難病支援さらに充実へ/昨年12月に改正法成立


 昨年12月に成立した改正難病医療法により、338疾病ある指定難病の患者が受けられる医療費助成の開始日が「申請日」から「重症と診断された日」に前倒しされるなど難病患者の支援が充実することになった。公明党も推進した改正法のポイントを当事者からの期待の声を交えながら紹介する。

■(今年10月から)医療費助成開始前倒し/「申請日」から「重症と診断の日」に

 東京都や福岡県などで建築設計事務所を営む手島博士さん(73)は2019年8月、下半身が突然のしびれに襲われた。翌日には歩行が困難になるほど悪化し、専門医に診てもらうと、指定難病「黄色靱帯骨化症」と診断されて緊急入院。2日後に手術を受けた。

 難病の診断から手術までは、「海の日」など3連休中の出来事だった。福岡市役所も閉庁していたため、手島さんの家族は翌日になって難病医療費助成の支給認定申請を行った。その後認定されて「受給者証」が届いたが、肝心の手術費などは対象外。当時の難病医療法に基づく助成開始日は「申請日」だったからだ。結局、手島さんは約27万円を病院に支払った。

 難病医療費助成は都道府県・政令指定都市が実施。主に症状が一定程度(重症)の指定難病患者を対象に、医療費の自己負担割合を2割に抑え、所得に応じて月々の自己負担上限額も設定。手島さんの場合なら3万円の自己負担となる計算だ。

 改正法では、今年10月から助成開始日を「重症と診断された日」に前倒しする【図表参照】。ただし申請日から、さかのぼれる期間は「1カ月」を原則とし、入院や緊急の治療が必要だった場合などは「最長3カ月」とした。厚生労働省難病対策課によると、申請に必要な医師の診断書を患者が準備するまでに2週間以上かかるケースも少なくなかった。

 制度の不備を公明党の楠正信・福岡市議に伝えていた手島さんは、「私のように突然の発病だったり、重症化だったりで申請前に手術した人も救われる改善だ」と評価する。

■(来年4月から)全患者に「登録者証」発行/サービス利用時の負担減らす

 1年ごとの更新が必要な「受給者証」とは別に、症状の程度に関係なく全ての指定難病患者を対象にした、終身有効の「登録者証」が来年4月から発行される。

 恩恵が大きいのは軽症患者だ。在宅介護といった障害福祉サービスなどを利用する際、指定難病の証明が必要だが、受給者証のない軽症患者は医師の診断書を提出しなければならず、手間や費用が負担だった。

 登録者証は、①都道府県・政令指定都市が患者のデータ登録時に発行②サービスの利用申請時にマイナンバーを使って登録者証情報を照会――という活用イメージだ【図表参照】。患者に配慮する観点から、窓口の職員が確認できるのは指定難病の有無だけで、疾病名は分からないようにする。登録者証の発行に併せ、各種支援情報の提供も強化する。

 「今回の改正は及第点」と広島市在住の後藤淳子さん(64)。全身の筋力が徐々に衰える指定難病「筋ジストロフィー」を患う中、約2000人の患者が加盟する「広島難病団体連絡協議会」の会長を21年まで10年間務めた。「受給者証がないと行政から入る情報も極端に減る。軽症患者が必要な支援や情報につながるきっかけに登録者証がなってほしい」と語る。

 厚労省は、登録者証を通じて得た軽症患者の情報を指定難病患者データベースに加えるなどし、治療研究に役立てる考えだ。

■子ども向け対策も前進

 子どもの難病(小児慢性特定疾病=以下、小慢)対策も、改正児童福祉法が成立し前進。788疾病ある小慢の医療費助成の開始日が指定難病と同様、今年10月から「重症と診断された日」に前倒しされる。

 また、自治体の任意で行われ、実施率の低さが課題になっていた、小慢児童らに対する自立支援事業を努力義務に格上げするなどし強化する。例えば、人工呼吸器を付けた小慢児童らを病院に一時入院させる費用の支援などを行う「療養生活支援事業」は、21年度の実施率がわずか13・7%。

 同省難病対策課は「難病の子どもたちの自立や成長につながる支援の意義を積極的にアピールしていく」としている。

■公明、選挙公約を実現

 公明党は難病患者らの支援充実に一貫して取り組んできた。医療費助成を手厚くし、対象を大きく広げてきた、15年施行の難病医療法などは、消費税率引き上げによる増収分を社会保障の充実・安定に充てる「社会保障と税の一体改革」の一環として実現させた。

 党難病対策推進本部の山本博司本部長(参院議員)は、「今回の改正は22年参院選の公約でもあった。今後も患者・家族の皆さんと一緒に対策を前に進めていきたい」と決意を語る。

2023年01月12日 公明新聞 3面