きょうだい児(病児・障がい児の兄弟姉妹)に支援を/孤独、つらさ抱えやすく/相談、居場所づくりが必要
きょうだい児(病児・障がい児の兄弟姉妹)に支援を/孤独、つらさ抱えやすく/相談、居場所づくりが必要
重い病気や障がいのある兄弟姉妹がいる子どもは「きょうだい児」と呼ばれ、保護者が病児らのケアに追われることから、孤独やつらさを抱え込みやすい。子どもが家族の看病・介護を担うヤングケアラーなど、患者・障がい者の家族支援への認知度が高まる中で、きょうだい児のサポートに国も動き出している。
きょうだい児は、親に甘えられず、家族と一緒の外出や行事参加も諦めることが珍しくない。「自分は消えた存在」と感じたり、親に認められようと“いい子”を無理して振る舞う場合もある。ヤングケアラーとして兄弟姉妹の面倒を見る、きょうだい児もいる。
■見えづらく、実態つかめず
家庭内の見えづらい問題のため現在、きょうだい児が全国にどれほどいるかは把握されていないが、一定数いるとみられている。全国に約2万人と推計される、たんの吸引などが必要な医療的ケア児への実態調査(厚生労働省、2019年)では、兄弟姉妹がいる家庭は6割を超す。このうち、きょうだい児がストレスを抱えているとの回答は全体の約6割に上った。きょうだい児の予防接種などの用事に充てる時間がない家庭も約4割に達し、負荷は大きい。
■「我慢、当たり前」と
きょうだい児だったゆえに心の痛みや複雑な感情を抱くこともある。沖縄県に住む30代女性も、その一人。育った家庭は、脳性まひの兄が生活の中心だった。子どもの頃から兄のおむつを替えたり、車いすの介助をしてきた。「自分が我慢するのが当たり前だと思っていた。でも、本当は寂しかったと大人になってから気が付いた。今でも『自分のことは後回し』の癖が抜けない」と振り返る。
障がい者の兄弟姉妹がいる当事者でつくる「きょうだいの会 わたぼうし」(同県豊見城市)は昨年4月に設立された。石垣春美代表によれば、きょうだい児には、成人後も自己肯定感が育めず、アルコール依存に陥るなど苦しむ人が多いという。石垣代表は「つらさを言い出せず、心に封印する子どももいる。成人も含め当事者同士で体験を話し合い、相談できる場づくりが大切」と指摘する。コロナ禍で実施できなかった当事者の交流会を今後開く予定だ。
■保育を通し笑顔に
きょうだい児が安心して過ごせるよう居場所を整備したところもある。認定NPO法人スマイルオブキッズ(横浜市)は、神奈川県立こども医療センターと連携して、患者・家族滞在施設「リラのいえ」を運営。入院中の病児の看病に出向く父母に代わり、きょうだい児を預かる保育事業を09年2月から続けている。
保育は予約制で、生後3カ月程度の乳児から小学校高学年まで受け入れる。利用料は現在、1人1時間300円。運営費は利用料に加え、寄付などで賄う。
20年度に利用した子どもは延べ555人。当初、心細い表情の子や、ストレスで乱暴気味だった子が、職員の温かいケアを通して、笑顔で過ごせるようになっている。松島より子施設長は「きょうだい児が抱えるつらさが、ようやく認識され始めてきた。一人の大切な子どもとして、その幸せを考え、寄り添う支援が必要」と訴える。
リラのいえのような、きょうだい児保育の施設は全国では非常に少ないという。
■公明、サポート体制訴え
公明党は女性委員会(委員長=古屋範子副代表)が昨年10月、政府への提言で、きょうだい児の抱える問題を「隠れて見過ごされがちになっている」と指摘。実態調査を行った上で、国としてのサポート体制構築を強く求めている。
公明党の推進で、9月に施行された「医療的ケア児支援法」(議員立法)にも、医療的ケア児に加え、きょうだい児も含む「家族」への適切な支援が国や自治体の責務であることが明記されている。ヤングケアラー支援の強化も国会質問などで訴えてきた。
■政府も対策を検討
こうした動きを受けて、政府は、さまざまな施策を通じて、きょうだい児支援を進めている。
ヤングケアラー支援に関する厚労・文部科学両省のプロジェクトチーム(共同議長に山本博司厚労副大臣=当時、公明党)が5月にまとめた初の支援策では、きょうだいを世話する子どもらのための家事・子育て支援サービスを明記。厚労省は22年度予算の概算要求にモデル事業を計上している。
重い慢性的な病気の子どもの自立支援事業の中で厚労省は15年から、きょうだい児を含む患者・家族の相互交流事業などを実施している。都道府県などの自治体の任意事業で、取り組んでいる団体は限られることから、同省は今年度から自治体に専門家を派遣し、ニーズ(需要)調査や事業の立ち上げをサポートしている。
2021年11月12日 公明新聞3面