参議院 財政金融委員会 第11号 令和4年4月19日
第208回国会 参議院 財政金融委員会 第11号 令和4年4月19日
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
本日は、ロシア制裁関係の法案に関してお聞きを申し上げたいと思います。
ロシアによるウクライナ侵略は国際社会の平和と秩序を乱す暴挙でございまして、強く非難しなければなりません。ロシアの蛮行によりましてお亡くなりになられた全ての方々に哀悼の意をささげるとともに、一日も早くウクライナに平和が戻るように願っておる次第でございます。
このロシアによる非道な行為は、断じて許すことはできません。我が国は、G7を始めとする国際社会と連携をして、ロシアに対しまして厳しい姿勢で臨む必要がございます。今回の法改正は、G7諸国と一致団結をしてロシアへの制裁を強化するものでございますので、大変意義のあることでございます。法案を速やかに成立させ、実行に移すべきものと考えます。
まず、関税暫定措置法の改正案についてお尋ねをしたいと思います。
ロシアに対するこの最恵国待遇の撤回に関しましては、先般のG7首脳声明でも合意されたものであり、我が国におきましても、国際社会と連携してロシアの最恵国の地位を否定するため、一刻も早く対応する必要があると考えます。
そこでまず、このG7首脳声明で合意された最恵国待遇の撤回につきまして、米国やEU等のG7各国における対応がどのようになっているのか、各国で一致団結した対応になっているのか、対応状況について確認をしたいと思います。
○政府参考人(阪田渉君) お答え申し上げます。
WTO協定上、最恵国待遇は、関税、輸出入規則、手続など様々なものが対象となっておりまして、その撤回について、G7首脳声明においては、各国の手続と整合的な形でこれに努めることとされております。
関税率の引上げという観点に関して申し上げますと、まずカナダでございますが、これは既存の法律に基づいて三月二日から引上げを行っております。それから、英国及び米国でございますが、この二つの国は立法措置等を行いまして、それぞれ、三月二十五日、アメリカは四月九日から、ロシアに対するWTO協定税率の適用を停止した上で高い関税を課しているものと承知しております。一方、EUでございますが、関税率の引上げではなく輸出入禁止措置で対応する方針を表明し、三月中旬以降、様々な措置を講じていると承知しております。
このように、最恵国待遇の撤回についての対応方法は各国によって様々でございますが、いずれにしましても、ロシアの最恵国の地位を否定する行動を取るようG7が一致団結して取り組んでいるところでございます。
○山本博司君 我が国としても、こうしたG7諸国を始めとして、この国際社会と一致団結をしてロシアに対して厳しい措置をとる必要があると思います。
そこで、ロシアに対する関税上の最恵国待遇を撤回するという今回の関税暫定措置法の改正につきまして、改めてその意義を伺いたいと思います。
○副大臣(大家敏志君) お答えいたします。
意義についてのお尋ねがございました。
今回のロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権や領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、厳しく非難されるべきものであります。
政府としては、先般、三月十一日のG7首脳声明を踏まえ、ロシアへの外交的、経済的圧力を一層強める観点から、ロシアに対する関税についてのWTO協定上の最恵国待遇を迅速に撤回することといたしております。
本法案は、関税について、ロシアからの輸入品に対してWTO協定税率を適用しないこととするものであり、今回の措置を通じて、国際社会と一致団結してロシアに対して厳しい措置をとるという我が国の意思を強く示すことに大きな意義があり、象徴的な政策であると考えております。
○山本博司君 G7各国が連帯をしてロシアと対峙するという姿勢、とても意義のあることでございます。こうした考えをG7諸国以外の国々にも理解していただくことが重要であると考える次第でございます。
我が国は、アジアから唯一G7に参加している国でございます。G7以外の諸国との連携につきましては、岸田総理自身が先頭に立ってアジアなどの各国に対する働きかけを行っている旨を述べられていることも承知している次第でございます。
今後も、WTO加盟国を始め、特にアジア諸国に対しまして、ロシアの非道な行為を許さないという意思を広く伝える役割、これが我が国日本にあると思う次第でございます。G7諸国以外の国々にどのように働きかけていくつもりなのか、外務省の認識を伺います。
○政府参考人(北川克郎君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、我が国は、一刻も早くロシアが国際社会の声に耳を傾け侵略をやめるよう、G7各国や国際社会とともにロシアに対して強力な制裁措置をとっていくことが必要と考え、迅速に厳しい措置を打ち出しているところでございます。
まず、アジア諸国への働きかけについてでございますが、ロシアによる侵略後の二月二十八日に林外務大臣が東南アジア諸国の駐日大使等と本件について意見交換をし、緊密に連携していくことで一致しております。これを皮切りに、様々なレベルでの東南アジア各国への働きかけを経て、現地時間三月二日に東南アジア各国からの賛成や共同提案国入りを得たウクライナに対する侵略に関する国連の決議が採択されたところでございます。
また、四月九日に日本とフィリピンの間で初めて開催されました2プラス2閣僚会合では、武力行使の即時停止及び部隊のウクライナ領域からの撤退を求める強いメッセージを含む共同声明を発出したところでございます。
さらに、先月、岸田総理自身が、インド、カンボジア訪問の際に、力による一方的な現状変更はいかなる地域においても許してはならないということを確認しております。
G7首脳会合におきましては、制裁の回避や迂回、バックフィルを行わないということについて、G7で連携し、各国に働きかけていくことで一致しております。
アジアの唯一のG7メンバーである我が国としては、制裁の抜け道が生じないよう、アジアを含む他国に結束を呼びかけ、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、ロシアへの外交的、経済的圧力を一層強めるべく適切に対応してまいる所存でございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
今回の改正案の新三条におきまして、WTO協定税率、これを基本税率とする規定が設けられている次第でございます。これにより税率が引き上げられる品目もございますけれども、一部の品目では基本税率が零%だったものもございまして、その影響といいますのは実質的に軽微であるとも言われている次第でございます。
この税率に関しまして、基本税率に戻すのではなく、制裁的にもっと高く引き上げるべきとの意見もあったようでございますけれども、こうした考えは検討されなかったのか、認識を伺いたいと思います。
○政府参考人(阪田渉君) 今回、最恵国待遇の撤回、どのように行うかは、先ほど申し上げましたように各国により対応は様々となっております。例えば、アメリカ、イギリス、カナダのように高い関税率を掛ける国もある一方、EUは関税率の引上げではなく輸出、輸入禁止措置の組合せで行っているものというところでございます。
我が国でございますが、G7首脳声明を受けまして、国際社会と一致団結して、まず迅速に対応する必要があるという観点、その中で、国民生活への影響なども踏まえる必要があると、こうした観点から、ロシアへの最恵国待遇撤回に当たりましては、WTO協定税率に代わり国内法に基づく関税率を適用することとしたものでございます。
○山本博司君 今回の措置によりまして、関税率が引き上がるのは主に漁獲類や一部の木材であると承知をしている次第でございます。
例えば、サケであれば三・五%から五%、一部の木材では四・八%から八%に関税率が上がることになるわけでございますけれども、このように漁獲類や木材の関税率、これは一部の影響があるようでございますけれども、今回の関税率引上げにつきまして、こうした国内の産業への影響、これをどのように見ているのでしょうか。
○政府参考人(渡邊毅君) お答えをいたしたいと思います。
今回の法律改正に伴いまして、関税率、一部、先生御指摘のとおり、引き上げることになります。
水産物貿易について申し上げますと、最近の国際的な需要拡大ですとか、新型コロナウイルス感染拡大によります物流の問題などによりまして、一般的に価格の上昇傾向にあるところでございまして、そこに更にウクライナ情勢の影響などにより今後の影響を確実に見通すことは困難だと考えておりますが、今回の法改正によりまして、水産物の一部の品目について、WTO協定税率に代わりまして国内法に基づく関税率が適用されるということで関税率が数%程度引き上がることになりますけれども、この措置自体による国民生活への影響は限定的というふうに考えているところでございます。
この影響も含めまして、ロシアによるウクライナ侵略をめぐる影響全般について、今後とも注視をしてまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
今回の措置によりまして、漁獲類、また木材に与える影響というのは限定的のようでございますけれども、この漁獲類、また木材に限らず、コロナ禍におきまして世界的な需給バランスの悪化、さらには物流コストの増大等を背景にしまして、原油を始めとする資源、原材料、また食料価格につきましては、趨勢的に物価高、これが続いている状況でございます。
こうした資源、また原材料、食料品価格の高騰というのが私たち国民生活に重大な影響を及ぼしておりまして、コロナ禍からの経済社会活動の順調な回復を妨げることは避けなければならない次第でございます。
この物価高騰の影響を受ける方々に必要な支援が行き届くように政府としても対策に取り組むべきと考えますけれども、鈴木財務大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) 関税の措置自体による影響、これは先ほど来御議論いただいておりますとおり限定的であると考えておりますが、この影響を含め、ロシアによるウクライナ侵略をめぐる物価等への影響全般については、今後とも注視をしていかなければならないと思っております。
政府としては、こうしたウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰等による国民生活や経済活動への影響に緊急かつ機動的に対応するための総合緊急対策を四月中に取りまとめることといたしております。現在、具体的な施策等を鋭意検討しているところですが、引き続きまして、関係省庁と連携しながら取りまとめに向けて対応をしてまいりたいと考えております。
○山本博司君 この物価の、物価高騰の影響といいますのは、家計や企業経営にも大きく影響する可能性があるわけでございます。
今大臣が、お話あったとおり、政府は、今月末に総合緊急対策、これを決めることになっている次第でございますけれども、このウクライナ危機の影響を鑑みて、対策への費用といたしまして、今年度の予備費の活用だけでなくて今国会中に補正予算を成立させるべきと我が党は主張しているわけでございますけれども、この補正予算の必要性について、現時点での財務大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) 先ほども申し上げましたけれども、原油価格、物価高騰等への対策につきましては、総理指示を受けまして、現在、関係省庁において盛り込む施策等を鋭意検討しているところでございます。
直面する危機に緊急かつ機動的に対応するため、総理指示にもありますように、これまでに成立いたしました令和三年度補正予算や令和四年度予算、これを迅速かつ着実に執行するとともに、新たな財源措置を伴うものにつきましては、まずは予備費を活用した迅速な対応を優先していくことといたしております。
財務省として、四月末を目途とする取りまとめに向けまして、関係省庁、与党と十分連携しながら、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○山本博司君 次に、外為法の改正案に関しましてお尋ねをしたいと思います。
G7首脳声明におきまして、国際的な制裁の影響を回避あるいは相殺するための手段としてデジタル資産を活用することができないことを確保する、そうすることとされたわけでございます。これを受けて、ロシアがビットコインなどの暗号資産を使って経済制裁を回避するのを防ぐために、金融庁と財務省は、暗号資産の交換業者に対しまして、対策を徹底するよう要請している次第でございます。
この要請によってどのような効果があるのか、まず、今般の外為法改正によります意義と改正案の内容について確認をしたいと思います。
○副大臣(大家敏志君) お答えいたします。
これまでも累次の制裁を実施しておりますが、何といいましても、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないように法的な手当てを講じ、その上で制裁の実効性を更に強化を図るというものであります。
具体的には、現行法で既に規制対象となっている制裁対象者への暗号資産の移転に加え、制裁対象者から第三者に暗号資産を移転する取引等も規制対象として捕捉することとともに、暗号資産交換業者に対し、銀行等と同様に制裁対象者に係る暗号資産の移転でないこと等を事前に確認する義務を付加することといたしております。
○山本博司君 この法改正で銀行などと同様に暗号資産交換業者にも確認業務を課されることになるわけでございますけれども、この暗号資産交換業者が確認業務をしっかりと履行することによって、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないように法改正による規制の実効性、高めるべきであると思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(三村淳君) お答え申し上げます。
まさに御指摘のとおりでございまして、いかにこの事前確認義務、実効性を確保していただくか、重要でございます。
私どもといたしまして、まずは、この今回の法改正の内容、事前確認義務に伴いどういうことをやっていただくか、暗号資産交換業者の皆様方にしっかりと周知徹底を図ってまいりたいと考えてございますし、また、政府として把握いたします様々な、これは外交当局が把握、公表するような情報も含めましてしっかりと把握の上、業者の皆様方にも提示をし、共有をする。
それから、今般の法改正を受けまして、業者の皆様方に対しましては必要に応じました立入検査ですとか報告徴求といったこともできるようになりますので、そういったことの中でいわゆるベストプラクティスの周知徹底を図る、こういった様々な形で業者の皆様方ともよく意思疎通を図りながら実効的なこの確認義務の確保に努めていただくように、引き続きよく業界と連携してまいりたいと、このように考えてございます。
○山本博司君 最後に、財務大臣に伺います。
今回の法改正だけでなく、今後の状況次第では制裁措置も含めてロシアに対する更なる経済的圧力について検討すべきと考えます。
大臣はいよいよこの後、アメリカ・ワシントンに向かって財務相・中央銀行総裁会議に出席をされますけれども、このG7各国を始めとする国際社会と緊密に連携しながら、ロシアがこれ以上の暴挙を重ねないような効果のある成果を上げていただきたいと思いますけれども、最後に大臣の見解を伺います。
○国務大臣(鈴木俊一君) 政府といたしましては、これまで、先ほど来お話ししていますように様々な制裁措置をしてきたところでございますが、追加の制裁につきましては、これは、今後の状況の推移や制裁の効果、こういうものを勘案しつつ、先生御指摘のように、G7各国との協調も含めまして、引き続き国際社会そして関係省庁と緊密な連携の下に適切に取り組んでいきたいと考えております。
○山本博司君 以上で質問を終わります。ありがとうございました。