障がい者の社会参加へデジタル活用支援 全国に「サポートセンター」

障がい者の社会参加へデジタル活用支援 全国に「サポートセンター」

 パソコンやスマートフォンといったICT(情報通信技術)機器の発達により、視覚や聴覚、肢体不自由などの障がいがある人も、社会とのコミュニケーションを図ったり、情報が得られる機会が広がっている。一方、こうした機器は、操作が複雑で不慣れなケースも珍しくない。障がい者のデジタル活用を促すため、公明党の推進により政府は、ICTサポートセンターの整備を各地で進めている。大学と連携しながら運営を行う愛媛県の同センターを訪ねた。

■(愛媛県)文字の視線入力、文書読み上げなど操作の悩みに相談対応

 パソコン画面に表示された文字盤を凝視すると、文字が入力されていく。視線だけでパソコン操作ができる意思伝達装置だ。全身の筋肉を動かせなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)など肢体の不自由な人が活用するデジタル機器である。

 ここは愛媛県障がい者ICTサポートセンター(松山市)。同装置以外にも、視覚障がい者向けに文書を読み上げる機材や、顎・指先のわずかな力で押せるスイッチなどが用意されている。

 同センターは2022年7月に開設。県の委託を受けた県社会福祉事業団が運営する。連携する愛媛大学の苅田知則教授を中心とするインクルーシブ(包摂的)教育の研究者が相談員として派遣され、障がい者やその家族、福祉関係者からの相談に応じている。

■情報取得、意思疎通図る重要な手段に

 相談対応では障がいの特性に応じ、意思伝達装置などの機器を紹介・貸し出したりするほか、「操作が分からない」「スマホの画面読み上げ機能が動かない」といった悩みやトラブルの解決に動く。センターへ来訪が難しい人には、相談員が家庭・医療機関に訪問支援も行う。

 相談員の竹内麻子・愛媛大学特定助教は「デジタル機器は障がい者の情報取得や意思疎通を図る重要な手段だが、知られていない機器も多い。操作につまずき諦める人もいる。そうした課題を解消し、障がい者の社会参加につなげたい」と説明する。

 昨年4月から今年1月までに寄せられたセンターの相談延べ件数は全体で1872件。肢体不自由者からは909件、視覚障がい者からは132件、聴覚障がい者からは18件だった。

■“生きがい与えてくれる場所”

 センターの支援は障がい者・家族への大きな励みだ。寝たきりで1日を過ごすことが多い肢体不自由者の家族は「ICT機器を通じて社会とつながれることは、まさに“生きがい”。センターは“生きがいを与えてくれる場所”」と語る。

 苅田教授は、県内でセンターの活動が広く知られ、障がい者がICT機器を活用する機会も増えていると語る。その上で、「障がい者の特性に応じて機器を設定・調整できる人材は、センターの相談員などにまだ限られる。市町村で相談対応できるよう、センターが軸となり人材育成を進めることが必要だ」と、今後の活動の幅を広げることに意欲を示している。

■32都道府県が設置/政令市、中核市でも実施

 厚生労働省は、障がい者のICT機器の利用機会の拡大へ、自治体が設置する障害者ICTサポートセンターを財政支援している。同センターを今年度までに設置したのは32都道府県、8政令市、1中核市に上る。

 センターの運営・支援のあり方も多様で、愛媛県のようにセンター内の専門職が相談対応・支援するところもあれば、地域のボランティア人材や外部団体と連携しながら支援するところもある。

 厚労省自立支援振興室は「全都道府県の設置をめざし、ノウハウの提供も含め未設置の自治体に働き掛けたい」と話す。

■公明、議員立法リード。地方議員も推進

 公明党は、障がい者の情報取得などを支援するための「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の制定(22年5月、議員立法)をリード。同法の基本理念にICT活用を通じた意思疎通への支援が盛り込まれ、障害者ICTサポートセンターなどの施策に行政が取り組みやすくなった。

 さらに公明党は、政府への提言でセンターの整備を訴える一方、地方議員も活発に推進。党愛媛県本部は所属議員が一丸となりセンターの事業を後押し。また、公明県議の働き掛けにより23年8月に徳島県で、同年11月に山口県で同センターが開設された。

 センターの設置へ地方議員と連携してきた山本博司参院議員は「党のネットワークの力で整備を加速させたい」と語る。

2024/03/22 公明新聞 3面