参議院 総務委員会 第7号 平成29年3月30日
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日はNHKの予算案審議ということで、上田会長を始め関係の方々にお伺いをしたいと思います。
まず、上田会長に伺いたいと思います。
本年一月に会長に御就任され、約二か月が経過をいたしました。大変に御苦労さまでございます。
NHKの経営状況を見ますと、受信料収入が堅調に推移をしておりまして、平成二十九年度の予算でも事業収支はいわゆる黒字の見込みをされているということでございます。こうした中で、四月からは三か年の経営計画が最終年度を迎えることになり、平成三十年度から、次の経営計画についてこれから議論が始まると思います。
インターネットの同時配信であるとか受信料制度の見直し、また放送センターの建て替え計画、また相次ぐ不祥事への対応など様々な課題が山積をしておりますけれども、このメディア環境の変化に柔軟に対応していただきたいと思います。
そこで、まず上田会長に、この平成二十九年度予算への基本的な考え方、また次期経営計画に向けた認識をお伺いをしたいと思います。
○参考人(上田良一君) お答えいたします。
まず、御質問の二十九年度予算の基本的な考え方でありますけれども、二十九年度は、三か年経営計画の最終年度として、公共メディアへの進化を見据え、経営計画の達成に向けた事業運営を着実に実施していくということであります。受信料の公平負担に向けた取組を徹底して増収に努めるとともに、国内放送や国際放送を充実し、4K、8Kの番組制作の強化や平昌オリンピック・パラリンピック放送を実施する、あわせて、コンプライアンスの徹底を図り、事業運営の一層の効率化を推進するということを考えております。
続きまして、次期経営計画への認識でありますけれども、三十年度からの次の経営計画では、現在の経営計画で掲げておりますNHKビジョンを基本的には踏襲し、放送と通信の融合時代にふさわしい公共メディアへの進化を見据えて、世界から注目が集まる二〇二〇年に最高水準の放送サービスを実現することを目標に、挑戦と改革を続けていくことになります。
従来からの放送サービスに加えまして、4K、8K実用放送やインターネットサービスなど、視聴者の皆様の期待に応えられるように経営資源の配分を検討していく所存であります。
○山本博司君 是非、会長の力強いリーダーシップで推進をお願いをしたいと思います。
次に、放送会館の建設に関しまして伺いたいと思います。
現在、放送センターの建て替え計画も進められておりますけれども、災害に強い放送維持の機能強化を目指すとともに、地域から信頼され親しまれる放送局サービスを展開するために、各地の地方放送局でも建て替えが順次行われていると思います。この放送局を中心にしまして地域の再開発が進められて、中には放送会館の中にホールが併設されているという例もあると伺っております。
現在、地方創生が叫ばれておりますけれども、こうした地域の特色のある文化芸術活動を推進して、この文化芸術活動を起爆剤にするということが地方創生の面からも大きく貢献するものと考える次第でございます。その際に、放送を通じて公開番組であるとかイベントなどを積極的に展開をして、NHKの放送会館が地域の文化拠点として活用するということが各地域におきましての活性化に大変重要であると考える次第でございます。
そこで、この地方の放送会館、地域の文化、情報の発信拠点として積極的に活用すべきと考えますけれども、見解をお聞きしたいと思います。
○参考人(森永公紀君) お答え申し上げます。
地方の放送会館は、築後五十年以上たったものが多く、老朽化、狭隘化が進んでおります。このため、放送会館の建て替えを進めておりまして、現在既に着工しているものを含めて八つの放送会館の建て替えを予定しております。
建て替えに当たりましては、公共放送の使命を果たすため、命と暮らしを守る防災・減災報道の拠点として大規模地震発生後も放送を継続できる強靱な設計とすることで、地域から信頼され、安心、安全を守る放送局を目指しております。
また、豊かな地域文化や情報を全国また海外へ向けて積極的に発信するとともに、視聴者に開かれた放送会館として、今おっしゃいましたように、様々な公開イベントにも対応し、地域活性化に貢献していきたいと考えております。
人々が気軽に集っていただけます地域のランドマークとして、また、親しみが持てる放送会館の建設に今後も努めてまいりたいというふうに思っております。
○山本博司君 是非とも推進をお願いしたいと思います。
次に、受信料免除に関してお聞きをしたいと思います。
この件に関しましては、地元四国の保育施設の要望に基づきまして、昨年十一月の当総務委員会でも質問をさせていただきました。保育所や介護、障害福祉の施設を含む社会福祉施設でございますけれども、平成十三年以前に規定された施設に関しましては受信料の免除の対象となっておりますけれども、平成十三年以降に規定されました小規模の保育施設などは対象とならないということで、この免除基準を見直してほしいという質問をした次第でございます。これに対してNHKからは、御指摘も踏まえてその適用範囲について検討するという答弁をいただいておりました。
是非ともこの受信料の免除基準を見直していただいて、公益性の高い幅広い社会福祉施設に対しましての受信料を免除としていただきたいと思いますけれども、その見直しの検討状況を御報告いただきたいと思います。
○参考人(松原洋一君) お答え申し上げます。
受信料の免除基準の見直しについては、先生がおっしゃったように、昨年十一月の総務委員会における御指摘を踏まえて、NHKとしても、社会的、経済的環境の変化や公平で合理的な受信料体系を構築する観点から検討を進めているところでございます。
具体的には、今申されたとおり、社会福祉施設に対する免除の拡大を、二月に設置した外部有識者によるNHK受信料制度等検討委員会に諮問をし、その答申を踏まえ、しっかりと対応していきたいというふうに思います。
○山本博司君 是非とも速やかに検討を進めていただきたいと思いますけれども、この受信料免除の対象の事業、事業者数はどのぐらいになるのか、また、免除の金額はどれくらいの規模になるのか、また、この受信料検討委員会ではいつ頃をめどにその方向性を示すつもりなのか、今後のスケジュールを教えていただきたいと思います。
○参考人(松原洋一君) お答え申し上げます。
社会福祉施設に対する免除を拡大した場合の影響額について、NHKに登録をされているデータに基づき、現時点では、件数で約二万件、金額は年間約二億円と推計をしております。
また、NHK受信料制度等検討委員会の最初の答申については、今年の七月をめどにいただくことをお願いをしているというところでございます。
○山本博司君 今ありましたけれども、二万事業所ということでございますけれども、可能であれば早い段階で決定をしていただいて、この推進ができるように実現をお願いを申し上げたいと思います。
さらに、研究開発に関して伺いたいと思います。
これも昨年の総務委員会で質問をさせていただきましたけれども、障害のある方にとって、字幕放送、解説放送、手話番組などは大事な情報を入手することができるための大変重要な仕組みでございます。
障害者の権利条約が二〇一四年に批准されまして、また、障害者差別解消法も昨年二〇一六年の四月に施行をされております。また、現在、手話を言語として普及を進める手話言語法、若しくは多様なコミュニケーションの手段を選択する権利のための情報・コミュニケーション法の制定が、今障害者団体を中心に要望されている次第でございます。障害のある方たちの生活において欠かすことのできないこういう放送の分野におきまして、この情報のアクセシビリティーというのは大変大事でございます。改めてこういった面を見直しが求められていると思います。
NHKでは今、経営計画の中で「人にやさしい放送・サービスの推進」を重点項目に掲げて、障害のある方だけでなく、幼児からお年寄りまで着実に情報を届けるということを目指しておりまして、それを、多様な研究をNHKの放送技術研究所において実施しているということも伺っております。
今後も、こうした公共放送として質の高い「人にやさしい放送・サービス」を実現できる研究開発にしっかり取り組んでいただきたいと思いますけれども、この点に関しまして予算案ではどのようになっているのか、報告いただきたいと思います。
○参考人(森永公紀君) お答え申し上げます。
NHKでは、高齢者や障害者、外国人を含めて、誰もが放送サービスを楽しめるよう、人に優しい放送技術の研究開発を進めているところでございます。
聴覚障害者に向けましては、音声認識を用いた字幕制作技術やCGアニメーションによる手話で気象情報を伝える技術を一部で実用化しておりまして、一層のサービス拡充を目指した研究に取り組んでおります。さらに、視覚障害者に向けては、スポーツ中継などの生放送番組に合成音声による解説を自動で付与する音声ガイドの研究開発などに取り組んでおります。さらに、外国人に向けては、ニュースを易しい表現に変換する技術がNHKのホームページで活用されております。
これらの研究開発に充当する人に優しい予算の額は、二十九年度はおよそ三億円でございます。
○山本博司君 昨年よりも増えていると思いますけれども、しっかりとその推進をお願いをしたいと思います。
私は、現在、二〇二〇年東京オリパラに向けた障害者の芸術文化振興議員連盟の今事務局長をしておりまして、今国会におきまして障害者による文化芸術活動の推進に関する法律の成立に向けて、これ議員立法でございますけれども、取り組んでいるところでございます。
この法律案では文化芸術の鑑賞機会の拡大ということを目指しておりまして、字幕や音声ガイド、手話等での説明の提供促進を規定しております。これは、映画やテレビ映像のアクセシビリティーの拡充を念頭に置いているわけでございます。この放送分野でのアクセシビリティーの向上も是非推進をしていただきたいと思います。
また、この法律案は、障害者の文化芸術作品の創造や、また発表の機会の拡大を求めて環境の整備も推進をしております。二〇二〇年の東京オリパラは、スポーツの祭典であるとともに、我が国の文化の水準を高める絶好の機会でもございます。
そこで文化庁にお伺いしますけれども、二〇二〇年に向けて文化庁では文化プログラム実施をしておりますけれども、この中で障害者の文化芸術活動、どのように取り組まれているんでしょうか。
○政府参考人(内丸幸喜君) お答えさせていただきます。
障害のあるなしにかかわらず、全ての方々が文化芸術に親しみ、優れた才能を生かして活躍することのできる社会を築いていくことは極めて重要なことだと認識しております。これまでも、障害者の優れた文化芸術活動の国内のみならず海外での公演や展示の実施、さらには助成採択した映画作品のバリアフリー字幕、また音声ガイド制作への支援、特別支援学校の子供たちに対します文化芸術の鑑賞、体験機会の提供など、障害者の文化芸術活動の充実に向けた支援にこの間取り組んでまいりました。
さらにまた、平成二十七年六月からは厚生労働省と共同で、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた障害者の芸術文化振興に関する懇談会を開催しまして、関係機関との情報共有や意見交換を行いつつ、今後更に一層取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
文化庁としましては、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機としまして、心豊かな生活の実現につながる文化プログラムにおいて、今後こうした取組を一層充実させ、障害のあるなしにかかわらず、あらゆる人々が文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるよう、障害者による文化芸術活動にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○山本博司君 やはり、芸術文化活動は障害のあるなしにかかわらず楽しむことができますし、また生きがいを与え、生活を豊かにすることができるわけでございます。
アールブリュットという障害者の芸術がございますけれども、こうした障害のある方々が個性や才能を生かして生み出した表現の魅力を広く知ることは、様々な価値観を受け入れる共生社会の実現に大きく寄与すると考える次第でございます。
今、平成二十九年度の事業計画では、二〇二〇年の東京へ向けて視聴者の関心に最大限に応える幅広い番組を編成していくと記述されておりますけれども、NHKがこの障害者による芸術文化活動を放送で積極的に取り上げていただくだけでなく、収集や記録なども通じて地域に埋もれている作品の掘り起こしにも是非協力をしていただきたいと思いますけれども、最後にこの点を確認して、質疑を終わりたいと思います。
○参考人(木田幸紀君) お答えします。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせて行われる文化プログラムにつきましては、現在検討中で詳細はまだ決まっておりませんが、現在、障害者の文化芸術活動についてはいろいろな番組やイベントで取り上げております。更にこのような番組にも力を入れていくとともに、アーカイブスも更に充実させて活用して、委員のおっしゃるような趣旨が少しでも実現できるように努めていきたいと思います。
○山本博司君 以上で質問を終わります。