医療的ケア児、社会で支えよう! 支援法施行3年の成果と課題
医療的ケア児、社会で支えよう! 支援法施行3年の成果と課題
生きるために、たんの吸引や人工呼吸器などが欠かせない医療的ケア児(医ケア児)と、その家族を支えていくための「医療的ケア児支援法」の施行から今年9月で3年が経過した。自治体などによる支援が加速するという成果が見えてきている一方で、今なお課題は少なくない。
■全都道府県に拠点整備
自宅で暮らす医ケア児は、全国で2万人に上るとされる。救命率の向上などによって、10年間で約2倍に増えた。24時間付きっきりでのケアが必要で、家族は心身共に負担が重く、自治体の窓口などに相談すると「対応できない」と突き放されることも多かった。
そうした窮状を受け、2021年、医ケア児が居住地域に関係なく、適切な支援を受けられるようにすることを国や自治体の「責務」と明記した「医療的ケア児支援法」が、公明党の強力な推進で施行された。
同法の施行を契機に進んだのが「医療的ケア児支援センター」の整備だ。21年時点で全国6県のみだったが、今年2月までに全都道府県に設置された。調整役となる「コーディネーター」が医療や福祉、教育などの各機関と連携。当事者とその家族の相談にワンストップで応じている。
■保育所、学校に通える子ども増える
また、同法に、医ケア児が他の子どもたちと共に教育が受けられる「インクルーシブ教育」の理念が盛り込まれたことで、特別支援学校ではない、保育所や学校で学べるようになった医ケア児が増加。幼稚園や小中学校、高校に通う医ケア児は19年の1453人から23年の2199人へと1・5倍に増えた【グラフ参照】。保育所などで受け入れている医ケア児も19年は533人だったが22年には982人に上っている。
■超党派で議論
支援法には、施行後3年をめどに必要な措置などを見直す規定が設けられている。
今年5月には、これまで医ケア児や、その家族への支援を超党派の国会議員らで議論してきた「永田町子ども未来会議」を発展させた「医療的ケア児者支援議員連盟」が設立された。幹事長には公明党の山本博司参院議員が就任。同議連で、見直しに向けた議論が進められている。
■「自分がいなくなったら…」/フォーラム開催、家族の不安尽きず
先月9日には、医ケア児の家族会の全国組織「全国医療的ケアライン」が主催するフォーラムが都内で開かれ、直面する課題を巡り、議論が行われた。山本議員も参加した。
ケアラインの村尾晴美副代表は「医ケア児の家族には“あす自分がいなくなったらどうなるのか”という不安がある。家族だけでなく、社会で医ケア児を支える仕組みが必要だ」と強調した。
医ケア児の中には、家庭での受け入れが難しいため、“医療機関から退院できない”“乳児院などで暮らさざるを得ない”といったケースや、家族が高齢になり、当事者を支えられなくなる状況があるからだ。
こども家庭庁保育政策課の栗原正明課長は、三重県では、医ケア児が利用できる機関を把握し、ホームページ上で公開するなど、社会資源の“見える化”で支援を加速させていると紹介した。
その上で「当事者らに伴走する機関や人材が必要だが、支援センターの機能には地域差がある。全国の状況を把握し、サポートしていきたい」と語った。
■看護師ら不足
一方、社会福祉法人むそうの戸枝陽基理事長は、保育所や学校に通う医ケア児は増えているものの、ケアを担える看護師などが不足していると指摘。保育士が医ケア児の支援に従事していくと、医療職としての仕事ができるようになるスキルアップ制度など、「人材確保の柔軟な仕組みが必要ではないか」と語った。
■地域格差の是正に全力/医療的ケア児者支援議員連盟 山本博司幹事長(公明党)
ケアを担う家族の切実な声を聴き、「何とかしたい」との思いで、15年から超党派の会議に参加し、支援法の成立に尽力した。
今年5月の参院決算委員会では、全国の保育所や幼稚園における看護師の配置状況を確認し、さらなる支援の必要性を訴えた。来年度からは、私立幼稚園の看護師配置への補助率が引き上げられるなど、着実に支援の拡充が進んでいる。
各都道府県の支援センターは、コーディネーターの数や各機関との連携など、体制に差があるのが現状だ。地方と連携して、地域格差の是正を図るとともに、より良い支援法をめざした議論を、当事者や家族の声に寄り添いながら加速させていく。
2024/12/06 公明新聞 3面