是非ともこの見直しの検討をしていただきたいということを申し上げておきます。
次に、同じように、災害時における受信料の免除につきましてもお伺いをしたいと思います。
先月、鳥取県の中部地震が発生をし、震度六の地震が、揺れが発生をしたわけでございますけれども、前回の委員会におきましてもこの鳥取中部地震の質問をさせていただきました。その際、倉吉とか三朝町とか、また北栄町、被災地を訪問させていただきましたけれども、死者は出ておりませんでしたけれども、大変著しい被害を目の当たりにしたわけでございます。
この地震につきましては災害救助法の適用が直ちにされたということでございますけれども、この地震に対する受信料の免除に関しまして現状を報告いただきたいと思います。
○参考人(松原洋一君) 免除基準に基づいて、先ほども委員が申したように、災害救助法が適用された区域において半壊以上の被害を受けた受信契約者について、平成二十八年の十月と翌月の十一月、二か月分の受信料が免除となっています。
○山本博司君 災害救助法によってもこうした方々に対して免除規定があるということでございます。やはり社会福祉施設、また、こうした災害救助という形で支援が必要な方にとりましては、少額であったとしても、年間二万円とか三万円の金額でございますけれども、大変これは有り難い支援である。特に今、例えば障害者放課後デイサービス等は幾つもNPO法人でやっている場合がありますから負担が掛かるわけでございますので、状況を見ながらこうしたきめ細やかな支援ということを検討をしていただきたいと思います。
次に、受信料収入による差金の活用ということで、この受信料の免除と併せて、弱い立場の方への対策の充実策の一つとして、障害のある方への情報アクセシビリティーに関しまして伺いたいと思います。
総務省では、平成十九年に視聴覚障害者向けの放送普及行政の指針を定めておりまして、放送による情報アクセシビリティーの向上、これを取り組んでいると思います。これによりますと、字幕放送、また音声ガイドによる解説放送、これを、平成二十九年度までの目標値を定めておりますけれども、この指針の概要について報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(南俊行君) お答え申し上げます。
平成十九年に策定をいたしました視聴覚障害者向け放送普及行政の指針、この中におきまして、まず字幕放送につきましては、平成二十九年度までに対象の放送番組の全てに字幕を付与すること、大規模災害等緊急時放送につきましてもできる限り全てに字幕を付与すること、特にNHKにおきましては、災害発生後速やかな対応ができるよう、できる限り早期に全ての定時ニュースに字幕を付与することを目標としてございます。
それから、解説放送につきましては、権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組を除く全ての放送番組につきまして、平成二十九年度までに一〇%の解説を付与すること、特にNHKの教育につきましては一五%というものをそれぞれ目標として定めているところでございます。
○山本博司君 この指針を基に、ガイドを基にNHKでは字幕放送、また解説放送の拡充を進めておりまして、目標はクリアされるということは聞いておりますけれども、こうした取組の中で、視覚障害者の方々に対する音声ガイドの解説放送の目標値、この一〇%というのは私は大変低いのではないかなというふうに思っております。
この十年間で、障害者の政策というのは大きく法整備が進んでまいりました。障害者の基本法の改正から始まりまして、障害者の総合支援法、また障害者の雇用の環境も整備されました。権利条約も批准をされました。中でも、障害者の差別解消法がこの四月から施行になりましたけれども、合理的配慮という規定ができたことで、あらゆるこうした障害の方々の社会参加を可能にする考え方が大きく展開をされてきているわけです。
ところが、一〇%という形で、当時、平成十九年の時点での十年計画という形での目標値だと思いますけれども、やはり、これから平成三十年以降の目標値、これをこれから設定をされるということでございますので、是非とも検討の際には未来の展望が開けるような積極的な検討をお願いをしたいと思います。
音声ガイドといいますのは、視覚障害の方にとりましては、普通の音声とともにやはり場面の様子を具体的に分かるような形で音声が付加をされていますので、視覚障害者にとりましても、映像の状況を理解するということでは大変大きな役割を担っております。視覚障害の団体からも普及促進を求められておるわけですけれども、しかしまだ字幕放送と比べて、音声のガイド、解説放送に関しましては差がございます。
NHKにお聞きしますけれども、この普及を進めるべきであると思いますけれども、この点、御認識を伺いたいと思います。
○参考人(木田幸紀君) 今御紹介がありましたように、昨年度、平成二十七年度の実績で、総合テレビでは一一・八%、Eテレでは一七%ということで、平成二十九年度の指針での目標は既にクリアしております。今年度もさらに、「ガッテン!」であるとか「ブラタモリ」などの番組で音声の解説を付けていこうとしております。
ただ、解説放送は映像を短く的確な言葉に置き換えた台本を別途用意する必要があり、準備に非常に時間と手間が掛かります。こういった制約はあるんですけれども、NHKとしては地上波を中心に更に増やしてまいりたいと思っております。
今後、作業の効率化などの工夫であるとか、インターネットのような新しいテクノロジーを活用した新しい技術の開発を通じて、より多くの解説放送を実施できるよう努めてまいります。
○山本博司君 やはり、視覚障害の方にとりまして解説、ドラマの解説放送ができるということは大事でございます。地上波放送に関しましては、これはもう既にそうしたドラマに関してはやられているということですけれども、衛星放送、BSに関しては、実際こうした解説放送がされていないという実態もございます。これは人の問題とか予算の問題があると思いますけれども、是非ともこれは、NHK、これから三年間計画を、平成三十年から経営の計画を立てられると思いますけれども、こうしたことも含めてどうしていくかということをしっかり検討していただきたいと思います。
さらに、視覚障害者への対策ということでもう一点伺いたいと思います。それはテレビのニュース速報、また気象警報の自動音声化でございます。
ニュース速報とか気象警報が発信された場合には、視覚障害の方々は音声で警報音を聞くことはできますけれども、具体的な内容に関しましては、現状、知ることはできません。今日もこうした地震がありましてテロップが流れたと思いますけれども、具体的にその地名であるとか、どこが、震度で、どうした、津波だということは、現状、分からない状況がございます。もっと限定的なそういうゲリラ情報のような形で、まあ今回のケースはまだアナウンスがそれをフォローしていましたけれども、なかなか情報としては分からないということがございます。
視覚障害にとりましては、大事な情報、やっぱり命に関わる災害の情報も含めて、これを不安を解消するためにも大変大事な仕組みだと思っております。これも日本盲人会連合の団体からも強い要望が出ているわけですけれども、こうした警報の自動音声化、また高齢者の方にとりましても聞き取りやすい音声であるとか、若しくは手話翻訳とか、こういう人にやさしい放送・サービスの研究開発、これを更に進めるべきだと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
○参考人(木田幸紀君) NHKでは、経営計画で、人にやさしい放送・サービスの推進を重点事項に掲げております。障害のある方だけでなく、幼児からお年寄りまで全ての視聴者に着実に情報をお届けするということを目指して多様な研究をしております。例えば、気象庁発表の気象データを基に、手話のコンピューターグラフィックスですね、それの動画を自動的に生成するシステムなどの開発を進めております。
ただ、ニュース速報などの音声化は、現在ですと地名や人名だの多様な固有名詞を自動生成できるような水準には残念ながらまだ達しておりません。加えて、音声化が実現したとして放送局からそういう信号を送れたにしても、テレビの受像機側の機能であるとかその受信のための統一基準など、そういった課題が依然として残っております。
ただ、今後も、公共放送としては何が可能であるのか引き続き検討を重ね、更に質の高い、人にやさしい放送・サービスを実現すべく、研究開発に取り組んでまいりたいと思っております。
○山本博司君 是非ともお願いをしたいと思います。
今、NHK技研でその研究をされているということですけれども、この人にやさしい放送・サービスの研究予算は二億六千九百二十五万円、一昨年と比べて一億円減っているという現状もございます。そういう意味では、こういう予算をしっかり、やはりAIとかビッグデータの活用とか、今技術がどんどん変わっていますから、そういうこともNHK技研等で取り入れて研究をするということも是非とも検討していただきたいという点でございます。
今まで、受信料の免除範囲の拡充とか新たな研究予算、これが社会的立場の弱い方々に対する支援につながるという質問をずっとしてまいりましたけれども、これまでの議論を通じまして、視聴者への還元ということを、やはりこうした受信料の免除とか研究の開発促進ということで還元するという点について、籾井会長にお聞きしたいと思います。
○参考人(籾井勝人君) 今日は視聴者に対する還元というのを主に値下げという形で議論がなされたわけですが、当然のことながら、値下げをしたからこういうことができないということではないと思っております。
今御指摘のように、公共放送として様々な人にやさしい放送・サービスということは常に我々頭に置いてやらなければいけないことでございますので、今後ともそういうことを頭に置きながらNHKとしての対応をしていきたいというふうに考えております。
○山本博司君 これは、NHKとしてこれから経営計画を三年間立てられて、特に二〇二〇年目指して進められるわけでございますので、今日お話をした点をじっくり検討して前向きに進めていただきたいと思います。
最後に、総務大臣にお伺いをしたいと思います。
今、私は、二〇二〇年東京オリ・パラを目指して、障害者の芸術文化振興議員連盟の事務局長をさせていただいておりまして、今国会で障害者の文化芸術を推進する法律を出そうということで今取り組んでいるわけですけれども、その法律案の中で、文化芸術の鑑賞機会の拡大を目指して字幕とか音声ガイドとか手話、こういった説明の提供促進ということを規定をしております。これは、映画とかテレビ放送、テレビ映像ですね、このアクセシビリティーを拡充をするということを念頭にしておりまして、二〇二〇年東京オリ・パラは、スポーツの祭典であると同時に文化の祭典でもございますので、日本の文化水準を高める絶好の機会だと思っている次第でございます。
大臣は、放送行政をつかさどる立場として、こうした点も留意しながら政策を前に進めていただきたいと思いますので、最後に、この放送の情報アクセシビリティーということに関して大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) まさに与野党共に超党派で議員連盟でお取組をいただいていることに敬意を表させていただきます。
放送法第四条第二項では、放送事業者は、テレビジョン放送による放送番組の編集に当たり、解説放送番組及び字幕放送番組をできる限り多く設けなければならないと規定をされています。視聴覚障害のある方や御高齢の方も含めて、全ての視聴者がテレビジョン放送の内容を格差なく理解できて、情報アクセス機会というのを均等に共有できるというようにすることは必要でございます。
先ほど、平成十九年に総務省が策定した指針については南局長が答弁をいたしましたが、放送事業者におかれても、視聴覚障害者向け放送の拡充のために、自ら定める計画に対する進捗管理を行い、できる限り行政指針の目標に近づけるように御努力をいただいておりますし、また、総務省でも、字幕番組、解説番組、手話番組を制作する者を対象として制作経費に対する助成金交付を行っていますので、今後ともしっかり放送によるアクセシビリティーの向上に努めてまいります。
なお、今朝の地震直後、各放送事業者の番組ではすぐに地震の報道に切り替えていただき、NHKにおかれてもかなり大きな字幕で、それも漢字バージョン、平仮名バージョン、そして言語、音声のところも切り替えてみましたら、英語による放送も非常に短く分かりやすく行われていたということで、各事業者のお取組にも敬意を表したいと思います。
○山本博司君 以上で質問を終わります。ありがとうございました。